パーパルディア皇国
エストシラント港
「艦長、総員収容完了!」
艦橋のモニターに映るエリン・アダ少尉が告げた。
「装甲近衛小隊、急ぎ帰艦せよ」
ワルデン艦長の命令を受け、4体の装甲歩兵"グノーム"が後退する。
彼らは、港に押し寄せるパーパルディア兵に向けて牽制射撃を行っていた。
だが、威嚇射撃以上に効果があったのは、その威容だった。
パーパルディアの兵達は、初めて見る全高4メートルの巨人に恐怖し、それ以上の追撃を諦めていたのである。
―第1外務局
レミールは第1外務局の会議室で、第2文明圏列強国であるムーの大使を待っていた。
会議室にはレミールの他、第1外務局長を筆頭とする幹部が顔を揃えていた。
「ムー国の大使が来られました」
「入られよ」
重厚な扉を開け、ムー国の大使ムーゲと随員3名が入室した。
「掛けられよ」
案内役の職員に促され、ムー国大使一行は着席した。
(なぜ唐突に呼び出されたのか・・理由が判らん・・)
ムーゲは思いあぐねていた。
パーパルディアは、彼の母国と特に仲が良い訳でもないが、敵対している訳でも無い。
彼は会談の前に気を引き締めた。
「それでは、会談を行いたい」
レミールが発言した。
「帝国がイルメリアと戦争状態に突入した事は、知るところであろう。
その事に関して、貴国の考えをお聞かせ願いたい」
レミールの問いにムーゲが答えた。
「はい、この度の貴国とイルメリア専制公国の戦争が、可能な限り短期に終わるよう願っております」
その発言を受けたレミールの表情が曇った。
「いや、社交辞令は結構、本当の処をお話し願いたい」
「?」
レミールの意図が判らず、ムーゲは戸惑った。
レミールは重ねる。
「我々はイルメリアの機械軍艦を何度も目撃している」
「・・いったい何を仰りたいのか、解り兼ねます」
「解りませぬか? わらわは、イルメリアが機械軍艦を使用していると申している。
機械軍艦が作れるのは、貴国くらいであろう。
貴国は、なぜ今まで決して輸出しなかった兵器を、イルメリアに輸出した!?」
問い詰めるレミールに、ムーゲは萎縮するとともに戸惑っていた。
「貴方がたは、重大な誤解をなさっている。
我が国は、イルメリアへの兵器輸出などしておりません。
それに、仮に輸出を打診したとしても、彼らは我が国の兵器には見向きもしないでしょう。
なぜなら、我々が得た情報や、貴国のカイオス殿の資料から、我が国よりも高い技術を持っていると考えられるためです」
「文明圏外の蛮国が、第2文明圏の列強国よりも技術的に進んでいる!?
そんな話を信じるとでも!?」
「魔法文明の国には判りにくいかもしれませんが・・」
そう言って、ムーゲは鞄から数枚の写真と、鮮やかな発色の冊子を取り出した。
「これが、我が国の戦闘用の飛行機械、マリン」
発色の悪いカラー写真には、二重反転プロペラを機体後方に備えた、カナードプッシャー式の飛行機が写っていた。
「こちらはイルメリアの戦闘用の飛行機械、ハウッカという名称だそうです」
冊子には、背中が丸く盛り上がったデルタ翼機の写真が載っていた。
「見較べると分かりますが・・」
ムーゲはテーブルに写真を並べた。
「我が国のマリンはプロペラを回した風で飛ぶのに対して、イルメリアの機体は高温のガスを噴き出して飛ぶ方式で、我が国では研究中の方式を採用しています。
つまりは、我が国は兵器を輸出するどころか、逆に技術提携を乞いたい立場なのです」
次に彼は、近代的な建物が立ち並ぶ、緑溢れる都市の写真を取り出した。
「これは、ロデニウス大陸の書店で購入したイルメリアの観光案内の本で、国の概要や交通、名所などが詳しく解説されています。
これによると、規模こそ人口150万と小さいものの、強力な艦隊と航空隊を備え、用いられている建築技術も恐らく我が国を凌駕しています」
パーパルディア皇国側の面々の顔色が一気に悪くなった。
ムーゲはさらに話を続けた。
「国の規模はともかく、軍にしても、建築技術にしても、イルメリアは我々よりも遥かに上。
神聖ミリシアル帝国より上と言っても過言ではありません。
そのイルメリアと戦端が開かれるのであれば、我々は貴国からの引き揚げを検討します。
これから起こる戦争で、皇都が無事である保証はありません故」
―一方その頃・・
臣民統治機構長官パーラスは、皇帝ルディアスに拝謁していた。
「してパーラスよ、予の許に参ったのは何用か?」
ワイングラスを燻らす皇帝に、パーラスは事の次第を報告した。
「・・その結果、イルメリア人どもは、皇国に対してに対して宣戦を布告した挙句、
小賢しくも幻術で我らを撹乱、逃亡した次第で御座います。
このまま奴らをのさばらせておけば、他の非文明圏の蛮国に対して示しがつきませぬ。
よって、逃亡した外交団と、同国の殲滅を具申致します」
報告を聞いたルディアスは、その手に破片が刺さるのを意にも介さず、ワイングラスを握り潰した。
そして、皇帝ルディアスは宣言した。
「列強を嘲るような真似をして、このままで済ます訳には行かぬ・・
皇帝ルディアスの名において、イルメリアを名乗る蛮族に宣戦を布告する、殲滅せよ!」
(・・フフフ、やはり皇帝は、こちらの目論見通りに動くか)
頭を垂れたまま、パーラスはにやりと笑った。
ムー国大使との会談の後も、第1外務局の主だった者たちは会議室に残って議論を続けていた。
ムーゲの発言が正しいとすれば、自分たちは得体のしれない超先進国を侮り、その国民を殺害した。
さらに、相手は皇国の行動を宣戦布告と受け取っていた。
列強国ムーの大使の発言は重く、あまりの衝撃に全員が放心状態となり、議論を重ねるも具体的な対策は思いつかない。
「さて、これからどうするか・・」
レミールの発言に、エルトが返した。
「ムーゲ大使が言っていた事が本当とは限りませぬ。
ムーが代理戦争を行うためにイルメリア人に兵器供与を行っていた場合は、勝機は御座います」
「・・フフフ・・ハハハハ!」
レミールが突然笑い始めた。
「代理戦争か・・最悪の想定が唯一の望みになるとはな・・喜劇であるな!」
「レミール様!?」
エルトは、レミールが壊れたのではないかと心配した。
思い返してみれば、イルメリアの国力に気付く機会はあった。
最初にそれに気付いたのは、確か・・
「レミール様、秘かにカイオスを送り込み、交渉に充てるというのは如何でしょうか?」
エルトは、はっと思い付いたことを口にした。
「そうか・・ カイオスならば暇を持て余しておるな・・」
レミールはしばし悩むと、エルトに命じた。
「エルト、その線で検討せよ。委細は第1外務局に任せる」
「はっ!」
第1外務局の幹部たちが、一斉に頭を垂れた。
この日、第1外務局の灯りは深夜まで消えなかった。
書いているうちに、原作と流れが違ってきました。
うちのレミールさんは傲慢ですが、ちょっと理性的です。
なお、本作のマリンのモデルは、ボルトンポールP.100です。
皆さま、紅茶をキメて下さいませ。
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スカイホークかわいい。。