「‥‥ん‥‥‥んん?」
消毒液のような、鼻につく薬品の匂いで目が覚める。
まだ微かにある眠気を無視して、周りを見渡す。
いくつもあるベッド、薬品が並べられている棚、何か書かれているボード。
キヴォトスに来るまえでは見たことがあった気がするが、来てからは見たことがない場所だった。
(こんなの、アビドスには無かった筈だが)
「ここは‥‥」
よくわからない状況で無意識的に言った言葉は、突如開かれたドアの先の人によって説明された。
「ここは、ゲヘナの救急医療部室ですよ」
「‥‥えっと、貴方はあの時の」
「ゲヘナ風紀委員会の火宮チナツです、以後お見知り置きを」
「自己紹介ありがとうございます、大津ナクです。それで、俺は一体どうしてここに?先生に担ぎ上げられたところまでは覚えているんですが‥‥」
便利屋が原因で始まったいざこざは、風紀委員会の介入ですんなりとは行かなかったが無事(?)に終わる。
しかし、丁度すべてが終わり、帰ろうとした時に先生に担がれ、バレないようにと隠していた両手を皆に晒され、公開処刑されたところで俺の意識は失っていた。
「あの後、委員長の指揮の下、ここに運ばれてきたのですよ」
「貴方は両手欠損による大量出血で血液不足になり失神したのでしょう‥‥‥それにしても」
次の瞬間、火宮さんの雰囲気が微かに変わる。
これは‥‥‥‥不味い。
「何故貴方は隠してたんですか?両手が完全に切れていたんですよ?大量出血ですよ?仮に隠し通せてたとしても、そのまま死んでいたかもしれなかったんですよ?馬鹿なんですか??」
「ハイ‥‥‥」
「それに、貴方を運ぶときも大変でした。アビドス高校の皆さんは全員ダウン、こちらも
「すいません‥‥‥」
「ええ、とても大変でした。だからこそ聞きましょう。何故、そこまでの重症になるまでのことをしていたんですか?」
「‥‥‥‥坊やだからさ」
「ボケないでください張っ倒しますよ?」
「スイマセン!」
俺の渾身のボケの答えは火宮さんによるシンプルな罵倒だった。
少しくらい言ってもいいじぇねえですか‥‥
「分かってると思いますが、貴方はヘイローがないのです。少し特殊な能力を持っていても、所詮は貧弱な存在に過ぎないのです。そこはちゃんと理解してください」
「‥‥‥うぃっす」
火宮さんの言葉の通り、俺にはヘイローがない、キヴォトスじゃどこかでポックリ逝っててもおかしくはなかった。
そんなことを頭にも入れず自分勝手に生きた結果がこれだ。たとえ大将が生きていても、自分が死んだら意味がない。そう思うと自分が惨めに見えてきた。
「とにかく色々言ってしまいましたが、無事で良かったです。先生やアビドス高校の皆さんもかなり心配されていたのですよ?」
「‥‥‥」
火宮さんにそう言われて、気を失う前のことを思い出す。
必死になって指示をしていた風紀委員長さん、駆け寄ってくる砂狼さん、暗い顔をしている小鳥遊さん。
皆にそういうふうに見られたくないがために取った行動が、こうも裏目になるとはと思いもせず、頭を抱えてしまう。
「‥‥‥反省しているようですから、これ以上言及するのは止めておきます」
「ありがとうございます‥‥‥」
「では、私はこれから風紀委員としての事務作業があるので失礼します。くれぐれも安静にしておいてくださいよ?」
「‥‥分かりました」
暫くしてドアが閉じる音がする。
残るのは俺と、俺自身が原因で生まれた虚しい感情だけ。
「‥‥‥‥」
意味もなく天井を見続ける。
何故だか、そうしていたい気分だった。
(浮かれたんだよな、俺にとっての理想の力を得て、使って、それから拾われて、皆のためにって思って、結局両手失って‥‥)
「‥‥‥‥はぁ」
「‥‥‥‥ッ?」
しばらく天井を見ていると、ふとした時、近くから妙な気配を感じた。
ソレは今までで感じたものより奇妙で、言い表しにくいものだった。
「‥‥‥誰だ?」
俺が声を上げると、その気配は一瞬怯んだようだが、すぐにこちらに近づいて、ついに姿を現す。
「クククッ、まさか少し近づいただけでもバレてしまうとは。やはり凄いですね。‥‥‥‥それにしても随分と傷心しているようですね?」
「‥‥‥アンタは誰だ?目的は」
ソイツは真っ黒の中にいくつもの亀裂が入っていて、人間と別の存在の間にいるような見た目だった。恐怖のような、不思議なような、ソイツからは奇妙なものをいくつも感じ取れる。
「今は黒服と名乗らせてもらっています」
「目的は‥‥そうですね、貴方の話を聞くことです」
そういやタグを追加しました。
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