「副部長!提案があります!!」
「あっそ」
御崎を一蹴し、私はスマバをいじる。この喫茶店のパフェ美味しそうだな……近いし今度行くか。
「ノリ悪いな〜……」
御崎は机の上に頭を置きながら不貞腐れている。
「もっとこうさぁ……偉そうにふん!言ってみるがいい!!とか言ってくれよ……」
「私よりあんたの方が偉いでしょ。仮にも部長なんだし」
「じゃあ大原先生〜……」
「私は、仕事が忙しいから。またな」
大原先生は空中モニターとにらめっこしながら答える。 キーボードを見ずに打ち込み続ける姿を見るとやっぱり大原先生って結構仕事ができるのだなというのを感じる。
「仕事なんかちょっとほっといてもいいでしょ〜?」
「私がサボるとお前たちが不利益を被るんだ。サボるわけにはいかないよ」
そう言われると流石にだだをこねるわけにもいかず、御崎はうぐぐ……とうめき声をあげる。
「じゃ、諦めて簡潔に言いn」
御崎は、私が要件を問いただそうとしているのを遮り、では副部長!伝えさせていただきます!!と叫んだ。
こいつ……無理やり謎のキャラ設定を通したな……
「春休み中に起きてた事件を解決すべきだと思います!!」
「そんな意味不明なノリで正論飛んでくることあるんだ……」
春休み中はお互い用事が多く、部活動をほとんどできていなかったのだ。
「ほら、最近あるだろ?連続強盗事件」
最近、ヤクザやマフィアが都内の不良に金を渡して葱津区内に住む科学者や技術者の家を襲わせているのだ。 警察も総力を上げているが、使い捨ての不良をいくら捕まえてもキリがないしヤクザやマフィアはバレないようにするのがうまい。そのため、中々進展がない事件だ。
「ああ、あの闇バイトもどきか」
「闇バイト?」
大原先生の呟きに御崎が聞き返す。
「昔……それこそ私が産まれるよりも前にあったんだ。似たような事件が」
大原先生は空中画面から目を離し、こちらを向いて話し始める。
「連続強盗事件で死者が出てないのもその時の教訓のおかげだな」
「その時と同じ方法で犯人捕まえたりできないんですか?」
御崎の質問に大原先生は顎に手を当て、うーんと声を漏らす。
「あのときは主犯が半グレで今回はヤクザだから、一般人からすれば似てても警察的には結構違うんじゃないか?……まあどっちも金に目が眩んでほいほいついて行き、間違いに気づいたときには脅されて逃げれなくなる……っていうのは一緒だな。お前たちも甘言には騙されないようにするように」
大原先生はそう締めくくり、再び仕事を始めた。
「とりあえず情報収集だけど……騙された不良とかか?」
「不良って言っても葱津にはいるわけないし……結構大変よ?」
何故か大原先生が視界の端でビクッと震えた。
「……いるんですか?」
「……いるな。今も昔も」
私が問いかけると大原先生は眉尻を下げながら答えた。
「じゃあそいつに話聞くか!!」
「あと一応昔いた人の方にも話聞きたいんですけど……先生、その人の連絡先知ってます?」
「いや……だいぶ尖ってるやつだったからやめといたほうがいいぞ……在校中の方は教えるから、そっちだけにしておいた方が良い」
そう言って大原先生はスマバで校内地図を開く。
「北館三階のこの部屋、重ねパンケーキ下山部の部室にいるはずだ」
「はい?なんて言いました?」
あまりにも奇天烈な名前に思わず聞き返してしまう。 いや、冷静に考えたらそんな部活があるわけないな。うん、きっと聞き間違いだろう……
「重ねパンケーキ下山部」
神は死んだ。あと多分髪も死ぬ。そんな意味不明な場所に行ったらストレスの飽和攻撃に会いそうだ。
「私は創部申請を拒否しようとしたんだが……風紀部のことを引き合いに出されると弱くてな……」
珍しい……大原先生がこの部活のことを風紀部と言うなんて……
以前、この部活動の名前を風紀委員会と言ったが正式には風紀部なのだ。ただ大原先生は風紀委員会呼びにこだわるし、御崎もそれに乗っかってるので私も釣られて風紀委員会と呼んでしまっている。というか時折風紀部という名前を忘れてしまっている。
「まあ、だいぶ変わった部活動だがそこにいる不良生徒……
大原先生にそう言われ、私達は重ねパンケーキ下山部の部室へと向かった……
―――
「うわっ……」
言われた教室の前に着いたのだが、実際に重ねパンケーキ下山部なんて文字を見ると思わずたじろいでしまう。
「うわってなんだ、うわって」
後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこには金髪に少し着崩した制服、鋭い眼光といかにも不良といった女子生徒がいた……
「……いや、私達が悪いな。これは」
彼女は諦観を含んだ眼差しで教室の札を見る。
「俺は御崎結雅!そっちは緋崎影奈って言って二人で風紀委員会やってんだ!!」
「ああ、風紀委員会……え?風紀委員ってうちにあったか?」
「風紀委員会は部活よ」
「へ、へぇ……」
彼女は苦笑いをしながらこちらを見つめる。まるで変な奴らに絡まれたかのように。
……重ねパンケーキ下山部よりはマシだろう。多分、きっと。
「まあ、立ち話もなんだし。入れよ」
そう言って彼女は扉を開く。
そこには……
「小虎ちゃんおかえり〜」
「あと十枚焼くから待ってて……」
天井まで届きそうなほど積み上がった3本のパンケーキの塔があった。
「スマン、本当に意味がわからないと思うけどこれがここの通常運転なんだ……」
彼女が申し訳無さそうに言った。さっき小虎ちゃんと呼ばれていたことからおそらく彼女が件の不良生徒なのだろう。
「ん?そこの二人は仮入部だったりする?」
「そうよ」
「違うだろ!?」
御崎が私の言葉を否定してから要件を伝えた。
「まあ、その件は気にしなくていいわよ。私は今から風紀部を辞めて重ねパンケーキ下山部に入るから」
「緋崎!?よく見ろよ!いくら甘いもの好きでもあの量は嫌だろ!?」
御崎が私の肩を強く揺らしながら説得してくる。
しかし、その程度で私の意思は揺るがない。パンケーキ食べ放題なんて最高じゃないか。
「結構太るぞ」
「誰が入るのよこんな変な部活」
清白の言葉で私は正気を取り戻した。風紀委員会辞めたら運動量も激減するだろうし、下手したら体重が倍になるかもしれない。危なかった……
「変な部活だなんて……酷いよ……この部活は昨日と今日で十五人も仮入部希望者が来た大人気部活なのに……」
「全員ドア開けて二秒で帰っただろ」
清白にツッコまれた銀髪女子は嘘泣きをやめ、私達の方へ向き直った。
「そういえばまだ自己紹介してなかったね。私こそ!パンケーキ狩りの女!セリチハッ!!」
「
銀髪女子……芹は清白のツッコミを無視して続ける。
「
「嘘吐くな」
清白が真剣な顔をしている芹の頭を軽くチョップした。
「なんで二回ともツッコむのさ……」
「お前が二回ともふざけたからだよ」
二人が漫才みたいな会話をしていると、ピンク髪の女子が後ろから出てきた。
「私は二年生だよ〜」
「学年だけ言ってどうすんだよ……」
清白がため息をつく。
「女子だよ〜」
「名前言え名前。どこに自己紹介で学年と性別だけ言うやつがいるんだよ」
「あっ!そっか!ごめんね〜。わたしは
「はあ……まったく……」
再びため息をついてから、清白は口を開いた。
「っと、私も自己紹介が遅れちまったな。私は清白小虎。見ての通り不良だ」
「あー……うん。噂には聞いてるわよ……」
自信満々に不良と名乗る清白を見ながら、私は少しどもりながら返事をした。
いやだってどう見ても……
「不良じゃなくね?」
「ちょっ!ばっ!!」
大急ぎで御崎の口を塞いで教室の窓側の隅まで移動する。
「清白はなんかドヤってたし、多分不良であることに自信を持ってるタイプだから。眼の前で不良っぽくないとか言わない方がいいわよ」
三人に聞こえないように小声で話す。
「でもさ……清白が一番マトモじゃん……」
「……金髪だし」
私がそう言うと御崎は窓を指さした。そこには白髪に赤メッシュの男子と黒髪に紫メッシュ―――この髪色のせいであんこ呼ばわりされた―――の女子が反射して写っている。
「……ほら、制服着崩してるし」
「九」
確かにあの布団バカが許されているのに清白の軽い着崩しが指導される道理はない。
「あとは……」
鋭い眼光は……そもそも生まれつきのものだろうし。性格に関してはもはや言うまでもなくて……
「……間違いなくマトモね。しかも校内で一二を争うレベルで」
「話は聞かせてもらった!!」
いつの間にか私達の真後ろに立っていた芹が大声で胸を張りながら言った。
「小虎ちゃんはね、不良に憧れてるだけで実際はめちゃくちゃ真面目な女の子なんだよ」
「おい!その話はやめろ!!」
「成績は常にクラス上位でノートも綺麗。あと噂によると一年のときに変な挨拶をした生徒のことを気にして変な部活に入ってあげたらしいよ?」
「それお前な。変な挨拶したのはお前だし変な部活はここだからな」
そう言いながら清白はジト目で芹を見つめている。
「はあ……私が真面目かどうかの話はどうでもいいから……」
「あっ、話ずらした」
「千春、うるさい。……連続強盗事件の情報だよな?」
色々と話がズレたものの、私達はようやく一歩前へと進むことができ……
「ごめん!!その話よりパンケーキ優先でいい!?今が一番美味しいから!!」
なさそうだな、これ……
今話の担当:にわた