『ボンバーマン』
「ア、ワイリー様……久し振リ」
『ストーンマンにアレを命じた訳ではあるまいな?』
「しねえヨ」
ワタシの答えに、困ったように顔を顰められた。
あんなことになってたら困惑も分からないでもない。
実際かなり驚いた。
立ったまま見るのも何だからとプログラミングでパパっとD.I.Yして作った椅子とテーブル。
その上に並べた人体のデータ。
世界各国の年齢別かつ男女別に分けられた体型等のデータが纏められていた中、ワタシの目的に合った物だけを持って来ている。
そう。
各国にある様々な病院から手に入れた様々なデータが、殆んど完全に整理されているようだった。
ワイリー様もこれについては何も言ってはおられない。
ご命令されたのはあくまでも「管理」であって「整理」ではない。
にも拘らず。
ストーンマンが整理を進めていた上にそれらの情報を把握、本当の意味で仕切る管理をしていることに心底驚いた。
命じられたことをするプログラムくん何かであれば、あるがままの状態での管理しかしなかっただろうが、ストーンマンは自立型ナビであるからと納得できはする。
出来はするが正直、自我と言うか自意識と言うかが薄そうだから、自主的に行動していることには意外だった。
普段、見掛けるのは突っ立ってるだけなことが殆んどな故に。
命じられてないことをしていたのは。
事実ワイリー様もその辺り、驚いておられる様子であった。
「ワイリー様」
『! ……な、なんじゃ?』
「ストーンマンはドうする?」
『……別にどうすることでもあるまい。ストーンマンもお前のように予想を超えてキチンとした自我を持っていたと言うだけの話――今後はその辺りも頭に入れておくだけじゃ』
「ナら良いガな」
有り得ないことだろう。
だが勝手にデータを見ていたことでデリートされるんじゃないかと危惧していただけに、その心配がないと分かって良かった。
元はと言えばワタシが盗って来た医療データが原因でデリートされたと言うことになればちょっと立ち直れなかったかも知れない。
だが大丈夫なら良し。
『……ボンバーマン』
「アぁ、何ダ?」
『何か、言いたいことがあるんじゃないか?』
問いに、データからパッと顔を上げる。
普通に忘れていた。
聞きたいことがあったのを。
何でまだ通信を繋げたままにしてるのか疑問だったが、わざわざ声を掛けてくれて有難い。
「ワイリー様」
『うむ』
「組み込んデあるボムデータを改造してエ」
『うん……うん? 《ハイパーボム》をか?』
「ソれ以外も。あとワタシ自身も改造しテえんダが、許可貰えルか?」
『う、うむ。どう言う改造をしたいかによるし最終調整はワシがするが、構わんな?』
「モチロンだ。コイツがボムの設計予定図ダが」
『見よう』
「アいよ」
二つ返事。
そう言う訳でボムの設計図二種類をお送りする。
届いて早速、その中身に対し厳しい表情で拝見され始めた。
ワイリー様のお眼鏡に適う設計であれば良いんだが、それについては流石に期待が薄いか。
しかし少なくとも、設計の意図について分かって頂ければと言うのがある。
お手を煩わせる心苦しさもまたある、が。
「…………」
『…………』
忙しいんじゃないのかな。
疑問を覚えないでもないが、見て頂いている身で口にし辛い。
一先ずは無視して、人体構造データを確認しながら設計図を引いていく。
プロテクター含めたワタシ自身の体型。
半透明にしたその中に納まるよう設計図と比較。
微修正を加えながらも人体と比べて歪になっていないか確認。
側面は背面も確認しつつ、修正。
追加で、記録にある姿とも比較して違和感がないかも確かめる。
確認は細目にしておかないと、何時の間にか想像から外れる可能性がある。
あとは。
どれにするか決めてないから、複数用意しておくのも必要か。
『…………ボンバーマン、何を描いておる?』
「随分早えナ。どうダよ、コレ?」
『……変身願望でもあったのか? いや、ワシの作った外見データに不満か?』
「ンなんじゃねエ……と思うんダが。姿が二つあっテ損はねえダろ? っテのが一つ」
『他は?』
「ワイリー様の着けたプロテクターを利用スりゃ疑似的にナビ二人分の体力に増強デきるんじゃネえかと思ってナ」
『これらのデータと言い、何をそこまで警戒しておる…………とは、お前の経験を鑑みれば言えんか』
「ダろ?」
腕を組み、同時に椅子が軋む音がマイク越しに聞こえて来る。
変身願望については微妙な所。
だと思う。
有している記録がなければ特に思う所はなかっただろうが、有している記録の所為でこの姿もボンバーマンであるとは思いつつ必ずしもボンバーマンでないと言う考えもある。
考えつつも別に、ワイリー様のお作りになられたこの外見に不満はない。
格好良いと思うし。
黄色っぽい色合いと癖のある口調の所為で、やられ役っぽさがあるのが難点か。
でも別に決定的な物ではない。
だからこそ外見はそのまま、内側に別の姿を作る等と言う迂遠なことをしようともしているのだ。
まあ、外側を壊されるなりした後に中から姿を見せると言うことへの憧れもモチロンあった。
アーマーパージには夢がある。
そして何より、戦闘能力増強。
『プロト』に次いで『グレイガ』。
ワイリー様の作られた《ハイパーボム》だけでは諸々不足していると言う事実を、この二つが証明してしまっている。
事件としては最高峰だろう。
だが記録にはないだけで、今後もこれらに匹敵する事柄が起きないと言う保障がどこにもない。
故に、ワタシの行動に不審な点はない。
完璧な理論武装の完成だ。
若干、胡乱な目を向けておられる気がしないでもないが。
『………………………………まあ、良いじゃろう』
「デ?」
『ボムについては分かった――《クロスボム》を参考に、より指向性を持たせることで直線への範囲と威力の向上を図るのは悪くあるまい』
「ダろ?」
『《ビッグボム》と同じように、単純に広範囲を爆発に巻き込む設計の方もモチロン悪くはなかろう。だが、何故《ブラックボム》ではない?』
「将来的ニそうはしたイが、現状チップの数がネえ。ソれに別方面で使いタいしナ」
『――いかん。最近環境に恵まれてた所為で必要な物が揃ってて当然の思考になっておった…………』
額を押さえておられるワイリー様に対し、思わず嬉しくなった。
ニホンの科学省に居られた頃は予算争いでさぞや苦労されたのだろう。
正直、性格に癖がある。
あんまりなさそうな光正と比べて、どちらに親しみ易さがあるかは考えるまでもない。
苦慮されたことだろう。
それが今や、物があって当然の環境。
キャスケット様とアメロッパには感謝しかない。
だからこそ、怖い。
キャスケット様がお亡くなりになれば、それが崩れる。
故に命に関わらない程度には、グレイガとも戦う覚悟を固めていたと言うのに。
それによる、道筋の崩壊を。
しかし申し訳ないが、ワタシ自身の命の方が優先だ。
ワイリー様のお命に関わると言うのなら記録の開示も吝かではないが、記録通りに行けば最低限救われはするのだから。
『……ボンバーマン』
「おウ」
『一つ、推薦したい。受けるも断るもお前に次第じゃ』
「なんダ?」
『ボムデータの改造に、人間とナビをそれぞれ一人ずつ付けようと思う。まだ未熟な部分もあるが腕は保証する』
「ヘえ、そイつは凄え。是非頼みテえ」
いや、掛け値なしに。
ワイリー様が推薦される時点で並みの腕前じゃあない。
しかもナビも一体付いてると言うなら、電脳世界にも明るいだろう。
それほどの人物達を付けてくれると言うのは有難い。
有難いが、しかし裏がありそうだと思ってしまうのは仕方ないことだろう。
内心の警戒をひた隠し。
素気無い風を装ったワタシの言葉に、ニヤリとその口元に笑みを浮かべられた。
『そうじゃろう、そうじゃろう。何せワシの息子じゃからな』
「……息子ダぁ?」
『その通り、お前に推薦するのはワシの息子――――リーガルじゃ』
無印にはない、2以降から出て来る《ブラックボム》や《アンダーシャツ》等の有用なチップは海外なら元からあるだろうと言う考えです。