カラスの恩返し   作:ゼノアplus+

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伝言

 

 

あれからまた日にちが過ぎて、なんと苺プロ(アクアとルビーが所属してる事務所)に有馬かなが所属することになりましたー!!いやっほぅ!!星野ルビー(推し)有馬かな(推し)が同時に視界に収まるの最高かよ!?ルビーをストーカーしてたら一緒に有馬かなまで見れるの役得すぎん?

 

有馬かなと距離を取る制約があるから、ルビーに近づくタイミングが難しくなるけどそんなことがどうだってよくなるくらい視界が眩しい。

 

見てみろよ?苺プロ事務所の様子を。星野ルビー、推し!!有馬かな、推し!!斉藤ミヤコ、美魔女!!ぴえヨン、筋肉!!

 

うーん、素晴らしいメンツだ。圧倒的な()がより映えるよね。うんうん……いやなんでぴえヨンいるの?いや好きだよ?でもこの画角に今いてほしいわけではないんだよ。ちょっと圧がすごいんすよ。そう、その筋肉。うーむ、前前世からやっぱり良い筋肉には目がいってしまうけどぴえヨンはやはり素晴らしい……ってそんなことはいいか。

 

 

「年収1億って、実際の手取り5000万あるかないかくらいだよなー。おお、こわ」

 

 

ぴえヨンとんでもねー。それ以上に税金がこの世で1番とんでもねー。

 

はぁー、ほんっとにさぁ。カラス生の頃は税金なんてなかったからよかったんだけどさー、人間ってままならないよね……ーはい。綺麗事言うのやめます。

ふざけるなよクソ税金が。前前世で納税関連どんだけ大変だったと思ってやがる……!!個人事業主だと余計に面倒だしやること倍なんてもんじゃないんだわ!?そりゃ委託だって出来たけどさ!!他人にそういうの任せるのクソ怖いじゃん!?

 

 

「アー……」『あのー……姉貴……』

 

「おい」

 

 

いくら経費で落とせるものが多いっていっても経費にするための色んな手続きに頭パンクしそうだったわ!?あーもうほんっっとにカラス生楽だったわー!!俺の舎弟共は出来るだけ人間のゴミ漁らせないようにさせてたから駆除とかもされなかったし……もうこれが税金だっただろ。人間社会から排除されないように善き隣人ですってアピールするのがさぁ!!

 

 

「アァ……」『あ、これダメなやつだ……』

 

「おい」

 

「なんだよ今俺はこの世の不条理について熱く……あっ」

 

「人ん家覗き見ながら何やってんだ……疫病神」

 

 

あのー……舎弟2号君。どうにかならん?あっ、はい。ならないっすか。そうっすよね。うん、じゃあちょっと今から怖いこと起こるかもだから君ら休んでていいよ?生きてたらまた会おうな……!!

 

 

「スゥ………命の保証は……してもらえるかな?」

 

「俺たちの事情知ってるくせに、ストーカー紛いとはご挨拶だと思わないのか?」

 

 

あーうんもうアクアさんバチギレですよねぇ!?黒星ビッカビカというレベル超えてるんですけどー!!

 

 

「一応……人避けというか、他人から俺の事を認識できないようにしてたんだけどなぁ」

 

「ストーカーするのにオカルト使ってんじゃねぇよ」

 

 

仕方ないので、木の枝から飛び降りる。こうなる可能性があったからちょっと離れた場所にいたのにまさか見つかるとか思わねぇだろ普通。無意識でアクアのことを知り合い判定したせいで認識阻害すり抜けたのかな。

 

 

「うわっ……なにするんだよ」

 

「こうでもしないとカラス使って逃げるだろうが」

 

「えぇ……そういうイメージ?」

 

 

首根っこ掴まれるとはこういうことを言うんだろう。だって文字通り掴まれてるし。頭をアイアンクローされないだけマシだとでも思おうか。ギャグ時空じゃないからね、仕方ないね。

 

そのまま近くの公園まで引きずられベンチに座らされた。絵面が事案すぎんか?

 

 

「今度はなにが目的だ。俺の次はルビーか?」

 

「え、あー……あり体にいえばそうだね」

 

「は?」

 

 

この人マジで怖いんですけどー。シスコン過ぎるだろ。圧やば過ぎるって。怒ってもイケメンなのが1番ずるいと思いますぅ。え、いやあのマジで怖いんだけど。ちょっと落ち着きましょうよアクアさん。こういうのは最後まで話聞いてからっしょ。ね?

 

 

「まあまあ落ち着きなよ。()()の事は前世の頃から注目してたんだ。アクアだから、ルビーだから、というわけでもない」

 

「その説明で納得すると思っているのか?知ってる事全部吐け」

 

「いやぁ……それは流石にねぇ?(と言うか多分また別の制約に引っかかる気がするし)」

 

 

ぶっちゃけ首根っこ掴まれてようが瞬時に抜け出すことくらいは出来る。それでもそうしないのはここで納得してもらわないと俺の社会的名誉が危ないから。元々無いけどね?学歴幼稚園中退だし。

 

 

「お前の思考が分からない。なにがしたいんだ?俺たちに興味があるくせに助ける事はしない。見ているだけだがこうやって接触してくるのも分からん」

 

「それは昔から変わらない。君達には幸せに生きてほしいんだ……そのために君達がリスクを犯す必要がないと考えているし、俺の最善だと思う手段で勝手にお節介を焼くだけさ」

 

「その過程でルビーに危害が及ぶなら今ここでお前を殺す」

 

「野蛮だなぁ……()()()()()に俺を殺せるわけがないだろう?」

 

「ッ……デタラメにも程があるだろ」

 

 

アクアがとんでもないことを言い始めたので少し脅す。具体的には、周りに空気を重くすることで物理的にも精神的にも圧をかけた……今まで人を救う側だったお前がそんなこと言ってんじゃねえよ、馬鹿野郎。まあこれは一部が嘘で、俺が神様パワーを使う前に肉体が死ねば普通に死んでしまうので、意識を奪われたりするとアウト。でも自分の弱点なんか他人に教えるわけがないので情報管理はしっかりしようって話だな。

 

うん……それにしても、相変わらずと言うべきか自分のことは勘定に入れてないんだよなー。俺たちじゃなくてルビーに、とか。

 

 

「俺が君たちを害する事はない……まあ信用なんかないから、これからはもっと上手くストーカーするよ」

 

「してんじゃねえよ」

 

 

ここでようやく、俺はアクアに離してもらえた。全く……この服何気に汚れやすいんだぞ?

 

 

「……あっそうだ。一つ伝言を頼むわ」

 

「なんで俺がお前のためにそんなことを……」

 

「これに関しては損得一切抜きの、ただのファンレターだよ」

 

「ファンレター……?」

 

 

俺は基本星野兄妹のストーカーしかしてない。だから今の俺の最推しである有馬かなの一切の事情に関わっていないし、知っていることも原作知識分しかない。俺が知っているよりも色んな作品に出ていたのでなにかしらバタフライエフェクトはあったんだろうと思ってた。それでも今の有馬かなの演技には俺があの時脳を焼かれたような『巨星』を感じられなかった。先天的な『巨星』の資質、そして後天的に獲得した『サポート技術』。背反しているが、それは()()()()()()()()素晴らしい才能と技能だ。俺はそれをを尊重したい。

 

 

「有馬かなへ、昔も今もずっと応援してる……って、そうだな……『卑屈な泣き虫』から彼女へ。そう伝えてくれよ」

 

「お前、有馬推しなのかよ。ガチでただのファンじゃねえか。言葉だけなら……分かった。だがその代わりだ。何か情報をよこせ」

 

「まっ、そうだよねぇ」

 

 

ここまで俺に対してマイナスイメージしか持っていないはずなので交換条件を出してくるのは分かってた。だからこちらから出す情報はちゃんと決めてある。

 

 

「俺の正体のヒント、もしくは星野ルビーの前世のヒント。どちらか好きな方でいいよ」

 

「っ……少し考える」

 

 

へぇ、考えるとは思ってなかった。アクアならノータイムでルビーの前世かと思った。なんで悩むんだろうか……ああ、そっか。

 

ルビーの前世は、まだ本当にただの他人だと思っているのか。たとえ少しでも『天童時さりな』を星野ルビーに重ねていても、その姿に面影を感じていても、ルビーを見ずに『さりな』を見ている自分を許せないのか。だからルビーの前世を聞かないことで本当に赤の他人だと思い込む。そう考えないようにする。だから今迷っている。ならば、ここで今君が選択するのは……

 

 

「お前の正体のヒントでいい」

 

「……そう言うと思ったよ。いや、それでこそ星野アクアか。うん……俺の正体のヒントだったな。昔……ちょっとドジを踏んで命の危機にあったことがあってね。それを人間に助けられたんだ。それから毎日のように感謝の気持ちやお礼を伝えて……そのまま寿命で死んで、()()して今に至るかな」

 

「転生だと……お前も、そうなのか。その言い方をするって事はお前の前世は人間じゃないのか?」

 

「そっ、大躍進だよ。まともな人間にも、まともな家族コミュニティにも存在できなかったけど。でもそんな事はどうだっていい。俺が5歳の頃の話だ。ちょっと嫌なことがあって公園でメソメソ泣いてた頃の話」

 

「ちょ、ちょっと待て!!ツッコミどころが多過ぎるだろ……てかお前今何歳だよ!!……ああもう、いや覚えた。で?」

 

 

頭を抑えながらマシンガントークを止めてきた。まあ情報過多で大事なとこだけぼかそうとしたけど、この一瞬でちゃんと整理されたらしい。やっぱ頭の回転早いなー。あと女に年齢の話するのはデリカシーないぞ?ストーカーして私生活覗き見てる俺が言うことでもないけどさ。

 

 

「たまたま出会った有馬かなに精神的に救われて、それ以来ずっとファン。芸能人とファンの関係性はテレビ越しが1番ちょうどいいからね、その恩返しは一生かけて推すって決めてるしそうでなくても彼女の瞳に、その存在に惹かれてしまった。直接あってどうこうってわけじゃないから……伝言だけ頼むよ」

 

「……なるほどな。今回は嘘ついてるわけじゃなさそうだし、悪くない情報だった。有馬には伝えておいてやる。徹底して俺の復讐を手伝う気がないのはよく分かった。どうせお前が出向かなくても俺たちのことを見てるんだろう?だったらそうしろ。言っとくが俺はお前に見られている事は心底気分が悪い。じゃあな」

 

 

そう言ってアクアは去ろうとしている。あれぇ……なんかそこまでボロクソ言われなかったな。もっとこう存在ごと消えてほしい、くらい言われるものだと思ってたけど……まあいいや、下手なこと言われたらまた俺のゆるい涙腺と脆い精神性が火を吹いてギャン泣き始まるし。

 

 

「『今ガチ』、面白がって見るから面白くしてくれよ?」

 

「見るんじゃねぇよ!!」

 

 

面白いなぁアクア。陰気で声に抑揚がないのにこういう時面白いのずるいだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 有馬かな

 

 

 

「有馬、少し話がある。暇か?」

 

「なに?自分は恋愛リアリティーショーに出演するようなタレント様が、仕事のない自称アイドル様に何の用よ」

 

 

苺プロ所属のアイドルになってから、事務所でぼーっと本を読んだりルビーと話したりする日々。ルビーにスカウトされた時からなんとなく分かってはいたけれど、実際にこうも暇だとつい目の前にいるアクアに悪態をつきたくなってしまった。あーもう、ついつい思ってることを誇張して口に出す癖、悪い事だとは分かってるんだけどなぁ。

 

そういえば、この口の悪さが役に立った事もあったわね。いつだったか覚えてないけれど、銀髪のやけに美形な女の子と少し話した事を覚えている。というか、今まで仕事が減っていくたびにあの子の事を思い出す。一人称が俺で、大量のカラスが近くにいて、当の本人はずっと泣いてて……今考えるととんでもない子どもだったわね……子役時代のアクアに天狗になっていた私の鼻を折られてからというものの、多少は周囲を見る余裕ができた少し後の話。公園でギャン泣きしてたあの子の境遇を聞いて同情して、つい勢いでファンになりなさいとか推しの子になってあげるとか小っ恥ずかしいことを言ったのを今でも覚えてる。いやでも、実際泣き虫だったし、何にも悪くないのにやけに卑屈だったり変な子どもだったのは間違いない。

 

 

「お前ほんとに口悪いな……卑屈な泣き虫?から伝言だ」

 

「はぁ……誰よそれ……卑屈な泣き虫ッ!?」

 

 

だからこうやって、アクアからあの子の話を聞くことになるとは思ってなかった。ていうか、アンタまた女引っ掛けたの?あの子、今の年齢を考えたらとんでもない美少女に育ってるでしょうに……はぁ、これだからスケコマシ三太夫は……

 

でも今はそれよりも、あの子のことが気になる。

 

 

「それって、銀髪!?」

 

「ああ」

 

 

珍しい髪色だけど、染めてたりで居ないわけじゃない。もしかしたら違うかもしれない。

 

 

「一人称が俺!?」

 

「ああ」

 

 

まだ一人称俺だったんだ……いやでも、俺っ子って言うジャンルあるしリアルで見たことないけど居るかもしれないし……

 

 

「えっと……あっ、カラス!!カラスが周りに居たり!?」

 

「ああ」

 

 

確定だー!!絶対あの子だわ!!ずっとこのあたり住んでるのに全然会ったことなかったわ。なんでコイツが先に会ってるのよ!?

 

 

「なんて、なんて言ってたの!?てか知り合いなの!?いつあったの!!どこに住んでる!?」

 

「うるせぇ、ちょっと落ち着け」

 

「落ち着けるわけないでしょーが!!」

 

 

こんなにずっと会わないなんて思っていなかったし、あんなに目立つ容姿なのにモデルとか芸能界でも見たことがなかった。きっと地元かどこかに帰ったのだと思っていたんだから。

 

思わずアクアに抱きつくような勢いで詰め寄ってしまったけど、今の私にとってそんな事はどうでもいいと思えるくらいあの泣き虫のことで頭がいっぱいだった。

 

 

「ひとつずつだ。まずは伝言から伝える」

 

「っ」

 

 

柄にもなく緊張してきた。そもそもまだ私のことを覚えていてくれたと言う事実がすっごい嬉しい。でもなぜアクアに伝言を頼んだのか、私とアクアに付き合いがあることを知っているのか、色々疑問が尽きないけどまずはあの子の伝言っていうのを聞きたい。

 

 

「『昔も今も、ずっと応援してる』だそうだ。なんか昔、お前に救われたんだってな。あの頃の有馬がそんな人助けしてたとは俺も予想外だったよ」

 

「…………」

 

「有馬?」

 

 

えー、超嬉しいんですけどー!!え、え、今も!?今の私に、ファンっていたんだぁ!!あの子ちょー良い子じゃない〜!!久しぶりに会いたくなってきたわね……あれ、でも私あの子にテレビの向こうで見てなさいとか言った気がするわ……あれ……?

 

 

「感激してるとこ悪いけど次だ。最近と言えば最近知り合ったな。今日あまで俺の顔を覚えてたらしい。俺より有馬のことを褒めちぎってたからな」

 

「きょ、今日あまで……?」

 

 

うーわ、最悪じゃない。そりゃそうよね。あの頃からずっと私のファンなら今日あまも見るわよねぇ……ん!?まさかピーマン体操とか見てないわよね!?あれ見られるのだけは嫌よ!!

 

 

「お前の瞳に脳を焼かれた、とか言ってたぞ。ドン引きするくらい熱弁だった」

 

「……それはちょっとよく分からないわね」

 

 

あの子……厨二病まだ治ってなかったんだ。ていうか10年以上厨二病患者なのあの子……今高校生くらいだし絶好調じゃないの?大丈夫かしら、心配になってきた。

 

 

「連絡先とか交換してないわけ?」

 

「してねぇ、名前も知らん。でもまあどうせそのうちまた会うだろ」

 

「はぁ!?なにその、僕と君は運命で繋がってるから、みたいな言い方。アンタも厨二病なの?キモいなの?」

 

「キモいなのは日本語おかしいだろ。ちげぇよ。まあ……ああもう、あの疫病神。説明難しいな……まあ、伝言はちゃんと伝えたから」

 

「ちょっと待ちなさいよぉ!!見た目は銀髪美少女でしょ!?」

 

「それは……多分そう。よく覚えてない」

 

「あの子の容姿はインパクトあるでしょうが!!」

 

「そうだけど……(10年以上前からガキの見た目から変わってないとか言えるわけない)」

 

 

肝心なところで役に立たないわねコイツ!!まあでも……元気そうならよかったわ。私の知ってるあの子は伝言の名前の通り卑屈で泣き虫。私のおかげ、なんて言うつもりはないけれど多少は感謝してくれてるってことよね。

 

 

「あー、そうそう。もうひとつ」

 

「なに?」

 

「これは伝言じゃないけど、恩返しで推してるわけじゃない。実際にテレビ越しで見て好きになったらしい……あーでもこれ、本人聞いてたら恥ずかしがるだろうなー」

 

「……ふふっ、なによそれ。そんなことわかってるのにっ」

 

 

私があの子を救ったとかそんな大それたこと言えないけど、今の私にたった1人でもファンがいる。そんな事実を知れただけで……アイドルをやって見る気になるというもの。

 

うん、でもまあ今まで会えなくて話できなかった分はしっかり取り戻したい。この辺ほっつき歩いてるんならどうせそのうち会えるでしょうし、見つけたら逃がさないわよー。覚悟してなさい。

 

 

「………(あの疫病神がどこかで見てても、これでちょっとくらい恥かいてくれたら気分いいな)」






「アクアくーん???人の小っ恥ずかしい話した挙句厨二病扱いですかぁ???罰当たりすぎないか?天罰下すよ?いやしないけどさっ」
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