太陽と正十字 ~日本国召喚異聞~   作:ありさかいずも

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フェンの軍祭(三)

■アマノキの港

 海防艦スパティオン

 

 20騎のワイバーンは、なおもフェン王都、アマノキに迫っていた。

 さらにその後方海上には、地球で言うところの戦列艦22隻が確認されていた。

 

「艦長、目標との距離20海里を切りました」

 

(この針路で速度を落とさないのであれば、王都爆撃の意図ありと考えた方が良いか・・ 単なる示威行為であればよいが・・ とはいえ、まだ攻撃許可は出せんな・・)

 

 悩むアーリ・エギルソン艦長。

 

 エギルソンは、予備役となった強襲揚陸艦ビザンティオンから、スパティオンに転任していた。

 転任直後のこの状況は、熟練の艦長である彼にとっても、頭の痛いものであった。

 

 

 通信員から報告が入る。

「艦長、『八雲』より入電、”我ラ港外デ待機ス”、どういう意味でしょうか?」

 

「なるほど、彼らは誘導弾を積んでいなかったな。誤射の危険を考えて、港外で待ち受ける算段か」

 

「算段、ですか?」

 問い返す副長。

 

「日本艦隊は王都空襲の可能性ありと判断したのだろう。こちらも対空戦闘用意、但しシーカ(近距離対空ミサイル)のみ許可! それと、周囲に警告を出しておいてやれ」

 

 

 

 パーパルディア皇国、監査軍東洋艦隊のワイバーンロード20騎は、フェン王国に懲罰攻撃を加えるべく、王都アマノキ上空に迫っていた。

 

 フェンの軍祭には文明圏外各国の政府関係者や武官が参加している。

 その軍祭に合わせた攻撃によって、皇国に逆らうことと、それに関わることの意味を知らしめさせるのである。

 

 

 ワイバーンが迫る中、ガハラ神国の風竜3騎は首都上空を飛行していた。

 

 風竜が皇国のワイバーンロードを睨むと、ワイバーンロードは露骨に目を逸らした。

 亜竜であるワイバーンは、上位の竜、本物のドラゴンを本能的に怖れる。

 例えロード種とはいえ、それに違いはなかった。

 

 

 風竜はワイバーン隊の意図を察してはいたが、敢えて手出しはしなかった。

 先程、スパティオンからの警告を受信していたためである。

 

「本当にあれを見逃して良かったのか?」

 ガハラ神国騎士団長スサノウは、相棒の風竜にが尋ねた。

 

「下の白い船が言うには、王都に近づくと誤射の危険があるそうだ。 ・・私でも木端みじんになるくらいのな」

 

「よく判らんが、お前が言うからにはそうなんだろう」

 彼は、真面目な顔でそう言った。

 

(・・絶対分かっていないな)

 風竜の呟きは、風に紛れて消えていった。

 

 

 

 ワイバーン隊を率いる騎士長は、麾下に命じた。

「ガハラの民には構うな。フェンの城と、・・そうだ、あの目立つ船を沈めろ!」

 

 西側から飛行してきたワイバーン隊は、2隊に分かれると、その片方はアマノキ城に向け急降下を開始した。

 

 

「ワイバーン? ・・何の余興だ?」

 

 ワイバーンに気付いた人々が空を見上げたとき、急降下した竜の口に火球が形成され始めたのが見えた。

 

「!」

 

 次の瞬間、10騎のワイバーンから放たれた火球がアマノキ城の最上部に着弾。

 戦国期の日本の城と同じく、木と土で造られた王城は、たちまち炎上した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 一方、残り10騎は港外の八雲に殺到した。

 1万トン級の大型艦、しかも明治期同様に高々とマストを聳え立たせた姿は、確かに目立っていた。

 

 

「八雲にワイバーン10騎、急降下!」

 

 スパティオンの艦橋でレーダー員が叫ぶ。

 

「やはり来たか!」

 

 

 次の瞬間、ワイバーンロード10騎は、港外を航行中の八雲に対し、ほぼ垂直に降下した。

 

「敵機直上、急降下!」

 

「両舷最大戦速、取ーりかーじ!」

 

「自動機銃、迎撃開始!」

 

 近代改装を終えた八雲の特徴の一つが、過剰なまでの近接火力だった。

 現代艦艇なら通常1基の20ミリCIWSが4基、当然、猛烈なまでの火箭が吐き出される。

 導力火炎弾を吐き出せないまま、次々と落ちていくワイバーン。

 

 だが、敵機が急降下に入ってからの迎撃では、さすがに時間が足りなかった。

 

 1体だけ運良く火箭を潜り抜けたワイバーンが、火炎弾を吐き出す。

 

 

 ドーン・・

 

「飛行甲板に被弾!甲板上に火災発生!」

 来襲したワイバーンのほとんどを撃墜した八雲だったが、導力火炎弾を1発だけ艦尾に被弾した。

 ナパームと同じく、粘性を持ったワイバーンの火炎弾は消火が容易ではない。

 

「防火部署、配置につけ! 引き続き見張りを厳とせよ!」

 矢継ぎ早に指示を出す寺崗艦長。

 

「艦長、ちょっと甲板が焦げたくらいだ。慌てなさんな」

 落ち着いた口調で士村が諫めた。

 幸い、(日本基準で)最新の消火設備によって、火災は瞬く間に消し止められていた。

 

「はっ」

 士村の諫言の意味を察した寺崗が、短く返答する。

 士官は落ち着いているのが仕事なのだ。

 

「しかし、指揮艦艇に誘導弾を積まないイルメリアの設計は、正解かも知れませんな」

 

「確かに。青葉と鈴谷がそれで沈んでいたな・・」

 

 戦時中、米軍は防御力を重視し、重巡に魚雷を搭載していなかった。

 反対に攻撃力を重視し、積極的に雷装を行ったのが日本海軍だった。

 どちらが正解かは分からないが、魚雷もミサイルも、誘爆のリスクは変わらない。

 

 

「話は変わるが、仕置きは必要かな? 丁度いい具合に、沖合に艦隊もいることだし、な」

 

 笑顔の士村。

 だが、その眼は笑ってはいなかった。

 

 

 

■同刻、スパティオン

 

「王都および日本艦隊への攻撃を確認」

 

「近SAM迎撃開始!」

 エギルソン艦長の判断は早い。

 スパティオンの後部ヘリ格納庫に取り付けられた、10連装発射機が上空を向いた。

 

「全目標ロック、シーカ、自動モード」

 

『短剣』を意味するシーカは、米軍の近接防空ミサイルSeaRAMと比べても応答が速い。

 レーダーと赤外線で瞬時にロックオンした目標に向けて、10発が連続で発射される。

 

 音速の2倍で飛ぶミサイルによって、全てのワイバーンロードは血飛沫とともに爆散した。

 王都に飛来したパーパルディア皇国のワイバーン隊は壊滅した。

 

 

「全弾命中。シーカ再装填まで3分」

 射撃を終え、自動装填される近SAMがモニターに映っていた。

 

「八雲より入電、”ワレ損害軽微、是レヨリ西方ノ船団ニ対シ臨検ヲ行ウ”」

 通信員が苦笑しながら読み上げる。

 日本保安隊は、未だモールスを使う癖が抜けていなかったのだ。

 

「気を抜くなよ、第二波が来ると思え!」

 

 エギルソンは、戦闘後、気の緩んだ乗組員に渇を入れつつ思う。

(今回は借りを作ってしまったな・・)

 彼は理解していた。

 日本艦隊が、危険な役回りを買って出てくれていることを。




 さ~て、来週のシムラさんは!

・シハン、たくらむ
・竜騎士、溺れる
・シムラ、暴れる、の三本です!

 来週もまた見てくださいね!

 ・・んぐぁぐぐ
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