なんかこの聖女、箱入りでねちゃねちゃしてるんだけど 作:S-A023736-9
◇
やあ、尻拭い系勇者ことS-A023736-9だよ。
粘液生物伴侶との七万年ぶりのお風呂、なんて表記すると文字列のインパクトが凄いよね。
昔なら、私も理解出来ない自信がある。
『ノースちゃんに言われた通り、何もしませんでしたよ!』
「まあ……うん、そうだね」
はたして、浴槽に浸かったタイミングで『ノースちゃんが、私の中にいますね』って囁かれたことは何もないに含んでいいのだろうか。
しかも意味合い的に、性的ってよりは割と物理的意味合いが混和されていた気がするから尚更ね。
『それにしても、ノースちゃん。ちょっと変わりました?』
「……ミナミ的にどう感じる?」
『ちょっと明るくなった、と言いますか。好きな人には笑っていて欲しいですから、私は嬉しいですよ』
なら良いんだけれど……
「それにしても、疑ったりしないの?」
七万年も離れていたわけだから、別の伴侶とかを作って……何なら添い遂げて相手方の寿命が尽きる、という境遇が起きる可能性もありえると思うんだけれど。
それこそ、あの世界並の倫理観を採用するならミナミとこうして話しているのは利用しているだけ、とか。
もしくは、七万年かけて幻覚魔法を用意していて、今のミナミはそれに騙されているだけ──みたいなね。
『ノースちゃんと一緒にいられるなら、騙されていてもいいかな、と思っていますから』
そこまで思ってくれるなら、嬉しいかもしれない。
◇
さて、『死体異形化』と名付けられた例の事件。
一応は前の世界が原因っぽい以上、無関係を貫くつもりは実のところ、あんまりない。
そういうわけで、国王からの国内見学の許可は引きずり出せた。
『解決は難しいかもしれませんが、何か方法を考えましょう!』
箱から触手を伸ばし、やる気を示している伴侶はさておき。
実際、この問題がただの
英雄や慈善事業家、貴族みたいな社会的立場が強い人が
そしてここ数年で流行りだしたっていうのに年齢関係なく発生するところから、どちらかというと
何なら、社会構造とかを認識出来るタイプの寄生虫とかそういう分類のものっていう説もあるけれど──というわけで。
国賓という扱いである私達は、社会科見学……王国内見学扱いで、王都付近の大きめの街に来ています。
「王宮認可証……けっ、どうせお前達も死ねば化け物になるんだろ? 迷惑だから入ってくるなよ。厄介事が増えるだけなんだよ」
さて、衛兵にこんな対応をされた時点でもう治安は崩壊一歩手前──
「『スパイラル・フラマ』」
「『
──訂正。崩壊済だね。
対応は前世界気分で行こうかな。
更に追加でやってきた、五本の螺旋状炎を射撃魔法で相殺する。
ついでに飛んできた氷の槍は、ミナミの黒レーザーにより消滅。
「気分としては実家に帰ってきた感じがしてきたかな」
ただし、二度と帰りたくないタイプの実家。
遺産とか纏めて整理し終えた瞬間に、永久に敷居を踏めないように勘当されたものでして。
国王曰く、此処が一番
『ノースちゃん、ちょっと楽しそうじゃないですか……?』
「ミナミはもうちょっと人類の表情起伏を学んでみようね。これは、呆れとか絶望を通り越した諦観の笑いだから」
虎視眈々と私達を睨む大量の視線。
ちょっと下手過ぎるかな。殺意があからさま過ぎるんだよね。
まあ、逆にそれだけこの世界の人達は人に敵意を向けることに慣れていないっていう意味でもあるんだけれど。
実際、螺旋炎も氷槍も急所を狙っていない──あるいは、狙えていない。
更に言えば、敵意や殺意というより向けられる感情には
甘い。本当に甘い。
それ故に、躊躇が生まれる。
あっちと違って、こっちは
「良いよ、やってやろうじゃない。確かに私はあなた達にとっての異物なんだろうよ」
異世界転移者であり、『異形化現象』を引き起こした世界側の住人でもある。
だから、この畏怖とかはある意味で向けられるべくして向けられているものではある──正当な嫌悪という面がないでもない。
まあ、本当に私が負うべき責任かはさておき──この世界で負うとしたら私かミナミしかいない類いのものではあるかな。
「旧・
大賢者じゃないけれど、まあこれぐらいの恨まれ役は羽織っていいでしょう。
七万年で大分精神力も回復したからね、これぐらいの代償は払ってあげようという気持ちになれる。
ついでに、ミナミも近くにいるわけだから。
「降れよ命、捧げよ恐怖。『
渦巻くは曇天、巻き起こるは全てを破壊する黒雨。
こっちは根本的な年期が違うんだ。君達みたいな優しい世界で生きた時間はほとんどないものでね。
飛んでくる様々な属性の魔法を『
「もう終わり?」
敢えて挑発的な笑みを浮かべ、四方八方から向けられる恐怖と敵意を、敵意の方へと傾ける。
威風堂々とした姿。慢心しているように見せかける。
すると、当然。
「──『イラプト・キャノン』」
もしくは前の世界っぽく命名するなら『
飛んでくる高熱の砲弾を『
「さて。これが基準となると、原因を叩くしかないかなぁ」
一度蔓延させたら取り返しが付かない系だった場合が嫌だ。
まあ、最悪この世界自体に“箱の隔絶”を使えば応急処置にはなりそうな雰囲気があるからいいけれど。
『お疲れ様でした。ノースちゃんがああいう役回りをする必要はなかったんじゃないですか……?』
それが案外そうでもない。
とりあえず一回全力で殴っても、攻撃し返されない──殺されない。それでも、相手はしてくれる。
そういう相手がいると、雑に人間ってまとまれるから。
共通の敵、みたいなね。
これで少なくとも、街の住民同士で疑心暗鬼フェスティバルが開催されることは減ったでしょう、って企み。
まあ、そこまではミナミに教えないけどね。
「ほら、こっちに来て私の実力水準がどれくらいなのかは知っておいたほうがいいじゃん?」
『ノースちゃん、割と戦闘に意欲的ですよね』
ミナミ達に言われたくはないよ。
いや、本当に。
「ミナミには言われたくないかな。さっさと帰ってお風呂入るからね」