「キャアアァァァァァァ!」
梢ちゃんが叫び声をあげる
「う・・・うそ・・・ヤダ・・・」
「う・・・噂は・・本当だったんだ」
「さ・・・最悪だ・・・」
もし噂どおりだとすると俺たちは死の呪いを受けてしまったことになる
・・・夏休みの間のほんの些細なイベントのはずだった…
それがまさかこんな事になるなんて…
・・・しかし俺たちにはこの状況を回避する方法があったはずだ
何故なら今目の前で起こっていることを「噂」という形で全部知っていたのだから・・・
だが現実に目の前に「死」が覆いかぶさっている
それは紛れもない「事実だ」・・・
お前たちに私の苦しみが理解できるか?
女の霊が俺たちに語りかけてきた
その言葉には地の底から響いてくるような恐ろしさはあったが
それと同時に
胸を締め付けるような悲しさも感じられるような気がした
「お・・おい!世理香!!に・・・逃げるぞ!!」
「・・・うぅ・・・うん・・・」
しかし二人には女の霊の言葉は届いてないようだ
晃は世理香の手を掴みこの場から逃げ出そうとしている
正直に言うと俺も同じように逃げ出したかった・・・
・・・理屈ではない
これは恐怖からくる人間の本能だろう…
だが俺の中で何かが引っ掛かる・・・
・・・このまま本当に逃げていいのか?
俺は逃げ出したい気持ちを抑えもう少し現状について考えてみることにした・・・
・・・「何か」がこのまま逃げることを拒んでいた・・・
「晃!!世理香!逃げちゃ駄目だ!!」
俺はとっさに叫んでいた
だが・・・・・・
「雅人!早く逃げるぞ!!」
逃げていく晃と世理香の足音が霊園にこだまする・・・
「ま・・・雅人君?・・・」
梢ちゃんが消え入りそうな声でうったえつつ俺の手を掴む
俺の選択が正しいかどうか分からない・・・
だが俺は確かに知っているのだ…
呪い回避の方法を!
確か霊園に来る途中晃が言っていた・・・
「幽霊を見ても直ぐに逃げず相手を見据えたまま5歩後ろに下がり、それから逃げれば呪いを受けずに済むらしい」
本来ならそんな話真に受けたりはしないだろう・・・
だが今回はその噂を信じてみようと思う
・・・まぜなら巷に広まっている噂はすべて「真実」だったのだから!
「こ・・・梢ちゃん・・・俺の話を聞いてくれ」
女の霊を見据えたまま俺は声を絞り出す
「車の中の話を思い出すんだ・・・この霊からすぐに逃げちゃ駄目なんだ・・・5歩だけ後ろに下がってから逃げるんだ・・・霊から目をそらさずに・・・」
梢ちゃんの手を強く握り締め俺は言う
梢ちゃんにも俺がやろうとしている事が理解できたようで・・・
「・・・わ・・・わかったよ・・・雅人君」
俺の言葉に答えてくれた
その答えを聞いた俺は梢ちゃんと共に・・・
1歩後ろに下がった・・・
私の元を訪れし者よ!私の問いに答えよ!!
心臓にまで響く恐ろしい声が俺たち二人に降りかかる
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
梢ちゃんが怯えて逃げ出しそうになる
「駄目だ梢ちゃん!耐えるんだ!!」
俺はそう言うと梢ちゃんの手を強く握る
・・・これが今の俺にできる精一杯だ
私の元を訪れし者よ!お前たちに私の苦しみが理解できるか!!
俺たちはその声には答えず・・・
また1歩後ろに下がった・・・
この世のものとは思えない女の霊の姿を見据えたまま後ずさりするのは正直生きた心地はしない・・・
だがこれをやり遂げること自体は不可能ではないと感じたその直後
許さない!!
お前たちは私を理解しようとしない!!
女の霊が業火に身を焦がしながら俺たちに迫ってきた
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺たちはあまりに恐怖にパニックに陥った
俺はすぐ逃げだしたいのを堪えてまた1歩うしろに足を運ぶ事が出来た・・・
やっぱり自分でこの行動を選びしかも梢ちゃんまで巻き込んでしまっている状況が俺に驚異的な力を与えているらしい・・・
だが女の霊はそんな俺の勇気を吹き飛ばすかのように…
私はまだ生きてるのに焼き殺された!!
お前たちも同じ苦しみを味わえ!!!
地の底から響くような恐ろしい声で俺たちに迫ってきた
その直後・・・
・・・足が熱い・・・?
なんだ?何が起こってるんだ?
足元が異常に熱い!!
たんぱく質が焦げるようなにおいが鼻をつく・・・
この熱さは異常だ!!
俺たちの脚が燃えてる!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
これは現実なのか?
霊が俺たちに与えてる幻なのか?
それはわからない・・・
だが現実に俺と梢ちゃんの二人生きながらにして体に一部を焼かれるような激痛に襲われている・・・
これが・・・女の霊が体験したことなのか・・・
「ま・・・雅人君・・・」
苦痛をこらえ梢ちゃんが名前を呼び手を強く握り締めてくる
そうだ!
今の俺たちは女の霊の心情など考えてる余裕はない!!
俺たちは耐え難い苦痛を乗り越えてまた1歩うしろに足を運んだ
「頑張れ!・・・梢ちゃん!あと1歩だ!!」
「・・・く・・・うん・・・雅人君・・・」
苦痛に耐えつつ梢ちゃんが答える
これでもなお私の問いが耳に届かぬか!!!
怒りの声が俺たちに降りかかる
「こんな事はやめてくれ!!俺たちは関係ない!俺たちを巻き込まないでくれ!!」
俺はとっさに霊の問いに答えていた
女の霊の問いにこたえようとしたのではない
苦痛を紛らわすために体が脊髄反射的にその言葉を言わせたのだ
・・・だがその言葉は霊の望んだこと答えではなかったようだ・・・
ここまで来ておいて関係ないとは言わせない!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その直後信じられない事がおこった
俺たちのいた場所が一瞬にして暗くなったかと思うと
平衡感覚がなくなり自分たちがどこを向いているのかわからなくなった
そのあまりの落差に俺と梢ちゃんはバランスを崩し倒れていまい
あわてて起き上った時にはどちらの方向を向いていたのか分からなくなってしまっていた
そして・・・
気がつくと今まで見た事もない奇妙な空間に包まれていた・・・
「・・・ど・・・何処だ・・・ここは?」
「ま・・・雅人君・・ここは何処?」
先ほどまでの体が燃えることからくる苦痛は嘘のように消えていた・・・
女の霊の姿も見当たらない・・・
だが気配は感じられる!
彼女はこの空間の何処かにいるのだ・・・
俺たちは最後の1歩を間違えずに選ばなければいけないようだ・・・
・・・神様・・・どうか俺たちを助けてください・・・
心の中でそう念じながら
俺たちは左を向き後ずさった・・・
雅人と梢の二人は邪悪な空間から脱出できたのか?
はたしてどうなってしまうのか・・・
それは次回であきらかになります。