ならさ、作ればいいじゃん。自己供給。
あれはよくある依頼の一つだった。
「あなた、噂のVault居住者よね⁉」
いつものようにファウンデーションへ行き問題が起こっていないか確認するためウォードさんのいるトレーラーの扉を開こうかといった時だった。
「私、マギー=ウィリアムズ。父を探しているの」
「行方不明者捜索ですか?」
人を探すこと自体は珍しい仕事ではない。Vault79を襲撃したときにクレーターのレイダーと事前準備にいくつか仕事をこなしたが、そこでは発信器を頼りに人探しをした。酷いときはロクシーさんからクレーターを勝手に抜けた代償を取らせるためにほぼ手掛かりがない状態で逃げ出した奴を見つけ出した。極々ありふれた、一般的な仕事だ。
だが彼女…マギーさんの依頼は少し違った。
「ええ…でも、正確には父の遺品を探してほしいの。父は戦前にはもうモノンガー鉱山で生き埋めになってしまったから」
「心中、お察しいたします。ですがモノンガー鉱山は入り口が瓦礫で塞がっていましたよね。必ず探し出して見せますから、しばらく時間をください」
「お願いします」
モノンガー鉱山で大規模な落盤事故が起こり、作業員が生き埋めになった話は監督官から聞いたことがある。監督官はVaultの建設工事に用いていた機材を救出に回そうとしていたが、Vault‐Tecや政府が最終戦争がいつ起きてもおかしくないことから後回しにされ、そして完成後も他のVaultを作るために見捨てさせられた。その見捨てられた人の遺族が今、目の前にいる。かつての監督官の無念を晴らすため、他のVault居住者とどうやったらモノンガーに入れるかを相談した。
結果として、瓦礫の除去方法はかなり強引なものになった。アパラチアに秘匿されている政府の極秘施設、三つの核ミサイルサイロ。それらに再び侵入し、核の力で瓦礫を除去しようというのだ。監督官は核汚染を心配していたが、今回の作戦がモノンガー鉱山の遺族の依頼によって立案されたことやこれが最後ということで納得してくれた。核で鉱山が完全に吹き飛ばないかという心配についても、専門の居住者は鉱山が振動で落盤する可能性はあるがしばらくは持つと説明してくれた。
作戦当日。僕はモノンガー鉱山の南東にあるBOSが接収したアトラス砦にほかの居住者と一緒に待機していた。
「いいかB班のお前ら、戦闘を得意としているA班がミサイルを発射後、鉱山が崩落するまでに駆けつける可能性は低い。そこで作業用のPAを持っている俺たちが即座にラッドストームの中に突入、鉱山内でアール=ウィリアムズの遺品を回収し脱出する。鉱山内ではモールマイナーと暴走した採掘用プロテクトロンとの戦闘が予測される。強くはないとはいえ、スティムパックの数は頭に入れておけ」
『了解!!』
誰もがこのとき油断していた。A班もB班も危険だが、その種類が違う。A班は侵入者を撃退しようとするミサイルサイロの守護者である米軍のロボット軍団。B班はラッドストームによる放射能や落盤。監督官やリーダーですらも予測できなかった危険。
「だからこれは、誰も悪くない」
鉱山内は落盤の影響もあって一方通行で、アール=ウィリアムズさんがいる場所にまですぐにたどり着けた。
そう、いる場所。
アール=ウィリアムズさんは戦前からおよそ30年近く経ってもなお生きていた。いや、ほかの鉱夫さんたちも生きていた。ウェンディゴという異形になって。
武装はしているけれど、戦闘ではなく遺品捜索を作戦の主眼にしていた僕たちはウィリアムズさんたちだったウェンディゴを倒すのに苦戦し、死者こそ出さなかったが全員が深手の傷を負った。そしてタイムリミットも迫っていた。
「この揺れは…まずい、そろそろ鉱山が完全に崩壊する!!」
「こっちから風が入っているぞ!! こっちだ!!」
「だれか肩を貸してくれ!! PAの脚ごと折れて走れないんだ!!」
「まだウェンディゴが来る!! 火力が足りない!!」
かつてアパラチアを恐怖の底に陥れ、そして一度は人類をアパラチアから抹殺したスコーチ病とその原因であるスコーチ・ビースト・クイーン。それらに打ち勝ったVault76の猛者たちが追い詰められていた。
「おい!! 小僧!! どこに行く!!」
「僕が殿を務めます!! リーダーたちは先行して僕の帰り道を確保してください!!」
「そうか…そういうことなんだな!! わかった、さらばだ小僧!!」
既にFCが空になって使えなくなったPAを脱ぎ捨てる。まだ大傷を負っていないのは僕とリーダーだけ。そのどちらかが殿になり、どちらかがみんなを引き連れて脱出する必要があるのなら、殿になるべきは僕だ。
襲い掛かってくるウェンディゴたちを手にしたショットガンで楽にする。
「誰も、悪くないんだ」
敵が恐ろしいウェンディゴたちであることを見越せなかった監督官やリーダーは悪くない。
落盤によって潰された脚を諦めて斬り捨てる。
「誰も、悪くはないんだ」
生き残るために禁忌である共食いをしたウィリアムズさんを始めとする作業員さんたちや、この件を依頼したマギーさんは悪くないんだ。
銃は既に壊され、体も既にボロボロ。ウェンディゴたちが食卓に並んだ僕を取り囲むのと同時に地面が大きく揺れ、頭上の大岩が落ちてくるのが見える。
「誰一人として、悪くないんだ。
悪いのは、僕なんだ」
みんなにケガを負わせ、あわや死なせかけた。その原因を作ったのは、人助けになるからと深く考えずマギーさんの依頼を受けた僕なんだ。