ン我が戦姫!!   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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破滅の塔:2043

 バットアンデッドにより破壊された店舗の修繕が終り再開店を明日に控えた中花の玄関戸が叩かれる。

 

「誰だぁ?こんな夜中に」

 

つついていた季節外れのおでんから箸をおいた海堂が閉店していることが分かっていない客らしき者を追い払う為に戸を開けるとそこにはクリスを背負ったマリアが立っていた。

 

「お前・・・」

「来てやった」

 

ヘルヘイムの森で交わした約束を律儀に守りに来たらしいマリアを黙って迎え入れた海堂は寝ているクリスを見て居住スペースに布団を敷きそこに寝かせた。

 

「まだ起きねぇのか?」

「私のせいだ・・・」

 

アナザーウォッチを体外に除去してなお資格無き状態で行使された仮面ライダーの力はクリスの身体を今なお蝕んでいた。

 

「病院には・・・いけねぇか」

 

今はまだ安定しているから良いが悪化すれば手立てが無いことはマリアは十分に理解していた。

 

「魅せられてしまった・・・身の丈に合わない力に。私は私自身の愚かさでまた家族を失うかもしれない。それは・・・それはどんな地獄より苦しい」

 

廃棄物としてただ捨てられ偶然生き延びた自身と似ている境遇に陥っていたクリスと出会ったあの日にマリアの地獄に少しだけ風が吹いた。

 

「反省するポイントは十分に分かってるじゃねぇか。だったらもう二度とその悲しみを繰り返すなってこった」

「私は何処に向かっているのだろうな」

「俺は知らねぇよ」

 

おもむろに海堂は立ち上がり厨房に入りパパッと炒飯を作るとマリアの前に置く。

 

「頼んでいないが?」

「食って風呂入って寝ろい。ラーメン屋の朝は早いぞ」

「そう言う約束だったな」

 

クリスをアナザーライダーの呪縛から解き放つ代わりに自身が海堂の店の従業員として働くと言う約束を守る為にマリアはまず目の前に置かれた炒飯に手をつけた。

 

 

 

 

 

 

 マリアが海堂の元で働き始めて早数日が経っていた。

生物的な本能からかペースト状にした食べ物や水などを口の中に入れれば嚥下はすることはしていたクリスであったが一向に目を覚まさなかった。

 

「海堂、私は奴らを頼ろうかと考えている。お前はどう思う」

「奴ら・・・ああ、アイツらか」

 

マリアが頼ろうとしている者達即ち二課であると察した海堂は雑誌から顔を上げないままに答える。

 

「お前さんが良いと思ったら良いんじゃねぇか」

「そうか。なら私がこの子の蜘蛛の糸となろう」

 

そう言うが早いかマリアは自身のバイクのエンジンを掛ける。

バイクに跨がるマリアに店外に出てきた海堂がふと思った疑問をぶつける。

 

「つってもお前場所知ってんのかよ」

「木場勇治から情報だけは貰っている。その近辺でアナザーライダーに変身すれば出てくる筈だ」

 

唸りを上げた白銀のバイクはリディアンへと最短距離を走って行った。

 

「木場か・・・。アイツも何があったのやら。それよりもだ、帰って来いよ。明日の仕込みがまだだからな」

 

明日の分は久しぶりに己だけで仕込むかと海堂は店内へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 この日の響は平和に過ごしていた。

ノイズが出現することもないうえにアナザービルドも発見されていないからだ。

だが数日前、丁度戦兎と万丈と出会った日に永田町にある記憶の遺跡が何者かに襲撃を受け完全聖遺物デュランダルが簒奪された事件が平和な筈の日常に影を落としていた。

 

「浮かない顔だな立花。小日向が居ないから心細いか?」

「未来には未来の生活がある。私のわがままで振り回す訳にはいかない」

 

自身が浮かない顔をしていることに未来は関係ないと言った響は名前だけは教えられていたが詳細は知らされていなかったデュランダルについて翼に尋ねる。

 

「盗まれたデュランダルってそんなに大変な物なの?」

 

小説や漫画などで時折見たことがあるだけのそれに響はただどんな力があるのか知りたかったが翼は何処か遠くを見るように答える。

 

「デュランダル・・・。そうだな立花には関係は深いか」

「?」

「完全聖遺物デュランダルそれは2年前のあの日立花貴女を救うために奏が絶唱を歌った事により完全覚醒したものだ」

「奏さんが・・・」

 

予想もしていなかった人物の登場に響は面食らうが翼は続ける。

 

「不朽不滅の聖剣であるデュランダルは無限にエネルギーを生み出す。政府はそれをインフラに利用できないかと研究していたがまんまとしてやられてしまったという事だ」

「かなり不味い状況って事か」

「その認識で間違いはない」

 

デュランダルについて大体は知れた事で響がトレーニングルームを利用するためにリディアン地下にある二課本部へと向かおうとした瞬間ギアペンダントが何かを訴えるように強い熱を発する。

 

「熱ッ!」

 

そして熱が強まると聖詠を歌っていないにも関わらずに響はシンフォギアを纏う。

 

「歌ってないのに・・・」

「立花、どうかしたのか――」

 

翼が口を開いた直後地面が尋常ではない揺れ方をすると大地が崩れていく。

 

「ッ!」

 

迷うことなく響は翼を抱き寄せると崩れ落ちていく瓦礫を足場にして上部に上っていくことで落下を免れ地面に着地する。

 

「なに・・・これ・・・」

「なにが起きている・・・!」

 

二人の目の前にはリディアンの校舎の代わりとでも言うのかかつてビルドの世界に存在したパンドラタワーが屹立していた。

突然の事態に状況が掴めていない二人の近くの瓦礫が崩れるとそこから了子が這い出てくる。

 

「櫻井女史!!」

「翼ちゃんに響ちゃん!!無事だったのね!!」

「アンタこそ」

 

おかしい今の事変に巻き込まれたにしては身綺麗過ぎると二人が警戒をしているとドリルクラッシャーで地面を掘り進め飛び出してきたビルドがホークガトリンガーで了子を蜂の巣にする。

 

「離れろ!!そいつはアナザーライダーだ!!」

 

ビルドの警告を聞き一気に距離を取った二人の前では蜂の巣にされたにも関わらず血を流していない了子が居た。

 

「全く面白みにかけるな」

 

『マックスハザードオン!!グレートクローズドラゴン!!』

『ウェイクアップクローズ!!ゲットグレートクローズドラゴン!!ブラブラブラブラブラァ!!!ヤベーイ!!!!』

 

傷を塞ぐように肉がせり上がると共にブラッドへと了子を完全に乗っ取ったフィーネは嘆息する。

 

「何故お前がその力を持っている」

「貴様、櫻井女史でないならば何者だ!!」

「夏休み明けには未来もこっちに来る筈だったのに・・・」

「全く質問の多い奴らだ」

 

地下で見せたアナザービルドの姿ではなくブラッドに変身したことに対するビルドからの質問。

櫻井了子を何処にやったという翼からの質問。

そして完全に自身の我欲全開の響の呟きを聞き届けたブラッドは強者故の余裕か丁寧に答える。

 

「この力は貴様の力ネフシュタンの鎧によるもの。そして櫻井了子だったな、あの女は今や私の小指の先ほどの存在でしかない」

「なッ!」

「特別待遇だ、私の器となったのだ。私の創るバラルの呪詛無き新世界を見せてやろうと思ったまでだ」

 

驚愕する翼になんてことのないように答えたブラッドを見て翼は会話による和解はやはり無理だったかと判断すると聖詠を歌いシンフォギアを纏う。

 

「お前の創る新世界は月を壊すんだろ。だったらさせるわけにはいかない。月が消えた事による被害が分からない程馬鹿じゃないからな」

「月を壊す?なんで」

 

此処に来るまでにビルドには自身の計画を伝えていたのかブラッドの企てを口にしたビルドとそれを聞いた響が疑問を抱く。

 

「月こそがバラルの呪詛の源だからだ。人類を呪う月を破壊することにより人は再び統一言語を取り戻す。そして私はあの方と言の葉を交わす!!」

「つまり恋愛脳で大虐殺するってのか。迷惑極まりないな」

「貴様の言うラブアンドピースが実現されるぞ?」

「そんな独善的なものを愛とも平和とも言わねぇよ」

 

『紅のスピーディーダンパー!!ラビットアンドラビット!!』

 

ラビットラビットフォームとなったビルドがフルボトルバスターを構えた瞬間に戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 

 その頃地下では崩れ落ちる通路を必死に支えるクローズの助力もあり二課の者達は無事にシェルターへと避難することができていた。

 

「放課後と言うのが幸いと言って良いのか悪いのか」

「リディアンの生徒の人的被害は軽微なモノかと」

「それでも命が失われたんだ」

 

弦十郎は仲間の肉体に巣喰い多くの命を奪ったフィーネに対し怒りを燃やしていたがアナザービルドの能力によって戦闘力を成分として吸い取られた彼には今何もすることができなかった。

 

「戦兎の所に行ってくる」

「その怪我では無茶ですよ!」

「このくらいプロテイン飲めば治るんだよ」

 

万丈はそう言うとクローズに変身し全速力で地上に向かっていった。

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