カラスの恩返し   作:ゼノアplus+

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星の子達よ

「こよみはバチボコに燃えてるこれ、どう思ってんのよ」

 

()()()()。ああ、炎上対策の教材としては素晴らしいと思ってる」

 

「人の心とかないの?」

 

「こよみちゃんってもしかしてお兄ちゃんよりドライだよね。皮肉にならないくらい直球なところとか」

 

「君らこそ棘鋭いよね?え、ぜんぜん泣いたるからな?担当アイドルに無碍に扱われるマネージャーとかリアルすぎて嫌なんですけど」

 

「身から出た錆よ。受け入れなさい」

 

 

 まあ上位存在だしあながち間違ってはないんだけど、まあ言う必要もないよね。どうしても思考が偏るからそういう言い方になるのは仕方ないさ。

 

 現在『今ガチ』黒川あかね大炎上中となってきました。いやぁ、今まで演出っていうのがどういうものかよく分かってなかったけどこうやって悪意ある切り取られ方が公式映像として出されると分かっちゃうもんだね。こりゃひでぇわって思うくらいにはマネジメントの勉強も進んでいる。

 

そして俺は今苺プロ事務所で有馬かなと星野ルビーと共に最新話の『今ガチ』とそれに伴うSNSの反応の感想を言い合っていた。なんかそういうコントみたいになってるとか言わない。良いね?

 

 

「アクアがどうこう言われてるならともかく、今回の件に関しては目立った活躍がない演者が焦った結果を番組が都合よく編集した内容だろ?エンタメの方向としては悪くないし今こうして炎上という形で拡散されている。そして何より、こうしてこの映像が放送されているということは演者側からN()G()()()()()()()ということ。両者が納得した結果が、SNSによく現れているじゃないか。ああ、人間って愚かー」

 

「病み方の方向性が終わってるわね。ああそういえばこの子碌な境遇じゃなかったんだった……まともな感性してるかと思ってたけど全然やばいわね」

 

「下手に知識つけたせいで説得力があるのがなんかだなー」

 

「烏間さんの言うことは正しいわよ。よく勉強しているわ」

 

 

 社長が部屋に入ってきた。俺は流れるようにお茶を出すと再び参考書を読みながら会話に参加する。

 

 

「恋愛リアリティーショーは世界でも人気のコンテンツだけど、国によってはカウンセリングを義務付けることもあるの。今まで50人近くの自殺者を出しているわ」

 

「50人自殺してるってことはその10倍は死ぬ直前まで辛い思いをしてる人がいるってことよ」

 

「キャラ作ってたら、何言われようがキャラ作ってるし……で多少誤魔化せるけど、ずっと本音でやってたらどうなると思う?自分の恋愛についての本音が映像を通して全世界に公開されてんだよ。俺なら耐えられないし泣いて許しを乞うね。ああ、今許しを乞うてもSNSでさらにボロクソ叩かれるだけなんだがな」

 

「………お兄ちゃんは大丈夫かな」

 

 

 社長、有馬かな、俺の順で恋愛リアリティーショーについてルビーに語ってみせると、ことの重大さが分かったのか彼女も表情を険しくして兄の心配をしている。うんうん、今の聞かされて兄が出演してるってなったらそりゃ心配だよな。でもまあアクアなら大丈夫だろ。どうせ今頃自殺未遂の黒川あかねをぎゅっと抱きしめて救って……

 

 あっ、カラスにストーカーさせるの忘れてた。やっべ、今からカラスを派遣して間に合うか!?あのシーンは是非とも見てみたいんだけど……

 

 

「……アクアが警察のご厄介になったみたい」

 

「「えぇ!?」」

 

 

 あー……間に合わなかったぁ。うわー今日に限ってなんでカラスを行かせてなかったんだ、ってそういや今日は台風だった。危ないからカラス全員に待機言い渡してたんだった……はぁ……不覚。このところ大人しく人の範疇で過ごしてて鈍ったか?大体の時間をここで過ごすようになったからちゃんと意識しないとな。

 

 社長はアクアを迎えにいくために事務所を出るので俺たち3人だけが残される形になる。他の従業員も、台風の日ということで出勤していないので本当に俺たちだけだ。あれ、なんで俺と有馬かなって事務所来てんの?え、帰りどうすんの?

 

 

「有馬さんと烏間さんは泊まって行きなさい。寝具とかはルビーが知ってるはずだから教えてあげて」

 

「はーい……お泊まり会だっ!!

 

「え、あのなんとかして帰りますけど……」

 

「この雨で返す方が危ないだろ。社長は今から警察署だし大人しく泊まらせてもらおうぜ」

 

「うーん……そうね」

 

 

 本当にどうやって帰るつもりだったんだこの子、マネージャーじゃなくてもこの中歩かせるのはやばいだろうが。

 

 

「お兄ちゃんのことは心配だけど、どうせ大丈夫だろうし……女子会しよっ!!」

 

「急ね」

 

「急だな」

 

「テンション低くない!?女子会だよ!!花園だよ!?」

 

 

 女子3人でお泊まり会みたいになると女子会になるの?そうなの?前前世も前世も経験ないからわからないよ?

 

 

「女子会って言っても何するのよ。あたしらそんなに仲良くないでしょ」

 

「うわー辛辣。じゃあ今日で仲良くなろうよ、こよみちゃんの事とか全然知らないし」

 

「俺は構わないよ。一日中参考書読んでても気が滅入るし」

 

「……まあ、私だけ除け者ってのも気に食わないしいいわよ」

 

 

 そうと決まれば話は早い。いそいそと布団を並べた俺たちは寝巻きになってうつ伏せで顔を突き合わせた。ルビーは元々ラフな格好なのでそのまま、俺は社長が忙しくない時は泊まりで勉強に付き合ってくれていたりで置きっぱにしていた俺のお泊まりセットを、有馬かなはその俺の予備を来てる。サイズ合わないのはごめん。

 

 

「…………」

 

「いや、ほんとごめんじゃん。何がどう気に食わないのかは分かるけどさ」

 

「……いえ、服を貸してもらってるから文句なんてないわよ。たとえ胸のサイズが一回り以上違うんだなって、やるせない気持ちになんかなってないわよ」

 

「こよみちゃんおっきいもんね。学校の友達には負けるけど。えーと、ほらこの子!!」

 

「でっか!?なんだっけミドジャン?でみたことあるわね。これが格差か……」

 

「この子が友達とかマジで眼福じゃん。一生に一度拝めたら良いレベルだろ」

 

「なんかおっさんくさいよこよみちゃん」

 

「あ、1番言っちゃいけないこと言いやがったな?」

 

 

 死んだ魚の目をしてた有馬かなを復活させて3人で話題を回していく。ルビーは元々話題には明るいし有馬かなも芸能人らしいトーク力がある。俺だけ浮くけれど、身の上話はまあこの子達には新鮮なのでそれを話すだけでも話題提供にはなっている。

 

 

「そんなこんなで、俺は実家では神に愛された子って扱いされてんだぜ?ウケるよなー」

 

「お嬢様だけど碌でもない環境で中和されてこれが出来上がったのね」

 

「そういえばこよみちゃんってなんで口調男っぽいの?似合ってないよ?」

 

「急に刺すじゃん。んー……ノリ?」

 

「私の周りの人みんなノリで生きてるんだけど!?」

 

 

 知らないよ、前前世の男口調抜けないんだもん。その理論で言ったらノリで男っぽい口調だよなー。今更取り繕ってもボロ出るだろうしさっ。てか俺が普通に女口調で喋ってるところ見たことないから言ってるだろ。もう一個のバイトだと普通に喋ってますぅー、言わんけど。

 

 その後、会話中に首がカクンカクン落ち始めたルビーを2人で寝かせて、有馬かなと少し会話した後彼女も寝た。どこでも寝れるって才能だよな。前世がカラスだから一定の寝床なんてあんまり持ってなかったし、マイベストフレンドゴローにもらった小屋が恋しいよ。てか、まだあの病院の屋上にあるのかねぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして周りが完全に寝静まった頃、俺は2人を起こさないように布団を抜け出してアクアの元へ瞬間移動した。流石に時間的にもう帰宅してるでしょ。

 

 

「お疲れさん」

 

「……お前か。何の用だ?」

 

 

 アクアはどうやら自宅の自分の部屋にいたらしい。窓の外に瞬間移動したので、雨に濡れることを避けてアクアは部屋に入れてくれた。好ましく思ってない相手に優しさが出るあたりちゃんと良い人間性してるよね。本当に、復讐が向いてないくらいに。

 

 

「記者クラブにはもう話したのかい?」

 

「なんで知ってっ……なるほど、全部知ってるってのはそういう意味か」

 

「どういう捉え方をしたのか知らないけど今回の行動について咎めるつもりはない。どうせ明日社長になんか言われるだろうし。その上で聞くけど、なんか俺に言いたいことできた?」

 

 

 俺が未来を知っている、というのを匂わせた。これはつまり黒川あかねが今後どうなるかをあらかじめ知っていたのと同義であり、救える命を救わねばならないという強迫観念を持っているアクアからすれば俺が見殺しにしようとしたように聞こえるだろう。実際俺はそう聞こえるように言ったんだからな。

 

 

「知ってたなら止めろよ、って言って欲しいのか?言わねえよ、この一件に何も関与していないお前にその責任を押し付けるのは違うだろ」

 

「へぇ……それは何より。でもそれは今回、黒川あかねが無事だったから言えるんだぜ?もし本当に死んでたら、君は俺に文句の一つくらい言っていたはずだろう。殴りかかってきたかもしれない」

 

 

 ベッドに腰掛けているアクアに対して、机の椅子に勝手に座った俺がそう言う。そういえば何でアクア目を逸らしてんの?……ああ、俺が寝巻きだからか!!え、薄着とは言わないけどまあまあラフだしなー。男の子だねぇアクア君。

 

 

「……だろうな。で、本当に何の用だよ。まさか本当にそれだけを言いに来たんじゃないはずだ」

 

「え、そうだけど?まあ正確にはお疲れだろうし和やかな会話で気分を紛らわせようと……」

 

「いや無理だろ。何で今の流れで和やかになると思ったんだよ。脳内お花畑か?」

 

「さっきまでルビーと有馬かなと女子会してたんですぅ。そりゃ脳内お花畑にもなるっていうか女の花園?っていうか?……ちなみに事務所に泊まりでな」

 

「聞いてねえし。ていうかこの大雨でどうやってここまで……いや、聞くだけ無駄だよな。どうせ変なオカルトだろう」

 

 

 もうそろそろアクアも俺の神様パワーに慣れてくれたようで俺も楽ができる。そもそもこんなの見せてるのアクア以外にいねぇしさ。

 

 

「明日以降起こるであろうわちゃわちゃの中心に行くつもりだろう?前もって労いに来たんだよ。やる必要のないお節介を焼きに行く優男君をね」

 

「そこまで分かってんのかよ。で、それはうまく行くのか?」

 

「知らね」

 

「はぁ?ふざけるのも大概に……」

 

「人が助かるならその手段は何でも良いのかい?俺との交渉は……()()()?」

 

「ッ!?」

 

 

 原作ツクヨミも言っていた、人と神の差。軽々しく交渉して良いものではないと、要求には見返りが必要だ。だから先日俺はアクアに情報を対価として渡した。だが、君が俺に何を対価として差し出す?差し出せるものがある?

 

 

「俺と交渉するつもりなら、それなりの対価を求める。君の前では2度と口にしないと言ったから言わないが……星野アクアが俺に差し出せるものは、唯一それだ」

 

「…………そうかよ。こんな時だけ、()()()ことしやがって。だったらダメだな。俺が自分で何とかする、しなくちゃならない」

 

「まあ頑張りたまえよ。陰ながら応援してるぜっ。あっ、相談とかあったら全然聞くよ?これでもマネージャー見習いなもので」

 

「情緒おかしいだろお前。さっきのテンションはどうした」

 

 

 圧を消して普段のようにへらへら笑って言った。アクアから鋭いツッコミが入るけどもう気にするようなアレじゃないやん?

 

 

「だってもう君の前じゃカッコつかないじゃん。だから今日だってこうして16歳モードだし……ああいや、この姿が実年齢なんだけどね?いつも君に会う時の5歳モード、普段の16歳モード、別のバイトしてる時の20歳モードなど色々あるよ」

 

「そのバイト絶対酒とかそこら辺だろ」

 

「バレた?バーのスタッフだよ。そのうち君も行くことになるだろうね」

 

「はぁ……俺が?まさか、ありえない」

 

「研修医になる前からなった直後くらいまで、上手いこと女の子と酒飲みながら遊んでたのに?」

 

「…………」

 

 

 図星らしい。まあ医大生で遊んでるってのは原作で言ってたし、研修医でさりなちゃんと会う前とかは知らないけど大体合ってるだろ。そう思ってたらまさかのビンゴだった。

 

 

「まあその経験があったから女の子を転がすのくらい得意だろうし、なんとかなるだろ。うらやましい技術をお持ちで」

 

「言い方に悪意がありすぎる。お前こそそういうの得意じゃないのかよ」

 

「洗脳すれば事足りるし」

 

「そうだった、コイツ平気でそういうことをする疫病神なんだった……はぁ、疲れた。もう寝る」

 

「ちょうど良く眠くなってきただろう?」

 

「……俺に何かしたのか」

 

「非日常から日常に戻ってきた実感で安心して急に疲れとかが来たんだよ。今のうちによく眠っておけよ。おやすみ」

 

「おい、ちょっと待」

 

 俺の本来の目的、おそらく眠れていないであろうアクアの寝かしつけだ。どうしてこういう行動をとっているかというと、担当のメンタルケアという項目を参考書で読んだから1番実験しやすそうな奴に試したかったってのが本音。いやさ?有馬かなは自分でメンケアできるし、ルビーはそもそもメンケア必要ないし試せる人がいなかったんだよ。

 

 実験大成功とまでは行かなかったけど、要領は何となくわかったのでよしとする。俺はアクアの言葉を聞き終えることなく窓から出ていき俺の姿をアクアが見えないようにしてからワープ。事務所のリビングに到着しましたっと。

 

 

「どいつもこいつももうちょい気楽に生きてくれれば、下世話なカミサマが干渉する必要なんて無かったんだけどなー。まあ無理な話か、()()()()()()()()()()がないとあのゴミ共も興味なんて持たなかったんだろうよ」

 

 

 寝酒ならぬ寝ファ◯タを飲んでから寝よう。だって俺アイドルじゃないしー、健康管理なんて俺に必要ありませーん。太る?この体、太りません!!体が最高の状態を維持し続けます!!チートだねぇ。今の所デメリットが無いので我が物顔で好き放題飲み食いしております。ええ、最高です。トリプル肉◯ビーフ3個とか食べちゃうもんねー。お財布が号泣する未来しか見えんけどな!!

 

 大多数の女性が聞いたら殺意の波動に目覚めそうな事を考えながら、小一時間ほどリビングで

過ごしてから俺は就寝した。

 

 

「アクア、ルビー、かな。こういうの柄じゃないけどさ、よくお眠りなさい……なんてな」

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