「はあ……一体どうなってんの……」
千枝はテレビの中の八十神高校を一人で歩いていた。行く先々で見えない壁に爪先をぶつけ、時には顔もぶつけながら本物の学校そっくりな、でも見た目通りには進めない異界の廊下と階段を延々とさまよっているのだ。自分がどういう道を辿ってここまで来たのか、とうに分からなくなっている。
「あー、イラつく! トモエ!」
道を塞ぐ見えない壁に向けて女武者のペルソナを召喚し、長柄で斬りつけた。しかし壁はびくともしない。追撃で前蹴りを入れてみたが、それも結果は同じだ。
「やっぱ駄目か……」
千枝が壁を壊そうと試みたのはこれが初めてではない。その間に自分のペルソナがスズカゴンゲンからトモエに戻っていることに気付いた。もっともどうしてそうなったのかは、陽介や雪子と同様に分かっていない。
探査や解析の力を持たず、戦うことしかできないペルソナ使いは、こうなっては一人ではどうしようもない。誰かの案内がほしい。
「りせちゃーん! 聞こえなーい!?」
今朝ジュネスのフードコートに現れなかった、情報系の力を持つ仲間の名を呼んだ。もしこの世界にいるのなら、自分を見つけ出してくれるはずと期待して何度も呼びかけているのだ。しかし返事はない。千枝の声は吸い込まれるように、虚しくテレビの世界に消えていく。
「えーと……小西君もいないのー!?」
特別捜査隊の一員ではないが、りせと同じ力を持つ少年の名を今日初めて呼んでみた。千枝は悠や陽介、完二と違って尚紀と個人的な繋がりは乏しいが、もし聞こえていたら応答があるはずと思って。すると──
『こりゃー! クマというものがありながら、何で他のヤローなんか呼ぶクマか!』
想定外のところから応答が来た。なぜか校内の至る所にある天井から吊り下げられたテレビに、クマ総統が映し出されたのだ。
「あ、クマ吉! 何なのよ、これ!」
P-1グランプリと呼ばれているこの事態に、千枝はまだ何の理解も及んでいない。今日テレビに入ってからまだ誰とも戦っていないし、話し合ってもいないのだから当然だ。そんな疎外された少女を、総統は葉巻を咥えた憎たらしい顔で煽る。
『チエチャン、自慢の蹴りくれてやる相手がいなくて、ヒマしてるクマね?』
「何よそれ! 格闘番組ってマジなの!?」
『モチのロンクマ! チエチャン、ホントは最初にセンセイとバトルするはずだったんだけど! ロートルのオッサンが乱入しちゃってゴメンネー!』
一回戦第一試合が悠と堂島の勝負になったのは、乱入ではなく計画通りだ。P-1グランプリの正式参加選手は特捜隊から六人、シャドウワーカーから五人だ。奇数なのであぶれてしまった千枝はシード扱いになったのである。
『でもでも! 勝ち進めばあ、愛しのセンセイとどっかで当たるクマ! 愛を暴力で存分にぶつけてやるクマ!』
「え……?」
暴力を愛の表現と見なすとは恐ろしい話だが、千枝は総統の煽り文句のうち、他のところに引っ掛かりを覚えた。
「愛しの……?」
表現以前のそもそもの問題として、自分は悠を愛しているのかと。
(あたし……)
千枝は考えた。昨年から自分を省みることは何度かあった。例えば12月7日に足立に敗れ、翌日にシャドウワーカーに戦場から締め出された時だ。そして今日は、戦車のコミュニティが破壊されてから初めての機会だった。
(どうしてこうなったクマ……?)
一方その頃、クマもまた自分自身を省みていた。ただし千枝と違って悠への思いを見つめ直しているのではなく、今の自分の状況を考えているのだ。
(えーと……ジュネスの開店準備中に、いつものテレビから変なニオイを嗅ぎ当てたんだったクマ)
それを陽介が仕事をサボってテレビに逃げ込んでいるのではと思ったクマは、陽介一人だけ楽にはさせじと自分もテレビに飛び込んだのだ。そして気付いたらここにいる。もっともここがどこかは分からない。どういうわけかお嬢様に仕える執事の如き直立不動の姿勢で、眼前には扉の隙間めいた線が何本かあり、そこから見える景色は学校の教室のような──
「それどころじゃないクマ! お腹空いてるし、これなら……ふん!」
クマは人間の姿を取ることもできるし、その金髪碧眼の美少年形態を『ホントのクマ』と称することもあるのだが、人間にはできない色々な特技を持っている。例えば腹と背中がくっつくという言葉そのままに、体を紙のように薄くするとかだ。昨年にりせのシャドウと戦った時にもなった。
もっとも中身がなかった当時はともかく、中身のある今はどうやってペラペラになるのか、それは謎である。気にしたら負けとも言う。着ぐるみはアイロンをかけられたようなリアル二次元形態でもコミカルだが、人間の形でそうなったら気味が悪すぎる。
「ふー……さすがはクマ!」
クマは閉じ込められていた掃除用具入れのロッカーから、扉の細いスリットをすり抜けて脱出することに成功した。
「ふんむっ!」
そしてすかさず息を大きく吸い込むと、いつもの丸々としたスタイルに戻った。まさに変幻自在、融通無碍だ。虚空から人間の肉体を『生やす』ことさえ可能なクマだから、立体と平面を行き来するくらいお手の物である。
「むーん、一体何事クマ? ここはどこクマ?」
見回してみれば、そこはやはり学校の教室と思しき空間だった。クマは陽介たちの通う八十神高校に何度か潜り込んだことがあり、ここはそれとよく似ている。しかしテレビに入った自覚のあるクマは、ここが本物の学校でないことは分かる。肌感覚でも分かる。更に言うと、テレビの中と外は場所と場所で繋がっている法則があるのに、いつものジュネスのテレビから入って、いつものスタジオに出ていないことも分かる。
クマは訝しみ、そして考える。どうしてこんなことになっているのか? クマはかつて自分のシャドウ、またはそれらしきものに言ったように、本人なりに色々考えるのだ。
「ん? これ……クマクマか!?」
教室を見回しているうちに、壁に貼られたポスターの一枚に目が留まった。そこには葉巻を咥えて軍帽をかぶり、マントを着たクマ自身の姿がアップで写っていた。宣伝の文句は『大注目の格闘番組! クマ総統プロデュースP-1グランプリ! 今宵開幕!』だ。だが当のクマは着ぐるみの目が点になった。
「クマソートーって誰ぞね!? クマはこんなコスプレ写真撮った覚えはないクマ!」
言いながら、ある可能性を閃いた。
「まさか……クマのシャドウ!? 去年に続いてまたまたダダ漏れちゃった!?」
しかしほぼ同時に疑問を覚える。
(んむむ……でもおかしいクマね。シャドウが出たりしたら、さすがにクマが気付かないはずがないクマ)
クマは情報系の能力を持つだけあって、その観点から事態を考えることができる。自分のシャドウが再度出現した可能性をすぐに否定した。能力を根拠にした認知は、ペルソナは本人のシャドウが変じたものだからペルソナ使いにシャドウは出ないはずであるとかの、論理で考えるだけよりも確信が深い。
「とすると……あ奴はクマの人気を横取りしようっちゅー不届きな偽物! クマに成りすましてこんな楽しそうなイベントで遊ぼうなんて許せんぬ!」
ただし思考回路が独特なせいで、結論は少しばかりずれた方向に行ってしまうことが多い。P-1グランプリなる大会に飛び入りすべく、クマは教室を飛び出した。
飛び入りである。この大会の主催者にとって有里たちシャドウワーカーの参戦は計画通りであるが、クマは違うのだ。もしクマも初めからエントリーされていたら、一回戦で千枝と対戦することになっただろう。
「ちょいそこの! えーと、何や……丸いの!」
しかしそうではないから、こんな予期せぬ遭遇も起きる。
「へ?」
この地方では聞き慣れない方言で呼び止められた。振り返ってみれば、知らない少女がいた。細い腰に手を当てて、背筋を伸ばして立っている。
(な、なんというプリチーベイビーちゃん! クマ史上最高の美少女かもしれんクマ!)
「あんたがこのイベントの主催者やろ?」
陽介が校門前で出会った『生徒会長』である。プロモーションビデオに出演していたクマ総統と今のクマは仮装が違うが、全体的に特徴があり過ぎるので、同一人物と判断するのが当然だ。元のクマと面識がなければなおさらだ。会長はクマを一目見て主催者、つまりは事態の元凶と断定する。
「この騒ぎ、今すぐやめてもらいます!」
しかしクマは聞いていない。見知らぬ美少女に呼び止められるという、ゲームであればフラグと呼ばれるシーンに遭遇してしまっては、それどころではないのだ。言葉が通じなくなってもやむを得ない。
(ま、まさか……これが噂の逆ナンクマ!?)
クマの語彙ではナンパに順と逆の区別はないので、『逆ナン』を正しくない意味で使ってしまうことがままある。その点、今の状況は女から声をかけられたという意味では正しい。もちろん会長はナンパしているのではないのだが、クマにとってはそれさえ些細なことである。
(いやいや、クマにはナナチャンという心に決めた人が……)
その上で、クマは葛藤する。昨年の過酷な日々は、クマをナンパされたらホイホイついていくような、単なる
(ど、どうすればいいクマ!?)
瞬間、クマの脳裏に選択肢が閃いた。
① 誠実なクマは素直に謝る。
② モテモテなクマはハーレムヤローになる。
③ ブラックなクマは誰か他の男に押し付ける。
古式に則った三択である。これは四番目の選択肢が存在しない問題だ。無論、何も選ばず何もしないという道もない。どれかを選ばずにはいられない、そういう運命の分岐点に自分は立っているのだと、クマは直感した。
(うーん……②はちょっと罪なクマすぎるクマ。③は意味分からんクマ。誰かがクマに言わせたとしか思えんクマ。やっぱり①しかないクマか……。とほほ……)
「されば、はや二人には非ず、一体なり。この故に神の合わせ給ひし者は、人これを離すべからず……」
「あ? 何やて?」
『許婚』に操を立てねばと思う一方で、美少女を袖にせねばならない無念さはやはり否定しがたい。マタイによる福音書にある聖句を自分に言い聞かせても、悲しみは止めようがない。身を切るような痛みであり、苦しみである。己の業を捨て去ることは容易ではない。
「ベイビーちゃん、ゴメンね……」
その痛苦が真率の響きとなり、クマの謝罪は衷心からのものとして聞こえた。真面目な会長の心を打つのに十分である。
「反省してるんやね、よろしい。ほんならちゃっちゃと撤収しいや!」
と言うより、真率すぎたせいで会長はあっという間に話を進めてしまった。『クマにはナナチャンがいるから、ベイビーちゃんの気持ちには応えられないの……』と言う前に、話はぶった切られた。
「え? テッシュー? 涙を拭くティッシューじゃなくて?」
切断された謝罪が更なる迷走を始めようとしたところで、またも女から声をかけられた。
「クマ君!」
「へ? あ、ナオチャン!」
振り返ると、直斗の姿を見つけた。会長にばかり注目して気付かなかったが、特別捜査隊の仲間の一人が近くにいたのだった。天井からテレビが吊り下げられたり派手なポスターがあちこちに貼られたりする何とも奇抜な廊下の先、下駄箱付近に少女探偵がいるのを発見した。
「まさかナオチャンも逆ナンクマ!? クマってば生まれた時からモテモテだったけど、遂にスーパーモテターン到来クマ!?」
そして思考が暴走する。いや、これが平常運転だろうか。
(うーん、クマったクマ……実は正解は②クマか? ②を選ばないと暴動が起きちゃうクマ?)
世界の平和の為に、自分は敢えて罪深い道を選ぶべきではないのか。モテる男が背負わねばならない十字架として、浮気の罪を引き受けねばならないのではないか。そんな嬉しい自己犠牲の精神が芽生えて夢の国へと旅立とうとしたところで、現実に引き戻された。
「コラ、クマ公! 寝言ほざいてんじゃねえ!」
直斗にばかり注目して気付かなかったが、もう一人仲間がいたのだった。
クマと会長は下駄箱まで移動してきた。見えない壁で仕切られてはいるものの、一つの場所に四人が揃った。参加者をひたすら分断するのが基本方針のこの大会においては、珍しい事態と言える。
「あんたら、大会参加者の白鐘君と巽君やね。キャッチは確か……」
「それを言う必要はありません」
トラウマを繰り返される前に、直斗は機先を制した。自分の異名を聞くのは恥ずかしいし、完二のそれも聞きたいとは思わない。校門前で陽介と会った時からそうだったが、会長は一種子供じみた失礼さがある。それを抑えて素早く本題に入る。
「それよりクマ君、君はP-1グランプリの主催者なのですか?」
「ナオチャン、シドイ! クマは本物で、ソートーっちゅうのはニセクマ! クマ毛の違い、見て分からんクマ!?」
クマ総統とクマの違いは、姿形に関しては仮装の量にしかない。モニター越しに見ただけで両者を判別するのは至難の業である。現に会長は分かっていなかったし、探偵として観察力のある直斗でも難しい。しかし──
「言われてみりゃあ……あれとお前は毛並みが違うな。あっちはちょっとゴワついてたっつーか、カタそうっつーか……」
手芸が得意で布や毛には一家言ある完二には分かる。しかしクマは嫌そうに眼を逸らした。
「うぅ……カンジに違いを分かられても嬉しくないクマ」
「ああん!?」
「毛並みについてはその辺にしておきましょう。とにかく、分かりました。君は本物のクマ君で、クマ総統と名乗っている大会主催者は君の偽物。すると彼は何者なのか……君のシャドウという可能性はありますか?」
「それはないクマ。テレビからクマのシャドウのニオイはせんクマ。それにクマ、ペルソナ使えるし」
「なるほど」
ここで直斗は視線を会長に向けた。直斗にとっては知らない顔である。探偵の内心では様々な疑念が渦巻いているが、それを表に出さず努めて冷静な声音で尋ねる。
「ところで貴女はどなたですか? なぜここに?」
これは核心に触れる質問である。寸鉄人を刺すように。
「自分の学校の生徒会長くらい覚えとき」
「生徒会長……? これは失礼。ではお名前を教えてください。できればクラスも」
直斗は八十神高校の生徒会長くらい知っている。知っていながら敢えてとぼけて、ますます核心に近づく。直斗はシャドウワーカーと情報の共有などはしていないので、特捜隊の他の面々と知っていることに差はない。それでも事態の真相に近づいていく。
「……」
しかし会長は口を噤んだ。追及してくる探偵から核心を隠す。
「名前……ウチの?」
と言うより、追及される『本人』は核心を知らない。直斗の寸鉄は刺すべき相手を間違えている。特捜隊は昨年から事件に巻き込まれる側であって事件を起こす側ではなかったので、ペルソナ能力という事件の重要なファクターを持ちつつも、真相に辿り着くまで長い時間を要した。その点は会長も実は同じで、巻き込まれた側である為に事態の核心を知らないのだ。
即ち自分の正体を──
「あんた、あのマント着たのとは別人なんやね? 分かったわ。疑ってもて、堪忍な」
そして話を逸らす。意図的にかそうではないのか、とにかく話す相手を直斗からクマに切り替えた。自分で名付けたのではなく与えられた名を思い出そうとはせず、自分で選んだのではなく学校に決められた割り振りである所属クラスも捻り出そうとはせず、自分で立候補して得た生徒会長という役職に逃げ込む。願望に縋り付いて、事実から目を背けるように。
「ウチ、放送室行ってくるわ。校内放送使っとるんやから、総統はきっとそこにおるはずや!」
そして立ち去った。その足は速い。壁に阻まれている探偵の声の届かない距離まで、あっという間に走って行ってしまう。
「あ、カイチョー!」
「クマ君、待ってください!」
去る女を追おうとするけだものを、もう一人の女が引き止めた。するとクマは着ぐるみの頬を染めて振り返った。
「え? ナオチャン、やっぱり逆ナン? クマ、どーしよー……」
「とことんそれか! いい加減しつけえぞ!」
クマはどうしても色に狂わざるを得ない。それはもう持って生まれた宿命と言うかお約束と言うか、とにかくそういう類のものであり、改めることはなかなかできない。目につくものは何でもネタにしなければ気が済まない天然系の芸人のように、クマはふざける機会を見つけたら迷わずふざける。事態が余程深刻にならない限り、真面目でいられない。
「僕の推測ですが……あの子は被害者かもしれません」
そしてこの言葉は、クマを普段のおふざけモードから少しは真剣な方へ傾けることができる。クマは昨年から事件に対する思い入れが強い方なのだ。
「ほえ、何ですと!? この世界に落とされた子ってことクマ!?」
「あ、そっか! ここがテレビの中っつーんなら、落とされてこのガッコを生み出しちまった奴がいるはずってことか!」
クマは着ぐるみの目を丸くして、完二も丸くした。二人は今まで思いついていなかったが、テレビの中に一般人がいるとは、ダンジョンが生み出されるということだ。昨年の一連の事件で実例はいくつもある。
「もしそうなら、一人にしては危険です。僕らはここを動けないので、君が守ってあげてください」
昨年の事件では多くの場合、被害者に即時の危険はなかった。霧が出ている間はシャドウは被害者を襲わず、危険になるのは霧が晴れた時である。しかし今はテレビの中にそもそも霧がない為、タイムリミットに関する昨年の傾向は当てにならない。危険は常にあると考えておかねばならない。
「後で俺らも何とか追っかけるからよ。今は頼むぜクマ公」
「よっしゃー! カイチョーのナイトはクマに任せるクマ!」
クマは息を吸って着ぐるみの上半身を大きく膨らませ、両腕に力こぶを作った。薄くなるのも太くなるのも自由自在だ。ボディービルダーもびっくりの見事な逆三角形である。つい先ほどは菜々子の為に会長を諦める気でいたのだが、こうなったら話は別だ。名前も知らない女の為に危険を冒す男気を発揮する。
「はい、お願いします」
走るクマの背を見送りながら、直斗は考える。
(彼女が被害者である可能性はある。しかしそうだとすると、彼女のシャドウはどこに? クマ総統に化けているのかもしれないが……なぜ他人に化ける? それになぜ、生徒会長などと偽る? それで何のメリットがある?)
余計な混乱を招きそうだったのでクマには言わなかったが、直斗は会長の言葉に明らかな偽りがあることに気付いていた。八十神高校では先週に生徒会の選挙があり、会長には男子生徒が選ばれたのだ。だからあの『会長』が嘘を言っていることは確かだが、嘘を吐く理由が分からなかった。ただしそれはどちらかと言えば、枝葉の問題である。一番重要なのは──
「けどあの女が被害者っつーなら、犯人はどこのどいつだ?」
完二の言う通り、犯人こそが最も重要である。
「それはまだ何とも……事件を追っていくしかありません」
直斗が得ている情報は少なすぎる。どんな名探偵でも、展開できる推理に限度はあるのだ。今の時点では、シャドウワーカーでも犯人を見出すのは難しいだろう。
P-1グランプリはまだ一回戦が終わったばかりである。戦いはこれからだ。真相が明らかになるのも、まだこれから──