小説 仮面ライダールパン   作:竜・M・美日

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 過去は越えられる。


第14幕 再戦/恨みと愛情

  同日 夜 団藤邸 正門前

 

 日が完全に暮れ、静まりかえった団藤邸の正門に金色(こんじき)の車が迫る。

 そこに正門を守るように数体の眼魔ファントムが(もや)のように現れ立ち塞がる──時速二百キロは出ているゴルドルパンを止められるわけもなく、衝突の衝撃で呆気なく無に帰した。

 そのままの勢いで()びた正門を派手な音を立てて弾き飛ばす。

 

「やっぱりこうなると思ったわ!」

 

 ドアハンドルを必死に摑んだアリスが叫ぶように声を上げる。

 

「だよな! こういう時は小細工なしの正面突破だ!」

 

 運転席に座る快人が嬉しそうに言う。

 

「どうする気⁉」

「アリスは二人を探してくれ!」

「じゃあジャックはどうするのよ!」

「アイツは俺が倒す! 仮面ライダー相手じゃ、 流石にアリスも()が悪いだろ!」

 

 一瞬、アリスが複雑そうな表情をする──頷いた。

 

「……分かったわ。今度こそしくじらないでよ!」

「そっちもな! イライザ、二人の居場所は分かるか!」

 

 その言葉に(こた)えるようにイライザが画面に姿を見せる。

 

「妹様が持っておられたルパンブレスの電波から、邸宅の中央周辺におられると想定されます」

「なら、あの地下室だろうな。人を閉じ込めるにはあそこしかないだろ。アリス、俺は白虎荘で降りるから、後は頼むぞ!」

Oui(了解)!」

 

 そんな掛け合いをしている内に団藤邸が見えてきた。

 そこでおそらく防衛のための眼魔ファントムが大量に現われる。

 

「おいでなすったぜ!」

 

 快人はハンドルを切り、ブレーキを踏みこむ。

 眼魔ファントムを十数体ほど()ねながら、白虎荘の玄関前に強引に停車する。

 ガルウィングを開けると、迫り来る眼魔ファントムをルパンガンナーで撃ち抜く。

 

「行け!」

 

 アリスに運転が変わったゴルドルパンは青龍荘に向かって走り去る。

 快人はそれを見送ることなく、すぐに玄関階段を駆け上がりつつ、近寄ってくるガンナーから光弾を放つ。

 ある程度眼魔ファントムの数を減らしたところで玄関ドアを開くと、そこにはあの執事がいた。血色がよく、見るまでもなく元気そうだ。

 

「東条様、ご無事でしたか」

「……なんとかね。霞ねぇさんは?」

「当主ならば、食堂でお待ちです」

「あぁ、サンキュー」

 

 礼を言った快人──躊躇(ためら)わず執事の額を撃ち抜く。眼魔ファントムになり煙に消える。

 

(やっぱり、そういうことか……)

 

 急いで伝えられた食堂へと向かう。

 

 快人が白虎荘に潜入する頃、アリスを乗せたゴルドルパンはすでに青龍荘の前に着いていた。

 

「イライザ、攪乱(かくらん)しておいて!」

「承知しました」

 

 青龍荘の裏口で急停車すると、アリスは乗り捨てるように降りる。

 アリスの命令を受けたゴルドルパンは再び爆速で、後部から八連装のガトリングを出すと、際限なく現れる眼魔ファントム達を蹴散らしていった。

 アリスは裏口のノブを回すが、もちろん鍵が掛っている。舌打ちをすると、すぐさまエックスマグナムを抜いて銃口を向ける。

 

「緊急事態だから許してね」

 

 ズドン!──怪人を吹き飛ばせるほどの凄まじい威力の弾が、裏口に文字通り穴を開けた。

 アリスは穴に手を突っ込み、内鍵を開け中に入る──しまったという表情に変わる。

 目の前の書庫から中庭が見えている──だが、状況としては少しおかしい。書庫には扉があった上に、囲むように本棚もあったはずだ。それなのになぜその向こう側まで見えるのか。

 裏口を撃ち抜いた光弾は書庫のドアを破壊した後、一番奥の本棚までも貫通し、そこから外の庭が見えていたのである。

 

「『威力調節できるようにして』って言っといた方がいいかしら……」

 

 その威力に若干冷や汗をかいたアリスが書庫に入ろうとして、目の前を立ち塞がるように()()()()が現われた。

 

 一方、快人は食堂のドアに辿り着く。その背後には何体か眼魔ファントムが倒れており、次々に煙と消えていく。すべて執事やメイドに()けていた者達だ。

 すなわち快人達が到着した時、既に団藤邸はジャックによって完全に掌握(しょうあく)されていたのだ。

 おそらく快人の考え通り、執事やメイドはジャックの持つ大黒真珠の力で生命力がなく憔悴(しょうすい)している状態から生命力を吸って、生きている人間と差がなくなるまでに力を手に入れたのだろう。

 快人は食堂に入ると的確に霞の周りにいたお付きの者達を撃ち抜いていく──眼魔ファントムが消滅した。

 

「……か、快人様……?」

 

 入ってくるなり乱射した快人の──傍から見れば異常でしかない──行為に霞が手で顔を隠しながら怯えている。

 

「無事だったみたいだな」

「……えぇ、なんとか。それよりいきなり何を──」

「ねぇさん、あの時のこと覚えてるか?」

 

 快人が言葉を遮って尋ねる。

 

「あの……『あの時のこと』とは……?」

「ねぇさんがくれた桜のペンダントのことさ」

「……えぇ、覚えていますわ。確かに桜の形をしたペンダントでしたわね」

「中央に()め込まれていたのはなんだったけ?」

「……『宝石』では?」

「あぁ、そうだな」

 

 ニコリと笑う快人の言葉に霞が微笑む。

 

「やっぱりアンタは霞ねぇさんじゃない」

 

 その言葉に、両者から笑みが消えた。

 

「あのアクセサリーは、元々、父親の雷吾さんがねぇさんのために作った物だ。でも俺に『お守りに』って渡してくれた時、『父が宝石の変わりにガラス玉を嵌めた』って言ったのは、ねぇさんだぜ」

「……少し記憶違いをしていたようですわ」

 

 偽物と言われたためか、取り(つくろ)うとする霞。

 

「そうか。まだその下手な演技を続ける気か」

「演技?」

「俺が霞ねぇさん──いや、()()の変化に気づいてないと、本当に思ってたのか? 俺を騙すのに、ねぇさんに化けたのはマズかったな。病人ほど、元気になるにしろ、ならないにしろ、変化が極端に現われる人はいない。『どんなに精工に他人に変装したとしても、所詮(しょせん)は他人。本人にはなれない』。じいちゃんの言葉だ」

 

 快人の言葉に、これ以上は無駄だと諦めたのか霞は項垂(うなだれ)る──そして、こともなげに車椅子から立ちあがった。

 

「いつから気づいていた?」

 

 テーブルの端を指でなぞりながら、霞が様変わりしたようにニヤニヤと笑いながら男口調で尋ねる。

 

「この屋敷自体、来た時から変だとは思ってたけど、アンタが書庫で俺に殺気を向けた時から目星はつけてた」

 

 あの時、振り向いたのは殺気を感じたからだったらしい。

 

「屋敷の中で感じていた、いくつかの違和感。そして今の答え。それだけじゃ不満か?」

「変装を得意とする私としたことが、少々手心が過ぎたか」

 

 霞は人差し指を上げくるりと回すと、体が宙に浮く。普段着の霞から、徐々に怪盗姿のジャックへと変わっていく。

 

「アンタのは変装じゃない。言わば憑依だ。全くの別物だよ。じいちゃんには遠く及ばねぇ」

 

 快人はその変化を見届けながら、ジャックが怪盗らしくないと指摘する。

 

「黙れ。子倅ごときに()くほどの時間がなかっただけだ。さあ、最後の一つを渡せ」

 

 ジャックの言葉に快人は盗み取った部品を懐から見せる。

 

「そう、それだ」

 

 ちゃんと持っていることを確認出来たジャックに対して、快人はそれを仕舞い、代わりにルパンガンナーを取り出す。

 

「欲しいなら盗んでみろよ。アンタも曲がりなりにも怪盗ならな」

 

 ジャックはフッと馬鹿にした様子で笑う。

 

「……いいだろう。今度こそ完膚(かんぷ)なきまでに叩きのめし、引導を渡してくれる」

 

 その挑発にジャックはマントを(ひるがえ)すと、腕のメガドライダーを見せた。

 快人もルパンガンナーを構える。

 ジャックがガイスト眼魂を装填──スイッチを押した。

 快人がガンナーの銃口を押し込む──銃口を放した。

 

「変身!」

 

 二人が口を揃えて、それぞれの変身ポーズをとる。

 

「チョウテンガン! ガイスト! メガドライダー! アイ・キャン・ビー・オール!」

「ルパン!」

 

 快人は仮面ライダールパンに、ジャックは仮面ライダーファントムへ変身した。

 

「チューン、ルパンブレード!」

 

 ルパンはブレードモードにしたルパンガンナーを振り下ろし、ファントムがガンガンシザースで受けると、その体勢のまま食堂の壁を(やす)々と突き破って中庭へと飛び出す。

 再び始まった決闘だが、またもやルパンが一方的に弄ばれていた。

 

「どうした! その程度か!」

「……くっ!」

 

 ファントムのシザースの兜割りをルパンがブレードで防ぐ。シザースを力任せに押し付けながら、ファントムがルパンに顔を寄せる。

 

「私は失望した! 殺すべき相手のゾルークはこの世から消え、代わりがお前のような小童だと! ふざけるな‼」

 

 戦いの中で唐突に激昂し始めたファントムは、ブレードを押し退けるとルパンの腹を一閃する。

 

「ぐはぁっ‼」

「さらにはこの世界に戻り、再びルパンの名を聞くようになったと思えば、人助けの話ばかり! 怪盗の名を持つ者が盗みもせず、なんのための力だ! なんのための称号だ!」

 

 戦いに挑んだものの万全ではないルパンは地面に倒れ伏すが、力を振り絞って立ち上がろうとする。

 

「……『ルパン』は、ヒーローのための名前だ……!」

 

 そこの言葉にファントムは苛立ったように頭を振り回す。

 

「なんと馬鹿馬鹿しい! 本当に一族共々目障りな奴らだ!」

「なんでそんなに……じいちゃんのことを嫌うんだよ……! 相棒だったんだろ……⁉」

「今更関係があるか! 奴は私からクラリス──一番の宝を奪った! しかもそれを見す見す捨てたのだ! 万死に(あたい)する!」

(クラリス……? ばあちゃんがなんだよ……?)

 

 祖母の名前が出てきて、ルパンの中に新たな疑問が生まれる。だが、今そのことを考える暇はない。

 

「ああぁっ! そんなことはどうでもいい! 私には時間がないのだ! 今日こそ一族郎党、根()やしにしてやろう!」

 

 そう言うとファントムは周りを見渡す。

 

「手始めにあの娘を──あの娘はどこだ⁉」

「……アリスのことか? アリスならアンタをぶっ飛ばすより大切なことを任せてるよ……!」

「なんだと……? フハハ! あの、臆病者に、何が出来る!」

 

 ファントムの嘲笑(あざわら)うような言葉。

 

「アリスは臆病者なんかじゃない……! きっと過去を乗り越えられる。アリスに比べたら、アンタの方がよっぽど過去に(すが)る……臆病者だ!」

 

 だが、ルパンはふらつきながらも立ち上がり、そう言い放つ。

 

「ほざけ子倅‼」

 

 怒りのままにシザースを振りかざすのに対し、ルパンはブレードで受け止める。

 

「俺の師匠をこれ以上、馬鹿にさせるか!」

 

 再び二人の刃が交りあった。

 

 一方、アリスは目の前に現れた血(まみ)れの二人に足を止め、エックスマグナムを震える手で構えた。

 その表情は凍りつき、今にも泣きだしそうだ。

 

『パパ……ママ……』

『アデレード……なぜお前は生きている……』

『どうして……どうして……私が死ななければいけなかったの……』

 

 両親である二人はアリスに死者ゆえの生者に対しての(ねた)(そね)みがこもった言葉をぶつける。

 その言葉を言われたアリスはゆっくりと銃を仕舞うと、(うつむ)いて自分の体を抱く。

 だが、それは自らを(なぐさ)めるためのものではなく、奮い立たせるため。過去を乗り越えるために──大切な人達が守った者を守るために。

 アリスは顔を上げた。

 そこに恐怖はなく、一歩ずつ二人に歩み寄る。その間も二人からの呪詛を受け続けるが構わず進む。そして、目の前に立った。

 

『お前が……』

『あなたが……』

『死ねばよか──』

 

 そこで言葉が止まる。アリスが二人を抱きしめたのだ。

 幼い頃には出来なかったことを、大人になって成長したため出来たのである。

 もちろん二人は本人ではない。偶然、アリスの守護霊となっていた二人が眼魔ファントムに憑依しただけなのかもしれない。だが、そんなことは関係なかった──快人も言っていた──自分を愛してくれた両親を恐れる必要などないからだ。

 アリスの目から恐怖ではなく、(いつく)しみの涙が流れる。

 

『ごめんなさい。私は今までパパとママがずっと恨んでると思ってた。一人だけ生きていて、二人が私を憎んでるんじゃないかって、どこかで考えていたの。そんなことあるはずないのに。二人は私がどこにいたって、何時だって愛してくれてる。私より年下の子に言われて、やっとそれに気づいた。時間が掛って、本当にごめんなさい』

 

 アリスの言葉に眼魔ファントムの姿に徐々に変化が起こる──銃に撃たれた血塗れの姿から、アリスの記憶にある優しい二人になった。

 

『パパ、ママ。今から私は……私にとって大切な人たちを助けに行きたいの。見守っててくれる?』

 

 アリスは二人から離れ、両親の顔を見た。

 今では二人とも穏やかな表情を浮かべている。その目は娘のことを本当に想うように見えた。

 

『本当に、大きく、強くなったな……すまないことをしたね』

『ごめんなさい。アデレード……私たちはずっとあなたの傍にいるわ』

 

 二人は愛娘が無事に成長したことに安心したのか笑みを浮かべて光へと消えていった。

 

『愛してるわ。パパ……ママ……』

 

 (こぼ)れる涙を拭う。

 目前には海里とカルサイトが囚われているであろう書庫がある。

 アリスは頬を叩き気持ちを引き締めると、足早に中に入っていった。

 

「助けてぇ!」

 

 捕らわれていた海里は地下室にあった鎖に手首を繋がれ、今まさに──何故か拷問を受けそうになっていた。

 拷問役の眼魔ファントムの手には焼きごてが握られている。

 

「なんでこんなことになんのぉ⁉」

 

 叫ぶ海里の隣ではカルサイトがなんとか手錠を外そうともがいているが、四肢を大量の眼魔ファントムによって押さえつけられている。

 

「くっ、海里……!」

 

 その間にも「K」と書かれた焼きごてが海里の顔に迫る。

 

「いぃやあぁ! せめてレアで! レアでお願いしまぁす!」

 

 レアでも──抑えめの焼き加減──十分に火傷の程度としてはマズイと思うが──パニックでとにかく(わめ)き続ける海里。

 ズドン!──焼きごてを持っていた眼魔ファントムが倒れる。

 

「へっ?」

「女の子の顔に傷をつける気?」

 

 その一体だけではない。カルサイトを押さえていた者や、見張りをしていた者が次々に光弾に貫かれ消え去る。

 すべてが終われば、入り口でアリスがエックスマグナムを構えて立っていた。

 

「アリスさぁん!」

 

 海里が泣きそうになりながら安堵の声を上げる。

 

「間に合った?」

「間一髪でしたぁ!」

 

 アリスが手錠をあっさりと解く。

 

「痛いぃ……」

 

 解放された海里は痕が残った腕を擦っている。

 

「そっちは──」

 

 バチン!──カルサイトは自力で壁から鎖を引きちぎると、錠の隙間に手を入れてこじ開けた。

 

「……大丈夫そうね。さあ、上に行きましょう。快人が待ってるわ」

「えっ、お兄ちゃん無事なんですか⁉」

「えぇ、生きてるわ」

「よかったぁ……」

(……助けられてよかった)

 

 その海里の顔にアリスは笑みを浮かべる。

 

「行こう」

「えぇ」

「はい!」

 

 カルサイトの提案に三人は頷き合うと地上を目指した。

 

 ファントムが鮮やかなシザースを分離させた二刀流でルパンを切り刻んでいく。

 

「ぐわぁああああっ‼」

 

 ルパンが中庭の雑草の上に倒れる。

 

冥途(めいど)土産(みやげ)だ! この眼魂でお前に引導を渡してくれる!」

 

 ファントムは一つの赤色の眼魂を取り出すとメガドライダーに装填し、スイッチを押した。

 

「チョウテンガン! ルパン! メガドライダー! レジェンダリー・ザ・ファントム!」

 

 メガドライダーからルパンの姿を模したパーカーゴーストが現れファントムの体に憑依する──ファントムがルパン魂にフォームチェンジした。

 

「……『ルパン』だって……⁉」

 

 その姿を見てルパンは驚きを隠せない。

 

「これでショーは仕舞いだ! ゾルーク!」

 

 ハサミの形に戻したガンガンシザースに紫のオーラを(まと)うと、ルパンを袈裟(けさ)切りした。

 

「ぐうっわぁああっ‼」

 

 強烈な一撃を受け続けたルパンの変身がついに解け、全身ボロボロになった快人の姿に戻る。

 その弾みで最後の部品が服からこぼれ落ち、それをファントムが拾い上げた。

 

「……フハハハ‼ これで予告は果たされた! ゾルークの流儀の通りにな。この力量の差こそが私が『ルパン』である証明だ!」

 

 その言葉に快人は正座のような形で座り込む。ほとんど虫の息だが、それでもなんとか食らいつこうとファントムを睨みつける。

 

「……ち、がう……。こんな、ことを、することが、ルパ、ン……じゃない……! じいちゃんが、ほこりを、もって、なのった……ルパン、の、なまえは……その、ていどの、もんじゃ……ねぇはずだ……」

「負け犬の遠吠えなど聞くに値せん! 汚らわしい(まが)い者め、私が直々に処刑してくれる!」

 

 ファントムがシザースのスロットに眼魂を嵌めた。

 

「ダイカイガン! オメガカット!」

 

 そのままシザースを合体させハサミのように広げると、快人の首に狙いを定める。

 そこに丁度、地下にいた三人が外に飛び出してきた。

 

「お兄ちゃん!」

「ルパン!」

「快人!」

(お前、ら……)

 

 三人の叫びが快人の耳に届くものの、時すでに遅し、攻撃は止まらない。

 流石にここまでか、と快人は悔しそうに唇を歪ませ目を閉じる。

 

 ──快人。

 

 心の中で名前を呼ばれた気がした。

 

(……じいちゃん?)

 ──快人!

 

 聞き間違いではない。間違いない。目前に死が迫る快人に、紛れもない祖父である来蔵の声が聞こえてきたのだ。

 快人は目を開けて、見た。

 ガンガンシザースに嵌められた眼魂が、自らの存在を主張するように赤く光っているのを。

 

 ──快人。俺を摑め!

 

 眼魂から聞こえてくる声。

 快人が声を聞く間にも、シザースがその名前の如く──ルパンの力の影響か──「L」字と「逆L」字の形をした紫色のオーラを纏ったハサミが閉じられ、あわや首が落とされる──瞬間、快人は命の危機の中を迷いなく、その輝く眼魂に手を伸ばした。

 

(じいちゃん!)

 

 首を切られるのが先か。眼魂を摑むのが先か。

 刹那(せつな)、辺りを(まばゆ)い光が爆ぜた。

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