ペルソナ4 落ち武者の神   作:三尺

99 / 180
信仰告白(2011/12/7)

 悠がテレビの商店街へ向かっている頃、相棒は現実の商店街にいた。陽介は動揺しきりの尚紀を宥め、引きずるように歩かせて稲羽署からコニシ酒店まで送り届けた。しかし家には上がらなかった。早紀の生前から一度も入ったことのない店の門前で、陽介は後輩と別れた。

 

「はあ……ったく、どうなってんだよ。全く……」

 

 混乱した思考を何とか収めようとして、陽介は頭を掻いた。

 

(あの足立さんが……)

 

 犯人は足立。突如として姿を現した真実には、陽介も驚かされた。もっとも尚紀や悠と違って、陽介にとって足立は特に親しい人間というわけではない。肩を並べて戦ったこともない。だが知り合いではある。まさかそんな身近な所に追い続けてきた犯人がいるなどとは、思いもしなかった。

 

 しかしそれ以上感慨に耽る暇はなかった。制服の上着から流れてきた、携帯電話の電子音が思考を遮ったのだ。取り出して背面ディスプレイを見てみれば、千枝の名前がそこに出ていた。

 

「もしもし」

 

 真犯人についてリーダーから連絡が回った頃合であろう。千枝のことだから、『何がどうなってんのよ!』とでも怒鳴ってくるのではないか。クラスメイトの第一声をそう予想しながら、陽介は携帯電話を耳に当てた。

 

『あ、花村? あのさ、明日試験の結果発表あるじゃん?』

 

 しかし予想は外れた。

 

『あたし、今回ちょっと英語がヤバい感じでさ……。下手すっと冬休みに補習とか食らうかも、なの。また勉強会とか企画してくんない? 鳴上君も誘ってさ?』

 

 昨日愛家に集まった際に、特別捜査隊はこれ以上事件に関わらないことを暗黙の裡に認めた。もし今日の捜査状況が昨日と同じであれば、こういう電話は別に不思議ではない。だが被害者『本人』の証言によって急転した。それなのに、なぜ千枝はこんな話をするのか?

 

「お前……悠から電話貰ってねえのか?」

 

『え、何? 何の話?』

 

 世間話を遮って確認してみると、調子の外れた声が返ってきた。すると陽介の脳裏に閃きが走った。

 

(まさか……悠の奴!?)

 

 稲羽署を出る際、陽介は悠に皆への連絡を頼んだ。あれから時間はかなり過ぎているので、千枝まで回っていないだけとは考えにくい。考えられるのは、悠は誰にも連絡していないということ。それはつまり──

 

「すぐにジュネスに来い! 武器持って!」

 

 

 

 

 悠が初めてテレビに入ったのは転入して三日目の4月14日だ。ジュネスの家電売り場で足を滑らせて、例のスタジオに落ちたのだ。ただし一人ではなく陽介と千枝が一緒だった。ペルソナを初めて召喚したのはその翌日で、その時も陽介は一緒だった。一人でテレビに入ったのは今日が初めてである。

 

 厳密に言えば、自分から一人で入ったのは初めてで、落とされたのを含めれば二度目である。生田目に落とされた7月17日は命の危険を感じたものだった。たった一人で、眼鏡もなしでシャドウの大群に取り囲まれた。そして今日は眼鏡こそ用意しているものの、その辺をうろつく百や二百の雑魚と戦うよりも遥かに危険だ。相手は特捜隊を皆殺しにできるペルソナ使いである。

 

(いや、大丈夫だ。俺は戦いに来たんじゃないんだ)

 

 霧の中で光る道を走って、悠は異様な商店街に辿り着いた。辿り着けたこと自体が悠の確信を深めていた。戦って勝てるとは思えないが、戦いにはならない。話せば分かってくれるはずだった。そう信じていた。

 

 コニシ酒店に悠は再び足を踏み入れた。数時間前、早紀のシャドウを探しに来た時と何も変わっていない。人の気配はない。巨大な冷蔵ケースや、林立する酒樽、切り裂かれた写真が置かれたレジカウンターを順番に見回してみたが、誰も見つからないまま視線は広い店内を一周した。シャドウさえいない。

 

 だが足立はここにいるはずである。犯行現場を自白していたし、光る道が潜伏場所を示していた。店の出入口を振り返って、もう一度店内に視線を巡らせると──

 

「なーにやってんの……」

 

 案の定だった。どこに隠れていたのか知らないが、背後から声をかけられた。非常に近い距離だ。一歩離れただけくらいの位置に足立はいる。そう判断した悠は、視線を出入口に向けたまま答えた。

 

「話があります」

 

「あれ? 僕は別にないんだけど……」

 

 ここで悠は振り返った。首を回し、踵を返し、次いで体全体を動かして、ゆっくりと後ろを見た。しかし目の前に人はいなかった。数メートル離れた位置にあるレジカウンターに、足を組んで腰かけていた。手には何も持っておらず、眼鏡もしていない。稲羽署の保護室でテレビに飛び込んだ時と同じ、刑事としての仕事中の姿である。

 

「こんな所で何遊んでんの。イタズラにも程があるよ? しかもお友達も連れずに一人で来るなんて……。早く帰んなさい。危ないよ?」

 

 立入禁止のテープを越えた子供を窘める大人のセリフである。表情もそれに合わせて、普段通りの軽そうな顔の上に、迷惑しているとの色を添えている。わざとらしい事この上ないが。

 

「ここまでの道、光ってました。そうでなければ、一人では来れません」

 

 対する悠は真面目に答えた。

 

「あれは貴方がやったんじゃないんですか」

 

 それはつまり、足立の方こそが悠を呼んでいた。殺人犯を説得できると、悠に自信を与えていたのはそれである。だが足立は億劫そうにこめかみを掻いた。寝癖が残っている髪の下には、早紀に切られた傷跡がある。血はもう止まっているが、跡は残っている。

 

「君ね……言わなかったっけ? 思い込みとか勘違いとか、そういうので重大事件が起きるってさ」

 

「身に沁みてます」

 

「道を光らせたのは僕だよ。でもそんなことより……どうして僕は君を案内するなんてできたのかねえ? それは考えなかったの?」

 

「?……」

 

 悠は一瞬、虚を突かれた。言われてみれば確かに奇妙な話である。足立のペルソナは戦闘型だ。霧の一部分だけを光らせて人を案内するなど、風や雷をどう操れば可能になると言うのか。ペルソナ使いは万能の便利屋ではないのだ。まして戦闘型は殺すこと以外は基本的にできない。

 

「こういうことだよ」

 

「!?」

 

 悠は左手側を振り返った。いつの間にか、足立はレジカウンターから姿を消していた。酒樽の柱の傍に裏返して置かれたビールケースがあり、その上に腰かけている。

 

(瞬間移動? いや……)

 

 目にも止まらぬ速度で動いたのか、それとも時間を費やさずに空間を跳び越える術などがあるのか。どちらにしても脅威である。ただでさえ足立は地力で悠に勝るのに、こんな芸当までできるとあっては、いよいよ手に負えなくなる。

 

「もうちょっとしたら、世界が滅びるらしいよ?」

 

 謎の跳躍を見せたと思ったら、今度は話が飛躍した。

 

「は……?」

 

「何てね……? そんなこと言う奴がこの世界にいてね。僕、そいつに気に入られちゃったみたいでさ? この霧を、かるーく操ったりできるようになってさあ……」

 

 言いながら、足立は指を一本立てて空中に波線を書いた。眼鏡をかけている悠には見えないが、指の周りで白い闇が踊っている。足立はテレビの霧を操る仕草をしているのだ。

 

「君ら風に言うと、選ばれちゃったって感じ? そのせいでさ、色々分かっちゃったよ?」

 

「色々……? 何です」

 

「例えばこの世界は一体何なのか……とか。一言で言えば『心の世界』だね」

 

「何を……」

 

 悠は少しばかり混乱を覚えた。足立はこんな夢想的な話をする人であっただろうかと。世界が滅びるだの心の世界だの。確かにペルソナにシャドウにテレビの中の世界など、ファンタジックな代物は現実に存在するが、今の足立の言いようはいささか限度を超えている。うっかりすると妄想癖があったのかと思ってしまう。だが誇大な話はここまでだった。

 

「要するにね、君はもう帰んなさいってこと……。家じゃなくて、都会に。そんで、僕のことなんか忘れちゃいなよ」

 

 飛躍した話が現実に戻ってきた。足立は笑顔で悠を追い返そうとしている。事件も犯人も全て忘れて、志を捨てて都会に帰れと勧めている。

 

 早い話が、落ち武者になれということだ。だがもちろん勧めに従うわけにはいかない。ここで逃げたら、電柱に死体を吊るすオブジェがいくつ作られるか分かったものではない。

 

「自首してください」

 

「何で?」

 

 足立は依然として笑顔でいる。いっそ爽やかなほどの清々しい顔だ。眼鏡をしていないのに、霧を見通せているように。それに留まらず、人の心も世の道理も何もかもを見通した、全能者の余裕を伺わせる笑顔である。一片の危険も感じていない。

 

「明日には叔父さんが来ます」

 

「捕まる前に自分から降参しろっての? やっだなあ! 僕ってそんなに弱っちく見える? 君の叔父さんに負けちゃう?」

 

 とてもそうは見えない。悠は解析の能力を持たないが、堂島が足立に勝てるとは思えない。と言うより、足立に勝てる者など思いつかない。だから自首してもらわねばならないのだ。そうでなければ菜々子は孤児院に入るか、来年帰国する悠の両親に養ってもらわねばならなくなる。

 

「これ以上、犠牲者を出さないでください」

 

 もう悲劇はたくさんである。死人は菜々子を最後にしてもらいたい。妹は何かの奇跡で生き返ってくれたが、奇跡はそう何度も起こるものではないのだから。次の死人はきっと死んだままだ。

 

「変なこと言うねえ……それ、君らが死にたくないから僕に自首しろってんじゃん。ちょっと虫が良すぎない?」

 

 なるほど虫がいい。見方を変えれば、悠は命乞いをしているようなものである。自分だけでなく、仲間たち全員の命乞いだ。

 

「やんなら力ずくで来なよ。君ら、こっちでさんざんシャドウぶっ飛ばしてきたんでしょ? 必殺! 袋叩きの刑! 得意でしょ?」

 

 それができるなら話は早い。いや、それも足立との間にある絆を思えば心苦しい限りである。身内が犯罪者であるとは、自分の身を切り取るのに等しい苦しみだ。目に見えない血が流れて、幻の痛みで頭が痺れる。だが事件を放置していては、全身くまなく切り取られてしまう。絆で結ばれた人々を守るには、足立と戦うわけにはいかない。

 

「叔父さんも殺す気なんですか」

 

「その前に何人死ぬんだろうねえ……」

 

 ここで足立は笑顔を消した。ビールケースから腰を上げ、右手を懐に差し込んだ。危険な仕草である。悠はこめかみに汗が伝うのを感じた。だが動けない。黒い鉄の凶器がスーツから取り出されるのを、黙って見ていることしかできない。

 

「例えば君とか?」

 

 足立はリボルバー式の拳銃を構え、撃鉄を起こした。召喚器ではない、実銃だ。指一本動かすだけで人を殺せる兵器だ。悠は顔だけでなく背中にも汗が伝うのを感じた。今すぐ膝をついて、許しを請いたくなってしまうが──

 

「撃てないはずです」

 

 言い切った。足立は絶対に撃てない。他の人間はいざ知らず、自分だけは撃てない。道化師の絆で結ばれた自分を撃つことは、決してできないと。そう信じていた。

 

「君、頭腐ってる?」

 

 ──

 

 銃弾が耳をかすめた。硝煙が鼻を突き、殺気が肌を刺してくる。銃声の残響が心から去らないうちに、足立は再び撃鉄を起こした。銃口は悠の額に定められている。当たれば確実に死ぬ。

 

「次は外してあげないよ」

 

「いいえ……」

 

 次も必ず外す。悠には確信がある。担い手は主を傷つけることはできない。もちろん主も担い手を傷つけない。それが絆というものだ。しかも堂島に拒絶された時と違って、道化師のカードは脳裏に浮かんでこないのだ。コミュニティは反転していない。正位置のアルカナはどれも肯定的な意味だ。

 

 照準を通して睨み合うこと数秒。やがて主の確信に従うように、担い手は銃を下げた。

 

「やれやれ……」

 

「足立さん……」

 

 足立はため息を吐き、悠も息を吐き出した。二人は年こそ離れているが、やはり『友達』なのだ。絆の主は間違っていなかった。担い手は主を傷つけない。と思いきや──

 

 ──

 

 巨大化した酒屋に銃声が再び響いた。額を狙っていた銃口は、始めと比べてかなり下を向いている。だが床までは下ろされていない。射線は悠の体に触れている。

 

「え……」

 

 悠は自分の腹に左手を当てた。そこはぬめっていて、温かい。手を離して見てみれば、赤い液体がべっとりとついている。足立のペルソナが放つ、天を割って降り注ぐ電撃の雨と同じ色だ。

 

「足立、さん……!」

 

 そんなはずがない。信じられない。だが現実は現実だ。驚愕は痛みとそれに続く寒気によって、急激に塗り潰されていく。心の痛みなど体の痛みに比べれば取るに足らない。傷口から血と共に力も抜けて、悠は膝をついた。制服のズボン越しに血が足を伝う。頬や背中を伝っていた汗など、もはや感じる余裕はない。

 

「君ってさ、すっごい人気者だよね。男からはヒーローだって祭り上げられて、女からは惚れられまくって。何でなのかなあ……考えたことある?」

 

 身を切られる痛みとは、こういうものを言うのだ。目に見える血が流れて体温を奪い、現実の痛みが頭を凍り付かせ、思考を霧そのもののように白く塗り潰してしていく。膝立ちの姿勢は数秒と持たず、悠はうつ伏せに倒れた。

 

「そうなるように仕組まれているのさ……。誰かさんの差し金でね」

 

「だ、誰かって、誰……」

 

 何とか声を出せた。だがもう限界だ。もう口は動かせない。体はもっと動かない。目や耳もいつまでもつか、甚だ怪しい。あと数分もすれば命も体から抜け落ちる。そんな予感が今からしている。先月撃たれた生田目と同じ状態になる──

 

「さあ? 誰なのかは僕だって知らないよ。でもね、これだけは言える。君が人気者なのは、君自身の魅力とか才能とかのおかげじゃないよ。みんながみんな、見たいように見ているのさ……」

 

 見たいように見て、聞きたいように聞く。それは人間の宿命のようなものだ。人の理性は薄弱で、事実と願望を混同しやすい。そしてコミュニティと呼ばれる絆に関わると、そこに魔術的な要素まで加わってくる。しかも『我』の声が聞こえない普通の人間は、魔術の存在さえ認識できない。つまり見たいように見ていることにも気付かない。

 

 そしてコミュニティの主はと言えば──

 

『我は汝、汝は我……。汝、変貌する絆に気付きたり……』

 

 脳が腹の傷から目を背けて、苦痛を認識するのをやめた頃。残り数秒の意識は『我』の声を聞いた。だが言葉の意味するところは、悠には分からない。思考がろくに働かないのと、春から飽きるほど聞いた声と内容が異なっていたから。

 

『それは即ち、更なるまことを知る一歩なり』

 

 だがどこから届けられているのか分からない『我』の声と違って、すぐそこにいる人のそれは理解できた。

 

「ん、何だって? 変貌?」

 

(こ、この人……!?)

 

 残り少ない力を振り絞って目を動かすと、足立の姿が見えた。視線は出会わない。足立は明後日の方向を向いていて、一見すると独り言を喋っているような様子である。だがそうではない。

 

 足立の姿に重なって、一枚のカードが視界に浮かび上がった。おどけるようにダンスを踊る男が描かれたゼロ番目のカードだ。それが揺らめき、ひび割れた。絵画の上絵を剥ぎ取って、隠された下絵を露わにするように。現れた新たな寓意画は、いくつもの頭を持つ蛇のような怪物と生贄に捧げられた女の絵だ。外側の枠にはギリシャ数字の十一が書かれている。だが剛毅ではない。アルカナは──

 

「欲望……? 何それ? 僕、道化師じゃなくなったの?」

 

 アルカナは担い手が口にした。つまり足立は『我』の声を聞いている。悠は自分しか聞こえない声だと思っていたが、実は違っていた。初めて知った事実が、腹に空いた穴を広げて胸まで抉る。

 

(そう……か……この人は……)

 

 今日は一体、何と言う日であろうか。足立は自分が犯人だと自白したのみならず、こんなことまで告白した。一つ目は衝撃的だったが、二つ目は致命的だった。

 

(有里……さん……)

 

 薄れる意識の中で、審判のコミュニティの担い手が浮かんだ。かつて自分と同じように絆を集めていたというワイルドの男。考えてみれば、有里も『我』の声を聞いているはずである。あの青年は自分が担い手であることを知っていたのだから。

 

 足立と有里は他の担い手たちとは異なっている。彼らは主と『同格』なのだ。だから主を傷つけることも躊躇わない。つまり悠は間違えたのだ。思い込みや勘違いによって、死人が出るような重大事件が起きてしまった。

 

 体は海に沈み、意識は崖へと落ちた。

 

「ほら、お迎えが来たよ。君の友達……つーか、信者さんたちが」

 

 足立は床に倒れている、高校生の仲良しチームのリーダーに声をかけた。だが返事はない。死んではいないが聞こえていない。気を失っている。物言わぬ無力な少年から視線を上げた直後、コニシ酒店にもう一人の少年が飛び込んできた。

 

「悠!」

 

 陽介である。続けて千枝、雪子、完二、直斗がやって来た。そして最後にりせだ。血に染まる悠の姿を認めるや、皆が目を瞠る。

 

「鳴上君!」

 

「足立! てめえ!」

 

 最初に陽介が飛びかかった。短剣を手に跳躍し、一瞬にして間合いに入る。相棒と共に数多のシャドウを切り裂いてきた、必殺の一撃が足立の喉に食い込む。

 

「うわああ! 人殺しいいぃ!」

 

 首を斬られた足立は悲鳴を上げて、姿が掻き消えた。まるで滅んだシャドウが霧に溶けるように、跡形もなくなった。まさか今のは足立のシャドウだったのか。それとも初めから人間ではなく、死んでも死体を残さない存在だったのか──

 

「……何てね? 良かったねえ?」

 

 そんなはずはない。人間の足立は冷蔵ケースの傍に姿を現した。もちろん首はついている。血は一滴も流れていない。顔に切り傷の跡はあるが、そこにも血はない。

 

「この、ざっけんな!」

 

 最も近くにいた千枝が横蹴りを放つ。しかし足刀がみぞおちにめり込んだ瞬間、足立の姿はまたしても掻き消えた。

 

「どこ狙ってんの? 僕はここだよ?」

 

 今度は店の奥、人が泳げそうな巨大な桶の脇で腕組みをして立っていた。まるで瞬間移動したように、広い店内を影も残さず跳躍する。

 

「天城先輩! 急いで手当を!」

 

 足立が前線要員たちを翻弄する一方で、床に倒れた悠の下に直斗が駆け寄り、雪子を呼んだ。リーダーが倒れ、クマがいない今の特捜隊では、負傷者の手当てができるのは雪子だけだ。真犯人を目の前に置いた状態だが、リーダーを放っておくことはもちろんできない。

 

「鳴上君……酷い! しっかりして!」

 

 雪子と直斗は二人がかりで悠を起こし、アマテラスを召喚して治癒の光を零した。悠は細いながらも息はしている。死んではいない。ペルソナの回復魔法は死人には何の薬にもならないが、生きた人間には絶大な効果がある。

 

「んの野郎! ロクテンマオウ!」

 

 完二が渾身の気合を込めてペルソナを召喚し、桶の脇に立つ足立に向けて電撃を落とした。しかしやはり当たっていない。いつの間にか足立はレジカウンターの奥にいる。だが足立が走ったり跳んだりする姿は、誰の目にも映っていない。文字通り、気付いたらそこにいる。

 

「こいつ……どうなってんの!? 全然当たんないじゃん!」

 

 攻撃が全く当たらない。特捜隊は以前にこういう敵と戦ったことがある。

 

「これは……違う! そいつ、見た目通りの場所にいないわ!」

 

 気付いたのはりせだ。眼鏡を通しても見えない真実というものはあるが、情報系ペルソナの目には見えるものもある。

 

「カンゼオン!」

 

 先月極まった絆によって、新しくなった名前を呼んだ。パラボラアンテナめいた顔のペルソナはヘッドマウントディスプレイを使用者にかける。それを通して見ると、足立が何をしているのか分かった。突然消えたり現れたりするのは、そう見えるだけだ。本人は普通に歩いて、普通に移動している。霧を使った目くらましである。

 

「本体はあっちよ!」

 

「よし! スサノオ!」

 

 りせが指差した方角に向けて、陽介がペルソナを召喚した。一見すると何もない、道路に面した壁へと竜巻を起こす。しかし──

 

「外れ」

 

 ペルソナの風の魔法は手応えなく、壁を揺らすだけに留まった。暴風に煽られた憎き犯人が、思わず姿を見せるような展開にはならない。陽介が攻撃した時には、もう足立はそこにいないのだ。

 

「今度はあっち! ガラス扉の前! あっ、また!」

 

 りせには本物の足立の居場所が分かる。しかし声を出して皆に伝えた時には、足立はまた移動してしまう。りせに自ら攻撃する能力があれば、また別だろう。しかしない以上は無理なのだ。正しい認識を得られても、実際の行動に反映させられなければ意味はない。つまり結局のところ、特捜隊は足立を捕まえられない。

 

 尚紀がいれば、せめてクマがいれば何とかなるかもしれない。しかしないものねだりをしても仕方がないのが、現実と言うものだ。

 

「ははは……君たち、ダメダメだね?」

 

 やがて裏返したビールケースに腰かけた足立が現れた。いくらやってもどうしようもない。何度も繰り返して、諦念が頭をもたげた頃合を見計らうようにして。

 

「もうやめなよ。君らが諦めれば、僕も何もしないからさ……。怪我しないうちに帰んなさい」

 

 そして本当に諦めるよう促す。

 

「特別捜査隊……つったっけ? そういうのもみんなやめちゃえばいいよ。別に僕が捕まんなくたって、君らに損ないでしょ?」

 

 今ここで真犯人を捕まえることだけでなく、全てを諦めろと足立は言う。そして諦めたところで、それで何かを失うわけでもないのだから、やめてしまえばいいのだと。執着すること自体が無意味なのだと、年長者は少年少女を唆す。

 

 ため息まで添えて、しみじみと。

 

「霧はもう晴れないみたいだけど、別に世の中全部終わるとか、そんなんじゃないから……多分ね」

 

 もうすぐ世界が滅びる──

 

 陽介たちが駆けつけてくる前、足立は悠にはそう言った。だが本気で言ったわけではない。仮に本当に世界が終わるのだとしても、どうでもいいと思っているのだが。その上で、真の意味で破滅が招来されるとは思っていない。

 

「シャドウは出るかもしんないけど? それだって町を離れちゃえば関係ないよ。ほら、彼って来年帰るんでしょ? 君らも彼を追っかけて、都会でもどこでも引っ越しちゃえばいいじゃん」

 

 足立は銃を持っていない左手で悠を指差した。異邦人の少年は、床にしゃがみこんだ雪子の膝に頭を乗せている。撃たれて気を失って、今もそのままだ。仲間たちがどれだけ翻弄されても、起き上がって共に戦いはしない。崖から落ちたまま戻ってこない。

 

「大好きなリーダーさんとまた一緒に遊んでられるんだよ? その方がずっといいじゃん。だからもう、僕のことなんか忘れちゃいなって。君らを落としたのは生田目で、あいつはもう捕まったよ。事件なんか君らには関係ないでしょ……」

 

 特捜隊は事件に無関係──

 

 これは本音である。足立の考えでは、殺人事件の関係者は自分以外には一人しかいない。広く考えても二人。最大限に広くて四人。そして特捜隊の中に関係者は一人もいない。よって特捜隊は足立に復讐する『権利』はないのだ。

 

「ふざけないで! 鳴上君を撃ったくせに! 関係ないわけない!」

 

 雪子が叫ぶが、足立は目を見開いた顔を見せた。心外だと言わんばかりである。

 

「やっだなあ……分かってんでしょ? 彼、死んでないよ?」

 

 悠は撃たれた。だが急所は外れている。偶然そうなったのではなく、足立は狙ってやったのだ。本気で殺すつもりなら、額か心臓を撃ち抜いた。ただ軽く脅して適度に痛めつけて、帰らせるつもりだったのだ。霧に誘導灯を設置したのも、道に迷わないようにとの気遣いだ。

 

「早く帰って、病院に連れてってあげなよ。んで、もう二度と来るんじゃないよ」

 

 笑顔がそこにあった。手に拳銃を持っていなければ、本当に怪我人を案じているのではと思ってしまいかねない。凶悪な人殺しにはとても見えない、優しげな微笑みだ。だがもちろん、リーダーを傷つけられた特捜隊はそんな受け取り方はしない。

 

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ! さっきから何だ! 帰れ帰れって!」

 

 少年少女たちを代表して、陽介が声を張り上げた。お前たちは無関係だと飽くまで言い張る足立に業を煮やした。元からある真犯人への復讐心に、部外者扱いが油を注いでいる。

 

 客観的に見れば陽介の怒りは正当である。特捜隊をテレビに落としたのは生田目だが、発端は足立である。誘拐事件と殺人事件は不可分だ。よって特捜隊も事件の関係者である。しかもたった今、大切な仲間が撃たれたのだ。これで黙って帰れるわけがないし、事件を忘れることなどできない。もちろん真犯人を見逃すこともできない。

 

「お前はそうやって、自分の罪から目を背けてるんだ!」

 

 だがこの言葉は正しくない。確かに足立は二人の人間を殺した。立派な犯罪者である。しかし悲しいかな、陽介は完全に正しくはないのだ。人に無謬はあり得ない。

 

「お前は小西先輩を殺したんだ……忘れたのかよ!」

 

 その『誤認』が足立の表情を変えさせた。潮が引くように、月が雲に隠れるように、殺人犯から笑顔が消えた。

 

「君たち、僕の何を知ってるの?」

 

 元より足立は表情を操ることを得意としているが、本気だった笑みを消した。代わって現れたのは、探るように目を細めた不審さを隠そうともしない顔だ。取調室に放り込んだ容疑者を問い詰める刑事の目だ。

 

「おっかしいなあ……僕が目を背けてるなんて、何で分かるの? 僕、君らとは別に仲良くしてないし? マヨナカテレビに映ったこともないんだけど」

 

 冷酷な刑事はビールケースから立ち上がり、ゆらりと足を進めた。殺人犯でありながら、非難する相手を逆に追及する。

 

「逆ナンとか性別を超える愛とか……人体改造手術なんてのもあったっけ? そういう痛いセリフ、僕は言った覚えないよ?」

 

 そして特捜隊以外は知らないはずのキーワードを口にした。

 

「てめっ……!」

 

 少年少女たちの顔色が変わった。怒りの色の上に大きな驚愕と、いくばくかの羞恥が上乗せされる。それとは対照的に、足立は刑事の顔を引っ込めてまた笑った。

 

「ははは……君たちさ、マヨナカテレビって録画できないかって思ったことない? 特にアレ! 女子高生のストリップとか! 録画したいって思ったでしょ? ねえ?」

 

 笑顔と言っても爽やかなものではない。優しげでもない。眉を開いて目尻を下げた嫌らしい悪人面だ。これを初めて見せたのは山野で、次は早紀だった。

 

「喜びなよ、録画できるんだぜ」

 

 足立は右足の爪先を持ち上げた。踵は床についたままで、おもむろに爪先を下ろす。足首の動きだけで床を叩いた。スタジオに出口が常設されていなかった頃、クマはよくこういう仕草をしていた。

 

「んな!?」

 

 そしてクマがした時と同じものが現れた。デジタル放送どころかカラー放送さえなかった時代の、古式ゆかしいテレビが三つ積み上げられた状態で、老舗酒屋の床から『生えて』きた。ただしこれは現世への出口ではない。

 

「よっと」

 

 足立は右手を振り上げ、拳銃のグリップでテレビの角を叩いた。古い型のテレビは壊れたと思っても叩けば直るという、よくある都市伝説に倣うように。そしてマヨナカテレビの都市伝説は真実であるように、足立の打撃に応じて画面に映像が映し出された。

 

『大好きな先輩が死んだって言う、らしい口実もあるしさあ!』

 

『どうしようもない、あたし……でもあたしは、あの雪子に頼られてるの』

 

『老舗の伝統? 町の誇り? んなもん、クソ食らえだわ!』

 

 三つの画面に一つずつ、異なる映像が映し出された。機械の見た目とは不釣り合いな、鮮明なハイビジョン映像だ。内容は特撮ヒーロー番組である。シーンはいずれも金の瞳の少年少女が生き生きと喋るところだ。

 

「もういっちょ!」

 

 足立は再び角を叩いた。するとチャンネルを切り替えたように映像が変わった。

 

『あ・や・し・い、熱帯天国からお送りしていまぁす』

 

『ホントの私……よ~く見て! マルキュン!』

 

『そもそも男じゃないのに、強い大人の男になんてなれる訳ないだろ』

 

 チャンネルを切り替えた先も同じ番組だった。4月から10月まで八十稲羽で放映されていた、マヨナカテレビの録画放送である。特捜隊の戦いが映し出されていたそれを、足立は『再生』してみせたのだ。

 

 しかし全編の一挙再放送はさすがにしない。足立が再び爪先で床を叩くと、ビデオ付きテレビは沈み込んだ。人や物が出たり消えたりするマジックショーさながらに、いわゆる黒歴史を流す超常の機械は手品のようになくなった。

 

「お見苦しいものをお見せしました……ってとこかな?」

 

 後に残ったのはテレビ局のスタッフ、もとい番組視聴者の足立だけだ。一体何が起きたのか、何を見せられたのか。六人の出演者たちがそれらを理解したのは、手品が完了して数秒過ぎてからだった。

 

「お前、あれをずっと……!?」

 

「マヨナカテレビって予告やライブだけじゃないんだよ。実は録画も流してるのさ。やっぱり君たちには見えてなかったんだね。ま、君らから聞いた話にはなかったし? 生田目はライブも見えてなかったみたいだから、そうなんだろうと思ったけど」

 

「!……」

 

 特捜隊は凍り付いた。

 

「君らは僕を知らない……でも僕は君らを知ってるんだよ」

 

 足立は特捜隊を知っている。マヨナカテレビで見たからだ。そして視聴者として外から見ていた分、現場の狂騒の中にいた出演者本人よりも、彼らの心理や番組そのものについて理解できることがある。

 

「例えば、君らは何でそんなに彼が好きなのか……とかね」

 

 拳銃を無造作に揺らして、未だ倒れている悠を指し示した。

 

 この世には知る必要のない真実もある。例えば現実の霧にシャドウが現れた原因は、有里とアイギスにあるなどの真実だ。そうした世間はおろかペルソナ使いからも隠された真実は存在する。足立はそのいくつかを知ったのだ。

 

「それはね……君たちは選ばれたからなんだよ。彼にね」

 

 足立は霧に誘導灯を設置したり、自分の幻を見せたりする術を身に付けた。それはこの世界に住まう誰かさんに選ばれたからと言える。だが足立から見れば、特捜隊の方こそ『選ばれた』のである。

 

「ま、正確に言うと……選ばれたってのはちょっと違うんだけどね? 君たちは彼とたまたま知り合って、たまたまメディアで取り上げられて、彼に助けられたの……。ぶっちゃけると、ただの偶然?」

 

 当初の足立は、ここまで『ぶっちゃける』つもりはなかった。だが言い出した以上は止まらない。やったことはなかったことにならない。流れた血は腹に戻らないし、撃ち放たれた弾丸は銃に戻らない。始まってしまった暴露話は、核心に触れるまで止まらない。

 

「君たちのペルソナはね、彼に貰ったものなんだよ。彼を信じることと引き換えにね」

 

 特捜隊のペルソナは元は本人から出たシャドウである。シャドウは悠に叩きのめされた。口もきけなくなるまでめった打ちにされ、ペルソナに『させられた』のだ。言うなれば、テレビに放り込まれるのは『入信』であり、シャドウが倒されてペルソナになるのは『通過儀礼』である。

 

 コミュニティは『信仰』であり、それに伴うペルソナの強化は『恩寵』。そしてコミュニティが極まると同時に起きる、ペルソナの進化は『印可』──

 

「つまりね? 君らは騙されてるんだよ……」

 

 足立は核心に触れた。他のコミュニティの担い手たちとは異なる不心得者として。もしくは主と同格であるが故に、そもそも信者ではない者として。それは即ち、足立はいかなる不条理にも妨げられない自由な認識を持ち得るということだ。

 

「ざ……ざっけんな!」

 

 凍り付いていた特捜隊は、ここでようやく動いた。恥ずかしい映像を見せられて体は完全に、思考はほとんど停止していた。だが自分たちは騙されていた、即ち悠は自分たちを騙していた。そうまで言われては、さすがに体が反応した。

 

 最初に動いたのは陽介だ。最も『信仰』が深い相棒は、両手の短剣で仇の喉を掻き切らんと再び飛びかかった。

 

「はん……!」

 

 ──

 

 瞬間、ガラスが割れた。

 

「うあっ……!」

 

 次の瞬間、赤い電撃が疾走した。跳躍していた陽介は床に落ちて、そのまま動かなくなった。

 

「ガキは引っ込んでろっつってんだよ! 何も分かってねえくせに、しゃしゃり出てくんな!」

 

 足立の右手には実銃が握られたままで、左手には何も持っていない。召喚器で自分の頭を撃ってはいないし、もちろんカードを握り潰す動作もしていない。瞬き一つで足立の頭上にペルソナが現れていた。赤と黒の魔人、マガツイザナギである。特捜隊のペルソナと違って、悠に与えられたものではない。それでいながらどういうわけか『恩寵』だけは受けている、卑怯なくらいに強大なペルソナだ。

 

「野郎!」

 

 完二がパイプ椅子を振りかざした。しかし敵に叩きつける前に足立が動いた。左手で完二の顔面を掴む。刑事の手は細いが、実戦と絆で培った力は強い。

 

「寝てろ」

 

「あがっ……」

 

 足立は左手を押すと同時に相手の足を払い、そのまま後頭部を床に叩きつけた。普段は警察など恐れない腕自慢の少年は、あっという間に気を失わされた。

 

「このっ!」

 

 千枝が踏み出そうとした。だが一歩目が床を揺らす前に、唐突に止まった。

 

「動くと首が飛ぶぞ」

 

「う……」

 

 いつの間にか喉元に矛が付きつけられていた。先ほど特捜隊を翻弄した、霧の応用による目くらましではない。人を殺せる本物の力である。千枝は足を浮かせた体勢のまま硬直した。

 

「ち、千枝! やめて!」

 

「鳴上先輩! 起きてください!」

 

 雪子はまだ悠を膝の上に乗せている。最も頼りになるリーダーは依然として目を覚まさない。直斗が呼びかけても、ぴくりとも動かない。

 

「駄目……とても敵わない! 逃げて!」

 

 りせの悲鳴が全てを物語っている。彼我の戦力差は歴然である。リーダーは初めから気を失ったままで、サブリーダーも一撃でやられた。完二も倒れ、千枝もひと睨みだ。雪子も動けない。万策尽きた。もはやどう工夫しても勝ち目がないことは、情報系ペルソナ使いならずとも明白だ。下手をすれば全員殺される。この状況を切り抜ける方法は一つしかない。

 

「やむを得ません……!」

 

 ただ一人動ける直斗が、床に膝をついて悠の懐に手を伸ばした。上着の内ポケットを探り、便利アイテムを取り出す。カエルの置物だ。

 

「撤退します!」

 

 謎の道具を掲げると、七人の少年少女は光に包まれた。倒れた者たちも含めた全員が、影も残さずその場から立ち去った。

 

「ったく……しょうがない奴らだ」

 

 ようやく一人になった足立は、血に塗れたペルソナを消した。そして右手を持ち上げ、銃口を寝癖のある頭に突っ込んだ。がりがりと音を立てて億劫そうに擦る。だが突然思い付いたことがあって、手を止めた。

 

「……」

 

 足立は考えた。自分の罪の現場に身を置いて、実銃を自分の頭に当てているこの状況に思うところがあった。人差し指は引き金にかかっている。ここで指の運動をすれば、何もかもが終わる。そうするべきかと、一瞬考えたが──

 

(いや……)

 

 数秒で考え直して、銃を頭から離した。自分で自分に決着をつけるのも悪くないが、それはいつでもできる。せっかく事件と『無関係』な者たちを追い払ったのだ。関係者が来るまで待つことにした。

 

(一服でもするか)

 

 ありふれた凶器を懐に戻して、代わりに煙草を取り出した。火を点けて煙を吸い込むと、ふと赤いものが目に入った。

 

「……」

 

 床に血だまりができていた。悠の血だ。人を撃ったのは生田目に続いて二度目である。最初の時は胃に凝るものがあったが、今はない。そして──

 

「マガツイザナギ」

 

 一声呼ぶと、ペルソナが再び顕現した。もちろん召喚器は手にしていない。元よりシャドウワーカーはテレビの中なら召喚器が必要なくなる。堂島を始め皆がそうだった。だが稲羽支部で最強の足立は、テレビの中でも超常の兵器が必要だった。そうしなければ吐き気に襲われていたから。しかしそれももう過去の話だ。

 

「開眼した……ってとこかな?」

 

 血の海を見ても何とも思わない。人を撃っても吐き気を催さない。つまり覚悟は完了した。足立は遂に自分のペルソナを、完全に操ることができるようになったのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。