なんかこの聖女、箱入りでねちゃねちゃしてるんだけど   作:S-A023736-9

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もにょもにょしてる。

 

 ◇

 

 どうも、大罪人ことS-A023736-9だよ。

 

 今日はちょっと趣向を変えて、かなり辺境に来ています。たまにはピクニックも楽しまなきゃね。

 

 

 

 この世界に存在する物のなかで、最も罪が大きいものとは何なのだろうか。

 色々な見方はあるけれど。恐らくその筆頭にあげられるのは人類って存在になると思う。

 もう既に人類は原罪を背負ってるから、みたいな言い訳ではカバー不可能なほどには地獄になっているし。

 

『ノースちゃんは、何がしたいですか?』

 

「うーん。別に何かしたいってわけじゃないからなぁ」

 

 強いて言うなら、ミナミが死ぬまでは守り通そうかなってくらい。政略結婚とはいえ、なんだかんだ私はミナミのこと気に入ってるからね。

 

『人類滅亡! とか魔族殲滅! じゃないんですね』

 

「だって……滅ぼしたところでねぇ。何か報酬があるわけでもない。強いて言うなら、世界一の殺人鬼みたいな称号じゃない? 加えて、面倒。誰がやりたがるの?」

 

 滅んで欲しいな、とは思っているけれど自発的に滅ぼすほどではないというか。

 もしくは、自分で手を下すのも何かイヤになるくらいというか。

 

 そもそもの話として、ゴキブリとか乾眠状態クマムシレベルで無駄に生命力溢れる人類を滅ぼすの面倒臭そうだから。

 

『それでノースちゃん、あれ。どうします?』

 

 

 まあ、話は変わるけれど。

 

 私の思う人類最大の罪は、“生誕の法”の発動だと思うんだよね。

 私を除いて最新の勇者が遺した、最低最悪の置き土産。

 “雨”とかとは違う角度から、文字通り死ぬほど全人類を恨み──苦しみ(・・・)が長続きすればいいのに、と発動された呪い(しゅくふく)

 

 多分。というか、確実に。

 前代勇者はこの世界そのものを蛇蝎の如く嫌っていて。

 他の勇者が『さっさと滅べよ』と考えていたところで、一人だけ『出来るだけ苦しんでから滅べ』と考えたせいで。

 

 無痛で、即座に、ある程度人格の存在する人類を産めるような魔法が存在する──そんな、倫理観だけが消し飛ばされるような世界になってしまった。

 しかもなんと、ぶっちぎり歴代最強だった前代の有り余る能力のおかげさまで、その魔法の代償(コスト)は少量の血液と皮膚だけ。

 うーん、諸悪の根源過ぎる。

 異世界から勇者が来る度に地獄度が増してない? この世界。

 

 さて。そんな魔法を利用して、造られたものが此方。

 

「ただの『工場』──む、もしかして。これ、旧式?」

 

 おっと、微妙に違った。このままだと景品表示法違反とかになっちゃう。もしくは詐欺罪か。

 

 “生誕の法”が発動される前。

 古代の賢者が一人から千人を産み出す悪法を発明し、それを使って色々していた時代の産物。廃人になるまで使い、そして最終的には魔法の触媒として利用する。

 まあ、様々な大事なものに目を瞑ってあげれば『得』な施設ではある。

 

 “生誕の法”が存在していても、別にこっちが使われなくなったわけじゃない。なんだかんだ纏まった人数を揃える安定した方法だからね。最悪なことに。

 

『壊しますか? あれ、私あんまり好きじゃないんですよね』

 

「そうなの?」

 

『なんていいますか、ちょっと気持ち悪いなって思ってしまいまして。おかしいですよね? 普通のことなのに』

 

「いやぁ、全然。幸運なことに……私も同じことを考えていてね」

 

 む、昔のトラウマが……! 

 なんてのは半分冗談で。間近で色々見させられていた身としては、気持ち良いものじゃないのは確か。ここ一個壊したところで根本的解決にはならないってのも、重々承知はしてるんだけど。

 

 それでも────と。魔法を使おうとした瞬間。

 

 背中から、普段よりも濃度の高い黒光が放たれる。

 光は丁寧に旧式工場の機関部だけを狙い穿ち、主要機能の軒並みが修復困難になった。

 

「珍しいじゃん。聖女様が手を汚さなくても、私がやるのに」

 

『ふふん! 私だってノースちゃんの伴侶ですからね。やる時はやる、ということです!』

 

 まったく。誰がこんな箱入りねちょねちょの精神をここまで汚染させてしまったのか……

 もうちょっとおしとやかな聖女に育って欲しかったんだけどな。

 穢れを知らない天使みたいな──これは、この世界では有り得ない幻想か幻覚として。

 

 でもやっぱり、私と動きはじめてからちょっと変わったよね。このねちょ聖女様。

 

「ありがとう、って言うのも違うような気がするけれど。一応、感謝はしてるよ。色々とね」

 

『どういたしまして!』

 

 ミナミがいなかったら、既に私も今までの勇者と同じ様な状態になっていた可能性が高いから。

 その場合、どんな遺産を人類に提供することになるんだろう。

 うーん、案外あんまり思い付かないものなのかも。あるあるどころ、というか雑に人類を滅ぼす奴は先輩勇者がやってくれやがってるし。

 

「ねぇ、私が“雨”とかみたいな災害になるとしたらどんなのになると思う?」

 

 訊いてから思ったけれど、狂ってても伴侶に質問する内容じゃなかったと思う。

 

『今なら私も協力してあげますよ? 人生最後の共同作業、ということで。終活ですね!』

 

 うわ、予想斜め上なんだか下なんだかわからない返答をされるとは思ってなかった。

 なんかもうちょっとあったでしょ。

 

「うーん、何がいいかなぁ……」

 

 あんまり人類を積極的に滅ぼしてあげよう、とか苦しめよう、とかそんな意識がない以上なんとも言えないところ。

 果たしてどんなものが私にお似合いなのか。

 

 でも、こんなところじゃない? 

 せめてこれ以上被害者を増やさないように。

 

「恒久的な、異世界召喚の禁止とか」

 

『ノースちゃん、もうちょっと私利私欲の為に命を捨ててもいいんですよ?』

 

 そんなに言われることかなぁ。

 個人的には、この世界がこの世界で完結するのって割とちゃんとした呪いだと思うんだけれどな。

 

 まあ、その時が来れば。

 “隔絶の箱”みたいな名前で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもそれはそれとして、人類よく滅ばないよね」

 

 なんでこんなにしぶとく生き残ってるんだろうか。こんな環境なのに。

 

『法国が色々してるらしいですよ。聖女とか利用して』

 

 王国の世界的な罪が勇者だとすると、法国の世界的な罪は聖女でしょ。

 

『母体聖女、みたいなのもあるらしいですし』

 

 うーん、聖女の概念が壊れてきちゃった。

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