ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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オープニングは大きく変わりません。
それはそれとして今日からこの章が終わるまで毎日投稿と致します。
そのため、これまでと比べれば各話短めになると思われます。



それは、かつてあった出来事。





トランスミッション
オープニング


 

キーボードを叩く。

そんな音が、暗闇に響く。

画面の光だけが光源としてある中。

ソレは黙々と手を動かしていた。

 

老人。

であった。

白眉白髭の。

 

頭には既に髪はなく、顔に残っているのは長く伸び放題となった眉と髭。

あと目立つのは、左目に付けた片眼鏡か。

黄色く濁った眼を隠し、動き回る文字を捉え、光を反射する。

 

だが何よりも目立っているのは、明確としか言いようがない程の、老いの色だった。

顔の白い毛とは対照的に。

何処か黒々と。

手指の先までに巡った皺はその老人の重ねたであろう歳月を嫌と言うほどに語り聞かせる。

 

時折、呼吸に混じる湿った咳の音がまた。

澱のように積もったその年月を。

もし誰かしらがその場に居れば、些かの同情を誘うことだろう。

 

闇の中。

何時までも響くかに思われた音が唐突に止む。

長く。

か細い息を吐き、そしてゆっくりと、あるいは祈るように、「Enter」を押した。

 

「――――――」

 

急速に画面の文字が移り変わる。

刹那に瞬くようにウィンドウが現れては消え。

様々な文字が駆け巡りは去る。

ただ、ソレ等をその老人は、何処か緊張した面持ちで眺めていた。

 

やがて結果は出る。

移り変わる画面。

その中。

佇む五つの影。

 

青。

橙。

桃。

紫。

緑。

 

顔に当たる部分から各々光を放つソレ等を見。

ようやく。

安心したかのように老人は息を吐き、笑う。

徐々に徐々にと笑い声を高らかに上げていく中、咳き込んだ。

 

誰にも見られていない。

とは言っても、気恥ずかしさが勝ったのだろう。

息を整え終えてすぐ、軽い咳払い。

そして佇む五体にその視線を向けた。

 

「――異常はないか?」

『『『『『ありません』』』』』

「目的は理解しているな?」

『『『『『ニホン科学省より、データの奪取』』』』』

「何よりも優先することは、件のデータを必ず持ち帰ることじゃ。ワシの元に! 必ず!」

『『『『『ハッ!』』』』』

 

淀みのない回答。

刻んだ目的の遂行に問題はない。

唯一の心配は、ニホンの科学省の防衛システム。

その強度。

 

しかし、老人には勝算があった。

破壊に優れたネットナビ。

そのデータがある。

故に、造った。

 

完全な解析こそ出来なかった。

強靭なプロテクトがソレを成させなかったからだ。

だがそれでも。

既存のネットナビを優に超える戦闘能力。

破壊力を有するネットナビ。

 

一体ではあるいは難しいかも知れない。

だが、一体でなければ。

欠損していた部分を己が手によって補完し、強化したネットナビ達。

差し向けるはその内の、五体。

 

だからこそ、失敗は有り得ない。

コレ等の能力。

手に入れる科学省のデータ。

そして、事前に済ませた準備と自身の技術力を以てすれば。

必ずや目的を達せられるのだと、老人は確信していた。

 

「さあ行けぃ! ワシのために! 目的を果たせ! 我が、凶悪ボンバー五傑衆よ!」

『『『『『ハッ! プロフェッソール・ダムーシュニク!!!』』』』』

 

閃光のように消えて行く五体のネットナビ。

その様を見ることもなく。

老人はただ、高笑いを上げた。

上げ続けていた。

 

 

 

だがやがて。

濁った咳によって老人の笑いが治められる。

そうしてその黄色く濁った目が向いた。

 

密やかに佇む、遺された三体のネットナビへと。

不気味な沈黙を保つ。

それ等の顔を見ながら。

 

「…………お前達も準備を始めよ。伝え、何れ、我が元へとな……」

 

鎧を着たような、茶。

煌々として輝く、金。

双角を生やした、黒。

 

『『『ハッ、プロフェッソール・ダムーシュニク』』』

 

ソレ等が頷き、身を翻す。

その様を、ほくそ笑むようにしながら、笑い。

そして、視線を向ける。

 

現実世界。

其処に在る、一つ。

椅子のような。

しかし方々にコードの伸びた機械。

まだ未完成のソレへと。

 

「さあ……間もなく…………間もなく…………」

 

か細い脚を進め。

微かに息を荒げながら。

ヘルメットのようなパーツへと手を伸ばして、

 

「………………ワシの望みが叶う……」

 

撫ぜながら。

愛おしそうに。

歯を剥き出しに、笑っていた。

 

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