あれから二日も経った。
ワイリー様は一向に姿を見せない。
アメロッパとも盛大に揉めているのだろう。
ワイリー様がアメロッパに齎している恩恵は大きい。
軍部で兵器開発に携わっておられるのだ。
当然。
しかしそれはそれとして、国として他に着せれる恩が多いに越したことはないハズ。
「…………やれやれダ」
出れない。
だが、出れたら出れたで碌に動けやしなかったろうし、やっておきたいことは多かったからある意味で助かった。
やっておきたいこと。
まずもって第一に、攻撃面の強化。
痛感したのは攻撃性能。
その未熟。
ワイリー様の作られたボムデータである《ハイパーボム》は並みのウイルスなら一撃で倒せるだけの威力はある。
それはこのワタシが一番よく分かっている。
だがしかし。
プロトバグを始めとした普通じゃないウイルスを相手にするには不安が出て来る。
特に、つい先日のグレイガ。
更に言うならこの先でウラインターネットに潜ることもあればヤツのような、とはまず間違いなく行かないと思いたいまでも、強力なウイルスが現れることも有り得ないとは言い難い。
そんなのを相手するには攻撃力含めた、性能に不安がある。
攻撃力の目標はあくまでも将来的な目標としてだが、数値で表すなら普段使いでも二百は欲しい。
「ボム系はボム系で一旦…………」
次いで、範囲含めた性能。
範囲に関しては、ワタシがボンバーマンだから十字型にある程度は広がるが、ある程度まで。
極端なことを言えば端から端まで届くような広範囲爆撃のように、広ければ広いだけウイルスに対して一撃を与え易いのは至極当然。
これに関する対応は既に進めてある。
チップデータを完全にワタシ自身に組み込むことだ。
まだワイリー様に許可を得ていないため組み込むまではしていないが、大凡の方向性は予め定めてはいたため必要になるだろうチップデータの収集や交換もしてあった。
具体的には、《クロスボム》と《ビッグボム》の二種。
どちらのチップデータでも、ワタシの作り出せる《ハイパーボム》に組み込み改造を進めることで現状よりも範囲が広がるだろう。
あとは。
そう、《ヒートショット》系統や《ブラックボム》等も考えてはいるが、この辺りまで行くのは少し性急過ぎるし贅沢か。
「ア~……分類は……」
次いで、自己改造。
ワタシを覆うオレンジ色のプロテクター。
それらを完全な外付けのアーマーとすることで、外観はそのまま本当の中身を別に用意出来る。
幸い腹の辺りから上が完全に隠れているので内部、上半身の作り込みは好きに出来る。
下半身については、現状のままなら出来なくはない程度か。
数回り小柄にすればあるいは。
まあ、手管を一つ仕込みたいから脹脛辺りまで追加でプロテクターを覆いたくあるが、そこはまだ先。
そのための人体データについてはストーンマンが管理しているので、そこに取りに行けば良いのだが。
結局それについてもワイリー様に許可を頂いた上でストーンマンが守護しているエリアに入らなければならない訳だ。
アイツならいきなり行っても気にしないとは思うが、許可はちゃんと取らないといけないし。
その所為で他の目的も達成出来ない。
せめてストーンマンと話が出来れば欲しいデータを送らせるなり出来る。
だが、完全に隔離されているこのエリア内では意味がない。
一応ワイリー様がこのエリアに接続されたらメッセージが送られるように設定してあり、受け取られた形跡はあった。
反応はまだない。
「……コレは、要らン」
立ち返るようだが。
その所為で出来ることが限られている。
具体的には、準備が。
ボムの設計図はある程度までなら作ってある。
ワイリー様のお創りになられたワタシの持っているデータを、チップデータで増強する形になるのでそこまで手間にはならなかった。
細かな調整は必要だろうが、そこはワイリー様にご確認頂くとして。
そのための準備。
チップデータの整理を進めていた。
アメロッパエリアに出現するウイルスは、大国故にか隣国から入り込んでいるらしいモノ含めて実に多彩だ。
メットールやラビリー、マルモコにチュートン他、数は少ないがハンディースやガルー等々。
挙げて行けばキリがない。
その中でもカブタンク系統から目的のボム系データは手に入るが、それ以外からはイマイチ目的に合わない。
いや、チュートンから手に入れた《ラットン》をカーネル相手に使いはしたが、手に入るチップデータは主に交友や交換に使っているため正直数は要らない。
「…………はア……」
改めて。
ワタシは現状、カーネルを除けばアメロッパ屈指の戦闘タイプのナビだ。
バスティングしたウイルスの数も相応に多い。
半年以上前には海外のウイルスも倒してもいる。
結果、手に入れているチップデータも相応にある。
山ほどある。
そしてずっとパトロールに時間を費やしていたせいでその中から必要なチップデータの整理をしていなかった。
それを、今していた。
多過ぎて、目の部分が真っ白になりそうな気分だ。
まとめてボムで消し飛ばしてしまいたい気持ちになることもあるが、時々珍しいチップデータが紛れ込んでいることもある所為でその決断に至れずにいる。
流石に二日も経ったお陰で、山の整理も出来つつあるが。
「ン?」
一瞬誰か、と言うかワイリー様しか居ない、がアクセスされたのを感じて顔を上げる。
既に見られている様子はない。
しかしメールが来ていた。
そこまで顔を合わせたくないのかと少々訝しんだが、実際お忙しいのだろう。
と言うことにして、メールを読む。
読んだ。
視線をエリアの端に向ければ、既にストーンマンの守護するエリアへのバナーが出来上がっていた。
ストーンマンにも好きな情報を渡すよう伝えてある旨を書かれている。
仕事が早い。
そう言うことならよっこらせと胡坐から立ち、そのままバナーに足を踏み入れた。
「――ヨう」
「ゴ……ゴゴ」
突っ立ったまま何やらデータを眺めているストーンマン。
挨拶の言葉に反応はしたが、それだけ。
またデータに目を戻した。
一発ダメージにならない程度に、そのワタシの身体ほどある脚に蹴りを入れる。
有るか無きの反応がないでもない気はするが、とりあえず言いたいことは言っておかないと。
「おイ、ストーンマンよオ?」
「…………」
「ワイリー様がワタシを閉じ込めル予定なの知ってタだろ?」
「……ゴ」
「一言アっても良かったんジゃねえカ? ン?」
「ゴゴゴ」
「働き過ぎダあ? 外に出ネえおめえに言われタくねえ」
等と言いつつ。
ストーンマンなりの配慮があったらしい。
そう言われると、これ以上あまり強く言えない。
人間で言えば頬に当たるだろう部分を何となく掻いておく。
さておき目的を果たすとしよう。
「――ワイリー様から聞いテると思うガ、ちょイと欲しいデータがあっテな」
「ゴゴ……ゴゴゴ」
「あア……? 人体構造に関スるデータだガ?」
「………………ゴゴゴ」
「…………えエ……?」
「ゴゴ?」
「イや、大丈夫ダが……エえ…………?」
「…………」
「じゃア……血液データは?」
「ゴ」
「悪性腫瘍ノ比率は? 男女と年齢別デ」
「……ゴ」
「あー……そコまで分けテるか。味覚情報のデータ」
「ゴ」
「睡眠時間に関スるデータとかあルか?」
「ゴゴゴ」
「ソうか。そウか……スまんが一旦失礼すル」
『ワイリー様へ
ストーンマンが保管していたデータが何か凄いことになってます。
このメッセージをご覧になられたら一度、ストーンマンにご確認下さい』