『神霆戦機 カミナギル』美人フェミさんが 巨大ロボで大暴れするそうです   作:cyanP

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第43話 レッツ・コンバイン!

 初老の青少年センター職員、堀部則夫が目尻に深いシワを寄せ、眩しそうに見上げる先にあるのは空中にほぼ静止している巨大ロボット。

 

 正確には上半身の内側に空洞を抱えた人型の何か。

 

 それが青空に忽然と浮かんでいるさまは。

 シュルレアリスムの巨匠『ルネ・マグリット,(1898年-1967年)』が好んで用いた技法 『デペイズマン / Dépaysement』(あるモノが思いがけない場所にある違和感)で描いた作品の数々。フランスパンや、ワイングラスが青空を背景にぽっかり浮かんでいる日常の中の非日常を描いた絵画、まさしくそんなシュールな光景を思わせた。

 

 その絵画じみた風景に灰色のノイズが飛び込んでくる。小型飛行機だ。

 矢のような勢いで北東方向から現れた。

 

 空中に浮かぶ宇宙人ロボットに一切躊躇せず接近してくる。

 まさか! ぶつかるぞ!

 

「あっ、あぶない! それに近づいては危険だ!」

 そう叫んだのも束の間、小型飛行機は機体を起こす動作とともに、機首や翼を折りたたんだのか、楕円柱型の塊へと変形してしまった。

 

 その楕円柱状になった灰色の機体を上下から挟み込むように。いや、ワニが食いつくと形容した方が近いのか。そういう手順でガチャンガチャンと、とにかくやたらと正確かつ滞りも無く、スムーズに合体して中身の入った人型となった。

 

 これが本来の姿なのだろう。

 あのガランドウの体は、この飛行機が来るのを待っていたのだ。

 

 電車の連結作業さながらの音がしたが、あのようなノロノロとした慎重な動きではなく、分解を逆回しで見ているかのごとく、あっという間の早業で合体手順が終了した。

 それは、明らかにロケット噴射などで制御されるような動きではなく、もっとそう、まるでUFOがクニャクニャと自由自在に動くテクノロジー、あれほど極端ではないにしろ、それに近いものが見て取れる動きだった。

 

 ロボットは一瞬、合体した体を馴染ませるのか、強張った体の緊張をほぐすようにググーッと胸を張り、背筋を伸ばす姿勢を見せたが、すぐさま着地体勢へと移行する。

 ゴーーーッという逆噴射の青い炎がロボットの足、胸、背中のあたりで輝いていた。

 

 そしてそのままスルスルと高度を落とし、『風と星の広場』北東側、アカハラダカ観測基地がある所の前、クルマ100台分の何も駐車していない駐車場へと着地した。巨大な鉄の塊が墜落してくるイメージから、ドカーンと着地衝撃が来ると思って身構えていたが、それはなかった。

 

 なにか見えないクッションにでも沈み込むかの強力な制動が空中で働きみるみるスピードを落としてゆく。

 オリンピック床運動選手のダーンとした着地なんかよりも、ずっと自然な動作でふわりと足を地に着き、大砲が発射の反動を中退機で吸収する具合に、スッとかがんで勢いを止めてみせた。

 

 パチパチパチ……。

 気がつくと拍手をしていた。

 そのぐらい見事な動作で見ごたえのある着地だった。

 

 ロボットというより、宇宙人、宇宙から来た巨人。

 堀部にはそう見えていた。

 そう見えるほど生物的であり、知性を感じる優雅な着地であった。

 

 再びスッと立ち上がるとロボットは拍手が聞こえたのか、こちらにアタマを向けて堀部を視認、アクチュエーターの動作音と共に体を捻って足を動かし近づいて来る。

 半回転する形となった軸足の裏では薄いアスファルトがドロみたいにほじくられて耕された。どれぐらいの重量なんだろう?

 

 ズシン、ズシン、と道路と広場を隔てている柵をまたいでやってくる。

 小さな柵だが、それでも器用に跨ぐものだなぁ──。

 ……と変な所に感心してしまい逃げるのを忘れた。

 

 すると突然、予想外の音声が響き、あたりの空気を震わせた。

 

「「おじさんどうだった?」」

 

 堀部は耳を疑った、巨大ロボットがいきなり語りかけてきたのだ。

 スピーカー越しの若干反響を帯びたその声は、ロボットに似つかわしくない若い女の声。どこか馴れ馴れしいというか、軽薄なノリの女の声だ。

 

「「おじさん、どうだった? って聞いてんの!」」

 ロボットの女は語気を強めて再度問うてきた。

 

「え? えええぇええぇぇ~……???」

 状況が飲み込めずに堀部が返答に窮していると

 ロボットは外人がやるような肩をすくめるジェスチャーをしながら。

 

「「今、合体するとこ見てたでしょ? どうだった? カッコ良かったでしょ?

 映え,(ばえ)するよね? これは流石にダサいロボットでも映えするよね? ね?」」

 

 マイクの向こうで「「ウフフ」」と嬉しそうに笑いをこぼしている息遣いが聞こえた。

 と同時に<ワタシはダサくありません。>という謎の声もかすかに聞こえた。

 

「「──ちゃんとスマホで撮ってくれた?」」

 

 と、こちらの反応を待たずに再び問うてきた。

 なにが〝ちゃんと〟か分からんが

 すごく、ものすごく自己中心的な圧を感じる問いかけなのはよくわかった。

 

「え……いや……」

 堀部はやっとのことで撮影を否定した。

 

「「ええええええええ~~~、撮ってないの!? マジで!? ウソでしょ!? なんで!? なんで撮ってないの!? 」」

 

 いやそんなこと聞かれても……。とは言えない空気だったので黙ってた。

 

「「なに? え? なに? もう一回やれってこと!? 嫌なんですけど。めっちゃ嫌なんですけど? わたし忙しいんですけどぉ?」」

 

 知らんがなそんなこと……。と思ったが、とりあえず様子見で黙っていた。

 

 っていうか、女が喋るのに合わせてロボットがいろいろジェスチャーをするのだが、その度にその足元がズシンズシンと動いて地面が耕されるのが恐ろしくて気が気でなかった。

 

 今にも踏み潰されそうだ。

 

 

 

 

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