無感情無表情と思われてるけど気づいてない実験台少女の日記   作:ルヴレ

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四ページ目。

 

 一年目 2月5日

 

 やほー。みんな、久しぶりだネ! 超絶美少女実験台使用人のフリッカちゃんだぜ! 

 はい。

 あれからだいたい一ヶ月経ったぞー! 

 

 お休みの日はおねーさんと遊びつつ、口悪い同期君と頑張ってパーフェクトコミュニケーションを取ったり……しょーじき変わり映えしなすぎて、日記書いてなかったぜ! 許してちょ。

 

 ま、今回はけっこーやばたにえんな事があったから、書いちゃうぜ! 

 な、なんと、フリッカちゃん、初めて外に出ました! 

 どんどんぱふぱふー。

 

 え? 普通だって? いやいや、フリッカちゃんにとっては全然普通じゃにゃいから! 

 で、なんかおねーさんが綺麗なお花畑とか、おいしいご飯が食べれるカフェとかに連れてってくれたよー! 

 流石、ロリコンおねーさん。可愛い女の子には甘いね! 

 

 で、ここからが重要なんすよ! キリッ

 おねーさんがなんか難しそうな話してたんだけど…………。

 フリッカちゃん、何言ってんのかよくわかんなかったぜ! 

 いや、うん。なんか大切な話してるのはわかったよ? 

 きみに頼むのは申し訳ない、とか研究所の黒いラベルの薬品を盗んで欲しい、とか私の目的は今度話す、とか……。

 

 どゆこと? フリッカちゃん馬鹿(ガチ)だからわかんにゃい。薬品盗むって、何盗めばいいの? 黒いラベル? ラベルって何? おいしいの? 

 

 ま、同期君にラベルって何って聞いてみよーっと。

 なんで盗む頼みを引き受けるかって? 

 

 ……フリッカちゃんにも、分かんないよ。

 

 

 一年目 2月6日

 

 ラベルは瓶に貼ってある、紙のことらしい。

 ほへー。同期君賢いなー。

 

 今日は、フリッカちゃん、早速仕事をしているふりをして、瓶を盗んできたぜ! 

 フリッカちゃんは優秀だから、もちろん瓶は合ってたぜ! 

 ……偶然合ってたとか、そういうわけじゃにゃいよ。

 

 おねーさんがなんかすっごい喜んでたよー。急にフリッカちゃんを抱きしめてきたし? やっぱりロリコンか。(確信)

 けどさ、おねーさんテンション上がるとマジ早口だから、何言ってんのかわかんにゃかった。

 メルティ先輩も困ってたし! 

 

 うーん……でも、なんでだろ? なんか、心臓がぽかぽかほかほかあったかいんだよねー。ポケットにカイロ入れてたっけ? 

 あ、あったわ。確かおねーさんが寒いからってくれたんだった! 

 あったかいんじゃー。

 

 

 

 僕は、フリッカ・フォーゲットという女が出会ったときから嫌いである。

 

 最初に出会ったとき、あいつは人攫いに連れていかれてるのに気づかずに、呑気に寝てた。

 僕はただのバカなガキだと思って、あいつを起こした。

 

「随分とまぁ、呑気だね。今は人攫いに連れていかれてるっていうのに」

「(な、なんですとー!? これはやばたにえんだぜ!)起こしてくださり、感謝します。

 ────(ぴえー。怖いよー。正当防衛しちゃうかー)恐怖を生成するものは、排除しなくては」

 

 フリッカは、無表情で人攫いに殴りかかった。

 僕はびっくりして、固まったまま、フリッカの様子を見ていた。

 

「何すんだよ! このガキが!」

「あなたは敵──。恐怖を生成する者。

 速やかな排除を」

 

 フリッカは、人攫いを蹴り飛ばした。人攫いが大きく吹っ飛び、壁にぶちあたって酷い音を立てた。

 そしてフリッカは────無表情のまま、人攫いの心臓を拳で貫いた。フリッカは人攫いの心臓を、軽い動作で道端に捨てた。

 

「な……!」

 

 正気の沙汰ではない。どうしてそんな事ができる。

 僕は、自分の目を疑った。コイツはきっと、とんでもない殺人鬼なんだ。

 そう思った僕は、警察を探すために辺りを見回した。そして、遠くにいる知り合い──セレストを見つけた。

 こちらに向かってきている。もしかしたら、今ならこの殺人鬼を捕まえる事ができるかもしれない。そう思った僕は、フリッカの足を掴んで、必死に抑えた。

 

 しかし、セレストは、あいつを捕まえることはしなかった。

 

「どうして、逃げたのか、教えてほしい。私に不足があったのかね? 

 私はきみを手に入れるためなら、何だってしよう。勿論、私の位も、財産も、全てきみにあげる。ただ、きみは実験に協力してくれたらいい。大丈夫。最初にも言ったが私はきみを傷つけたりしないさ」

 

 セレスト・フォーゲットは、人殺しを見ても、何も言わなかったのである。

 

 

 なぜか、みんな人殺しを見てもなんとも言わない。

 僕はそれに違和感を感じていた。そして、みんなもそんな僕に違和感を感じているらしい。

 僕が、おかしいのだろうか。

 

 そう思い悩んでいた矢先に、新しく増えた新人がフリッカだったとき、僕は絶望した。

 人殺しだと、出会い頭に罵倒しても、フリッカは

 

「はい」

 

 とだけを無感情に呟く。

 まるで昔の僕みたいで、見てられなかった。

 

 もしかして、あいつもクローンなのか? あいつの態度を見て、そう思う。

 

 僕は、とある人物のクローンである。

 かつて、僕も無表情で無感情だった。やはり、フリッカは同じクローンなのかもしれない。

 

 そう思った僕は、フリッカに部屋を離れるように言った。人形のようなクローン人間と仕事だなんて、嫌に決まっている。

 しかし、フリッカは部屋を離れてくれなかった。

 

 次の日も、その次の日も、フリッカは僕のそばを離れなかった。

 3日目になったら僕はもう諦めて、いつのまにかあいつを受け入れていた。

 

 そして一ヶ月経ったある日、フリッカは妙なことを僕に聞いてきた。

 

「ラベルとは何か、知っていますか? (食べ物だよね?)」

「は? 急に何言ってるんだい? 変なものでも食べたの?」

 

 しかし、フリッカは真面目な顔で、(いつも真面目な顔だが)もう一回聞いてきた。

 

「(おねーさんからの)任務遂行のために必要なことです。教えてください。(やっぱりラベルっておいしい食べ物のことだよね?)」

「はぁ……。ラベルって言うのは、瓶とかに貼ってあるシールのことだよ。そんなことも知らないの? 馬鹿なのか?」

 

 フリッカは納得したように頷いた。

 まさか、本当にラベルすら知らなかったのか。

 クローンは最初から知能は高いはずだけど。

 クローン元が馬鹿だったのだろうか? 

 

「感謝します。──(ラベルが食べ物だと思って)個人的な理由で、関係ない話をしてしまいました。(めんどくさいけど)仕事に戻りましょう」

「あ、ああ。そうだね」

 

 個人的な理由? フリッカがこんなふうに、自分の意思で聞いてきたのは、初めてだ。

 もしかして、感情が出てきたのかもしれない。

 

 僕はそんな淡い期待をしてしまった。

 




セレストさん、可哀想なことに、めちゃくちゃ大事な話をしてるのに、全然聞き取られてないです。
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