かなり真剣な表情をしているエルフナインを起き上がらせたると響は自身の上着を羽織らせる。
「見てるこっちが寒いから」
「僕は大丈夫です」
「風邪ひかれたらこっちの寝覚めが悪いから」
気温は低いにも関わらず平気そうなエルフナインである、しかしそれは彼女の体感であり白い息を吐いておりまた肌に触れた際に響はエルフナインが身体を冷やしていることを感じ取っていた。
先ほど大量に現われたメイジの様子から見て、エルフナインが追われる身である事は推して知るべきところである。
故に響は安全な場所にエルフナインを連れて行く事にした、だが自身が未来の前に姿を現す資格はあるのかと自問する。
(少しでも私が未来を殺す可能性があるなら・・・。私はもう陽だまりに帰るべきじゃない・・・)
数瞬の間も置かずに答えは胸の内より返ってきた。
「とりあえずどこか暖かい場所に行こう。お腹空いてたりする?」
「今は栄養を摂取せずとも問題ありません」
「・・・そっか」
随分と人間味を感じさせない返答をするなと思いつつ、響はエルフナインの手を引き適当なファミレスを探して歩き始めた。
その様子を見つめるものが一人と言えば良いのか一機と呼べば良いのか居た。
「見つけた」
降りしきる雪の中に紛れながらガリィは二人の後を静かに尾行し始めた。
◎
――2022年
万が一の可能性を考えウォズは並行世界を練り歩いていた。
『ライジングブレイク!!』
「この世界にも我が戦姫は居ない・・・。一体何処に」
砕かれずに残っていたアナザーウォッチから再生されたのだろうアナザーゼロワン、しかしながらウォズの手により瞬殺された事でろくな活躍をすることもできずにアナザーウォッチを砕かれ、契約者が倒れ伏す。
「貴様、何者だ?」
「そう言う君はスォルツじゃないか」
「ウォズ・・・ではないな」
「その通り、私は君の知るウォズではない。だが紛れもなくウォズさ」
「・・・ふむ、興味深いな」
何も情報を与えるつもりの無いウォズにスォルツが手を翳す、そうして彼の望むままに世界の時は止まる、だがそれは世界の内のみ既にレジェンドミライドウォッチによりオーロラカーテンの向こうに居るウォズには関係の無い事。
「貴様・・・!」
「そう憤らないでくれたまえ。まだ私たちは矛を交える時では無い」
誇りを持つ自らの力を防がれた事でスォルツはオーロラカーテンの内に居るウォズを睨み付ける。
「食えん奴め、良いだろう。いずれ貴様は葬ってやる、俺が王と成った暁にな」
今は関わる必要は無いと判断したスォルツは生成していたアナザーシノビウォッチを手に2019年に戻っていった。
◎
――2043年
元の世界へと帰ってきたウォズは魔法の世界に驚愕する前に焦りを浮かべる。
「これは・・・!あり得ない、いや可能性はある。ソーサラーめ再起したか」
文明の主力が魔法へと置き換わった世界の事も知っているウォズは煌めく塔を見る、世界に危機が迫っているのは彼女からしてみれば一目瞭然であった。
◎
「女王?キャロル?」
「はい、先ほども言いましたが僕はキャロルを止めることのできる、仮面ライダーを探しているんです」
「なんで仮面ライダーを?」
空腹では無いと言っていたが食欲がそそられたのか頼んだグラタンを頬張るエルフナイン、そんな彼女は響からの問いかけに小包から持ち手だけの剣を取り出し見せる。
「確かそれを使える仮面ライダーを探してるんだったけ」
「はい、この剣には数多に存在している、並行世界の仮面ライダーの力が込められているんです」
「これに仮面ライダーの力が・・・」
剣を手に取り眺める響は、それに明らかにライドウォッチ嵌める為の穴を見つける。
(もしかして)
とりあえずやってみるかとクウガウォッチを装填する、だがやはりというべきか剣は何の反応も示さない。
「何をしてるんですか?」
「ライダーの力はこれにも込められてるから、何か起こらないかなって」
「これに仮面ライダーの力が・・・。響さん、僕が探している仮面ライダーは世界を繋ぐ力を持っている仮面ライダーです」
「世界を繋ぐ・・・」
繋ぐ力とはどこか自身のアームドギアに似ているなと響は感じる。
その後一通りの説明がエルフナインより行われた、とにかく彼女はキャロルによって行われるという世界の分解を止めたいと言うことであった。
「そんなに都合良く世界を繋げる仮面ライダーが居るとは思えないけど」
「だとしても僕は諦めたくありません」
例え探している仮面ライダーが居なくとも、何かしらキャロルを止める方法はあるはずだとエルフナインは微かな希望に縋る。
「お客様~代金は支払えるのかしら?」
「え?」
会話に水を差すようにガリィが割り込んでくる、響は食事代を支払うように求められていると判断し財布を開こうとする。
「何で払おうとしてるのかしら」
「は?いや、普通にお金で・・・」
「支払いは、魔力に決まってるじゃない」
「魔力?」
何かやばいと響が感じているとテーブルの囲むようにローブを着た集団が現われる。
「まあ、ドライバーも指輪も無い貴女達には無理でしょうけど」
「ガリィ・・・!どうして此処が!!」
「ばれないと思ってたなんてお間抜けね。泥棒しちゃう悪い手は此処で切っちゃいましょうか」
怯えるエルフナインの手を掴もうとしたガリィに対し響はさせまいとテーブルを蹴り上げ妨害する、ガリィがテーブルを凍てつかせ砕くと響がエルフナインの手を引き駆けだしていた。
「捕まえなさいあいつらは反魔よ。きっちり想い出を搾り取ってせめてマスターの役に立ててあげないといけないじゃない」
ガリィの命に従いローブの者達が変身したメイジらは響とエルフナインへと向けて魔法を放った。
魔法によって生じた爆発によりファミレスの外に窓を突き抜け転がり出る。
「怪我してない?」
「は、はい」
響が咄嗟に庇った事でエルフナインには怪我は無い、しかし響の背は爆発によって服は破れ血に濡れていた。
二人を捕縛する為ににじり寄ってくるメイジと戦う為に聖詠を歌おうとする。
「バルウィッ!ぐぅッ!」
「響さん!?」
「歌えない・・・!」
ギアペンダントはいつでも戦えるとでも言うかのように熱を放つ、だが響の心がディバインブレイカーへと至りたくないという思いが彼女にシンフォギアを纏わせない。
「胸に歌が・・・浮かばないッ!」
「う、歌?」
今現在の世界にはノイズは存在しない、その為ノイズに対抗する為のシンフォギアは開発されていない。
故にシンフォギアの事を知らないエルフナインはいきなり歌おうとした響にただ困惑する。
「抵抗を許すな捕縛しろ!!」
隊長格のメイジが発した号令によりメイジ達が一斉にチェインを放つ、が出現した鎖は赤い斬撃により蹴散らされる。
「どうした救世主、歌わないのか」
「お前は、・・・確か電王!!」
いつの間に現われたのか、電王がエクストリームスラッシュを放ち響達をメイジ達から守る。
「試すにしても、今のお前じゃ駄目だな」
電王は響を見てため息をつくとドライバーにカードをセットする。
『KAMENN RAIDE AGITO』
ドライバーが電子音声を発する、その瞬間に電王がアギトへと変身する。
「変わった!?」
「さて、少し遊んでやる。来いッ!」
「貴様も反魔か!!捕縛しろッ!」
襲い掛かってくるメイジを軽くあしらいながらアギトは響達へと叫ぶ。
「何をボケッとしているッ!戦えないなら尻尾巻いてとっとと逃げろ!!」
「私も・・・私だってッ!」
撤退を促されるが響は逃げようとせず何度も歌おうとするが、その度に咳き込む。
「最優先対象ッ!貴様だけでもッ!」
「エルフナインッ!」
オーマ大臣より下された命令によりエルフナインだけでも捕らえようとメイジが迫る。
「何をしている立花響ッ!」
その光景を見てアギトが焦り、近くに居たはずなのに守れなかったと響は思った瞬間にエルフナインを突き飛ばす、彼女に代わりに鎖に縛られた響にメイジがテレポートを使用し牢獄送りにするために指輪を填めようと近づく、するとどこからか炎が飛来しメイジを吹き飛ばす。
「炎?」
炎が飛んできた方向へと響が顔を向けるとそこには異形の鬼、即ちアナザー響鬼が居た。
「その子に・・・その子に手を出すなぁぁぁぁああああ!!!」
咆哮しながら金棒を双剣のように構えたアナザー響鬼は響にチェインを施したメイジに跨がる、するとアナザー響鬼は金棒でメイジを幾度も殴打すると顔の宝石を砕き絶命させる。
「響鬼のアナザーライダーかッ!だったらこっちも響鬼で相手をしてやる」
『KAMENN RAIDE HIBIKI』
『ATTACK RAIDE ONNGEKIBOU・REKKA』
カードを使用しアギトは響鬼へと変身するとアナザー響鬼へと向かっていく、しかし当のアナザー響鬼は響鬼を完全にスルーしメイジを次々に炎を纏わせ剣のようにした金棒で攻撃する。
「何を考えてやがるッ!」
「黙れッ!邪魔をするなら京介さんでも容赦しないッ!」
「誰だそいつはッ!」
音撃棒と金棒が激突し清めの音が高らかに響き渡る。
「ファントムが二匹、面倒ねぇ」
「誰がファントムだ」
「アンタよ」
傍観を決め込んでいたガリィは腕に氷の剣を纏わせ二人の響鬼へと攻撃を仕掛ける、だが響鬼がアナザー響鬼を盾にした事でガリィへとカウンターを放つ。
「清めたまえ、祓いたまえ・・・なんてな?」
「調子に乗るんじゃないわよ」
ガリィより放たれた波動が響鬼を凍り付かせそれは響とエルフナインおも呑み込もうとする、だが二人のアナザー響鬼が立ちはだかり守る。
「アナザーライダーがなんで・・・」
「響さん、今のうちに逃げましょう!」
錬金術を用い鎖の拘束から響を解放したエルフナインは響に今は状況が悪いと逃走を促す、今の自身の状況を鑑み響はエルフナインと共に戦場から逃げ出す。
「逃がさないわよ」
「そいつはどうかな?」
「はあ?」
ガリィの目の前で凍り付いていた響鬼から深紅の炎が立ち上り氷が水を経ずに水蒸気へと昇華される。
『FOAM RAIDE HIBIKIKURENAI』
本来であれば夏にしか成れぬ筈の形態である響鬼紅となった響鬼はドライバーに黄色のカードをセットする。
『FINAL ATTACK RAIDE HI-HI-HI-HIBIKI』
広がった炎が巨大な音撃鼓となりガリィとメイジらを拘束する。
「音撃打!!爆裂深紅の型ッ!」
浮かび上がるリズムに乗り響鬼は音撃鼓を叩きメイジらを戦闘不能へと陥らせる。
「しぶといな」
「お前みたいな奴にやられる訳にはいかないんだよ」
負け惜しみを吐きガリィがテレポートジェムで撤退する、それを見届けた響鬼は爆裂深紅の型より逃れていたアナザー響鬼へと向き直る。
「さて、次はお前だ」
「貴方と戦う理由は俺には京介さん」
鬼火を吐き姿を眩ましたアナザー響鬼へと響鬼は呟く。
「だから誰だ」
本当に誰の事を言っているのか分からないと思いながら響鬼も戦場であった場所から姿を消した。