001:ボンバーマン
ワタシは、ボンバーマン。
ワイリー様によって作られた。
自立型のネットナビである。
所謂、『ロックマンエグゼ』の始まるよりも遥か昔に作られた。
と思われる。
昔、と言ってもその昔がワタシにとっての今に当たる訳だが。
そう。
ワタシの中にあるこの記録は恐らく別世界のモノ。
あるいは別の時間軸のモノか。
本来であれば――人間的に言えば――鼻で笑うような事柄だろう。
「どウしたモンか…………」
頭を掻きながらぼやく。
しかし、その記録はあまりにも現状有している記録と合致し過ぎている。
それが問題だった。
例えば。
ワイリー様がニホンにおけるロボット工学の権威だったこと。
ニホンの科学省がワイリー様を追放したこと。
そのワイリー様は現在、アメロッパ軍に居ること。
そこでバレルの父親と親交を深めていること。
そして、バレルの父親のためにナビを作っていたこと。
そう。
記録が本物であると言う確信を深めたのは、アメロッパと言うこの国で作られたワタシを含めた三体のナビの存在。
三体。
実用性のある試作の自立型ナビとして作られた、ワタシの前任機である『ストーンマン』。
その試作データを基に戦闘型の完全自立ナビとして作られたワタシ『ボンバーマン』。
そしてワイリー様の持たれる能力の粋を集めてお作りになられた軍用ナビ。
名は、『カーネル』。
その名、その姿こそワタシが持つこの記録が正しいモノ――とまでは言わなくとも、ある程度は信用できるモノだと思わせた。
なるほど。
記録にはなかった部分と整合性のある事柄もある。
例えば、ストーンマン。
後の電脳世界に有り触れている『プログラムくん』と称される存在達ですら有している言語プログラム。
それをなぜ持っていなかったのか。
大体のネットナビが普通に有しているハズの、このワタシことボンバーマンの言語プログラムが微妙におかしいのは何故なのか。
初期も初期。
しかも『カーネル』を作るための試作機として作られたからこそだろう。
そう考えれば一部、納得のいく部分があるのも事実。
ストーンマンが四角のブロックを組み合わせたような身体をしているのはまずネットナビを試作するため。
要するに手抜き。
ワタシが人型にプロテクターを付けただけのような外見なのは、人型ナビを試作するため。
そんな所か。
ぼんやりとしていた時の記録を見直す限り、ワタシ達にそれほど思い入れがないように見受けられたので大きく間違ってもいないはず。
「一先ず…………お願スるか。ウん」
突っ立っているだけ。
指示がなかったからそうしていた足を進める。
自立型なのに全く動かなかったのは、恐らくは記録の整合性が整っていなかったのだろうか。
ワタシ自身のことなのに若干他人事のように考えながら頷いておく。
とは言え想像が付くのはここまで。
他にも有している記録の数々だが。
正直、全く関係ない記録が多い、と言うか大部分が関係ない記録なので正直当てに出来そうにない部分も大いにある。
言ってしまえば、大筋は分かるがコトの細部は分からない。
こう言うことがあってこうなった、と言うのは分かってもその間に何があったか詳しくは分からない。
その辺り「忘れる」機能のある人間の限界と言えるだろう。
ナビであるワタシには最早、忘れる、と言うのは関係のないことだ。
記録データを消去しない限り、だが。
そしてこの記録データに関しては必要そうな一部にはプロテクトを掛けておいたので消去の心配もなくなった。
将来的に起こるだろう記録。
それ以外はまあ良い。
歯抜けだし。
「……………………」
本来なら。
本来ならば、今すぐにでもワイリー様にこの記録をご報告するのが筋なのだろう。
しかし、ワタシの中に生じてしまったモノ。
願望。
あるいは心。
それは、生存欲求。
生きたい。
死にたくない。
そう叫んでいるモノがある。
記録の持ち主だった何者か。
ワタシだった存在の心残り。
残滓のようなモノだろうか。
生まれながらにして持っている、あるいは作られた際に植え付けられていた、ワイリー様への忠誠心をも上回るソレがこの記録を伝えるなとワタシに告げる。
それはそう。
将来ワイリー様のご友人は亡くなられ、それによって絶望して世界の破滅を目指すようになる等とお伝えすればどうなるか。
「貴様なんぞデリートじゃーーー!!!」される未来が見える。
であるならばどうするべきか。
「………………ワイリー様。少し時間良イか?」
『ん? んん? ボンバーマン? ……少し待て――――なんじゃ?』
「金――有り体言っテ、給料が欲しイんダ」
『………………なんじゃって?』