激震! 中世ヨーロッパ警察24時!!!【完結】 作:PureFighter00
周りをアホの子に設定する事で天才軍師ツラする残念極まる軍師系転生者は、敵の村落を前にしてなんか頭の悪い提案をするなどした。
「井戸に毒入れたら……」
「凄いアイデアだ!」
「天才かな?」
「よしこれで勝つる!」
「バカは死ぬが良い!」
特殊警棒をフルスイングして中世ヨーロッパ警察がなんちゃって軍師を張り倒した。一応ヘルメット被っているから安泰じゃ。
「なっ……何すんですかっ! 暴力反対!」
「戦争で化学兵器利用とはたまげたな。お前本当に現代社会から転生した人間かよ?!」
【化学兵器】
毒も化学兵器に分類されるので戦争で使うと戦時国際法違反だし、井戸に毒流したら無辜の民まで殺傷しちゃう。まぁ普通に現代社会の規範やモラル持ってたらやらんやろ。小耳に挟んだ話だが、自白剤利用も化学兵器利用に当たるので最近は使えないらしい。
「それに……周りのアホかつヴァンダル極まるお前らもいーかげんにせー! 武装見る限りお前ら中世初期のノルマン系だろ? 正々堂々バチコンと戦わないとヴァルキリーに勇者と認められずヴァルハラに行けないぞ!」
「え? そんな……じゃあどう戦えば……」
「こいつを見て貰おうかっ!」
中世ヨーロッパ警察はステータスオープンじみたスクリーンを空中に投射してブックマークからYouTubeをクリックした。なんでこれには驚かないんだよヴァンダル諸君!
「えっと……先ずはtwilight of the thunder godで検索して……Amon Amarthのオフィシャル動画を……(皆も検索して見てみよう!)」
【視聴中】
周囲にデスボイスが鳴り響き、一同ビビるが「ソー、オーディンの子。人類の守護者!」の辺りは皆小声で歌い出す。
動画の後半に戦闘シーンが出て来るが、襲撃側と防衛側がのそのそ出て来て対峙して、双方の勇者がタイマン張った後、いてまえゴラァっ!と乱戦になる。
「まぁ、中世最盛期である10〜11世紀前後の小規模な戦いはこんな感じだ。こーだろお前ら? コソコソ村に忍び込んで井戸に毒ぅ? 略奪して終わりかスカポンタンが。戦士ぶっ殺して農地も簒奪して生き残った連中農奴にして畑の収穫物も簒奪やろ。大丈夫神様見てるからお前らは正しいので勝つ(中世ヨーロッパ常識) 盛大に雄々しくやったらんかい! なぁに死んでも勇猛に戦えばヴァルハラでエインヘリャルになって毎日戦争し放題じゃ!」
「「「ぅぉぉぉおっ!」」」
「さぁ行け! 父祖の名に恥じぬ戦いをするンだっ!」
「えっと……『戦争』ですよね?」
「戦いの規模がデカくなっても基本はこんなもんやぞ。指輪物語のローハンの戦いみたいな歩兵の方陣に騎兵で突撃とか百年戦争の頃じゃね?」
百年戦争の頃だってロード オブ ザ リングスのローハン騎兵ほど数はおらんと思うが……14世紀初頭の「金拍車の戦い」で重装騎兵が槍襖作った歩兵に勝てなかった辺りから騎兵の価値が激減していくんだけど、機動性と突進力が高い騎兵は以後もゲームチェンジャー的な役割を果たした。(それまでは騎兵は歩兵の10倍の戦力があると信じられていた)
「そんなぁ!」
「だってお馬さんって臆病な生き物だもの。その中で勇猛な松風みたいな奴を探して育てて維持するのめっちゃ大変だぞ。騎兵を万の単位で維持するなんてかなりの無理ゲーぞ。あと、大規模な戦争だと海を渡るパターンが多くて軍馬を輸送するの難しい」
実際、軍馬は殺さずに身代金要求して金に変えたりしていた。立ち位置的には現代における戦車や対戦車ヘリに近いのかなぁ?」
11世紀初頭のデンマークによるイギリス攻撃に関しては、ヴィンランド・サガで描かれてる。また、この戦闘に参加した(ヴィンランド・サガでは)ヨーム戦士団(ヨムスヴァイキング/Jomsvikingsとも)は現代ヨーロッパにコスプレして在りし日の姿を再現してるマニアがいて、彼らのサイト見ると当時の装束とか見る事が出来る。
尚、ヴィンランド・サガで戦闘狂として大活躍するのっぽのトルケルは実在したヨーム戦士団の大隊長の1人であり、実は伯爵である。
大事なことなのでもう一回。
ドラキュラなどで紳士的かつ貴族的で線の細い「貴族」をイメージしている人には悪いが、割とこー……パゥワー系のおっさんが……その……ね……
「う、プレートメイル着てる人が居ない……」
「海戦もやるし、そもそも鉄が希少だし、加工技術も進んでない」
チェインメイルや革鎧に金属補強した鎧が多いね!
「チェインメイルじゃ切れはしなくても打撃が痛くない?」
「だから体格デカくて筋肉質なヴィンランド・サガのトルケルみたいのが強いんじゃ」筋肉も鎧だってはっきりわかんだね。
シャルルマーニュ(カール大帝)も身長195cmの小太りおじさんで、水泳大好きな偉丈夫だぞ。戦争するのがお仕事で、馬乗ってランス抱えて重装歩兵に横からチャージかます様な連中が優男で務まる筈もなく……多分皆が考える細もてイケメン貴族は銃火器が一般化して鎧も軽装になる16世紀以降だと思う。イメージ的には三銃士とか。
「近世になると権力が王の下に集まり、大規模戦争を集団組織して行う形に変わるからね。貴族も個人戦闘力より指揮能力が求められる様になる」
ナポレオンはあまり背が高くなかったが、指揮能力はカンスト気味。
「勿論、別に優男の騎士や貴族がいても構わない。つか、ファンタジーの古典である指輪物語からして細っこいエルフがなまら頑丈で強いからな!」
トールキン教授は第一次世界大戦従軍経験があり、ソンムの戦い(両軍百万人を超える第一次世界大戦最大規模の戦い)に通信兵として参加している。ローハンとか黒門前の戦いって、この戦闘のイメージが強いんじゃないかなぁ、的な。ソンムの戦いでは近代的な「戦車」が初投入されてるんだけど、クソでかゾウさん【オリファント】ってそれに着想得てないかしら?
「なんか理由が有ればいいんだ。何も中世ヨーロッパを正しくなぞる事が偉いわけでも無いし、人気を博す理由にもならない。
ただ、よくよく考えたら辻褄が合わないとか、リアリティが損なわれるというだけだ」
「歴史物の話をしたいわけでは無いですしね」
「ただ、らしさであるとか『読者に信じ込ませる力』は荒唐無稽だと弱まっていく。この匙加減が重要だし、リアリティーラインを重視したいなら現実の歴史をベースにした方が破綻が少ない。一々社会制度やら地理やらゼロベースで考え始めると、舞台設定するだけで時間が阿保ほど掛かる。そこの低減をする為にナーロッパ的なものを用いるのだから、多少は調べて現実に寄せるのは本来「手抜き」の筈なんだよ」
「……手抜きすらやらない、それすら面倒と投げ捨ててるのか……」
「まぁ、歴史も知らずにナーロッパを中世ヨーロッパと誤解するのはやめた方がいい。教養の浅さが露呈する」
中世最後期の戦争や風俗については、漫画「ホークウッド」とか、映画「ロック・ユー(英語原題 A knight tale) カンタベリー物語なんか読むといいんじゃないかなぁ。(大体この辺が黒太子リチャードが生きてた時代)、その先がジャンヌ・ダルクだ。
10世紀以前だとローランの歌とかがあるが、当時の風俗を「そのまま」書いたものではないのでちょっと微妙。
今日のオマケ知識「チェインメイルのお手入れの仕方」
小さな樽に砂と汚れたチェインメイル入れて転がす。砂との摩擦でこすり洗いが満遍なく出来る(本当)
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