カラスの恩返し   作:ゼノアplus+

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吾輩はカラスである。

 

 

吾輩はカラスである、名前はまだない。

 

そして生命の危機である。誰か助けて?

 

 

「あれ?せんせ……なんかあそこに居ない?」

 

「え?カラス……かな。ネットに引っかかってる」

 

 

うぇ!?めっちゃちょうどいい所に最後の希望いるじゃーん。そこの人間様!!なんでもいいから助けてください!!今目の前で大事な命が奪われようとしてまーす!!

 

 

「アー!!アァァァァァァァァァ!!!!」

 

「うるせーなアイツ」

 

「でも、苦しそうだよ」

 

 

ああもう!!人間から転生したと思ったらカラスだなんてなぁ!?急にランク下げるやん?日本人の定番って言ったら異世界転生だろぉ!?どうしてこんな辺鄙な場所でカラス生、送らにゃならんのですか!!

 

 

「助けてあげられないかな、せんせ」

 

「今すぐにはちょっとな……カラスを触った手でさりなちゃんに触れるわけにもいかないし……仕方ねぇ。ゴム手袋持ってくるか」

 

 

さりなちゃんとやらはクソ優しいのにそこのインテリメガネ野郎は生き物に優しくしろー。生類憐みの令知らねえのかー。

 

……あ?うぉぉぉ……ちょ、ちょっと優しい触り方ですやん。なんだっけこのインテリメガネ野郎。せんせ?先生?っぱアンタも女の子のお願いは聞きたくなっちゃうよね。うんうん分かるよ。性格も良くて声も可愛いんだからきっと見た目も……!?顔の造形すご!!え、絶対美少女じゃん!?

 

 

「わぁ!!無事でよかったねカラスさん」

 

「大人しいなコイツ。カラスは知能が高いって聞くけど、言葉がわかるわけでもないだろうし……?」

 

 

あれ……さりなちゃん……もしかして、癌……か。ニット帽から髪の毛が全くはみ出してないし、体つきも細過ぎる。なんだっけ、薬の副作用で全部剃るんだっけか。じゃあ、せんせっていうのは入院してるところの医者?

 

え、そんなに人生大変なのに小汚いカラス1匹を助けてくれる優しさがあるの!?はぁ!!ぐうかわじゃん。推せるわ〜、神様とか居たらぶん殴りたいぞおい。こんな良い子になんて悲しい現実叩きつけてんだオラァ!!その目玉突いてやろうか!?コレでも雑食のカラスやぞ?

 

転生する時に神様とかあってないし〜、言いたい放題ですぅ〜。会ってたらカラスなんかに転生させること文句言ってるに決まってるよなぁ!?

 

 

「アァ……!!」

 

「わぁ。お礼言ってるのかなぁ」

 

「そんなわけ……え、でも…まじで?」

 

 

ただのカラスと思っちゃいけねぇぜお二人さん。なんたって俺は元人間のカラス、人間より圧倒的に脳みそが小さくたって、片翼広げてお礼言うくらいできるんだってばよ。

 

 

「アァ!!……カァーーーーー!!!!」

 

「今度はお辞儀まで……すごいカラスもいるんだねさりなちゃん」

 

「すごいねせんせっ!!」

 

 

人の優しさが身に染みるぜぇ。体カラスなんだけどね。でも君らももうちょっと疑った方がいいよ?こんなど田舎のカラスが人っぽくお辞儀するわけないやん?すごいで済ませる量分超えてね???

 

 

 

次の日、お礼も兼ねてさりなちゃんの病室の窓に降り立った俺です。嘴でコンコン窓を突いてみた。

 

 

「あれ、カラス?もしかして昨日の?」

 

「アー」

 

「わぁ、やっぱり!!私のことわかるんだぁ!!」

 

 

そりゃもう!!命の恩人ですから。あっ、これ昨日のお礼です。お納めくださいさりなちゃん。ついでに先生も。

 

 

「え?紅葉?……もしかしてお礼!?えぇ!?すっっっごーーーい!!!!」

 

「いや駄目だろ。不衛生にも程がある」

 

 

……はい。すんませんした先生。いやさ、分かってたよ?でもやっぱり感謝の気持ちって形にしないと伝わりにくいやん?しかもワイ、カラスなんですよ。ゴミになっちゃうからこれ持って帰るね。

 

 

「いや待てカラス。さりなちゃん。これちょっと預かってもいいか?必ず返すよ」

 

「うん、せんせが言うならいいよ」

 

 

え……?何するんすか。受け取ってもらえるなら越したことないけど。

 

 

「んー……あっ、そうだ。名前つけてあげる。カラスとか呼ぶの可哀想だし」

 

「明日にはもう来ないかもしれないよ」

 

「それでもいいよ。せっかくこうしてきてくれたんだもん」

 

「じゃあ明日もこいつが来てたら、さりなちゃんが名前をつけてあげたら?」

 

「うん、そうする!!いい?カラスさん」

 

「アー!!」

 

 

うっひょぉ、さりなちゃんが俺の名付け親だって!!テンション上がってきたぁ!!名前呼ばれて駆けつけるペットの気持ちを今完全に理解してしまったぜ!!

 

 

 

 

さてと、ここまでが前置き。ここからは、俺とさりなちゃんとインテリメガネ野郎もとい……なんだっけ?あー……やべ忘れた。先生でいいや。さりなちゃんと先生のストーカーをすることにした俺の日々をダイジェストでお届けするぜ⭐︎

 

 

では改めて、吾輩はカラスである。名前はヨミ。マイエンジェルさりなちゃんがつけてくれた最高の名前だぜ。

 

 

 

◯月×日 

 

『ヨミちゃん今日も来てくれたの?わっ、今日は枝?ありがとね〜』

 

『あーヨミか。院内に入って来ないのなんでだろうな。不衛生だから窓の外にいるのは助かるけど。ま、ゆっくりしてけよ』

 

 

あたぼうよ先生。命の恩は日々の感謝で返すぜぃ。それにしてもさりなちゃんかわよ。

 

 

◯月△日

 

『おはようヨミちゃん。見てみて、私の大大大好きで最推しのアイドル!!アイって言うんだ!!くぅぅぅぅ可愛すぎる!!!!』

 

 

んー…………ベタな奴だこれ。なんか知ってる展開と名前だなぁ、気づかないふりしてたんだけどなぁ……

 

今後の展開考えたら、やだなぁ……いや、だな。

 

 

 

◯月◯日

 

 

『ヨミ!?どうしたんだお前、そんなに傷だらけで……目玉も……こりゃ駄目そうだな。猫にでも襲われたか?』

 

 

はぁぁぁ???どっちかって言うと猫の天敵がカラスなんですけど?猫なんかに負けるわけないやんこの俺が。言うても元人間やぞ?我、ヨミちゃんやぞ???

 

いやまぁ、はい。遠目で子猫愛でてたら親猫に散々しばかれたっす先生。医者でしょ?治してくれん?さりなちゃんがずっと涙目で心配してくれるのがもう罪悪感でいっぱいでよぉ。

 

アッハイ、そっすよね。獣医師じゃないっすよね……まあ俺のことなんかいいんすよ!!もっとさりなちゃんと一緒にいてあげて先生!!

 

もう、時間ないんだから。君たち。

 

 

◯月→日

 

 

『ヨミちゃん……今日も来てくれたんだね……やっぱり動物って敏感なのかなぁ。私ね、アイドルになりたかったんだ』

 

 

知ってるよ。毎日一緒にアイのライブ映像見てるだろ。俺だってもうアイのファンだよ。カラスだけど。

 

 

『アイドルに……なりたかったんだ。アイみたいな、完璧で究極のアイドルに』

 

 

うん……なれるよ、さりなちゃんなら。だってカラスにも愛情くれる天使なんだぜっ?人なんかイチコロに決まってるだろ。アリーナ超えてドーム級だってばよ。

 

 

『もし私が生まれ変わってアイドルになれたら、推してくれる?もちろん最推しでね。あっ、ファンクラブとか作ってくれてもいいよ。No.1がせんせで、No.2がヨミちゃん』

 

 

あったりめぇよ。なんだったら俺のカラスコミュニティの奴ら全員さりなちゃん漬けにしてやるぜ……ああ、いや。生まれ変わったら……か、ああ、そうだな。でもNo.1はこの俺だね!!なんてったって()()()()()の名前はまだ俺しか知らないし!!

 

まあ……その頃には俺の寿命が先に来ちゃうかな。

 

 

×月↑日

 

『ヨミちゃん、これあげるね。私、アイドルになったら絶対アイと同じ赤をイメージカラーにするんだ。せんせには、ヨミちゃんに触ったこと内緒ね?だから、この赤いリボンは予約だよ』

 

 

ありがとう……ありがとうさりなちゃん。一生大切にする。どんだけ能無しカラス共に襲われても、げきつよチートの猫共に襲われたって守り抜いてやるぜ。

 

 

×月#日

 

『ごめんなヨミ。今日はさりなちゃん、戻ってこれないんだ。お前が来たことはちゃんと伝えといてやるよ。それにほら、お前が最初に来た日覚えてるか?あの紅葉、ラミネートして本の栞にしてみたんだ。一枚丸々はデカすぎたから半分ずつ、俺とさりなちゃんで分けてみた。イカしてるだろ?』

 

 

おまっ、天才かよ。そりゃこの鳥頭には思いつかねぇぜ先生。うんうん、それに2人お揃いとかさりなちゃんキュン死しないかな?やっぱロリコン疑惑も間違ってなかったんじゃないのかせんせー?このこの〜

 

 

×月↓日

 

 

『ヨミ……か。もうさりなちゃんは居ないよ』

 

『アー』

 

『なんだ?分かってるのか?悲しそうな顔してんなぁお前、左目潰れてるくせに』

 

 

最後は余計だろインテリメガネ野郎。悲しくなんか…………ないわけないだろうが。

 

 

『俺ももうここを離れるよ。研修期間も終わったんだ……だから、お前ともお別れだな。寂しくなるな』

 

 

馬鹿野郎……俺みたいなカラス1匹居ないだけで寂しがるなよ。

 

 

『そのリボン、似合ってるよ。無くすんじゃねーぞ貧弱カラス』

 

 

分かってるよ。お前も無くすんじゃねーぞ、そのキーホルダーと……紅葉の栞。誰が貧弱だ!?コレでもカラス同士じゃナンバーワンなんだぞ!!猫相手はまだ無理だけど!!

 

 

『ん……こいつらか?無くすわけないだろ。さりなちゃんとヨミにもらったんだから。絶対、ここにまた戻ってくるよ。しっかり生きてろよヨミ。()()()

 

 

約束破ったら俺の自慢の嘴でメガネかち割ってやるからな……先生。またな。

 

 

 

 

はい、こんな感じ。2人と1羽が出会ってから離れ離れになるまでの記憶。あっ、お前今鳥頭がよく覚えてるとか思っただろ。こんなでも元人間ですぅ。

 

そして、4年がたった。死ぬ気で守り抜いたさりなちゃんの赤いリボンはちょっと破れたりしてるけど、まだ俺の片足に結びついてる。すごくね?自然界で生きるカラスが布を4年も守ったんだぜ?左目見えないし。人生、じゃなかった。カラス生の中で快挙だろ。吾輩がカラスの王である、なんつって、ガハハ。

 

 

「ッ、お前……ヨミ……か?」

 

「ア?…………アァ!?」

 

 

うわ、インテリメガネ野郎じゃん。コイツほんとに約束守りやがったよ。え、まじで?もう永久就職?

 

 

「ひっさしぶりだなぁお前!!左目ないのと……そのリボンですぐ分かったよ」

 

「アァ!!」

 

「キーホルダーと栞だろ?ほら、持ってるよ。栞は勉強の時にめっちゃ役に立ったしちょっと汚れてるけど……って、お前のリボンきったねぇな。ほら貸してみろ、洗ってやるよ。また……よろしくな」

 

「アー!!」

 

 

うぉぉぉぉぉ!!心の友よ!!マイベストフレンド!!ゴロー!!!!俺は今、モーレツに感動しているぅぅぅぅぅ!!!!

 

 

 

それからは先生のストーカーを始めることにした。産婦人科医って女性のイメージ強かったんだよなぁ。なんかこう……セクハラ的な意味で。それでも正式になれたのは、やっぱ先生の過去があるからだよなぁ。医者なんてハードルクッソ高いのに、その中でも産婦人科。すげぇよ先生。よっ努力の鬼!!

 

たまーにさりなちゃんの墓参り行ってるから、墓に先回りして墓石の上で待機してる。それで一緒に祈りを捧げてからまたいつも通り窓から先生の姿を眺める。うん、楽しい。

 

でも1番面白いのは、アイのライブ映像を患者の部屋のテレビで見ながらペンライト振ってる姿だよ。まじで笑い転げて窓から落ちそうになったわ。俺飛べるのに。超笑ってんのバレて超怒られたけど知らん知らん。クソ真面目なその表情であの叫び声あげてるアンタが悪い。てかずるいぜ。

 

あっ、でも最近ちょっと自重してる。患者と一緒にいるときは近寄らないようにしてんだよ。さりなちゃんが特別だからあんなこと出来たけど、一般の感覚だとじっとカラスが先生見つめてんのキモイじゃん?不幸がうんたらーって言われたら普通に傷つくし。俺も、先生も。

 

 

 

 

それからまた時が過ぎて、なんかテンパりまくった先生の姿が見られるようになってきた。てかなんか精神的にきてるのか俺に話しかける回数が増えてきた。最近は先生がこの病院の主治医だから職権濫用して屋上に俺の小屋建ててくれたんだぜ?まだ誰にも見つかってないから俺専用の聖域とかしてる。やっぱ持つべきものはマイベストフレンドゴロー!!フッカフカの毛布がタマンねぇぜ!!

 

 

「なあヨミ。アイドルのアイって覚えてるか。さりなちゃんが好きだったアイドル」

 

「アー」

 

 

当たり前だぜ、俺もファンだしぃ。おや?この流れってまさか……

 

 

「アイが子供作ってウチの患者として来たって……信じられねぇよなぁ」

 

「アァ!?」

 

「お前が驚く気持ちも分かるんだけどさ、え?お前驚いてるよね?最近またお前の感情わかるようになって来たし、あってるよな?」

 

「アー……アァ」

 

 

うへぇ……もうそんな時期なの?てかしっかり()()通り進んでるんだな……いやさ、さりなちゃんの病気はもうどうしようもないとこまで来てたし仕方なかったじゃん?先生の研修もいつか終わるって分かってたし。でも……そこからは分からなかったんだよな。

 

だってこの世界は現実なんだぜ?俺だってカラスとして結構な修羅場を潜り抜けて来たつもりだからさ、ほらあれだよ。現実何が起こるかわかんねぇじゃん?

 

 

「あれ?先生?」

 

「あ……星野さん」

 

「……ァア」

 

 

おっかなびっくり、あの星野アイが屋上にやって来た。うぇ!?本物だ!!可愛い!!両目ほんとに星輝いてる!?

 

さてと……ちょっと聞くフェーズに入りますか。んじゃ先生、あとは任せたぜ。

 

 

「ヨミ……?わりぃな」

 

「誰かいたの?」

 

「いえ」

 

「ふぅーん」

 

 

あーあ、下手な嘘ついちゃって。別に小さすぎることだから何も言ってこないけど、()のプロフェッショナルに嘘ついたって無駄だよ先生。

 

 

 

「星野アイは、欲張りなんだっ」

 

「僕が産ませる。安全に」

 

 

やっばい、先生……アンタ今、世界一かっこいいぜ?俺が保証してやるよ。

 

 

 

そして毎日、先生が見れない間も俺はアイの外出を見届けている。ストーカー?バカか、今まで散々さりなちゃんと先生のストーカーしてきたんだ。今更だろ?

 

俺は確かにアイのファンだけど、俺の最推しはさりなちゃんだ。そして先生のファンでも親友でもある。マイベストフレンドが憧れのアイにあんなにかっこいい啖呵切ったんだぜ?先生がどんなふうに仕事してんのかは知らないけど、今日まで先生のことを見て来た俺が言うんだ。カッケェ人のカッケェとこ、もっと見てたいじゃん?それなら患者の方について回ったっていいよな。うんうん。

 

 

そして、出産予定日。

 

 

いやだ。来てほしくなかったな……今日。

 

 

「なあヨミ。アイの子、元気に産まれるよな」

 

「アァ!!」

 

 

ちげぇだろ先生。アンタが、安全に、産ませるんだろ。絶対に……アンタが産ませるんだ。

 

 

「はっ……そうだな。俺が悩んでも仕方ねぇよな」

 

「アー」

 

「……どうした?なんかいつもと様子違うぞ?ははっ、そうかアイのこと心配してんだろ。そういやお前、さりなちゃんと一緒にライブ映像見てたっけ」

 

 

そう言って、先生は携帯の待ち受けにしてる笑顔のさりなちゃんを見せてくれた。あ、可愛い。満点。推せる。

 

って違う。そりゃもちろん、アイのことも心配だけどさ……俺が1番心配してんのは……先生だよ。

 

 

「今思えばさ、ヨミって神様の使いかもしれないよな。なんだっけ、八咫烏的な?」

 

「アァ……カッ」

 

「お前今唾吐き捨てた?きったね、てか人間味あり過ぎだろ。そういうとこだよ……お前がいなかった時な、さりなちゃんが言ってたんだよ。毎日ヨミが来てくれて嬉しいって。知ってるか?さりなちゃん、余命宣告より長生きしたんだよ」

 

「アァ……?」

 

 

……そっか。でも、長く生きることが幸せかは分からん。苦しみ続けるかもしれねぇし。

 

 

「お前のおかげだヨミ。お前はずっと、俺たちを見守ってくれてた」

 

「……」

 

 

そんなことねぇよ。俺はアンタらに命を救われたから……

 

 

「もしかしたらお前はただの恩返しなのかもしれないけどな。俺やさりなちゃんからすれば、お前がいたからあんなに楽しく過ごせてたんだよ。俺らの方が……もらいっぱなしだよ。キーホルダーも、栞も、リボンも、お前が居なかったら今ここに証として残らなかったかもしれない。だからヨミ、ありがとう。だから今俺は、ここでアイの主治医やれてる」

 

 

今更そんな礼言ってんじゃねえよ!!命の恩には安いんだよ!!

 

だからもう……人生の終わりみてぇなこと言ってんじゃねぇよ。アンタはこれから、もっとたくさんの患者を診て、たくさんの赤子を取り上げて……生命の誕生に立ち会うんだよ……そんでもって俺からの感謝をもっと受け取ってくれよ……!!

 

 

「なーんてな、悪い。ちょっとネガティブだった。じゃあアイの様子見てくるよ。また明日な」

 

「アッ……アァ!!」

 

 

待って、行かないでくれ……先生!!この後が……いや、俺が守ってやる。もしこの後先生が死ななくて、これから一生かけて雨宮吾郎として生きて、()()()()()が生まれなかったとしても!!

 

俺を救ってくれたのは、雨宮吾郎……アンタだから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカやろう……守らせろよ。

 

なに……血だらけで倒れてんだよ。

 

起きろよ。

 

ほら、携帯なってるだろ。アイが産気付いたんだよ。アイが、社長が、看護婦が……アイの子供達が…………俺だって……!!

 

 

 

「ヨ……ミ…………」

 

「アァ!!アァ!?」

 

「……い」

 

「ア……?」

 

「…………い、きろ……よ」

 

 

お前を待ってんだよ!!

 

 

だからもっと、生きてくれよ……さりなちゃんの分まで、俺たちでアイのドルオタやって、最後にゃ俺の寿命まで看取ってくれよ!!ほんとだったら俺が1番寿命短いのに、俺より早く逝ってんじゃねぇ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神様ってやつは、どうしてこう不公平なんだろうか。俺みたいな、何もない奴はすぐこうやって転生させたり、よく分からん奴が宝くじ当てたりすんのに……なんで、ゴローやさりなちゃんみたいないい奴は、真っ当に寿命で死なせてやらないんだ。

 

 

【神様はきっと優しいよね。真の意味で母親を得られらなかった2人と、魂の無い子を導いてあげた。もしかしたら、それ以上の意味もあったかもしれないけど】

 

 

……ふと俺の中で、前世でも特に記憶に残ってたセリフを思い出した。

 

優しい?導く?それ以上の意味?

 

 

ふざけてんじゃねぇ。

 

まるで、さりなちゃんの死が、ゴローの死がないと、アイの子供が死んでたみたいに……

 

まるでただのお遊びで2人の魂を入れ込んだみたいに……

 

 

言ってんじゃねぇぞおいこらクソゴッド。テメェらからしたらたかが人間かもしれない、たかがカラスかもしれないけどな。テメェらがそれを弄んでいい道理なんか一つもねぇんだよ。

 

 

『ならば……貴様が導けばいい。運命の子の遺言を叶えた後でな』

 

 

 

 

 

 

 

それから俺は、しっかり寿命まで大往生して無事に死んだ。

 

 

さりなちゃんにもらったリボンはゴローの名札入れ、キーホルダーと栞と一緒に入れてきた。俺も、さりなちゃんも、ゴローも、みんな死んじまうけどよ、さりなちゃんからはキーホルダーとリボン、ゴローからは栞、俺からは……俺からも栞かな。大事な思い出は、いつかきっとあの子が見つけてくれる。

 

 

さりなちゃん、ゴロー……次の人生で、幸せに生きてくれよな。

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