太陽と正十字 ~日本国召喚異聞~   作:ありさかいずも

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国交

■日本国 東京

 中央暦1638年6月20日

 

 

 日本国、トーパ王国、イルメリア専制公国の三国会談と、その後行われた実務レベルでの交渉の結果、次の事項が決められた。

 

○三国は互いの立場を尊重する。

 

○三国間で早急に為替レートを設定する。

 

○三国間で工業規格や兵器等の規格を統合する。

 

○トーパ王国は、可能な量の水産資源、森林資源を日本に輸出する。

 

〇イルメリアは日本国に対して復興支援、技術協力および防衛協力を行う。

 

〇日本国はイルメリア・トーパ両国に対して、クワ・トイネ公国、クイラ王国との国交、通商協定を仲介する。

 

○三国間で相互不可侵条約締結に向けた会話を継続する。

 

○三国間で通商および相互協力のための会話を継続する。

 

 

 

 

 

■日本国 横浜港

 海防艦コンタキオン 長官公室

 

 

 マホガニーとベルベットで彩られた長官公室。

 

 海防艦コンタキオンの最後尾にあるこの区画は、アールデコ様式のモダンな造りであった。

 

 

 そのテーブルを、ユリア・テオドラ、武田総理、トーパ王国の外交官と、その従卒が囲んでいた。

 

 軍艦が外交の場であった頃の名残であるこの区画は、久方ぶりに本来の用途に用いられていた。

 

 

 

 その日の非公式な会談は、ユリアと武田総理の対話から始まった。

 

 実は外交に慣れていないユリアであったが、商取引や研究発表と同じように振舞えばいいと考え、自分を落ち着かせていた。

 

 

「ごきげんよう、武田総理。まずは無事に憲法が施行できたことをお祝いいたします」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

(この衣装と立ち居振る舞いで未来人だというのは、言われないとわからないだろうな・・)

 

 

 トーパ王国の中世そのままの装束と、ユリアの豪奢な衣装、それに鎧姿の従卒に少々面食らっていた総理だったが、案外常識的なあいさつに安堵した。

 

 

「お祝いの言葉を頂いておいてなんですが、今回はかなり強引な手法を用いました。あまり素直に喜べるものではありません」

 

 

「・・平和憲法の理念は大変すばらしいものだと思います。ただ、それは連合国の庇護があってのこと。

 この世界の倫理観は、かつての大英帝国以上ですわ。銃剣を突き出す相手に右手を差し出しても、何の意味がありましょう?」

 

 

 正論であった。

 

 いかに善行を積み、平和を望もうとも、相手がそれを望まなければ成立しない。

 

 

 

―武装せる予言者は勝利を収め、

 反対に、備えなき者は滅びるしかなくなる―

 

 

 武田は、そんな意味のことを言った思想家が、中世の欧州にいたことを思い出した。

 

 

「そう言って頂くと、少し胃の痛みが和らぎます。・・ところで、貴国の軍艦からは、どれも先進的な印象を受けますが、この艦だけは、なぜこのような?」

 

 

「この艦は二度の戦争でローマの護りとなり、守護者マリヤになぞらえられています。そのため、幾度も改装を重ね、国防の象徴として存続させています」

 

 

 

「それに、様式美って大切だとお思いになりません?」

 

 そう言って、ユリアは悪戯っぽく微笑んで付け加えた。

 

 

 

 友好条約と通商協定の締結後、イルメリアの輸送艦に積み込まれていた建設機械と、戦前の日本が喉から手が出るほど欲していた高精度の工作機械が提供された。

 

 これらの機器と、イルメリアから派遣された技官や工兵隊の指導によって、日本の復興は史実よりも加速されていく。

 

 

 二日後、役目を終えたイルメリア艦隊は、大勢に見送られ出港した。

 

 徐々に遠ざかる横浜港を、ユリアはコンタキオン艦尾の回廊、スタンウォークから見つめていた。

 

 

―せめてこの国が、もう少し復興するまでは、世界が静かでありますように・・

 

 

 

【挿絵表示】

 

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