ン我が戦姫!!   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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撃槍再臨:2043

 知っている方々にはお馴染みの大時計の存在する黒い空間に『戦姫絶唱歴』と題された本を片手に何者かが現われる。

 

「この本によれば普通の高校生立花響には大いなる戦いの奔流に巻き込まれる運命が待っていた」

 

本に書かれていたのだろう一節を読み上げた者はパタンと本を閉じると顔を上げる。

 

「お察しの通り私はウォズ。だが貴方方の知るウォズとはだいぶと違う。私は便宜上名乗らせて貰っているに過ぎないからね」

 

確かに言うとおり本来のウォズは男性であるがこのウォズは女性。

すなわち彼女である。

 

「いろいろあってこうなった私の事なんてどうでも良いこと。今は彼女・・・立花響の軌跡が重要なことだ」

 

自らの身の上なんて知るだけ無駄と切って捨てたウォズは再び本を開いた。

 

 

 

 

 

 

――2043年

 

 この日も立花響はいつもの通りに学校に行ってやることが終ったらさっさと自宅に帰る。

変わる事のない日々のルーティンを送っていた。

曇り空の下を歩く彼女の顔に風に乗って飛んできたチラシが張り付く。

 視界を塞いだチラシを剥がすとそれが今日発売の風鳴翼のニューアルバムだと言うことを知る。

 

「トップアーティスト風鳴翼の本日発売となる新作CDだ。買うのかい?」

 

チラシを一瞥し顔を上げるとぱっと見灰色の女性、そうウォズが間近に立っていた。

 

「買わない。それよりもアンタ誰・・・」

 

全くの初対面の癖して親しげに話しかけてくるウォズに当然の疑問を投げかけながら響は彼女から距離を取る。

 

「そんなに警戒しないでもらいたい。なにせ私は君の味方だ」

「ふざけてるの?」

「疑われるのは心外だ・・・。ではこれからの事を少しだけ教えよう」

 

響から見れば戯言を言うウォズに彼女が疑念の視線を向けるとウォズは弁明するように本を開き一節を読み上げる。

 

「この本によると君はこれからノイズと遭遇しこれを契機として逃れられない戦いに身を置くことになる」

 

故にと続けてウォズは台座に乗せた赤いペンダントを響に差し出す。

それはこの時点では響の知るところではないがシンフォギアを纏う際に使用するギアペンダントである。

 

「彼女を持つと良いきっと君を助けてくれるだろう」

「・・・・・・。聞いて損した、そんなネックレスは要らないから。後私の前にもう出てこないで」

 

関わるだけ厄介な奴だと判断した響はチラシをウォズに押しつけると自宅へと向かっていった。

 

「君は必ずこの力に手を伸ばす事になる」

 

意味深な笑みを浮かべたウォズは今し方渡されたチラシに目を落とすと何かの縁だと考えて近くのショップに向かい一枚購入するのだった。

 

 

 

 

 

 

 人の居ない暗がりに時空間を行き来することのできるタイムホールが開くと機械兵カッシーンが一体現われる。

 

「任務を開始する」

 

一言呟いたカッシーンはステルス機能を起動し透明になった。

 

 

 

 

 

 

 今まで助けて欲しいと思っていたのに誰も助けてくれなかった人生。

そんな折りに突然現われ自身の味方を名乗るウォズに対して響は嫌な物を見たという気分にさせられていた。

いつも以上に沈んだ気分で帰宅した響は今日は買い出しにいかないといけなかったと言うことを思い出すと買い物に必要な物だけを持って外出する。

 ノイズに遭遇するなどと言う予言めいたウォズの一言がどこか心に引っかかった状態で居た響は俯いて歩いていたが為に地面に塵が舞っている事に気づくのが遅れる。

 

「嘘でしょ・・・?」

 

まさか本当にノイズが現われたのかと響が戦慄して顔をあげると明らかに人だったと分かる形をしている塵の山がそこらいっぱいに積もっている。

 

「ノイズ・・・!」

 

出てきているノイズが自らの直ぐ傍にウォズの言ったとおりにならば今すぐ此処から逃げ出さなければならないと響がノイズが現われた際の避難所に向かおうとしたときに小さいが確かに子どもの物と思われる悲鳴を聞く。

 聞いてからは早かった悲鳴が発せられたと思わしき場所に向けて響は走り出す。

聞こえ続ける悲鳴に涙声が混じり始めた頃に響はノイズに今まさに捕まらんとしている少女を見つけると壁面にノイズがびっしりと張り付いているのを構いもせずに少女を抱きかかえると速度を落とさずにノイズを背に走る。

 

(何やってるんだ私は!!)

 

自分は誰にも助けてなんて貰えなかったのに自分は名も知らぬ少女を自分が死んでしまうかもしれないのに助けている

道案内や大荷物を抱えている老人が横断歩道を渡るのを手伝うのとは違う命をかけた人助け。

誰かを助ければいずれ自分もこの先の見えない暗闇から救って貰えるかもしれないと心のどこかで自分は期待しているのではないかと考えるが響は背後を見てノイズが追ってきているのを見て走ることに専念し考えていたことを頭から落とす。

 

「死にたくないならしっかり掴まってて!!」

「うんッ!」

 

ひしとしがみついているためにくぐもってはいるがしっかりとした返事が返ってきたことで響は自然と少女を抱く力を強める。

 ノイズに追い立てられ逃げた先で響は足を止めることになる。

そこは避難所などではなく工場地帯である。地図的に見れば避難所とは真逆の場所で響と少女は気がつくと四方をノイズに囲まれていた。

どうすればこの状況を切り抜けることができるかと思考を回しているとノイズの姿を見た少女がポツリと呟く。

 

「私・・・此処で死んじゃうの?」

「死なない、だから生きるのを諦めるな・・・」

 

あの日に確かに自身に投げかけられた願いを響が少女に言うと横合いに気配が現われる。

 

「流石は我が戦姫。だからこそ私は君に惹かれる」

「アンタは・・・」

 

どこから現われたのか分からないウォズは数時間前と同じように台座に乗せたギアペンダントを響に差し出す。

 

「さぁ彼女を・・・歌い方はご存知のはず」

「こんなペンダントなにが・・・」

 

できると言おうとしたところで響はそれに見覚えがあることを知覚する。

それはあの日に見た抗いようのない死であるノイズに対する為の力の象徴。

気がつくと響の手中にギアペンダントは収まっていた。

 

「胸に歌が浮かんでくる・・・」

 

少女を降ろした響がノイズへと歩んでいくのを見てウォズは笑みを深める。

 

「確かに諦めなくて正解だった・・・。今こうしてお前達をこの手で倒せるッ!」

「お姉ちゃん?」

 

この絶体絶命の状況で笑みを浮かべる響を見て不安がる少女をウォズは制する。

 

「静かに、歴史の幕開けの瞬間だ」

 

ウォズがそう言うと響は胸に浮かんだ聖詠を初めてとは思えないほどに滑らかに歌い上げる。

 

――Balwisyall nescell gungnir tron

 

身につけていた衣服が弾けるのと入れ替わりにギアインナーが生成され響の身を覆う。

続けざまに幾重にも重なったリングが出現すると装甲が生成されるとそれも響に装着された。

変身の際に発せられたエネルギーによりノイズの一部が消し飛ばされ塵となり宙を舞う。

 

「祝えッ!!新たな戦姫の誕生をッ!!!その名も立花響ッ!!!今再び撃槍が振るわれる時であるッ!!!」

 

新たなシンフォギア装者の誕生をウォズが高らかに祝い上げる。

 

「なにそれ」

「お気になさらず我が戦姫。今はその力存分に振るわれよ」

「言われなくても」

 

滾る力を歌に変え響は拳を握り締めると踏み込むとノイズを体当たりで打ち倒す。

初めてシンフォギアを纏うが為に余りある力に振り回されていたがやがて天性の武の才能からかノイズを軽やかに倒していく。

その際に発生する余剰エネルギーは首元からマフラーの様に噴き出していた。

 やがて最後の一体のノイズを打ち倒した響が肩の力を抜くと上空から空気を切り裂くような音が生じると飛行型のノイズが居たのかそれが超高速で響へと突進を仕掛ける。

 

「しまっ!!」

 

このままでは防御が間に合わずにもろにダメージを受けてしまうと響が焦るが真横の壁が砕け巨大な柱がノイズを貫き塵とする。

 

「ノイズ出現により刃振るうこの戦場で未確認の装者を見ることになるとはな。・・・貴様、何処でそれを手に入れた」

「風鳴翼・・・」

 

隠す気のない殺気を振りまきながら現われた風鳴翼に応じるように響が応戦の意思を見せると彼女はそれを挑発と取ったのか刀を抜き一息に間合いを詰めるが見えない何かに阻まれる。

 

「なにッ!?」

 

翼の斬撃を防いだ存在それはカッシーンであった。斬撃を防ぐことで自動的にステルスが解除されたカッシーンは斬撃を防ぐのに使用した槍を振るい翼を退けると響へと向く。

 

「巫女よお迎えに上がりました。我が主がお待ちです」

「?」

 

今日という日は見知らぬ奴らが良く現われる日だと思いながら響は見て分かるように人ですらないカッシーンから距離を取る。

 

「巫女とか主とか訳が分からない。信用できるはずがない」

「であれば致し方ない。無理矢理にでも着いてきて貰います。我が主は貴女を切望している」

 

カッシーンはライドウォッチを取り出し起動すると胸部装甲を展開しその中に納める。

 

「変身」

 

『鋼のムーンサルト!!ラビットタンク!!』

 

まさかの仮面ライダービルドにカッシーンが変身を遂げてしまう。

 

「馬鹿な、桐生戦兎ではない者。それもあれがビルドに変身するだと?」

 

予期せぬビルドの出現にウォズが少しばかり動揺していると翼が早々に戦線に復帰する。

 

「なるほどならば貴女達二人私が相手をしてやろう」

「優先対象は巫女。天羽々斬は対象外だ」

 

振るわれる刀をドリルクラッシャーで防いだビルドの顔を響の拳が貫き殴り飛ばす。

 

「こいつは私を狙ってる」

「私は貴女を二課へと連行する義務がある」

「・・・やっぱり私呪われてる」

 

身に覚えのない怒りを買うことには慣れたと思っていたがやはりきついものであると響がため息をつくと土煙の向こうからゴリラモンドにビルドアップしたビルドが姿を現した。

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