なんかこの聖女、箱入りでねちゃねちゃしてるんだけど   作:S-A023736-9

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『現状の再確認』

 ◇◆◆◇

 

 

 やあ、遠い未来の誰かことS-A023736-9だよ。

 

 予想以上に王国の思案時間が長かった結果、予想外に最後まで話すことになっちゃったけれど……まあ、いいや。

 

「それで、ミナミ的にはどう思う?」

 

 私個人の感想としては、これを読んだから下界……創った樹から降りて少しくらい活動しようかな、と思う程度にはモチベに関わったんだけど。

 

『善って……何でしょうね?』

 

 それは最早、私にもわからないかな。

 結果としては、『大賢者』の予想通りに悪名は後世に残っていたし、次回の『勇者』(わたしの)召喚は起きてるし、『魔王』は何も出来なかったって絶望しながら死んでいるしで、散々な結果ではあった。

 

 唯一、世界全体の平和さという観点でだけ言えば、悪くはないのかもしれないけれど……それも私が抜けた以上安泰ではないんだよね。

 

「まあ、そういう成り行きで──ね? 『継承の業(フィフス・カース)』」

 

 残りリソースの少ない私じゃなくて、ミナミにも色々(・・)を扱えるようになって欲しかったから。

 本来だったら、継承する予定なんてなかったんだけれど……異世界転移なんて大事故が起きてしまった以上、仕方ない。

 

『でも、本名を言う必要があるんですよね?』

 

「だから、もう言ってる(・・・・)ってこと。別にミナミがそれを名前だと認識する必要はないからね」

 

 何なら、大賢者は──ノア・フラッドはフルネーム宣言しているけれど、名前だけでもいいらしい。

 

 

 さて、一応の戦力状況は出来たところで。

 この九日間で集めたこの世界の情報というものがある。

 

 何の嫌がらせかはわからないけれど、どこぞの終末世界と同様に王国と法国と帝国がある。

 一方で違うのは、それ以外の国家も存在しているということ。あくまで大国って呼ばれているのが、その三つなだけ。

 

 次に。

 私みたいな異世界から来た人っていうのは、歴代でいないという発言を国王がしていた。

 どうしてこんなに回りくどい言い方かと言うと、まだその発言を聞いて頷けるほど、この世界の人類への信頼がないから。

 

 とりあえず、公にする範疇では『異世界転移者はいない』って認識で良いらしい。従って、口外はしない予定。

 勿論、『勇者』だってこともなるべくは公言しない方針で。何かこの世界、現地人が勇者になることがあるらしいので。

 

 そして、此処がすごいよ今度の異世界ポイントとしてあげられるのは、魔法使用に生け贄を要求しないってところ。

 本当に。本気で普通の世界……うーん、普通のファンタジー世界であることに感謝。これで生け贄どころかもっと酷いものを代償に捧げるタイプの世界だったら、いよいよだったよね。

 

 で、悲報が一個。

 どうやら異世界転移者である我々(南北コンビ)には、その規約が当てはまってくれないらしい──即ち。昔通りの生贄資源(リソース)式魔法しか扱えないっぽい。

 

「魔法の代償……」

 

『私達二人だけの秘密ですね?』

 

 いやまあ、そうなんだけど。

 問題はそこじゃないと思う。マナだのそこら辺を代償にしている人達と威力が変わらない魔法を、生贄使用でしか使えないっていう現状はそこそこ以上に困るべき状況ではある。

 

 他にもミナミの現在進行形で不明な残存寿命問題とか、この世界の人達は想定よりは民度が良い、とか言いたいことはあるけれど。

 

 案の定。この世界にも問題(・・)があるっぽい。

 

『どうしました?』

 

「この世界、前とは違うタイプの面倒臭さ(・・・・)を持ってるらしくて」

 

 どうやら、ここ数年で急激に流行りだした物があるらしいんだよね。

 死んだ時に、死体が発生しない──正確には。死体以外(・・・・)が発生するような『人』が増えたらしい。

 

 例えば大量の砂であったり、建造物の破片であったり、魔物であったり。

 あるいは魔術現象であったり、効果のない魔法陣が発生することもあるとのこと。即ち、大人しく死体が死体になってくれないとのこと。

 

『それ、何か問題なんですか?』

 

「あー……うん、そうなるよね。確かに私の言い方が悪かった」

 

 死体になった後を気にする余裕がないあの世界基準だと、大したことない問題になるのを失念していた私の方が悪かった。

 

「問題のひとつは、これが元々じゃないところだね。ここ数年で急激に増えた、ってこと」

 

 これのせいで、隣人が人の形をした化け物(・・・)である可能性が出てきた、と。

 いつ成り代わっているのかもわからない、いわばサイコホラー物風味を醸し出しているのが問題。

 

 しかも、今のところ死以外で判別不能っていうのが嫌なところ二つ目。

『お前化け物じゃないの?』『お前こそ』という疑心暗鬼が流行り始めたら、治安と倫理観は急激に垂直落下してくれる。悲しいことにね。

 

『なるほど……じゃあ、治安があの世界に近付こうとしている世界、ってことですか?』

 

「うーん、ミナミには合格点をあげちゃう」

 

 でも六十点。及第点はあげられる内容かな。

 

 積み重なる問題は他にも複数個。

 

 英雄として昔から(・・・)名を馳せていた人が、化け物に襲われて死亡。その際に砂山が形成された、とか。

 

 万人から慕われ、尊敬されていた枢機卿が、寿命で死亡した際に、死体を残さずただの液体になったとか。

 

 慈善事業を沢山行っていた貴族家当主が何者かに毒殺され、見たことのない様式の建造物の柱になったとか。

 

 とある心優しい村長が寿命で死んだと思ったら、人面が大量に縫い合わされている化け物になったとか。

 

 産まれたばかりの子が病気で死んだと思ったら、辺り一面を破壊する雨みたいなの(・・・・・)になって、一家ごと巻き込まれ、その父親も死亡時に白い灰(・・・)を撒き散らした、とか。

 ついでに、その灰に触れた人が記憶喪失になったとか。

 

 

 

 まあ、つまりはだよ。

 話に出てきた柱の模写とか見せてもらったけれど、すごい既視感があったんだよね。具体的に言うなら、七万年以上前に。

 

「どうやら、その変化後の物体。あの世界(・・・・)出身っぽいんだよね。言っちゃうと、あっちの法国の聖女(・・)創造のせいじゃない? ってこと」

 

『異世界転移してまで、前の世界の後始末させられるってことですか……?』

 

 とても強く遺憾の意を表明したくなってくるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ノースちゃん、粘液(スライム)風呂に入りますか?』

 

「なにそれ、何かしらの法に触れそうなんだけど」

 

『別に変なことはしませんから!』

 

「信じてるからね?」

 

 

 

 

 

 

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