無感情無表情と思われてるけど気づいてない実験台少女の日記   作:ルヴレ

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魔法少女⭐︎フリッカちゃんです。
今回は珍しく物語パートから入ります。日記要素はあんまりないです。


六ページ目。

 

「あらあら……。天才研究者のセレスト様は、思ったよりもか弱いのねぇ」

「研究に強さは必要ないだろう? ──さて、クリスト君。きみは何が目的なのかね?」

 

 セレストは、閉じ込められているにも関わらず、余裕そうに笑って、クリストに尋ねた。

 その様子が、クリストは気に食わなかった。

 

「あなたの持つ秘密を教えて欲しいのですわぁ。あなたの持つ情報は、もしかしたら売れるかもしれませんもの。勿論高く、ね?」

「ふむ、なるほど。しかし、それは私にとってのメリットがない。もう少し有意義な話をしたまえ」

「……状況をわかっていますの? あなたは今、私に閉じ込められているのです。同等の立場ではありませんのよ? ……もしかしたら、私があなたを殺してしまうかもしれませんわぁ」

「私は私がどうなろうと構わないさ。ただ、私の研究が成功して成果を残せればいい。私が死んでも、後継人によって私の実験は続くのだよ。ふふ。せめてもの願いなら、私の死が研究に生かされることだろうね。そうならなかったとしても、いずれ私の実験は成功する。必ずだ。

 だから、私は死を拒まないとも」

 

 セレストは、怯むどころか、クリストに堂々とした態度で微笑んだ。その微笑みが、身の毛をよ立たせるような、恐ろしい笑みに見えて、クリストはため息をつきながら顔を背けた。

 この、マッドでサイコパスな女は、生理的に無理である。

 

 

 

 

 一年目 2月11日

 

 おねーさん誘拐事件発生。

 

 あ、ちょっと待ってやめて帰らないでー! 

 また誘拐? って思うかもしれないけど、今回はフリッカちゃん悪く……ちょっとしか悪くないから! 

 

 朝になったらおねーさんが誘拐されてて、置き手紙が置いてあったんだぜ! もちろん、フリッカちゃんは字が読めないので読んでないけど、メルティ先輩曰く、明日の朝にフリッカちゃんを差し出すか、おねーさんの秘密を話さないと、おねーさんの命はないって内容らしい。

 

 ……にゃははー。フリッカちゃん、人気者で困っちゃう。それに、昨日の話、誘拐犯さんに絶対聞かれてたよね? 

 おねーさんって意外にドジっ子さん? 大切な話してたのに警備甘くにゃい? それが普通なの? 

 

 ま、まぁともかく、フリッカちゃんたちは明日、フリッカちゃんを渡すふりをして、誘拐犯さんと戦って、おねーさんを取り戻しにいくぜ! 

 

 ……え? 脳筋? 別にいいのよ、そんなこと! 

 メルティ先輩も戦えるみたいだし! 誘拐犯さんも弱いっしょ! (適当)

 え? フリッカちゃんたちの仲間? メルティ先輩以外にいないけど何か? おねーさんぼっちらしいし。可哀想だねー。あ、フリッカちゃんもか。ワハハ。

 ま、フリッカちゃん最強だから! 余裕っしょ! 余裕余裕! 

 

 

 

 一年目 2月12日

 

 なんか今日は力を使ったから日記を書く気力がないな。

 はぁ……。なんか魔法で武器を出すと、妙に力が入らないんだが、何故だろう。気になるけど、私が頑張らずともいつか分かる話だろうね。私が手を出す必要はないか。

 

 

 一年目 2月13日

 

 やばたにえん。

 昨日の日記、書いた覚え無いんだけど! いつ書いたの!? 

 二重人格ってやつだよね! フリッカちゃん知ってるぜ! 

 んー、セレストの秘密を聞いたとこまでは覚えてるんだけど……いや、その前もちょっとあやふやかも。その後からバタンキューだったぜ! 

 そういえば、魔法って何!? あの大昔に滅びた、ドラゴンとか、そんなのが居た時代にいた人のことでしょ? 確か、魔法使いってやつ! 

 手から炎を出すとか、氷を出すとか、そんな人…………。

 あ。(察し)

 

 フリッカちゃん、魔法使いの生き残りってやつなの? 

 一回やってみたかったんだよねー! エターナルフォースブリザード! あれ? 叫んだのに手から氷出ないな。111番君がそうやったら魔法が使えるって言ってたのに。

 

 あ、昨日何があったかって? んー。でも誘拐犯ことクリストさんみたいに、隠れて読む人が居ないとは断言できないし。

 情報を守るために、フリッカちゃん書きません! ドヤァ

 フリッカちゃん、賢いね。うんうん。

 

 あ、でもこれだけはメモしとかないと! 

 ・クリストさん=同期君。

 ・同期君はクリストさんが嫌い。

 ・クリストさんはセレストが嫌い。

 

 これで、よし! 

 

 

 

 クリストは、待ち合わせ場所の小さな丘にあるベンチに座る。

 そして辺りを見回すのと同時に考えた。

 あの研究補佐と無表情な、クレスの同期は来るのだろうか。研究補佐は意味もわからないほどにセレストを気に入っている。絶対にここに来るだろう。

 そして、無表情な方……確か、フェデリカ、だったか。あの子のことは、たいして気に入っていないようだが、セレストがフェデリカを気に入っている。

 フェデリカを差し出すことはないだろう。

 

「あら……。物騒なものをお持ちですわねぇ。私、怖くて震えてしまいますわぁ」

「やはり、セレスト様を渡すつもりはないのですね、クリスト。セレスト様を殺すこともできないくせに、強がった招待状を出したものです」

 

 いつのまにか、研究補佐……メルティは、クリストの首筋に銃を突きつけていた。クリストは、余裕そうに笑った。

 メルティはそれが不気味だったのか、眉を顰めた。

 

「ふふふ……。隙あり、ですわぁ」

 

 クリストは、メルティの手首を目に見えないほどの速い速度で捻って銃を落とさせた。そして、ドレスの中のガーターにつけていたナイフを、次はメルティへ突きつける。

 

「死にたいなら、殺してあげますわぁ」

「フリッカ」

 

 メルティがポツリと呟いた。背後から物凄い殺気。クリストは咄嗟にメルティから離れた。

 

「すみません。(殺すのはぶっそーだし、わざと)外しました」

「問題ありません。次で仕留めましょう」

 

 フェデリカが潜んでいたらしい。大きな斧を軽々と担いでいる。あれがフェデリカの武器なのだろうか。

 この世界では、生まれた時から一人一つ、武器をランダムにもらえる。

 クリストの場合は、銀のナイフ。メルティはおそらくあの銃で、フェデリカは斧だろう。

 

「任務に従い、排除します」

 

 フェデリカは、斧を大きく振りかぶった。クリストは、同時に地面を蹴る。フェデリカは、クリストの姿が見えないことに気づいた。

 ばん。弾けるような音。メルティの銃声で、ようやくクリストの場所が大まかにわかる。フェデリカは、銃声の方へ向かって斧を投擲した。

 

「この犬畜生。少し眠ってくださいな。邪魔ですものぉ」

 

 太陽に照らされて光る、銀の短剣。亜麻色のふんわりとした髪が、視界いっぱいに広がる。

 ちくりとした痛みを、首筋に感じた。

 メルティは、首筋に刺さっていた針を引き抜き、すぐに捨てた。

 フェデリカの投げた斧がクリストに向かって落ちてきたが、クリストは難なくひらりとそれを避けた。

 

「最悪……です。弱いわけではないと思っていたのですが」

「弱かったですわぁ。後は、害虫一匹ですわねぇ」

 

 メルティに投げられた針には、睡眠薬が塗ってあったらしい。たちまちのうちに、眠気で立ち上がれなくなった。

 

「あら……。雨かしら」

 

 雨粒が空から落ちてきて、クリストの頰を濡らした。

 フェデリカにも落ちてきたらしい。手のひらについた水滴を払っている。

 フェデリカは、真っ直ぐにこちらをみてきた。

 無表情、無感情。その言葉が何よりも似合う表情。それが、雨が降った途端、様子が変わった。

 恐ろしいほどの、殺気を感じる目に変わっている。

 クリストは、嫌な予感がして、距離を取った。

 

「命令こそ、私の存在意義。

 よって、殺害命令の出たあなたは、排除するべき敵」

 

 フェデリカは、心臓に手を当てた。

 その刹那──フェデリカが物凄い熱気を発し始めた。

 

「ちっ……。肌が焼ける」

 

 クリストの肌が焼けそうなほどに痛む。ただでさえ取っていた距離を、さらに増やした。

 フェデリカの心臓の辺りから何かが出てくる。それは青い炎が周りについている、蝋燭で出来た剣だった。

 

「命令に従い、あなたを殺します」

「なんなんだよ、コイツ……! 聞いてないぞ、クソッ!」

 

 すっかり被っていた猫をとっぱらったクリストは、悪態をつきながらこっちに向かってくるフェデリカから、必死に逃げた。

 周りの障害物を利用して、高くジャンプする。

 フェデリカは、蝋燭で出来た剣を軽く振った。

 途端に発生する、炎の衝撃波。クリストは、かろうじて身を捻ってそれを避けた。

 

「俺は金と情報が欲しいだけってのに……」

 

 悪態をついても、フェデリカは止まらない。このままでは、死ぬのは避けられない。クリストは冷や汗を流しながら、バックステップで距離を取る。

 フェデリカは、物凄い勢いでクリストに迫ってきた。

 冗談じゃない、殺される。

 クリストは、これから食らう痛みを考えて、思わず顔が引き攣るのを感じた。

 

「……あう」

 

 フェデリカが、突然間抜けな声を出した。クリストは、驚いて固まった。

 

「パワー切れ……です」

 

 フェデリカの持っていた剣が、一瞬にして消えた。フェデリカは力無く地面に倒れた。

 クリストは安心感と複雑な気持ちを持ちながら、フェデリカの頭を雑にくしゃくしゃと撫でた。

 

「この野郎。俺、死ぬところだったぞ。……はぁ」

 

 クリストは、乱れた長い髪を整えた。そして、フェデリカに手を差し伸べる。フェデリカは、無表情でその手を取った。

 

「このまま殺されても困る。セレストのとこに案内してやるよ」

「はい。(あれ? なんかさっきと違わない? 上品なお姉様キャラは一体どこへ? 何が違うんだろ? あ、そっか!)話し方が違います。なぜですか?」

「あら。こっちの方が良かったかしらぁ?」

 

 クリストはくすくすと笑いながら、そう言う。フェデリカは、悩んだ後、頷いた。クリストは、面食らって、は? と思わず声を出した。

 

「(その喋り方、キャラ強くて面白いし、フリッカちゃん好きだぜ! でも、さっきのは怖いね! 正当防衛しちゃうよ! だから)そちらのほうが、殺意を刺激されません」

「怖いことを言いますわぁ。あ、そろそろ着きますわよ?」

 

 クリストは、自分の家の地下室に、フェデリカを通した。その中には小さな牢屋があった。セレストは隠し持っていたのか、渡した覚えのない本を読んで暇そうに過ごしていた。

 

「おや、フェデリカ。来てくれたのかね? しかし、雨に濡れたらダメだと言っただろう。

 人殺しの罪悪感がなくなってしまう」

「は? お前、急に何を言っていますの?」

 

 クリストは、眉を顰める。セレストは、恍惚とした笑みを浮かべた。その表情があまりにも気持ちが悪いので、クリストはさらに顔を顰めた。

 

「きみは、人殺しの罪悪感があって困っているだろう? どうしてみんな、人殺しをご飯を食べることのような自然さで行っているのか、分からない。そう思っていることは知っているさ。

 きみのクローン体君は、わかりやすくて助かるね」

「何故それを知っているのかしらぁ?」

 

 セレストは、気味悪く小さく笑った。

 

「きみのクローン体の……クレス? 君がそのような仕草を見せたからね。たくさん……色々と問い詰めたのさ。

 きみは、そのことに劣等感を抱いているようじゃないか。

 さて、ここで一つ取引をしたいのだが、いいかね」

 

 牢屋の中にいるのに、偉そうな態度だ。しかし、言っていることは全て的を得ている。クリストは、特別に話を聞いてやることにした。

 

「話は聞きましょうかねぇ? はぁ……。なんでこんな薄暗い地下でこんなことをしているのかしら」

「ふふ……そうかい。すまないね。さぁ、ここから先は、フェデリカもよく聞くといい。

 私の言っていた、研究の目標を話そう」

 

 セレストは、人差し指を立てた。

 そして、慎重な声色で話す。

 

「そもそも、人を殺してお金を得ることのできるルールは、上空に住んでいる人たちの仕組んだことだ。

 私たち、平民を一刻も早く殺して、人口を減らして環境の汚染を治したいらしい。

 上に住んでいると言うのは、物理的なものでね、空中都市を築いて住んでいるらしい。ここまでは、きみも知っていることだろう? クリスト」

「……そうですが」

「……。(え? 空中都市? すごーい。あれだよ! 111番から聞いた……そう! ラピュータだ! 天空の城ラピュータ!)」

 

 あまりにも知りすぎて、もはや怖い。しかし、フェデリカはなんとも思わないのか、無表情だ。

 

「そして私の研究の末、上の人たちは、雨に人殺しの罪悪感を無くす薬を入れていることが分かった。

 私はそれを阻止して、平和な世界を作りたいのだよ。

 そのために、罪悪感を戻す薬が必要になる。しかし、その薬は作り方がよく分かっていない…………。

 そこで、そこでなのだよ! クリスト君!」

 

 がん、と牢屋の鉄格子を力強く握るセレストは、狂人にしか見えない。目はすっかり血走っているし、表情は気持ち悪いくらいに恍惚としている。

 

「きみの血液には罪悪感を無くす薬への免疫作用があるのだよ! だから、私はきみの血液が欲しい! きみの血液さえあれば、薬を作れる! 

 悪い話ではないはずだよ、クリスト君。きみが手伝ってくれれば、きみは英雄になれる! もちろん私から報奨金も出そう! 出せる限りだ! 

 協力してくれるかね? …………きみが断ったら、フェデリカが殺してしまうかもしれないよ? 少なくとも、私が警察に連絡したら、きみは捕まるだろう。

 私はこれでも天才研究者らしいのでね」

「……セレスト・フォーゲット。お前……わざと捕まりましたわねぇ? 私を断れなくさせるために」

 

 昨日の朝、どうしてこんなに簡単に捕まえられたのか不思議に思っていた。単純に、セレストが弱くて間抜けだと……そう思っていた。

 しかし、結局、セレストは昨日のクリストの盗聴に気づいていて、わざと捕まったのだ。

 この取引のために。

 

「仕方ない。取引しよう。それしか選択肢はないみたいだし。──そういえば、どうしてフェデリカのいるところで取引なんてやったのかしらぁ? 情報は隠しておくべきではなくて?」

「実は、私が空中都市に出向くために、きみの感情が鍵になるのだよ。きみの感情を年に一度開催される、研究発表でレポートにして提出して、賞を取る気でいるんだ。賞を取ったら、上に訪れる権利をもらえるからね。

 薬ができても、空中都市に行けなかったら意味がないだろう?」

「そうなのですか。(あんまよくわかんないけど、薬を作って世界を救うってことでしょ? え、もしかしてフリッカちゃん、勇者ってやつ? 

 やばたにえん。ちやほやされるときに天使スマイルを浮かべる準備しとかないと)」

 

 フェデリカは、笑おうとしたのか、頰に手を当てて、無理矢理口角を上げた。

 クリストはその顔が面白くて、つい吹き出した。思ったより、フェデリカは人間らしいところもあるらしい。……さっきは完全に殺戮マシンだったが。

 

「そういえば、クレスはあなたのクローンなのですよね? どうして男なのですか? (口の悪さ以外似てるとこ無くにゃい? 美少女だしー、上品だしー、頭もいいし!)」

 

 フェデリカは、ふりふりとしたドレスを着た、クリストに尋ねる。クレス要素は口の悪さしか見当たらない。

 クリストは、パチパチと瞬きをしてから、くすくすと笑い出した。

 

「ぷっ……。なんだ、そんなこと? 

 

 俺は男だよ、フェデリカ嬢」

 

 フェデリカは、驚いてぽかんと口を開けたのだった。




この作品のテーマは、滅びかけのファンタジー世界です。だから、ほとんどファンタジー要素はないです。
次からはシリアスじゃないです。
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