なんかこの聖女、箱入りでねちゃねちゃしてるんだけど 作:S-A023736-9
◇
やあ、『
ミナミと色々旅をしている内に、変な渾名がついていた。
確かに黒髪だし、粘液っ娘のビームも黒だし、言いたいことはわかるよね。やってること的にも、否定は出来ない。
『そういえば、私は魔族について全然知らないんですけれど、ノースちゃんは知ってますか?』
まあ、それなりには。
歴史的には法国よりも先に、王国が成立している。
だから資料とかも王国の方が揃ってたりはする。特に魔族関連は。
というか、王国が好き勝手やった結果法国が出来て──で、すごい勢いで法国も同じかそれ以下の治安になった感じ。腐敗すらその速度がジェット機とかリニアモーターカーなんだよね、この世界。
「魔族は数が少ないからか、人間ほど大きな集団を作らない。魔王もいるけれど、厳格なルールも別にあるわけじゃない。ただ一番強い人が魔王って呼ばれてるだけだって」
はいそこ、人間側にも厳格なルールがないとか思わない。
あっちは食糧が不必要なのに殺しあいとかしてるから、色々違うんだって。
……っていうのが、人間側の見解。実際のところは知らないけれどね。普通に領土争いに明け暮れてるだけかもしれないし。
「人類が魔族を受け入れられないのと同じ様に、魔族側も人類を受け入れられないらしい。生理的に無理、とか本能的に無理、とかそんな感じらしいけれど」
まあだから、どっちが戦争を始めたか……みたいな問題じゃない。根本的にソリが合わない。
大多数の人間はカサカサ動くゴキブリを見て生理的に嫌だと思うように、魔族を嫌うだけ。
ついでに言うなら、そのゴキブリの死骸を加工すると便利なものになるから積極的に駆除しているだけ。
そしてそれは、魔族サイドも同じ。お互い様って感じかな。
『そういうことなんですね。魔族も私達と似ている、といいますか。あんまり変わらないんですね』
「だから、ある意味で私が人類側ってのも偶々なんだよね」
本能的なものだから、仕方ないんだよ。多分。
私は人類側の勇者として召喚されたから、人類側してるけれど……召喚されたタイミングとか次第では、魔族側になってた可能性もあると思う。
『ノースちゃんが敵になるのは嫌ですね。強いですし、可愛いから殺しにくいですし、何よりなかなか死んでくれなさそうです』
「これ、喜ぶべき評価なのかな……?」
ああそう、だから四天王とかそういうのはいない。
魔族の生態系というのは単純で、一番強い存在が魔王になるだけ。
指揮系統なんて作った瞬間から壊れるだけだから、トップだけ決めて自由にやらせるしかないんじゃない?
「むしろ、ミナミは魔族側に生まれたらどうする?」
『やっぱり、魔族統一ですよ! 魔王にでもなって全員幸せにしてみせます! どうにかして』
おー、ものすごい大言壮語が飛び出してきた。
人類も魔族も地獄の中、みたいな世界生まれなのに、まだこんな思考が出来るのはかなり羨ましい。
私だって三年前と比べて変わった部分は多い。主に価値観とかはその筆頭だよね。
「まあ、そんなことが言えるうちは……なんとかなる可能性、残ってるのかもね」
『そういえば、王国の地方都市が法国軍によって占領されたらしいですよ』
うーん、やっぱないかも。可能性。
足の引っ張りあいどころか、互いに銃口向けあってない?
「にしても、法国はまだ軍とか残ってたんだ」
『
うーん、余計無さげかも。可能性。
なんか此処までくると聖女が何でも万能装置みたいに見えてくるよね。というか、法国視点では見えてるんだろうね。
ネチャネチャと音を立てている相方を見ながら、そんなことを考える。
「それで……いや、待って。ミナミはそんなこと知ってるの?」
『別の聖女から、そんな情報が届きましたから』
「疑うわけじゃないんだけど、その情報網って一方通行?」
そんなわけないだろ、この世界が。なんて思いながら訊いておく。
いやぁ……警戒してなかった私も悪いけどさ。
『私からも送れますよ。まだ一度も使ったことありませんが』
「ふーん、それはどうして? 別に抜き取られて困る情報はミナミに出してないから、私は幾らでも流されて構わないけれど」
別に法国上層部に知られて困る情報なんてないからね。
王国の事情、みたいなのも上なら知ってる程度の情報しかないから。
それこそ、私が異世界転移者で“雨”とかが効かないことも含めて全て。
『当然ですよ。私はノースちゃんと結婚したんですからね。法国でも、勿論王国の味方でもありません。ノースちゃんだけの味方ですから!』
「期待と信頼が篤いなぁ。こっちが色々疑ってたのが申し訳なくなるくらいには」
『えっ!! 疑ってたんですか!!』
むしろ、何で疑われないと思っていたのか。
私はこの世界に来て二日目、「友達になろうね!」って言われた人に寝込みを襲われた時からほとんど何も信じていないというのに。
あ、いや初日に正面から襲われた時からかもしれない。
……うーん、どっちでもいいか。
「何なら、さっきの一回も使ったことない発言も疑ってるくらいだからね」
そう言いながら実は、なんてことも全然有り得る。
この世界では常套手段でしょ。信頼とか信用みたいな幻想をちらつかせて搾取する、なんて。
『妹が心を開いてくれません!! どうすればいいですか!! みたいなこと送ってもいいですか?』
「多分それ、気が触れたと思われるのがオチじゃないかなぁ」
ああ。なるほど、そういうことなのね。
これなら大丈夫だとは思う。
『もう送っちゃいましたけれど』
「うん。そうっぽいね。何かが送られたのは私も検知出来たから」
逆に考えれば、今まで一回も送っていないことの証明になる。ミナミと私は、文字通り四六時中一緒にいるからね。
離れて一人でこそこそ、なんてタイミングは何処にもありません。つまりは一心同体ってこと。
「ちなみに返信って来た?」
『洗脳系聖女を送ろうか、ですって』
「あー、うん。なるほどね?」
『ちゃんと断っておきました。ノースちゃんは私の
「きゃー、食べられちゃうなー」
いや、箱入り粘液ネチョネチョに食べられるなら普通にダメなタイプの奴だよね。成人向けになるやつ。
まあ一説には、そもそもこの世界があんまり若い人向けじゃないって説もあるけどさぁ。