Fallout76 Pretty Derby   作:ロイ1世

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転生とかしても戸籍とかが気になるよね

「まだ、生きてる…」

 

 気が付いた時にはホワイトスプリングリゾートのように綺麗な衛生環境の整った部屋のベットで横になっていた。

 

「うーん、感覚的に全身の複雑骨折と脳にもダメージがあるな。スティムパックは…バックパックごとウェンディゴに切り裂かれたんだった。というか、Pip-Boyは?」

 

 体が動かないので目だけで回りに自分の持ち物がないか探してみるが、何もない。花瓶に生けられた造花くらいだ。そもそも僕の持ち物自体がほぼない。武器も防具も壊されたし、荷物も鉱山内でぶちまけた。おそらくPip-Boyしか無事なものはない。なにせ全身がボロボロなのだから。

 

「治り悪いなー、ここまで環境が整っているならスティムパックぐらいあるだろうに…」

 

 仕方がないから自然治癒力に任せてしばらく横になっていると、扉が開く音がした。絶望的な状況から救助してくれてさらに治療もしてくれたから悪い人たちじゃないんだろうと思いつつも全神経を集中させてカーテンの向こう側にいる来訪者を探る。

 

「(人型生物で小柄だ。殺意はない。しかし何か妙だ)」perception15

 

 完治とまではいかないがある程度動かせるようになった体ですぐに逃げられるように準備しておく。しかしウェンディゴとの戦いで複雑骨折をしている体は全身が包帯と添え木で固められておりうまいこと動かない。骨が完全に逝っている左腕は力なく垂れており脚も踏ん張っても立ち上がることができない。

 

「これは…スマートウマッチのように手に装着することができるパソコンか。それにこのズタボロの服、中には引き裂かれているがしっかりとした装甲板が入っている。あとこの地図…どこの地図だ? 色々と追加で書き込まれているからかなり使ったのだろうが、少なくとも日本ではないな。いずれにせよ新たなモルモットが手に入ったから都合がいいか」

 

 言語からしてアパラチアには珍しい日本人がVault居住者しか身に着けないPip-Boyや厳選した防具を観察するのは分かるが、続いたセリフでウエストテック研究所にいた研究者さんたちを思い出す。あの人たちはDr.ブラックバーンが誘拐してきた人たちを使って人体実験をしていたが、被験体になった人たちはこんな恐怖心を感じていたんだ。ということで、逃げます。

 

 治癒因子で傷自体は塞がったので、折れて碌に動かない手足を根性で動かす。静かにするのは得意だし、バレずに逃げる自信がある。Sneak★3 Agility15 どっかでスティムパックを確保したら、急いで逃げて近くの拠点に寄ろう。

 

「Oh…」 Danger

「ふーむ、出血自体は収まっている。しかし骨はまだ治っていない。だが体を動かすことはできる。無理をせずもう一度横になりたまえ。私に任せればすぐに骨も治るよ」

 

 カーテンのその先にいたのは、白衣を身にまとったアジア人の少女だった。茶髪で目が石油ストーブのようだったが、何よりも特徴的なのは頭に二つ、戦前の変異前の馬のような耳があり、さらには腰から尻尾が生えていたことだ。

 

「I have never seen such a mutation.」

「変異が…なんだって?」

「すまない、そのような変異は見たことがないと言ったんだ」

 

 同じVault居住者のヤマダさんから教わった日本語でやり取りをする。

 

 目の前の少女にも言ったように、変異が流行しているアパラチアでもこのような馬耳と尻尾の変異は見たことがなかった。スプリングリゾート地下にあるエングレイブの基地にもこれと同じような変異ができる血清はなかったはず。

 

「その変異は…」

「油断大敵だよッ!!」

「あっ刺された」

 

 気になるその耳に触れようと手を伸ばしたとき、無防備になった腕に薬物の入った注射を刺された。スティムパックの使用や銃創で体に穴が空くことには慣れていたので痛みはないが、中に入っていた薬品のほうが気になる。

 

「…? おかしいな、これを使用すればすぐに骨が再生して修復された骨が発光するはずなのだが」

「ん? あー、確かに骨は治ったみたい」

 

 付けられていた包帯や添え木などを外して体を動かす。先ほどまでとは違いしっかりと骨が機能して全身を支えてくれている。

 

「副反応が出ていないのか? いや、そのまま少し待ってくれ」

 

 一度扉の方に行った少女は明かりを消す。

 

「なるほど、発光量が少なくて高ルクス環境では視認できなかったのか」

 

 窓から光が差し込んでくるため完全な暗闇ではない部屋の中で、僕の左腕とそのほか各所の骨がそろそろ切れる豆電球くらいの明るさで光を放っていた。

 

「おかしいなー、ほかの人でやったときはもっと光ったんだが」

「あー、すみません。僕薬が効きにくい体質なんですよ」

「ほーう、なるほどね。ではもうすこし濃度を上げて…」

「別にそんなことしなくて大丈夫ですよ。光ってる奴に碌なのはいないので」

「そうなのかい…」

 

 ただ体が発光している奴は放射能をたくさん浴びて光ってるだけだからまだいいが、なにか変な光るオーラを纏っている奴はダメだ。あいつら他の光ってる奴と違って死にかけても突然回復するから倒すのが面倒すぎる。

 

「じゃあ、今回の実験に参加した後の変化をレポートで送ってほしいのだが、ええーと…」

セブンティシックス(76)です」

「セブンティ…長いな、とりあえずセブン君だね。私は旧理科室にいるから」

「わかりました」

 

 手渡されたプリントを流し見している間に少女は去っていってしまった。

 

「…話せても読めないんだよ」

 

 ヤマダさんのおかげで日本語が操れるようになったがそれはあくまで発話に限った話だ。日本語が持つひらがな、カタカナ、漢字という三形態の字が入り乱れた日本語の分は難しすぎる。Pip-Boyの日本語データを参照しながら読もうとPip-Boyを身に着け起動する。

 

「アーマー類はダメだな。修理しなくちゃ」

 

 着させられていた患者服から着替えようとしたがアーマーは修復しなければ着ているとは言えない惨状だった。幸いここには布や金属系があるので作業台さえあれば修復できるんだけどなと思っていると今度は緑色の服を着た同じく日本人の女性が現れた。

 

「ん? その帽子の中…」perception15

「どうかされましたか」

「いえ、なんでもないです…」intelligence4(嘘)

 

 咄嗟の判断で浮かんできた疑問を忘れ、この人がなんのようで来たのかを聞いた。

 

「あなたは学園の裏手にある森で見回りをしていた用務員の方が発見しました。かなり酷い状態だったと聞いていたのですが」

 「(学園? ワトガハイスクールかVault-Tec大学か? だがあそこはここまで綺麗じゃないぞ。)いえいえ、そちらの生徒さんのおかげで治りましたよ」

「もしかしてですけど、栗毛の白衣を着た生徒でしたか?」

「はい。おかげで治癒因子では治らない重傷がこのとおり」

 

 応急処置の道具が外れている姿を見て頭を抱えている緑色の人。どうやらあの生徒さんは何かまずいことを…いや、そもそも成功したからいいが人体実験を無断で行ったことに変わりはないのか。じゃウェストテック研究所の人たちと同じだ。

 

「細かいことはこの際いいですよ」

「そちらがそれでいいのならよいのですが…」

「いいですよ、治ったんですし。それでここはどこなんですか?」

「ここは府中のトレセン学園ですけど」

 

 ふちゅう? とれせんがくえん?

 

「それはどこらへんですか? クランベリー湿原とか毒の峡谷とかだと」

「そのクランベリー湿原とかはよくわからないんですけど、東京都の多摩川が…」

「TOKYO⁉ アパラチアじゃなくて⁉」

「アパラチア…ですか? アメリカの?」

 

 モノンガー鉱山は世界の頂上のほぼ真北に位置していたはず。それがなんで極東の日本にいるの⁉ ベルチバードで誘拐されたとしてもかかる時間が長すぎるし、そもそもこの人たちが誘拐をするような人には思えないんだけど。

 

「ええと、あなたの出身は?」

「僕の出身はVault76です。最終戦争後の荒廃した世界でアメリカ再建をするために最高の人たちが集まったVaultで最初に生まれた子供です。だから名前がセブンティシックスで…」

「ちょっと待ってください、最終戦争? そもそもアメリカ合衆国は健在で…」

「いえ2077年10月24日に中国から核攻撃を受けて…」

「今はまだ四半世紀を迎えるかどうかって時期で…」

「僕が生まれたのは2084年ですからそんなことは…」

 

 この緑の人が何を言っているのかは全く分からないけれど、一つだけ理解できた。

 

「たぶんこれ、世界が違う」

 

 窓の外で走る変異した生徒たちを見ていてそう思う。ほかのVault居住者の話では戦前の時代から既に資源不足や疫病の流行、戦争で人々が苦しんでいたと聞いた。けれどあの子供たちを見ているととてもそんな戦前だとは思えない。

 

「どうしよう、アパラチアに帰れないし帰っても意味がない…」

「セブンティシックスさん? どうしたんですかセブンティシックスさん⁉」

「アメリカ大使館に行っても僕が生まれる前だから戸籍やピザがなくて帰れないし世界が違うから帰る場所がそもそもない。どうしようどうしようどうすれば…」

 

 両親がたとえ存在していたとしても生んでもいない子供が会っても奇怪な目で見られるだろうし、そもそもVault76で二人は出会ったんだから結婚していない可能性もある。じゃあどうすれば

…。

 

 先行きの持てない未来に絶望していた時、ふと部屋に入ってきた白髪の生徒が僕のアーマーを持って外に出たのを見た。

 

「それは僕のなんだぞーッ!!」

 

 何も考えることができなくなっていた僕はほぼ条件反射で叫び声を上げると患者服で裸足のままその生徒を追って走り出した。

 

「待てーッ!!」(スピード狂)

「ウェーッ⁉ さすがに速くないか⁉」

「階段を駆け上がっていった⁉ それなら」

 

 白髪の生徒が階段で僕を撒こうとしてきたので、その階段およそ3~4mを跳躍して距離を詰める。(有袋類)

 

「ば、化け物かよ…」

「つーかーまーえーたーッ!!」

 

 タックルで姿勢を崩させて倒れている間にアーマーを奪い返したが、その生徒がアーマーを掴んで離さない。

 

「これは僕のだって、言ってるでしょうに!!」

「ケチケチ言わずに私に寄越せよ、もう壊れているんだから…」

「直すんだよ!! 厳選した装備を渡すわけないだろ!!」

「壊れた服の一つくらいで…」

 

 アーマーを巡る揉みあいの中で互いの蹴りが腹にクリーンヒットしたりで女の子がしてはいけない顔や呻き声をさせたが、同時にこちらもかなりいいところに入った。傷が完治していないこともありかなりのダメージだ。

 

「ちょちょちょ力急に強く…」

「返せーッ!!」(副腎反応)

「うわーっ⁉」

 

 およそ5分にわたる死闘の末、振り回されたアーマーを離した白髪の生徒が壁にぶつかって自分の型を残して気絶したことで決着がついた。

 

「はぁ…はぁ…ん?」

 

 ようやく落ち着いて周りを見たのだが、何やら変異した生徒たちが教室からこちらを覗いていた。聞き耳を立ててみれば「あのゴルシさんがやられた」とも言っている。

 

「何事ッ⁉」

「これは…」

 

 先ほどの緑色の人とともに小さな子供がやってきた。この子供も帽子の中に何かある。

 

「君ッ!! これは君がやったのか⁉」

「は、はい。僕がやりましたが…」

「たづなに聞くところ、君は帰る場所がないそうだな」

「はい…」

「それならば、だ。もし君さえよければなのだがここトレセン学園で働いてみないか? 君のように力強い逸材は年中欲しい」

「喜んで」

「もちろん、他の道もある。無理にとは言わないが…」

「お願いします、ここで働かせてください。陸軍曹長の階級も将軍の地位もレスポンダーも流浪のナイトもファイヤブリーザーも何一つ役に立たないんです」(キャンプ・マトリック、将軍(エングレイブ)、B.O.S.、レスポンダー、ファイヤブリーザー)

「そ、そうなのか。分かった。たづな、手続きを」

「分かりましたが、寮はどうするんですか? 今は満室で空きが…」

「ううむ、確か近くのアパートも今はかなり人が入っていたはずだ。どうすれば…」

「それなら学園の裏手にあるという森に住まわせて下さい。キャンプには慣れているので」C.A.M.P.

「そ、そうか。ならいいが…」

 

 どうしようかと思ったけれど、なんとか明日も生きれそう。

 

 




if

「どうしよう、アパラチアに帰っても意味がない…」
「セブンティシックスさん? どうしたんですかセブンティシックスさん⁉」

「まあいいか、別になんとでもなるか」intelligence1以下
「すみませんが、一泊させてくれませんか」charisma7
「お前の家を奪ってやる」strength12 【攻撃】
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