なんかこの聖女、箱入りでねちゃねちゃしてるんだけど 作:S-A023736-9
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やあ、国王殺し系勇者ことS-A023736-9だよ。
やっぱり異世界という、価値観の違う世界で生きていく上で重要なことのひとつに、自我を貫き通すってスキルは必要だと思う。
ちゃんとダメなものはダメ、他人が気にしていなくても自分だけは拘るのって大事だからね。
故に、私も旧・王国最強かつミナミのパートナーして恥ずかしくないような善行を────不味い気がする、これ。
『ノースちゃん、どうしましたか?』
「ちょっと精神汚濁魔法の影響を受けてね。ヤバそうだったら言うから、ちょっと考えさせて」
『わかりました!』
咄嗟に発動された魔法、それも他二つを防御しながらだったから精神汚濁魔法、と言っても詳しくどんな魔法なのかを調べられる時間はなかった。
喰らってみた感想と、あの世界で当時よく使われていた魔法の種類から考えて、思考混濁型の性悪なタイプだと判断したけれど……実際のところはわからない。
でもこの手の精神魔法は、大体効果時間が死ぬまでとかいうアフターサポート手厚めなことが多いから、どちらにせよ性格の悪い魔法認定はしていいはず。
思考汚染の影響自体は、善行みたいな特徴的な言葉が思考の表面に上がってきてくれれば、私でも気付けるけれど……これがそういう言葉に縛られなくなった時が、いよいよ厄介。
自然な流れで、あの人達の言う『善行』よりになっている可能性があるわけで。
「ミナミ、万が一私が……ミナミ目線で
『良いですけれど……もしかして、精神汚濁系魔法ですか? しかも、ノースちゃんに効果あるってことはかなり強力な』
「多分ね。これが精神汚濁なのか思考乗っ取りなのか、それとも……それ以外なのかはわからないけどね」
とりあえず、状況の整理をしなきゃいけない。
何の因果か知らないけれど、あの世界から複数人がこっちに転移してきていることは確実。
ついでに何人かわからないって発言から「十人で行くぜ
」みたいな少数精鋭部隊ではないことも予想は出来る。
『ノースちゃん、解除魔法って使えますか?』
「残念ながら。精神汚濁魔法をちゃんと喰らう事が今までなかったもので。大抵は『王国命令』があったからね。それと拮抗してた感じ」
それのせいで、幾ら精神汚濁を正面から受けても地獄倫理観の蠱毒が
『ど、どうしますか? ああいうのって、数時間で汚濁度が最大まで上がるのが多いですよね。流石に、ノースちゃんの心が私以外に占領されて欲しくはありませんよ?』
「いやぁ、私もそう思ってはいるんだけどね」
それで、話を本題に戻して。
法国の聖女創造っていうのは、代償を異世界に転嫁する最低な呪法だっていう前提があるとして。
様々な異世界に
その結果が『死体異形化事件』。
それで。色々な善行が理由として──色々な言い訳が理由としてあるにせよ、要点は単純。
こっちの世界の倫理観があっちの世界基準で住みやすいものになったら……恐らく、法国上層部のいざって時の避難口になるから、とかかな。
『異世界召喚』を武器にする王国に対して、当時の法国は聖女創造だけじゃなくて、『異世界への避難』が欲しかった。そんなところだと推測出来る。
……推測したところで、余計に気分が落ち込むだけなんだけど。
同時に考えられることとして、『死体異形化』事件は何者かが
この世界をゴミ捨て場にする、といってもこの星だけが標的になるなんて奇跡的な確率は有り得ないからね。
だからきっと、あっちの世界の住人の
問題は、異世界出身である私やミナミも勝手にその
個人的な予想は、なっている読み。
恐らく今回の、『異世界転移』っていうよりはあの世界の法国残党あたりが『異世界に押し出した』っていうのが真実な気がする。
そうだとすると、わざわざ快適なゴミ捨て場を造ろうとしている所に私を送り出す理由がないから──まあ、順当に考えれば
ついでに面倒な世界を平和に導いてくれやがる『勇者』を排除出来て一石二鳥、ってところかな。
「なるほど……つまり、
七万年も足掻いて、前時代の遺物に妨害されて洗脳されるのが私の最期──そんなの、認められるわけないでしょ。
こうなったら、何が何でもこの世界の『死体異形化事件』を止めてあげるしかない。
『ノースちゃん、大丈夫ですか?』
最近かなり増えた気がするミナミからの『大丈夫ですか?』という問いに対して、一向に問題ないとの返答をする。
状況は大丈夫じゃない。『死体異形化事件』のアンカーになる異世界人が何人いるのかもわからない。
ああ、そうね。だから最初の蜘蛛が『砂縛厄災』タロスリオンとか名乗ったのは、それらの
「ミナミ。『死体異形化事件』を全力で解決したいって言ったら、手伝ってくれる?」
ミナミ的には解決する理由が比較的薄い案件ではある。
私やこの世界の住民視点ではともかく、自分の死後に死体が化け物になる
大賢者の時代はまだ、そういう冒涜に対する建前が成立していたらしいけれど──ミナミや私の時代は、そうじゃなかった。
だから、本来のミナミ的には『死後に化け物になるから何?』という話にしかならない。
そもそも、聖女であるミナミは死後どころか生前に化け物になっているっていう見方もあるわけで──まあ、これはパートナーにしている私が強く言える台詞でもない。
『当然ですよ。ノースちゃんの為なら何処へでも。あの世界出身の粘液生命体は、一回狙った獲物は手放しません。強欲なんですよ?』
なら、遠慮は要らない。
別に最初から問題は変わっていなかったわけだから。
ただ、それに思考混濁っていうある種の時間制限が付いただけ。
その後、その後どうすればいいかは──きっと、『善行』を積んだ後の私が何とかしてくれるはず。
「さて、それじゃあ
深刻な疫病を撒き散らす外来種の根絶が目標、ってことで。
『本当にどうしようもなくなったら、ちゃんと言ってくださいね? 私はノースちゃんの見た目が好きなわけじゃなくて、その意思が好きなんですから』
「じゃあ、ダメって言うと何が起きるの?」
『ちゃんと食べてあげます。それが私に出来る最後のノースちゃんへの愛情の証明ですから』
粘液生命体に食べられる趣味は残念ながら、持ち合わせがないんだよね。
持ち合わせがない以上、仕方ないので──というか。ミナミに好きな人を食べさせるの、情操教育に悪いから避けたいよね。
「その前にミナミの寿命が来る位には、何とかするよ」
ただし、振れ幅は結構長いので残り寿命は全くわからない。下手したら数百年単位な模様。