流転し続ける状況に翻弄されながらも、響は新たな世界で出会ったエルフナインと共に辛くも命を拾っていた。
メイジによって焼かれた響の背は彼女自身の治癒力によって完全に治っていた。
色白くはなっているが到底焼かれたとは思えない肌がそこにあった。
「凄い・・・もう治ってるなんて・・・」
「痛くは無いけどくすぐったいからあまり触らないで」
「すみません。ですけどここまで治りが早いとは思いもしなくて」
初めて出会った際に聞いていた怪我の治りが早いとかそう言うレベルでは無かったが故にエルフナインは驚きを隠せない。
「私の身体の事は、今はどうでも良い。今は、あのアナザーライダーを倒さないと」
翼も未来も、そしてウォズまでもが今は響のそばには居ない。ついでに言えば地獄地獄とうるさいあの義姉妹は今どこに居るかは分からない。
「・・・まあ、あいつらは風に吹かれてるか」
「あいつら?」
「気にするだけ無駄だし。知っても疲れるだけ」
出会いからして最悪であるあの二人の事は考えるだけ無駄であるとし響は頭を現状へと向ける。
(この変わり様からして多分二課も消えてる。つまり、孤軍・・・。それでもだ、敵を定めて殴り倒して世界を戻す)
世界は変われども仮面ライダーらしき存在も先ほどの戦いにて響は確認していた。
そしてその仮面ライダーは現われたアナザーライダーとは毛ほども似ては居なかった。
「だったら探さないとか」
「探す?一体何を探すんですか?」
「アナザーライダーを倒すには元となった仮面ライダーの力が要る。だからあの鬼みたいな奴の元になったライダーを探し出して力を貸してもらう」
最善はライドウォッチとして力をもらい受けることができれば良いが、初対面でそんな事を言えば要らぬ諍いが起きるは相手が余程にお人好しでなければ必定。
故に協力を取り付けなければいけないと響は考える。
「絶望とは・・・何もなせず無為に、無為に!無為に!!死すことッ!」
動かなければ何もできないと響がエルフナインを連れだって行こうとすると前触れなくヌエが襲い掛かる。
「なんだこいつッ!」
「だがしかいして私が君に意味を与えるッ!それ即ち、絶望しファントムを生み出すことに他ならないッ!」
焦点の合っていない目で、だけを見て攻撃し続けるヌエの尾が閃き蛇の毒牙が迫る。
「ッ!」
「抗い食らいつくッ!良い絶望を見せてくれそうだッ!」
蛇の首を掴み毒牙を防いだが響は蹴り飛ばされる。
「歌えさえすれば」
「逃げましょう響さん!!あのファントムはヌエ!!今まで大勢の被害者を出した危険な存在です!!」
「ひょひょひょ」
伝承に記されているように不気味な笑い声を発するヌエが飛びかかる態勢に入る。
「新種の魔化魍か」
アカネタカの群れが飛来しヌエの動きを阻害すると男が現われる。
「誰?」
「響鬼だ」
その男、京介は響からの誰何にそう答えると音叉を鳴らし変身する。
「仮面ライダー・・・!」
「弟子の不始末をつける前に、お前を清めてやる」
しゅっと聞こえてきそうな動きをした響鬼は音撃棒を烈火剣へと変化させヌエへと向かっていく。
「貴様、ファントムじゃないな」
「言っただろう、響鬼だってな」
律儀に答えた響鬼が烈火剣を振り下ろすと、それを防ごうとしたヌエの左手首を切り落とす。
「ぐぅぅううう!!!」
肉の焼ける音とヌエの呻き声が発せられるがごぽごぽと断面が泡立つと蟹の爪が生える。
「バケガ二の腕だと!?」
「私はヌエ、定まらぬ者ですから」
蟹の爪より酸性の泡が噴出され響鬼を傷つける。
「ぐぅッ!」
「戦えないことが、もどかしいッ!」
何もできない自分に苛立ち響は感情のままに地面を叩く。
ことりと響の懐からクウガウォッチが落ちる。
「あれは・・・どこかで見た覚えが・・・」
ライドウォッチ自体に見覚えがあるのか響鬼は一瞬呆けるが、直ぐに戦いへと意識を戻し烈火剣と蟹の爪を鍔迫り合わせる。
「そうだ、あいつはウォッチから武器も出してた。だったら!!」
『クウガ!!』
未来の自身にできて今できない道理は無いと響がクウガウォッチを起動するとその手にタイタンソードが出現する。
「まだ、私には戦う手があるッ!」
タイタンソードを構え響は自らに背を向けているヌエへとタイタンソードを突き立て封印エネルギーを流し込む。
「ぐあぁぁああああ!!」
突然流し込まれた封印エネルギーによって身を硬直させるヌエへと響鬼が音撃鼓を貼り付ける。
「音撃棒!!猛火怒濤の型ッ!」
二つの音撃棒を構えた響鬼がヌエへと清めの音をたたき込み続ける。
「そんな、定まってしまうッ!私の形が死に・・・!」
その言葉を最後にヌエは封印エネルギーと音撃に肉体が耐える事ができなくなり爆裂四散した。
「助けたつもりが助けられたか・・・」
「いや、貴方が来なかったらやられてた。私もあの子も」
「当然だ。俺は、鍛えているからな」
成り行きとは言えヌエ相手に共闘した事で響は京介がアナザー響鬼を倒すことに必要だと判断する。
「貴方に頼みがある」
「頼みだと?悪いが俺はもう弟子を取るつもりはない」
「そう言うのじゃない。倒したい奴が居るから手を貸して欲しい」
「俺が?」
当然と言えば当然だが困惑する京介に響は説明を始めた。
◎
ヌエが口ほどにも無く倒された事でその様を見ていたメデューサは舌打ちをする。
「使えない奴め・・・」
「その判定が貴様にも下されようとしているぞメデューサ」
「金色の魔法使い・・・」
音もなく現われた仮面ライダーソーサラーに対してメデューサは忌々しい物を見る視線を送る。
「それを言うならば貴様もだろう。この狭間を創り出すときに余分な物を巻き込んだからな」
「あれはあれで役に立っているよ」
「ほう・・・。私が余分か」
「噂をしたからか、文字通り影を送るとはな」
新たに現われたアナザー鎧武は街を睥睨する。
「魔力の有無による格差が闘争を巻き起こす。それこそが私の求める世界」
「良く言う、貴様の望みは黄金を超えることだろう」
「如何にも、私は全ての世界において唯一神となる」
胸に抱く野望は違えど今彼らは平和を脅かす存在に違いは無かった。