無感情無表情と思われてるけど気づいてない実験台少女の日記   作:ルヴレ

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勘違いが両方向から進んでます。


三ページ目。

 

 一年目 1月6日

 

 やほー。51ちゃん──改めフリッカちゃんよ! 

 ロリコンおねーさんに、屋敷に連れ戻されちゃった。てへ。

 それにしても、いやー。よかった。

 フリッカちゃん、絶対弁償させられると思ってたよ。だって窓派手に割ったし? それなのに怒らないなんて、やっぱりおねーさんはロリコンなのかー。

 それにしても、メルティセンパイ神っす! フリッカちゃんが怖がってるのに気づいてくれるなんて! 

 それにしてもおかしいなー。フリッカちゃん、怖いとかたくさん主張してるはずなんだけど。

 

 あ。(察し)

 分かったわ。あのおねーさん、耳が遠いのか。(確信)

 なんかメルティセンパイが話しかけてても、ガン無視のときがあるしね。うんうん。

 

 で、本題だぜ。

 

 おねーさんがおかしくなったんですが?? 

 なんか、今日一日中フリッカちゃんとすごろくとトランプしてくれてるんですけど? 

 why? 

 え? おねーさん、社会人っすよね? 仕事は? 仕事ないの? 

 あ、休みか! なるほどねー。息抜きも必要だよねん! フリッカちゃんだって、楽しいし。それに、なんといったって、フリッカちゃんの美少女フェイスを見てたら、元気も出るしね! ドヤァ

 

 

 一年目 1月7日

 

 昨日と同じくおねーさんが遊んでくれた。

 今日も休みなの? 

 

 

 一年目 1月8日

 

 昨日と同じくおねーさんが遊んでくれた。

 え? まじ? 休み多くにゃい? 

 

 

 一年目 1月9日

 

 昨日と同じくおねーさんが遊んでくれた。

 あ、長期休みなんだね。きっと。うん。

 

 

 一年目 1月10日

 

 昨日と同じくおねーさんが遊んでくれた。

 

 ──って、休み長すぎない!? てか、何で毎日フリッカちゃんとすごろくとトランプ5時間くらいやってるわけ? おねーさん、すごろくとトランプのガチ勢なの? 

 毎日トランプとすごろくを、大人が全力で5時間やってるのは正気の沙汰じゃないよ!? 

 

 しかも、メルティセンパイが大量の書類を持って、おねーさんのとこに来てるし。おねーさんは突っぱねるし。絶対仕事あるよね? 

 ニー……サボりっすか? 

 

 ……フリッカちゃんだって、いいたくにゃいよ? 引き取ってくれた(誘拐の可能性もあるけど?)恩もあるし? でもさ、ちょっとサボりすぎだと思うんだ。

 実験台歴15年の実質15年ニートな12歳のフリッカちゃんもびっくり! え? 矛盾してる? いや、お客さん、これで合ってますよ。

 

 あ、明日は仕事行くらしいわ。日記書いてたら聞こえてきたぜ。

 

 ……でも、一人はちょっと寂しいな。

 

 

 一年目 1月11日

 

 フリッカちゃん、無事おねーさんの研究所に入社。

 

 なんで? 急すぎるよ! 拒否してもなんか無理矢理連れてかれたし。

 未成年が働くのは犯罪っすよ! 

 まぁ、働くといっても、下働き? みたいなやつらしい。お茶いれて渡したりとか、掃除するとか。

 

 フリッカちゃん使用人なの? 

 

 でも、同い年の男の子が一人、何年か前からここで使用人として雇われてるらしい。

 つまり、フリッカちゃんは、過酷な仕事の代わりに同期を手に入れた! 

 やったね! 友達が増えそうだよ! 実験台の111番くん以来の友達だね! 

 って、最初はポジティブだったのよ。(絶望)

 

 あの男の子、口悪すぎワロタ。

 はー。これだからクソガキは。フリッカちゃんみたいに、寛容で慈悲深い心を持てばいいのに! しかも、この前の人殺しとか意味わかんないことばっか言うし。

 フリッカちゃんは人殺しじゃなくて天使だよ! 

 

 僕と同じ、とか、可哀想な人形だね、とかも言ってきたけど、フリッカちゃんのことなんだと思ってるの? 

 

 はぁ……。

 フリッカちゃん、化け物でも人形でもクソガキでもにゃいよ! フリッカちゃん=天使! (大切なことなので、二回言うぜ)

 お仕事なんてしたくないよー。サボるおねーさんの気持ちも分かるぜよ。

 それにしても、同期君、もっと優しくしてくれー! 

 

 

 

「セレスト様。お仕事をサボられるのはどうかと」

 

 私はフリッカと遊び終わり、紅茶を飲んで呑気に休んでいるセレスト様に声を掛けた。

 セレスト様は、何を言ってるのだか、と言わんばかりに笑った。

 

「私はサボっているのではなく、フェデリカのデータを取っているのだよ、メルティ」

「フリッカを道具のように扱うのはやめたはずでは?」

 

 私がそう聞いたら、セレスト様は紅茶の入ったカップを置いてから、こくりと厳かに頷いた。

 ──セレスト様の考えは、読めそうで読めない。

 彼女は頭がいい。私も研究者の中でも秀才と言われたものだが、彼女は私の比ではない。

 セレスト・フォーゲットは、まごうことなき、天才。誰もがそう評すだろう。

 

「彼女を道具として扱うのはやめたさ。ただ、フェデリカに楽しいと言う感情を覚えさせたいのだよ。

 楽しいという感情は、全ての感情の根元にあるものだと、私は考えている。彼女に楽しいことを覚えさせるのは、私の計画の中では絶対なのだよ。

 しかし──」

 

 セレスト様は、憂鬱そうにため息をついた。

 セレスト様がこんなふうに落ち込むなんて、初めて見たものだから、私は驚いて何度も瞬きを繰り返した。

 

「こうまで無表情で無感情だと、流石の私も傷つくよ」

 

 フリッカは、セレスト様と毎日トランプやすごろくをしている。

 セレスト様は、一般的に面白いとされるような反応をしたり、それはもう、楽しませようと頑張っているのだが、フリッカはピクリとも表情を変えない。

 ただ、淡々としているだけ。あんな風に遊んでいて、楽しいのだろうか。

 ──いや、そもそも楽しいという感情すらないのだ。楽しくないのは当たり前だろう。

 

 正直に言えば、私は少しフリッカが怖い。

 

 あれは、まず人間なのだろうか。人の形をしたロボットや人形の類ではないか。そう思ってしまう。

 怖いという感情があることはわかる。けれど、それすらもうっすらとしたもので、無いに等しい。

 

「私は、方法を変えようと思う。

 そもそも、私も感情が薄いのだから、私がフェデリカを変えるのは難しい。

 だから、明日から彼女を同い年の子供と過ごさせようと思う」

「同い年の子供? 誰のことでしょう」

 

 セレスト様は、私以外とは基本的に話さない。いや……嫌われているので、話しかけられないし、話そうとしても逃げられる。

 セレスト様の知り合い──それも、子供? 思いつかず、私は頭を捻った。

 

「そんなの、クリスに決まってるだろう」

「クレスですよ。セレスト様」

 

 セレスト様は、人の名前と顔を覚えるのが絶望的に苦手だ。本人曰く、興味がないから、らしい。

 クレスは、物凄く口の悪い少年だ。引き取り人の都合により、学校には通わず、研究所で下働きをしている。

 

「確かに、彼はフリッカと一度会っていましたからね」

「会っていた……? 私がいない間にか?」

 

 セレスト様は、どうしても思い出せないようだ。

 ……クレスの顔すら覚えてないらしい。

 

「フリッカが家出した時に、男の子がフリッカの近くにいましたよね? その子が、クレスですって。

 昨日聞いてみれば、彼もフリッカと同じタイミングで家出をしたらしいので」

「そ、そうか。そんな気もする……」

 

 そう返すセレスト様に、私は冷たい目線を送ってやった。

 

「で、どうやって彼と交流を図らせるのですか?」

「決まってるだろう? ──彼と一緒に、働いてもらうのだよ」

 

 

 

「ということで、だ。そういう訳だから、フェデリカ。君、研究所で働かないかね? 勿論、君にはあまり仕事をさせないようにするから」

「はい。(おねーさんが鬼畜なのは)了解しました」

 

 迷わず、了解の返事を送ってくるフリッカに、戦慄する。この子は感情以前にまともな価値観や常識を学んだ方がいい気がする。

 ……そうじゃ無いと、クレスにいいように使われそうだ。

 

「うん、いい返事だね、フェデリカ。クリス……じゃなくて、クレン……じゃなくて、えーっと…………

 あ、そうだ。クレス君。同期の彼とは仲良くしてあげるんだよ?」

「はい。御命令通りに動きます。(あ、もし仲良くできなくても責めないでネ! フリッカちゃん泣いちゃうぜ!)」

 

 人形のように言ったフリッカは、敬礼をした。

 普通の女の子が敬礼をしたら、警察の真似事のようで可愛らしいが、フリッカがすると、軍隊のようで、何だか違和感がない。

 

「それじゃあ、クレス君に挨拶してね。そろそろクレス君がここに来る筈だから。私は仕事があるから、失礼するよ」

 

 セレスト様は、足早に研究室へ戻っていった。研究所は、屋敷内にある。クレス君も、仕事のために既に屋敷内にいるだろう。

 きっと、もうすぐで来るはずだ。

 私はセレスト様についていくふりをして、そっと物陰に隠れてフリッカを見守ることにした。

 セレスト様は、人の感情を知らなすぎる。クレスはどう考えても、フリッカに変なことを教える。間違いなく、だ。

 何かあったら、私が止めなくては。

 セレスト様がいなくなったのと入れ違いに、私がいるのと逆方向のドアから、クレスが入ってきた。

 入って早々、クレスは大きな目を更に大きくさせた。

 

「……君は、この前の人殺しじゃないか。また会うとは思わなかったよ」

「(え? 会ったことなくにゃい? ま、とりあえず返事しとこう。うんうん)はい」

 

 フリッカが無表情で返事をすると、クレスはあからさまに嫌そうな顔をした。

 あのクソガキ……ではなく、クレスがあんな顔をするのは初めて見るかもしれない。

 

「返事しかしないなんて、君は人形か何かかい?」

「人形になるよう、命令を受けていますので。(ま、そんな演技したことにゃいけど)人形と思っていただければ結構です」

 

 クレスは物凄い形相で、フリッカを睨みつけた。

 フリッカは怯むことなく、死んだ魚のような瞳で見つめ返した。

 

「早く向こうに行くといい。昔の僕を見ているようで、いらいらする。この害虫め」

「私は、あなたと仲良くするように御命令を受けています。(フリッカちゃんぼっちだし、友達いないから仲良くなりたいのと)任務を遂行するためにも、出ていくことはできません」

 

 驚くほど、無機質な返しだ。

 更に顔を歪めるクレスが面白い。──しかし、そろそろ実験に戻らなくては。私はセレスト様と違って、サボりはしない主義である。

 

「それにしても」

 

 私は少し廊下を歩いてから、足を止めた。

 

「昔のセレスト様とフリッカは、よく似ていますね」




クレス視点は次に投稿します。勿論、彼の中でも勘違いが起こってます。
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