ン我が戦姫!!   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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新生:16XX

 熱が肌を撫でる。

喝采が耳朶を打つ。

慟哭が骨を震わせる。

誰のモノか、問を投げるまでもない。

自身にのみ聞こえる、この慟哭は失われる筈が無いと理由なく確信していた希望が砕かれたが故に。

 

「世界を識るんだ・・・」

 

文字通りひび割れ行く己へと炎の中の希望が、己へと新たな希望を与える。

 

「世界を・・・」

 

与えられた希望を果たすことが自らの果たすべき命題だと魂で理解する。

光が身体より発せられ罅はそんな物が無かったかのように消えていた。

 

「でも・・・。私一人でそんなこと・・・!」

 

まだ教わりたい事は山のように有ったと涙が頬を伝う。

 不意に、喝采が鳴り止む。

ノイズが世界に走る、それは時計盤の針が指で押さえつけられた事で生じる、時の停止を意味する。

 

「君は資格を手にした」

「誰?」

 

時を止めた下手人であるテスラが戸惑う少女へとアナザーウォッチを差し出す。

それは絶望を乗り越え希望を手にした少女に呼応し生れたもの。

 

「喪失を知った君は、選択肢を取る者ではなく。与える者となれ」

「私は・・・。いいや、俺はッ!」

 

お前の力だと主張するアナザーウォッチを少女は手に取った。

 

 

 

◎

 

 

 

 「ラットぉぉぉぉおおお!!!」

 

男の悲痛な叫びが暗く淀んだ空間に響く。

 

「派手に叫びをあげるな。直に貴様の順が巡る」

「やめろぉぉぉおお!!!」

「紘汰さん!!助けて、紘汰さん!!」

 

彼らには力がない。

ただ生きていくという、最低限の事をするのに必要な魔力を持たない彼らはこの世界において完全な異物。

故に葛葉紘汰と彼の友は世界を統べる女王の定めた法により処分される。

 

「さあ、その地味な想い出を捧げろ」

 

今まで此処に捕らえられた者達と同じように、人生を自らが刻んだ軌跡をただのエネルギーリソースとして全て徴収される。

それを行われるということは、即ち死。

自らが何者であるかが分からなくなりながら死に行くという。

人の最後としては到底考えられないもの。

 眼前にて友が今まさに尊厳を陵辱され殺されるというのに、紘汰はただやめてくれと懇願することしかできない。

 

「・・・欲しいか?」

 

ノイズ混じりであるが聞こえた声に紘汰が視線を巡らせる。

 

「抗う力が欲しいならば、頷け!!」

 

運命をこじ開ける力をやると言う声に紘汰はリスクを考慮せず頷く。

 

「繫がりは一瞬だが、それで十分だ。切っ掛けは与えた、後はお前が戦うんだ葛葉紘汰!!」

 

遠く離れた世界より与えられた力が腰へと収束する。

 

「ここからはお前のステージだ」

「もう、好きにはさせねぇ!!」

 

突然の高エネルギー反応に、ラットを想い出を抽出する装置に繋ごうとしていたレイアは牢を振り返ると橙の斬撃が飛来し彼女へと直撃する。

 

「派手に理解不能ッ!」

 

態勢を整え着地したレイアは牢を破壊し現われた戦士を目撃する。

 

『オレンジエナジーアームズ!!』

 

姿を見せるのは仮面ライダー鎧武・真。

 

「ラット無事か!?」

「こ、紘汰さん!?」

「良くわかんないけど、何とかなりそうだぜ」

 

装置を破壊しラットを救出した鎧武・真は溢れる力から自身をもってそう言う。

 

「容易く御せると目されるとは、地味に不快だ」

「言っただろ、もうお前らの好きにはさせねぇ!!」

 

魔力を持たない者を迫害し虫のように殺してきた女王に対する怒りが鎧武・真を突き動かす。

レイアにより放たれたコインをソニックアローから放った拡散矢により相殺すると、鎧武・真は牢を破壊すると捕らえられている者達に脱出の機を与える。

 

「ラット、その人達を連れて先に行っててくれ!!」

「紘汰さんは!!」

「俺はこいつを食い止める」

 

状況を見て鎧武・真のみがレイアを相手取れると判断したラットは皆を連れ地上を目指す。

 

「地味な希望だ。故に毒だな」

「なんだと?」

「須くメイジが捕らえる。貴様の抵抗は派手に無意味だ」

「勝手に決めるな!!此処はもう俺のステージだ!!」

 

狭所故に回避のしようが無いコイントスによる面制圧の射撃を鎧武・真は致命の被弾のみを落とす。

ダメージを受けながらもレイアに肉薄した、鎧武・真は彼女を殴り続けて胸部を蹴りつけた勢いで押し倒す、そしてソニックアローにより脚部の付け根を破壊し機動力を大きく削ぐ。

 

「貴様ッ!」

 

叫ぶレイアを放り鎧武・真はラット達を守るために彼も地上を目指していった。

 

 

 

◎

 

 

 

 鎧武に変身していた少女舞を助けた翼は彼女達の拠点へと案内されていた。

 

「助けてくれてありがとう」

「礼を言われるような事じゃないわ。防人として当然の事、何よりも私情ね」

「それでも貴女がいないと私は死んでいた。・・・だけど駄目だな」

「何が駄目なの?」

 

小さくこぼされた舞の呟きに翼は思わず聞き返す。

 

「この力、本当は私じゃなくて別の人が使うはずだったの」

 

手に持つ戦極ドライバーを見て言う舞は悔しさから唇を噛んでいたのか血が流れる。

 

「そいつお人好しだから。私にこれ押しつけて捕まって・・・」

 

だから今頃はもう殺されてしまっているだろうと舞は気を落とすのだった。

 港にある使い捨てられたガレージのような場所こそが舞達の拠点であった。

 

「舞さん!!無事だったんですね!!」

 

拠点へと戻ってきた舞を呉島光実が出迎える。

自身のせいで舞が捕らえられてしまったのではないかと、気が気ではなかった光実は彼女が無事な姿にホッと安堵する。

 

「その人は?」

「この人は翼。私を助けてくれたの」

「うっそー!?翼ちゃん!?」

 

舞が翼を紹介し始めたと同時に了子が姿を現す。

 

「櫻井女史!!無事だったのですね!!」

「こっちの台詞よ。響ちゃんに未来ちゃんは一緒じゃないの?」

「それが虹の波に覆われると私一人だけでして」

「私もね。緒川くんすら消えちゃってびっくりよ」

 

了子の言葉に翼は先に出会ったフィーネの書き換えの取りこぼしというものを思い出す。

 

「お二人は顔見知りだったんですね」

 

そう言うことなら舞の救援に入ったのも納得できると光実が頷いていると誰かが拠点内へとやってくる。

 

「なんだ、また人が増えたのか?ま、戦力が増えるに超した事はないさ」

 

人は個人を忘れるときに声から亡失すると言われる。

だがことその人物に関するならば風鳴翼は決して忘れはしない。

 

「奏・・・」

「そ、私もびっくり」

 

天羽奏、翼にとっては比翼連理の片翼と言っても過言ではない存在。

 

「新顔だな。歓迎するよ」

「歓迎されるわ」

 

返答としてあっているのかは分からないが翼は差し出された握手に応じるのだった。

 

 

 

◎

 

 

 

 川を泳ぐマヨネーズの群れに驚き思わずトイカメラのシャッターを下ろす士は背後に佇むメデューサを手で制する。

 

「言いたいことは分かっているさ」

「ならば何故実行しない」

「既に軽く絶望している奴を落としても美味くないだろう?希望(スパイス)で味付けしてからだ」

 

以前撮っていたメデューサの写真を現像していたのか彼女へと押しつけながら士は場を立ち去る。

 

「俺はグルメだからな」

「バフォメットめ・・・」

 

押しつけられた写真を見ることなく石にして砕いたメデューサは苛立ちから舌打ちする。

 

「メデューサ様、あんな者よりもこの俺にお任せを」

「ヌエか・・・」

「ええ、貴女の忠実な僕です」

「そうだな・・・。そうするか、吐いた唾は飲めんぞ?」

「承知ですとも」

 

新たに姿を現したファントムヌエにメデューサは響を絶望させ新たなファントムを生み出す役目を与えるのだった。

 

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