無感情無表情と思われてるけど気づいてない実験台少女の日記 作:ルヴレ
一年目 2月5日
やほー。みんな、久しぶりだネ! 超絶美少女実験台使用人のフリッカちゃんだぜ!
はい。
あれからだいたい一ヶ月経ったぞー!
お休みの日はおねーさんと遊びつつ、口悪い同期君と頑張ってパーフェクトコミュニケーションを取ったり……しょーじき変わり映えしなすぎて、日記書いてなかったぜ! 許してちょ。
ま、今回はけっこーやばたにえんな事があったから、書いちゃうぜ!
な、なんと、フリッカちゃん、初めて外に出ました!
どんどんぱふぱふー。
え? 普通だって? いやいや、フリッカちゃんにとっては全然普通じゃにゃいから!
で、なんかおねーさんが綺麗なお花畑とか、おいしいご飯が食べれるカフェとかに連れてってくれたよー!
流石、ロリコンおねーさん。可愛い女の子には甘いね!
で、ここからが重要なんすよ! キリッ
おねーさんがなんか難しそうな話してたんだけど…………。
フリッカちゃん、何言ってんのかよくわかんなかったぜ!
いや、うん。なんか大切な話してるのはわかったよ?
きみに頼むのは申し訳ない、とか研究所の黒いラベルの薬品を盗んで欲しい、とか私の目的は今度話す、とか……。
どゆこと? フリッカちゃん馬鹿(ガチ)だからわかんにゃい。薬品盗むって、何盗めばいいの? 黒いラベル? ラベルって何? おいしいの?
ま、同期君にラベルって何って聞いてみよーっと。
なんで盗む頼みを引き受けるかって?
……フリッカちゃんにも、分かんないよ。
一年目 2月6日
ラベルは瓶に貼ってある、紙のことらしい。
ほへー。同期君賢いなー。
今日は、フリッカちゃん、早速仕事をしているふりをして、瓶を盗んできたぜ!
フリッカちゃんは優秀だから、もちろん瓶は合ってたぜ!
……偶然合ってたとか、そういうわけじゃにゃいよ。
おねーさんがなんかすっごい喜んでたよー。急にフリッカちゃんを抱きしめてきたし? やっぱりロリコンか。(確信)
けどさ、おねーさんテンション上がるとマジ早口だから、何言ってんのかわかんにゃかった。
メルティ先輩も困ってたし!
うーん……でも、なんでだろ? なんか、心臓がぽかぽかほかほかあったかいんだよねー。ポケットにカイロ入れてたっけ?
あ、あったわ。確かおねーさんが寒いからってくれたんだった!
あったかいんじゃー。
僕は、フリッカ・フォーゲットという女が出会ったときから嫌いである。
最初に出会ったとき、あいつは人攫いに連れていかれてるのに気づかずに、呑気に寝てた。
僕はただのバカなガキだと思って、あいつを起こした。
「随分とまぁ、呑気だね。今は人攫いに連れていかれてるっていうのに」
「(な、なんですとー!? これはやばたにえんだぜ!)起こしてくださり、感謝します。
────(ぴえー。怖いよー。正当防衛しちゃうかー)恐怖を生成するものは、排除しなくては」
フリッカは、無表情で人攫いに殴りかかった。
僕はびっくりして、固まったまま、フリッカの様子を見ていた。
「何すんだよ! このガキが!」
「あなたは敵──。恐怖を生成する者。
速やかな排除を」
フリッカは、人攫いを蹴り飛ばした。人攫いが大きく吹っ飛び、壁にぶちあたって酷い音を立てた。
そしてフリッカは────無表情のまま、人攫いの心臓を拳で貫いた。フリッカは人攫いの心臓を、軽い動作で道端に捨てた。
「な……!」
正気の沙汰ではない。どうしてそんな事ができる。
僕は、自分の目を疑った。コイツはきっと、とんでもない殺人鬼なんだ。
そう思った僕は、警察を探すために辺りを見回した。そして、遠くにいる知り合い──セレストを見つけた。
こちらに向かってきている。もしかしたら、今ならこの殺人鬼を捕まえる事ができるかもしれない。そう思った僕は、フリッカの足を掴んで、必死に抑えた。
しかし、セレストは、あいつを捕まえることはしなかった。
「どうして、逃げたのか、教えてほしい。私に不足があったのかね?
私はきみを手に入れるためなら、何だってしよう。勿論、私の位も、財産も、全てきみにあげる。ただ、きみは実験に協力してくれたらいい。大丈夫。最初にも言ったが私はきみを傷つけたりしないさ」
セレスト・フォーゲットは、人殺しを見ても、何も言わなかったのである。
なぜか、みんな人殺しを見てもなんとも言わない。
僕はそれに違和感を感じていた。そして、みんなもそんな僕に違和感を感じているらしい。
僕が、おかしいのだろうか。
そう思い悩んでいた矢先に、新しく増えた新人がフリッカだったとき、僕は絶望した。
人殺しだと、出会い頭に罵倒しても、フリッカは
「はい」
とだけを無感情に呟く。
まるで昔の僕みたいで、見てられなかった。
もしかして、あいつもクローンなのか? あいつの態度を見て、そう思う。
僕は、とある人物のクローンである。
かつて、僕も無表情で無感情だった。やはり、フリッカは同じクローンなのかもしれない。
そう思った僕は、フリッカに部屋を離れるように言った。人形のようなクローン人間と仕事だなんて、嫌に決まっている。
しかし、フリッカは部屋を離れてくれなかった。
次の日も、その次の日も、フリッカは僕のそばを離れなかった。
3日目になったら僕はもう諦めて、いつのまにかあいつを受け入れていた。
そして一ヶ月経ったある日、フリッカは妙なことを僕に聞いてきた。
「ラベルとは何か、知っていますか? (食べ物だよね?)」
「は? 急に何言ってるんだい? 変なものでも食べたの?」
しかし、フリッカは真面目な顔で、(いつも真面目な顔だが)もう一回聞いてきた。
「(おねーさんからの)任務遂行のために必要なことです。教えてください。(やっぱりラベルっておいしい食べ物のことだよね?)」
「はぁ……。ラベルって言うのは、瓶とかに貼ってあるシールのことだよ。そんなことも知らないの? 馬鹿なのか?」
フリッカは納得したように頷いた。
まさか、本当にラベルすら知らなかったのか。
クローンは最初から知能は高いはずだけど。
クローン元が馬鹿だったのだろうか?
「感謝します。──(ラベルが食べ物だと思って)個人的な理由で、関係ない話をしてしまいました。(めんどくさいけど)仕事に戻りましょう」
「あ、ああ。そうだね」
個人的な理由? フリッカがこんなふうに、自分の意思で聞いてきたのは、初めてだ。
もしかして、感情が出てきたのかもしれない。
僕はそんな淡い期待をしてしまった。
セレストさん、可哀想なことに、めちゃくちゃ大事な話をしてるのに、全然聞き取られてないです。