カラスの恩返し   作:ゼノアplus+

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俺の推しの子

 

 

「神子様」

 

「神子様!!」

 

「「「「「「神子様!!!!」」」」」」

 

 

うるっさ。何こいつら?神子神子ばっかり言いやがって、それしか言えねぇのかいい歳こいて。

 

コイツらは、この高千穂町に住む無駄に歴の長い一族。そして、神様の神子として生まれた俺を担ぎ上げて何かしようとしている鬱陶しい連中。

 

今はこうやって、ガキである俺の自己肯定感をあげようと必死らしい。あとあと傀儡として操りたいって意図が見え見えなんだよなぁ。

 

どいつもコイツも、俺に対して好意の視線を向けやがらねぇ。もうちょっと愛想良くした方がいいと思うよ?

 

 

「お飲み物をお持ちしました」

 

「いらん」

 

「ささ、お食事をどうぞ」

 

「いらん」

 

 

笑顔で俺の世話を焼こうとする若い連中は、笑顔とはいいつつも長時間の笑顔に耐えられないのか引き攣った笑みになって来ている。あとは言うことを聞かないガキにイラついている。

 

 

「おいで」

 

「アー!!」

 

「ひっ!?」

 

 

面倒臭いので初っ端から奥の手を使う。舎弟のカラスを呼び寄せた。コイツは最近ずっと俺の近くで待機してくれているから、神様パワーを使わなくてもすぐ俺の元までやって来てくれるのだ。

 

そんな俺を見て悲鳴をあげたのはお付きの若い女。カラスが苦手なのか、それとも汚いとでも思っているのか、俺から引き気味になっていった。

 

おーよしよし、お前のおかげで俺も安全に過ごせてるよ。ありがとなー

 

 

『うっひょ〜!!姉貴に撫でられてるぅ〜!!!!』

 

 

……うん、多分これあれだ。前世の俺移ってるわ。悪いことしたなぁ、前世はテンションおかしかったからなぁ。

 

 

「み、神子様……?」

 

「なんだ」

 

「実は鳥アレルギーなものでして……お暇させていただいても……」

 

「はぁ!?あのジジィに俺のこと……どこまで聞いてんの?」

 

「地主の子だとしか」

 

「あの爺さんを呼んでこい。そのまま君は下がっていい、何か嫌なことを言われたらまた俺のところにおいで。急にカラスを呼んでごめんな」

 

「は、はい!!」

 

 

時代錯誤の老害がいたもんだぜ全く。所詮は俺の機嫌うかがいしかできることがないくせに若人の面倒も見切れないのか。

 

そして10数分後、件のジジイがやって来た。

 

 

「お呼びでしょうか神子様」

 

「あの女、どういう関係?」

 

「孫でございますが……もしや何か粗相を!?」

 

「粗相したのはアンタだよ」

 

 

それから3時間ほど説教した。アレルギーが人体にどういった影響を及ぼすのか、懇切丁寧に説明した上で自分が何をやったのか、孫を殺しかけたことについてどう思っているのかしっかり怒った。

 

 

「理解したな?」

 

「……はい」

 

「行け、2度はない」

 

「はい……チッ」

 

 

ふん……舌打ち残していきやがって。イキがるなよ、人間ふz…………はぁ。やべぇ、意識がまた上からになってる。もっと抑えないと。はぁ、ストレス溜まるわぁ。ちょっかいかけとこ。

 

 

「あのぉ……神子、様?」

 

「ああ、君か。あの老害に何か言われたかい?」

 

「いえ、そういうわけでは」

 

「まあきっと俺の悪口でも言ってんだろ。腰痛の呪いかけたから。1週間くらい痛むと思うよ」

 

「え……ふふっ、そうですか」

 

「なんだ?」

 

 

あのジジイ散々好き勝手やってくれてるからな。なんか、俺を産んだクソ夫婦とも血縁上の関わりがあるらしいし。

 

 

「子供っぽいなって」

 

「……うるせぇよ。てか子供だよ。変な力持って偉そうにしてる生意気なガキ」

 

「それでも、ありがとうございます。私のために怒ってくださったんですよね?」

 

「君がそう思うなら、そうなんだろうね。でも俺はそうは思わない。たかが血の繋がりだけで自分のものみたいな扱いを受けるのはごめんなんだ。俺の方が上ってことをちゃんと老骨に教え込んだだけだ」

 

「あはは……お爺ちゃん頑固ですよね。叔母も、そうでしたし」

 

 

そうか、あのジジイの孫なら俺とも血縁上の関係があるのか。

 

 

「叔母ってことは……俺の生みの親か。じゃあアンタ、従姉妹だな。改めてよろしくお姉さん?」

 

「え……えぇ!?そうなんですか!!あれでも、私が上なら……でも立場もあるし……てことは叔母さんの……」

 

 

一気に情報が来て混乱してるな。まあそうするように色々言ったんだけど。ちょっと困らせて反応を見たかったのもある。可愛い子困らせて楽しんでるのおもれー。

 

 

「ヒステリックの気がある女だろ?俺を産んですぐこの神社に置き去りにして消えたよ」

 

「そんなっ、許せない……」

 

「気にすんな、アンタには関係ないよ。今こうして変な力使って生き延びてるし。そろそろ出ていこうとは思ってるけどな」

 

 

なんで俺はコイツにこんなにも話しているんだろうか。()()2()()に似ているわけでもないのに。ただ俺はここでそうあれと望まれているから、まだ残ってやってるだけなのに。

 

 

「出ていっちゃうんですか!?うーん、もう少し待っていただけませんか」

 

「ほう……その心は?」

 

「あと、3ヶ月このお役目を続けたら県外の大学に進学してもいいって言われてるんです」

 

 

げ、現金だなぁ……まあ将来を人質に取られたら何も言えんのはわかる。

 

 

「ふぅん。ねぇ、あのジジイのこと嫌い?」

 

「え!?えーっと……あはは」

 

 

嫌いなんかーい。でもまあちょうど良かった。東京で寝泊まりする拠点欲しかったんだよねー。グッチョブお姉ちゃん?

 

 

「俺の条件を聞いてくれたら、待ってあげてもいい」

 

「条件って……?」

 

「君の進学を全力で手伝ってあげる代わりに、進学出来たら同居させて欲しい」

 

「……そんなことでいいんですか?」

 

「え?いやいやそんなことって、華の女子大生がこんなガキと同居とかいやでしょ普通」

 

「……?」

 

 

あれ、もしかして無意識で常識改変かけてたか?……いや、かけてないな。なんでこんな反応なんだ?

 

 

「私達の一族が神子様と共にあるのは()()()()ですよね?」

 

「ッ!!……なるほど」

 

 

これ神が悪いわ。昔何したのかしらねぇけど、由緒ある家って嫌だねー。洗脳に近いレベルで子供にもこんな刷り込みをするんだから。

 

 

「俺の目を見て」

 

「え?はい」

 

「3、2、1……0」パンッ

 

「きゃっ…………あれ?」

 

「もう一度聞くぞ。君の進学を全力でサポートする代わりに、進学できたら同居させて欲しい。どうだ?」

 

「…………えっと、あれ。うーん。少し、悩んでもいいですか」

 

「ああもちろん。君の将来に関わることだ。ゆっくり悩んで答えを出すといい。もちろん、ジジイには聞いたらダメだぞ?」

 

「わかりました」

 

 

俺が今やったのは洗脳だ。常識とは18歳までに身につけた偏見である。とはアインシュタインの言葉だが、この子はまさにど偏見を常識として身につけている。常識は無意識の行動に顕著に現れてしまうから、上から強めの洗脳をかけて神子に関するイメージの紐を緩めた。

 

あとは、今日までの俺とあの子の関係値であの子自身が判断すること。

 

俺もたまには上位存在らしく、人間を導く仕事が出来たかな。したくてしてるわけじゃないけど。

 

 

「アーッ!!」

 

「おう、ごめんな。星野家の様子は……そっか。ありがとう」

 

 

舎弟1号には俺の力で星野家の様子を見にいってもらっていた。記憶を共有してどんな様子だったかを自分の脳内で再生すると、目も当てられないような惨状である。特にアクアはひどい。もうすでに覚悟が決まりすぎている。これからは復讐のために芸能界へ入っていくんだろう。ルビーの方はまだマシ、元々感情が表に出やすい分、泣くなどの行動で発散しやすい。対照的にアクアは内に溜め込むタイプなので後で大爆発する。しかも精神年齢の高さと憧憬が先行しているからより過激な発想にもなる。

 

助けに行きたい、なぁ。カミキヒカル……アイを孕ませた張本人でゴローを殺す算段を立てた悪人。大切だと思った人の命を背負うことでしか自分を慰められない可哀想な人間。ころしてぇなぁ。

導く価値を感じない……また思考が寄って来た。

 

まあいいや。とりあえずあの子の返事を待とうかな。それ次第で今後の動きを決めよっと。

 

 

 

 

 

 

1年後

 

 

「姉ちゃん。いってらっしゃい」

 

「行ってきまーす」

 

 

おっかなびっくり、まさか本当に東京の大学に進学するとは思ってなかった。そう、あの子は結局俺の提案を受け入れた。決定打は、従姉妹だということらしい。叔母が地元を出ていき親戚が他にいなかったので従姉妹は俺しかいないらしい。それが嬉しかったとのこと。

あと俺のサポートが良かったと言うのも兼ねているらしい。東京は夢のまた夢……くらいの感覚だったらしく、宮崎より都会で東京未満のような場所へ行こうとしていたらしいのだが、しっかり勉強を見てやった結果東京の大学に合格すると言う快挙を果たしたのだった。

 

ちなみにあのジジイはもちろん俺が出ていくことに大層反対だった。てかクソ怒鳴ってた。今まで面倒みた恩だとか、一族を導く使命だとか、色々言ってきた。だから()()()()()()()()()と何も言わなくなった。

 

それに一族から優秀な者が出るのは名誉なことらしく、それに貢献した俺はちゃんと『神子が認めた一族を導く使命』を果たしたと言ってやったら、今までの態度がひっくり返って土下座レベルで礼を言ってきた。ショック死してくれクソジジイ。

 

 

そういうわけで俺はついに東京都内で時間を気にせず好き勝手できるようになった。一応、実在する人物が産んだ人間なので戸籍も名前も得ることができた俺は、肉体年齢を18歳程度に変えたりして人知れずエンジョイしていたのだった。

 

あっ、星野家のストーカーをするときは5歳児モードでやってるよ。子供の姿って、便利なんだよね。

 

 

 

 

 

さらに半年後

 

 

「出ていってくれない?彼氏できたから邪魔なんだよね」

 

「…………わかった」

 

 

 

俺は荷物をまとめて出ていくことになった。荷物といっても、こっちにきてから趣味で買ったものだけ。それ以外は神様パワーでなんとでもなるから必要ない。

 

ん?ああいや、別に気にしてないよ。なんとなくこうなるのは分かってたから。俺に関わる人間はそのうち俺に嫌悪感を抱くようになる。今日に至るまで何度も繰り返された事だ。もう慣れっこなんだよ。だからこれだけ日数が経っても友達の1人もできやしない。そういう運命なのだと理解すれば気分も楽になってきた。理由はどうせ、クソゴッド関連なんだろうけど詳しくは知らん。知りたくもない。

 

 

「アー」

 

 

だから俺にずっとついてきてくれるこのカラス達だけが俺の心のオアシス。もう一生コイツらでいいや。あっ、そうだ。前世から舎弟だった舎弟1号は寿命で死んだ。最後は俺が看取ったからきっと成仏してくれたと思う。ずっと俺についてきてくれたから。高千穂町の山……俺が住んでいた神社の裏にカラスにしては豪華な墓を立てた。俺が作ったから一種の聖域みたいになってしまったことは心配だが、それだけ気持ち込めて作ったんだ。

 

長生きしてくれてありがとうな。舎弟1号。

 

 

「これからどうしようかねぇ」

 

 

近くの公園のブランコに腰掛けて物思いに耽ってしまう。

 

 

「3歳でホームレスってか。シャレにならねぇ〜」

 

 

ついつい笑ってしまう。神社に帰ろうかな。それともこの勢いでもう星野家にでも凸ってやろうかな。

 

 

「姉ちゃん、好きだったんだけどなぁ……良い人だったのに……おれが、関わったから……」

 

 

あー泣きそ。てか涙出てるわ。感情が不安定になると身体機能の抑制が効かなくなるんだよな。上位存在として恥ずかしい限りだよ全く。

 

もう……良いかな。ツクヨミよろしく、これから時が来るまでずっと星野家観察してようかな。メンタルにきてるわー。

2回も転生させてもらって贅沢だけどさー、神様理不尽すぎるぜー。俺の自業自得って言いたいんだろ。絶対アンタらのせいだよ。

 

公園のブランコで泣いてる3歳児(5歳児の肉体)だなんて、見つかったら即児相案件なんだよなぁ。自分に認識阻害かけとこ。

 

 

「ちょっとあんた。こんなとこで何辛気臭い顔してんのよ」

 

 

おぅ……oh……認識阻害かける直前でばれたぁ。あーもうだる。いいや、俺に関する記憶の一切を消して宮崎に帰ろう。そこから星野家を覗き見する生活をしよう。

 

 

「はぁ!?無視なの、無視してんの!?」

 

 

もう俺なんて人に関わっても碌な事ないし……

 

 

「え、ちょ、また泣き始めたんですけど……」

 

 

いくら気にかけてもどうせ嫌われるんだ。だったら別に関わる必要なんてないし、てか俺が関わらなくてもあの2人はちゃんと育つんだし良くね?高校生になってからまたちょっかいかければええやん。うんうん、そうしy……あだっ

 

 

「聞きなさいよぉ!!」

 

「なにすんだよぉ……有馬、かな?」

 

 

無視してたわけじゃないんだけど思考に意識を集中してた。ごめんて。

 

頭を打たれたので罰でも与えてやろうかと思って顔を上げたら、俺の目の前にいたのは時をかける天才子役有馬かなの姿があった。えぇ、ここで会う?

 

 

「ふん、あんたみたいな泣き虫でも私のこと知ってて当然よね。だって私は」

 

「重曹を舐める天才子役」

 

「10秒で泣ける天才子役ですけど!?どいつもコイツも生意気なガキ多いんだから!!」

 

 

おもろこの子。好き。推せる。さりなちゃんの次にアイ、その次くらいに。てか、どいつもコイツもって……ああ、星野兄妹か。そりゃもう会ってるよな。アイ死んでるんだから。

 

 

「俺になんか用?見ての通り超不機嫌なんだけど」

 

「俺!?男の子だったの!?」

 

「いや女だけど。ああ、ダメだぞ。口調くらいで性別判断しちゃ。芸能人は変なとこで燃えるんだから」

 

「はぁー!?あんたに言われなくてもそれくらい分かってるんですけどー」

 

「そりゃ悪かったよ」

 

 

有馬かなはこうでなくっちゃな。ぷりぷり怒ってるくせに、その実こうやって絡んできて心配してくれている。なんて優しんだろう。多分これあれかな。アクアとの出会いが影響してるよな。してなかったらもっと生意気なだけの天才子役だもんな。

 

 

「心配してくれてありがとう」

 

「ふん!!この私が心配してあげてるんだから感謝しなさいよ!!」

 

 

あれ、なんか素直だな。もしかして今後関わることなんてなさそうな一般人の同性だからかな?原作だけだと同業者同士の会話が多いからそういうのが多めになってるのかも知れない。根が良い子なんだなぁ。この子から嫌われたら割とマジで死ねる。だからとっとと会話を終わらせよう。

 

 

「じゃあね」

 

「え……ちょっと待ちなさいよ!!」

 

「……なに?」

 

「なにじゃないわよ!!私にギャン泣きしてる子供見過ごせっての!?」

 

「ギャン泣きなんかしてな……してた?」

 

「してたわよ。遠くからでも聞こえて何事かと思って走ってきたんだから」

 

 

えぇ……俺ギャン泣きしてたの?そんなに悲しかったの?じゃあもうほんとに人と関わるの向いてないじゃん俺。

 

 

「で、なにがあったわけ」

 

「今出会ったばかりの君に話すことなんかないよ」

 

「生意気ね。なんかあったからあそこまでギャン泣きしてたんでしょ。天才子役であるこの私が聞いてあげるっていうんだから素直に話しなさいよ。女優の時間は貴重なの。私はあんたにそんな貴重な時間を使う価値があるって思わせたのよ?誇りなさい」

 

「……おう」

 

 

あ、やべまた泣きそう。こんなに人に優しくしてもらったことなんかなかったなぁ。

 

また感情が不安定になったせいか、いつもより素直に有馬かなに今日起こったことを話してしまった。これ以上会話を続けるべきじゃないのに。仲良さそうに話を続けてしまったら、どうせすぐ面倒だのうざいだの……嫌われるに決まってる。

 

 

「その従姉妹ひどすぎじゃん。死ねよ」

 

「言い過ぎじゃね?」

 

 

ド直球だった。びっくりするぐらいストレートな言葉出てきて思わず反論してしまった。それが彼女に余計な火をつけてしまったのだ。

 

 

「そりゃそうでしょ。従姉妹も歴とした家族なのよ?しかも自分の成長を手伝ってくれたのに邪魔になったらすぐポイって。私だったら一発ぶん殴ってるわよ」

 

「おい天才子役、どうしてこう言葉が火種になりすぎるんだよ。ったく、はは」

 

「私だったらそんなの気にしないけどね!!嫌なら見返すくらいの気持ちで過ごせば良いのよ!!あの時あんたが捨てた従姉妹です。今はあんたより良い大学行ってます〜ってね」

 

「はっ、そりゃいい。最高じゃんか。君天才だな。ああ、天才子役だっけ」

 

 

なるほどな。高校生の有馬かなの人格形成において1番の歪みは子役としての旬が過ぎた時期、つまりこれからの時期だ。そうなってどんどん仕事が減っていく比例するように卑屈になっていく。承認欲求の強いメンヘラタイプだ。めんどくさ、でも今はまだそれがない。有馬かな最盛期って言っても良い。だからここまで説得力と迫力のある自信が見えるんだ。

 

これがあの有馬かなだというのか。行動の一つ一つに負の面を忍ばせるガチ面倒系になる予定の有馬かなのその瞳。

 

 

「うんうん、あんた、笑うようになったわね。顔いいんだから笑ってた方がいいわよー」

 

「へっ?」

 

「そのアホヅラも悪くないわね。ちょー面白い」

 

「なんだとー!?」

 

 

あれ、俺今スッゲェ楽しい。同年代の子と喋ることなんてほぼなかったっていうか、こんなに会話が続くこともなかなかなかったな。

 

 

「で、なにその『俺は絶対嫌われるから最初から関わらない』って。チビのくせにもう厨二病なの?」

 

「チビは君も大概だろう」

 

「ふん、だったら絶対ソイツらが悪いのよ。どいつもコイツもあんたの良いところにつけ込んで、搾り取ったらいらない子扱い。あんたが悪いところなんて一つもないじゃない」

 

「……うぅ」

 

「そこで泣くの!?」

 

 

初めて肯定された。初めて俺が悪くないって言ってもらえた。すごいな、転生してなくてちゃんとした子供の精神の持ち主なのにこんなに芯に響くことを言ってくれるなんて。

 

 

「でもぉ……皆俺から離れていくんだ。俺がどれだけ頑張っても、好きだよって言ってくれてもちょっと経ったらすぐ嫌いとか邪魔とか、ふざけてんじゃねえよぉ……!!」

 

「あっそ、じゃあ私は最初っからあんたのこと。嫌いでいてあげるわ」

 

「……え?」

 

「泣き虫なところ、卑屈なところ、嫌いよ。見てられないわ」

 

「何言って……」

 

 

この子は……まさか……

 

 

「ずっと嫌いなら、好きでないなら、いいんでしょ。好きから嫌いになるからあんたが泣くんだから。ていうかそもそも私、天才子役で超忙しいからあんたと会う暇もないでしょうし。会わないなら距離もクソッタレもないわ」

 

「うん」

 

「だからテレビの向こうで私の事、一方的に好きでいなさい。私のファンでいなさい」

 

「うん……!!」

 

「私があんたの【推しの子】になってあげるわ!!」

 

 

世界とはどうして理不尽なのだろうか。見ているかクソゴッド共、想定外だろう?こんなところで俺が有馬かなに会うのも。いつかのどこかでアクアにかけるはずの言葉を俺にかけてくれるのも。俺への呪いが、今はまるで祝福に見えるよ。

 

 

俺という上位存在が、たった数十分会話をしただけの人間の少女に論破され、その制約すら打ち破ろうとしている。意図したものじゃない。ならばこれもまた、運命というのだろう。

 

理不尽だ、ああ……理不尽なほどに俺は今……有馬かなに、その瞳の無数の星々に惹かれていた。

 

 

 





第一制約『原初の罪』全ての始まりである星野アイへの不干渉 達成 本来の役割であるツクヨミの不介入解放

第二制約『埒外の罪』徒に己が権能を振りかざすことなかれ  未達成並びに達成の意思無しを確認

【誰にも愛されない制約】 未解放


第三制約『使命の罪』己が権能を以て愛し子に祝福を 達成 第二制約未達成と競合を確認。修正……修正

【権能使用の制約】変質を確認 【権能解釈の制約】

第三制約達成 

『月の光と共に人を導き運命を司る権能』の解釈を拡大
『月の光()()()()人と共に運命を導く権能』 解放
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