無感情無表情と思われてるけど気づいてない実験台少女の日記   作:ルヴレ

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日常回です


七ページ目。

 

 一年目 5月6日

 

 明日はみんなでお出かけ! ひゃっほーい! やったぜ! 

 おでかけって言っても、そんなに大したものじゃない、とかセレストは言ってたけど、そんなの関係ないよねー! 

 

 何するんだろ? 

 フリッカちゃん、遊園地とか行ってみたい。あと、公園? とか、も行きたいし、美味しいあまーいデザートを食べて、みんなで分け合ってみたい! 

 きみが教えてくれたこと、試してみたいなぁ! 

 それじゃ、おやすみー! 

 

 

 一年目 5月7日

 

 ふ、震えが止まらない。唇が、おかしい。手も震えちゃう。あぁ、寒い。なんでだろ。

 

 アイスって冷たすぎでしょ! あ、シリアスシーンだと思った? そんなことはないです。

 最初は甘くておいしいとか、そんな気持ちで食べてたのよ。でも、食べ終わったら時間差でプルプルしてきちゃって。フリッカちゃんはおばあちゃんか何かかにゃ? 

 

 うーん、それにしても今回は、声を大きくすることを心がけて、自分の気持ちをありのままに伝えたぜ! 

 今日、クリストとメルティ先輩がアイスのゴミとかを片付けてる間に、いわゆるナンパってやつが起きたんだぜ! あ、フリッカちゃんじゃなくてセレストにね? フリッカちゃんにだったらロリコンだし! 捕まるし! 

 セレストは見た目はそこそこ可愛いし? フリッカちゃんほどじゃないけど! ま、誘われる理由もわかるんだよ? 

 セレストが必死にことわってるけど、相手はなかなか引かないわけで。ちょっと何回も言われたら、フリッカちゃんも流石に頭に来たわけですよ。ぷんぷん。

 怒ったら、みんななんか困惑してたけど。

 え? そんなに今まで声ちっさかったの? 

 そう思ってたんだけど、無理することはない、だとか私たちは味方だ、だとか、きみが怒ってくれて嬉しい、とか意味わかんにゃいことばっかり言われたんだけど? 

 

 はぁー。フリッカちゃんは天使だけど、怒るときは怒るんだからね! むすー。

 

 

 

「メルティ。女の子が喜ぶところって、どこだと思うかね? できるだけお金がかからないようなところがいいんだけど……」

 

 真面目な顔をして、セレスト様は尋ねた。私は紅茶を淹れながら、ため息をつく。

 セレスト様が珍しく真面目な表情をしたと思った矢先にこれである。

 この前行ったらしいカフェも、私が提案したものである。それまでセレスト様は、博物館に行くつもりだったらしい。

 

「暑いですし、アイスでも食べるのはどうでしょう。クレス君も誘ってみては?」

「うんうん! それはいい考えだね! やっぱりメルティは頼りになる!」

「そ、そうですか」

 

 なんだか気恥ずかしくなってしまって、下を向いた。そんな私に気づかず、セレスト様は、物凄い勢いで立ち上がると、フリッカの部屋へ全力で走って向かっていった。

 ……空気の読めない人である。

 

 

 

「私、暑いところは嫌いなのですが」

 

 私はアイスを食べながら、半目でクリストを睨みつける。

 

「俺だって行きたくないし、巻き添えにしただけだ。これで平等だろ」

 

 クリストは不味そうに、顰めっ面をしながらアイスを食べている。見た目によらず、甘いものは嫌いらしい。

 

 セレスト様は、クレス君を誘った後、無理矢理クリストも連れて行ったのだ。理由は人数が多い方がいいとか、そんなの。

 確か、人数が多いと安くなるキャンペーンがあったので、それのせいだろう。

 

「ねぇ、チョコレート味……食べたい。頂戴」

「は? なんで僕がお前如きに分けないといけないわけ? ……バニラ味をくれるなら、あげなくもないけどね」

 

 しかし、クレス君とフリッカは仲良くなったらしい。

 アイスを分け合っている。クレス君はいくら仲良くなっても素直じゃないし、割とチョロい性格のようだ。本人はフリッカと仲の良いことを認めないだろう。さすが、クリストのクローンである。

 私もそんなことが出来る友達がいれば良かったものの……お生憎、私の友達は空気の読めないマイペースのセレスト様である。

 

「アイスとは実に面白いものだね。この不思議な食感は粒径によるものだろう。コロイドが上手くゲル化をしてこのような物体に……」

「……アイスを食べるときくらいは普通に食べたらどうでしょう」

 

 セレスト様と、楽しく食事をすることはほとんど不可能である。アイスを科学的に分析するのは本当にやめてほしい。周りからも、おかしな目で見られている。

 

 私は無心でフリッカたちの様子を見ながらアイスを食べた。アイスは嫌いではない。しかし、この暑い中外に出るほどのものではない。

 

「チョコレート……。(な、何これぇ! 111番君が言っていたスターマックスの飲み物より、多分)甘い。美味しい。初めて、食べた」

「は? 初めて? こんなに長い間過ごしておいて? やっぱりあの変人は育て方まで変なんだね?」

「セレストは……(やっぱり)変な人なの?」

「そうに決まって……」

 

 何処からか会話を聞きつけたセレスト様は、クレス君の口を塞いだ。

 

「変な人ではないよ。私は一般的だ。そうだろう? 

 メルティ、クリスト」

 

 何故か私たちに振ってきた。クリストは油断していたのか、むせている。しかし、何十年とセレスト様に付き合ってきた私は、難なく答えた。

 

「セレスト様が思うなら、そうなのでは?」

「わ、私も賛成ですわぁ」

 

 クリストは、ラッキーだとばかりに私の意見に乗ってきた。セレスト様は、首を傾げながら頷いた。

 口を塞がれているクレスが、今にもセレスト様を殺しそうな目で見ている。フリッカは困っているのか、視線を右往左往させている。

 ……フリッカも、随分と表情がついてきた気がする。

 

「そうか、そうか、良かった」

「はい。私、スプーンを片付けてきます。食べ終わった人は渡してください」

 

 スプーンをみんなから回収する。こう言うときのセレスト様からは、素早く離れるのが大切である。クリストもそれが分かったのか、私もやりますわぁ、と言いながらスプーンを回収し始めた。

 

 私たちは、スプーンを回収すると、素早くその場から離れた。

 そして、スプーンを片付けても戻りたくないので、涼しい店内で涼んでいた。遠くからセレスト様の様子を見ていると、一人の男性がセレスト様に近づいてきている。あれ、ナンパでは? 私はクリストと顔を見合わせた。

 

「なぁ、お姉さん、暇?」

「え?」

 

 セレスト様は、驚いているのか、悩んだ後に答えた。

 

「お生憎、暇ではないんだ。すまないね」

「嘘つかなくてもいいって。これから俺と一緒にあそこのカフェでも行かない?」

「悪いが、それはできない」

 

 セレスト様は、見た目だけ可愛い。黒い艶のある長い髪、大きな青い目、高い鼻、形の良い唇……。完璧とも言える顔立ちだ。ナンパされるのも、仕方がないかもしれない。

 

「いいじゃん、行こうよ」

「行けない。すまないな」

 

 しかし、いくら断っても、ナンパ男はしつこい。手伝ってやるかと思い、私がセレスト様の方へ歩き出したそのときだった。

 

「離れろっ! うるさいっ! 嫌がってるのが分からないのですかっ!?」

 

 思わず、私は足を止めた。叫んでいたのは、フリッカだったからだ。

 フリッカが、怒っている。その現実が信じられず、何度も何度も見直した。

 

「な、なんだよ。子供連れかよ」

 

 男はフリッカを見ると、一目散に去って行った。私は、フリッカに駆け寄った。

 セレスト様は、よほど嬉しかったのか、フリッカを抱きしめていた。

 

「フェデリカ、怒ってくれて、ありがとう。助かったよ」

「いえ。そんなこ……と……」

 

 フリッカは、急に震え始めた。

 ガタガタと、小さく震える。それが、どんどんと大きくなっていって、大きな痙攣になっていった。

 

「フリッカ? どうしたのですか?」

「…………(寒いぜ! アイスの冷えが今頃きたみたい。ぎゃー。お腹が冷えすぎて痛いよー)」

 

 聞いてもフリッカは答えない。いや……答えられない、が正解か。

 

「セレスト様。これは一体……?」

「おそらく、フェデリカは感情を急に表に出したから、痙攣を起こしているんだ。……無理をさせてしまったね」

 

 セレスト様は、フリッカの背中をさすった。後ろで見ているクレス君も心配そうにフリッカを見ている。

 

「……。(あ、お腹痛いのに気づいてくれたのかにゃ? 寒い寒い。毛布に包まりたいぜー!)」

「……ごめんね。でも私は、きみが怒ってくれたことが、何よりも嬉しいんだよ。

 私たちは、味方だ。きみは無理することないんだよ」

 

 フリッカは、何も返すことなく、ガタガタと震えていた。

 

 




アイスって食べてちょっとしてから震えてくるときもあるよね
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