「生まれたわ」
「ああ…これでお役目は果たした」
マジかよ。また転生なのか。しかも今度はちゃんと人間……慣れたとかないけどさ。どうせなら、星野兄弟と同い年にならないかな。
あーでも俺に役者とかアイドルなんて無理か。ちょっと威勢がいいだけのカラスだったもんな。せめて高校くらい一緒になれたらなぁ。
「これでよろしかったでしょうか、神様」
「もういいだろう!!早く俺たちを解放してくれ!!」
何言ってんだこいつら。神様だ?そんなもんいねぇよ、そんなゴミに祈ったって何にもならない。なんのセリフだっけ、この世の全ては当人の努力次第、みたいなのあったよな。それだよ。
「生まれたばっかりなのに泣きもしない。ねぇあなた、私はこの子が恐ろしいわ」
「神様のおっしゃっていた通りだったんだ…神子なんだよ。気持ち悪い、早く行こう」
行こうって、おい。置いてくのか!?ウルトラキュートベイビーの俺を!?てか普通に死ぬんですけどー!!ふざけんな……って、本当に置いて行きやがった。
えぇ〜、産んですぐからネグレクトとかマジィ?辺なこと言う夫婦だなぁ全く。てかどうしよ、周り見渡してもなんかの室内だし。戸籍は?名前は?
これ見つけてもらえねぇよな。え、このまま餓死ルートですか?カラス生の方が人生よりいいとかありえねぇ!!
あーもう誰か来てくれませんかねぇ!?大事な命が失われそうです〜!!
「あ〜!!(誰でもいいから助けて〜!!)」
ちくしょう、カラスになっても人間になってもアーあー言ってやがるぜ俺ってば。
「「「「「「アー!!!!」」」」」」
っ!?カラスの鳴き声!!え、食われる?元カラスの人間がカラスに食われて終わる!?滑稽ぃ〜
はぁ、カラスに突かれるのって痛いんだよな。カラスの体でそう思うんだから、体毛の発達してない人間…それも赤ちゃんの体だと簡単に死ねる。
まあ2度あることは3度あるっていうし、もう一回転生できるだろう。…………あれ、誰も食いにこない?どうしたんだろうか。
恐る恐る目を開けてみると、俺を囲むように無数のカラス達が並んでいるではないか。
「あー?(食べないんすか?)」
「「「「「「アァ!!!!!!」」」」」」
え、なになに怖い。返事してる?そんなことある?……あったわ。前世の俺じゃん。
もしかして君たち、俺が誰か来てくれって言ったから来てくれたの?
「アッ!!」
おお、翼で敬礼とか器用なこと……え?
「あう?(久しぶり?)」
「アッ!!」
コイツ、昔の俺の舎弟じゃね?ゴローが死んだ後はあの病院周辺をふらふらと生きてたけど結局カラスのボスみたいな扱いされてたんだよなー。カラス同士の喧嘩では負けなしになってたし。
「あうー(飯くれん?)」
「アッ!?アー」
「アー!!」
お願いするように元舎弟に声をかけると、元舎弟が別のカラスに指示して食べ物を取りに行かせている。
「あ〜」
やるやんお前。もしかして俺が死んだ後ボスにでもなったか?俺の後ついで立派にやってるんだなー感心感心。
少し時間が経ってから、出て行ったカラスが戻って来た。その嘴にはパンのかけらが加えられている。お前優秀だなぁ!?ゴミでももってくるかと思ったのに、まさかちゃんと人間の食べ物持ってくるとはなー。
……いや、無理だろ。我赤子ぞ?一旦ミルクじゃないとやばそう。まあでも、なんとかして食べ物は摂取しとかないとこのまま餓死するし。そもそも乳歯も生えてなくね?
「アー!!」
「あー……」
……ええいままよ!!持って来た奴から、さあどうぞ!!お食べください!!みたいな視線向けられたら食わざるおえん。パクッとな…………うーん分からん。幸いカケラは小さいしそのまま飲み込むか。
「あうあ〜」
「アッ!?ア〜!!!!」
おー、喜んでる喜んでる。お前は人に撫でられても平気なタイプなんだな〜。
…………うん、そろそろ現実逃避も終わりにしよっか。なんか、別に食べなくても生きていけるっていう確信がある。多分俺の生みの親であるあのクソ夫婦が言ってたことが関係してるんだと思う。神様だとか、神子だとかってやつ。そのままの意味で捉えるなら、神様があの夫婦に子供を産ませるように指示した。それで出来たのが俺。神子っていうのは、まあ神に愛されただとか祝福されただとかそんな人間のことだろう。つまり神様の目的は俺をこの世界に産み落とすこと。まあどうせ祝福を授ける〜とかあの夫婦に言ってたんだろう。なんでそんなオカルトを真に受けたのかはさておき、なんかそんなキャラクターに聞き覚えがあるんだよなー。
ツクヨミ
黒いドレスを纏う不穏な雰囲気の少女。彼女の周りにはいつもカラスかカラスの羽が舞っている。星野アクアと星野ルビーの前に姿を現し、「私知ってるよ?」的なノリで本人達しか知らないようなことを知っているアクア曰く『疫病神』。
うん、多分俺だね!?だって前世の名前ヨミちゃんだよ?今まさに周りにたくさんのカラスがいるよ!?本人達しか知らないようなこと(原作知識)知ってるねぇ!?
あれ……そういえば……天童寺さりなと雨宮吾郎が助けたカラスって確か……あれ、あれ!?あっっれれぇぇぇぇ!?!?
もしかしなくても、俺ってツクヨミになるための一生を過ごさせられてたってこと?……ああもう、一概にふざけんなって言えねぇ。だってあのカラス生がなければ、マイエンジェルさりなちゃんとマイベストフレンドゴローには会えなかったんだから。その一点だけは感謝してるし。
全部神様の掌の上ってことですか。ふぅ〜ん……死ねクソゴッド。テメェらはいつもいつもオモチャみてぇに人の命弄びやがって。いや、実際オモチャ感覚なんだろうよ。壊れたら仕方ない、
俺が
「あぅ」
「アッ?……アー!!」
「あうあー」
バサバサとカラス達が俺のいた室内から飛び去っていく。今更だけどここ神社の中だ。それと、自覚したことで少し分かって来た。俺はアイツらカラスより上位の存在らしい。今、会話が成立した。具体的には、
『ありがとう。これからもまたよろしく』
『兄貴……姉貴?のためならなんでもやるっすよ!!』
『あんがとよー』
という具合だ。姉貴て……やっぱ俺女かよ。まあいいけどさー、カラスの時も雌だったし。でもまあ自分のできることがわかって来た。
一つ、カラスとの意思疎通。操る力じゃない、ツクヨミが操っているように見えたのは多分、前世のカラスとしての交友関係によるものが大きかったんだと思う。ソースは前世の俺。
二つ、体はちゃんと人間、だけど超常的な存在であり力を持っている。お腹も減るし便意もある、赤子らしい欲求は一通りあるけれど、なんとこれら全て抑えている。それが超常、オカルト的能力。あり大抵にいえば神様パワー。
神様とかいう言葉一切使いたくないんだけどな!!でもツクヨミ言ってたじゃん、『死者の記憶を赤子の体に移す様な術を持つ者と同種の存在だよ』って。つまり神とかそういう上位存在の一員であると。うん、でも俺の前前世は一般人、前世はただのカラス、そして今世は上位存在。
どうしてこうなった?
カラスから上位存在の移り方が極端すぎやしませんかね本当に。本当に神様ってやつがいるのなら、俺に何をさせたいのか聞いてみたいもんだぜ。ただツクヨミと同じことをやらせたいのならツクヨミでいい。そこわざわざ俺、ヨミにやらせる理由は?
……まあいいか、どうせ俺が読んだ原作でもそこまでは明らかにされていなかったし。ダメならダメって言ってくるだろよ。自分にとって面白くなければ好き勝手言ってくるんだろうし。
ふぁ〜。ここまで散々語って来たけど、眠気だけはしっかり来やがるんだもんなぁ。寝よ、どうせこの神様パワーでなんとでもなるしな。
2年経ちました。時が過ぎるのって早いと思わん?
「やぁ※※ちゃん、今日も元気そうでよかったよ。相変わらずリボン似合ってるねー」
「おー、八百屋のおっさんじゃん。イカしてるだろ?お気に入りなんだっ」
今、俺の名前聞き取れた?ちなみに俺は分からなかった。2歳児とおっさんが当たり前に会話してるのもおかしいだろ?こんなイかれた環境でもう2年過ごしてるんだぜ、褒めろよ。
ちなみに全部、俺がやってる。
認識阻害、常識改変、そして肉体操作。
認識阻害は名前とか、俺に関することを認識できない。常識改変、俺に関する一切に違和感を抱かない。そして肉体操作。今の俺の体の年齢は5,6歳程度。原作のツクヨミと大体同じだ。実年齢2歳児です⭐︎
俺は、前世から生まれ育ったこの町で生きている。宮崎の、高千穂町だ。ここがお気に入りというのもあるができるだけゴローの遺体が眠るこの場所から離れたくないってのもある。だからと言って、星野家に関わらないというわけじゃない。なんなら今からでもかかわりに行きたい。神様パワー使えば一瞬であっちにいくことだってできる。
でも、まだしない。俺はアイを見殺しにしなければならない。そしてそれによって生じるアクアとルビーの闇を全て、許容しなければならない。それが俺の使命。これを破れば、ここから先はきっとツクヨミそのものになってしまう気がした。俺の手によってじゃない、クソゴッド共の手によってだ。感覚でわかる。
「赦しは請えない。だから存分に恨めよゴロー……悪いのはいつだって、不条理を押し付ける世界と、クソゴッド共だ」
1年がすぎた。ここまでくるともういつも通りの日常を過ごしている気分になってくる。日付もちゃんとチェックしてるし、とある手段で手に入れた携帯端末で……あのニュースは見た。
星野アイの死亡。
予定調和すぎて何も感じない。いや、それは嘘か。俺だって一応アイのファンだったんだから。だからちゃんと確かめに行かないと。
そして俺は、とある場所に向かう。と言っても一瞬だ、神様パワーだからな。少し離れたところで様子を見る。あれ?お前らもついて来たの……そう、ありがとよ。
ここは墓地。そして俺の視線の先には、墓に向かって手を合わせる金髪の少年少女の姿がある。
『星野アイは、自分たちと同じように生まれ変わってどこかで幸せに暮らしてるって。違うよ、星野アイの物語は、完全に確実に終わったの。もう二度と再形成されることはない。もう星野アイは何も思わないし、何も考えない。二度と笑うこともない』
ああ、そうだなツクヨミ。今こうやって遺骨のある墓を見て察するよ。本当に、星野アイは終わったんだな。後悔とかそういったものをここからは一切感じない。星野アイの魂は、完全にもういない。
始まる。どこぞのクソゴッド共の言葉を借りるなら、『運命の子の物語』が幕を開ける。
ふざけやがって……俺ももう一端の上位存在ってことか。ああ腹が立つ、殺したい……殺してやりたいな。もう全部ハッピーエンドにしてやりたいのに、俺が星野アイを見殺しにしたことで全てが始まってしまった。結局今回俺が星野アイを見殺しにしたのだって、俺が俺であるためだ。結局俺は自分のことを優先して他人のために行動ができない自己中ってことだ。
『姉貴、人間来てますよ』
「……あ」
「こんにちは」
「……こんにちは」
「こん……にちは」
見つかってしまった。ああ、なんて瞳をしているんだ2人とも。そんなドス黒い瞳になってしまって……これを俺がやったのか?俺がこの2人をこうしたのか?
「可愛いリボンですねっ」
「えっ……ああ、昔。友達の女の子にもらったのが記憶に残ってて。赤……好きなんだよ」
「私も赤好き!!お揃いだねっ!!」
「ッ……うん」
やめてくれ、さりなちゃん……そんな目で見ないでくれ。昔と同じように……俺と接してくれよ。きみにもらったリボンに近い色のリボンを選んだんだ。
「お名前聞いてもいい?」
「……それ、は」
「いくぞルビー。時間の無駄だ」
「あっ……」
待って、行かないでくれゴロー。俺を置いていくなよ。あの時みたいに……いや、仕方ない。
「アー……」
「お前は何も心配しなくていい。これは……俺の罪だ」
俺の元を去っていく2人を見送って、カラスの一羽の心配を無碍にする。
「名前……どうしよっかな」
俺にはたして、ヨミと名乗る資格はあるのか。さりなちゃんとゴローの想いを踏み躙った挙句、今こうして何も告げずにただ後ろ姿を眺めるだけの俺が……今更ヨミとして触れ合う権利があるのだろうか。
「だったら……!!」
だったら、最初っから……俺なんか必要なかったんじゃないのか?この役割はツクヨミでいいはずだ。あそこに並んでいいのはあの頃のヨミじゃないといけないはずだ。
……
………
…………
決めた。気に食わないこと、全部俺がぶっ壊してやる。クソゴッドが何言って来てもしらねぇ、俺の勝手だ。この世界に生まれ落ちたのはツクヨミじゃなくて俺だ。だったら俺が俺の持つ能力で何しようがいいよなぁ?
俺はただ、恩返しをするだけだ。贖罪も含めてな。
第一制約『原初の罪』全ての始まりである星野アイへの不干渉 達成 本来の役割であるツクヨミの不介入解放
第二制約『埒外の罪』徒に己が権能を振りかざすことなかれ 未達成並びに達成の意思無しを確認
【誰にも愛されない制約】 未解放