ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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テテッテレッテー テテッテレッテー テテッテ テテッテ テーレッテテッテー

ショウブヨッ!



ステージ3

 

「そんな……! この、私が……!」

 

屈辱。

言い表せないその心情を絞り出すように。

倒れ伏した己が身を起こしながら、そのナビは吐き捨てた。

 

黒い装飾に覆われていた桃色の体は度重なる攻撃で既に曝され。

額に掲げられていた割れたハートマークの片方は半ばまで消し飛ばされていた。

同様。

顔に張り付いていた、舞踏会に使うような黒い仮面もまたその殆んどを失い、顔を暴かれていた。

 

忌々しそうに表情を歪めながらなおも立ち上がる。

その様を、じっくりと見めながら。

相対するナビは詰まらなそうに言葉を発した。

 

「弱い」

 

と。

 

「――なんですってぇ!?」

 

激昂する姿。

しかし、ソレに対する態度は冷めたモノ。

詰まらなそうに。

目を向けるまでもないと言わんばかりに、その青白い視線を周囲へと向けた。

 

特段、油断ではなかった。

この程度の強さであれば、あるいはもう数体ぐらいは後詰めが居るのではないか。

そのような認識の上でだった。

 

しかし、目の前でそんなことをされた側はそう捉えない。

見るまでもない。

そう、称された。

それはそのナビのココロに多大な怒りを催すに、十分なコトだった。

 

「――許さない」

「……それで?」

「許さない許さない許さない許さない許さないッ! このボンバーマン・セクシーをッ! お前は此処で、デリートしてやるわッ!!!」

「まだ達者なようだな。口だけは」

「黙りなさい!」

 

そうしてようやく、その視線を戻した。

怒りに震える、ボンバーマン・セクシーへと。

だが、同時に。

既にソレへの興味をもそのナビは失せていた。

 

ボンバーマンとも、パインとも。

どちらとも比ぶべくもない。

形を変えて誤魔化しただけの、ただの失敗作に過ぎない。

否。

姿だけ似せた紛い物。

 

そう、ナビとオペレーターの双方は言葉を交わさずとも結論付けていた。

しかし、同時に微かながら興味の色を取り戻す。

先程と同じように、

 

「《セクシーボム》!」

 

生み出されたハート型のボム。

しかし、何処か違う。

気迫か。

感情か。

そう言ったモノが、プログラムにも影響を及ぼしたのか。

 

PETの向こう側で己のオペレーターが感心したようにそのような言葉を漏らしたのを聞きながら。

相対するままに。

そのナビは全身の模様のようにある青白いラインが光る。

同時に、背後に携える大型ジェネレーターを稼働させた。

 

瞬間、一対の伸びた双角の如き黒いその表面に青白いラインが浮かぶように走った。

不気味な駆動音を鳴らすソレ。

しかし、ボンバーマン・セクシーはそんなもの、眼中にない。

ただ、目の前の相手をデリートする。

その一心のみ。

 

「ボンバー!」

 

掲げ。

唸り。

 

「シュートオッ!!!」

 

投げる。

まさしく、怒りのココロの籠った一投。

ソレは、

 

「《ブレイクレーザー》」

 

大型ジェネレーターより放たれた真っ赤なレーザー。

それにその身諸共飲み込まれ。

一瞬。

 

その内に、声すらも残さず消え去った。

鼻を鳴らし、前傾姿勢から体を起こす。

そしてその場を後に、

 

「……」

『    ?』

「何者かが来ます」

 

しようとした足を止め、振り返った。

姿はまだない。

しかし、数十秒。

その程度の時間が過ぎた時、エリア、電脳の地平に確かに姿が現れた。

 

二つ。

どちらもが強者である。

その予感を胸に、ただ佇む。

 

やがて至近にまで迫った時。

その二体は既に戦闘態勢を取っていた。

片や、己が腕を変形させたバスターを。

片や、緑色のソードをその手に携えて。

 

「――――何者だ、貴様」

 

無言の相対。

それでは埒が明かないと判断したのだろう。

ソードを構えていた、屈強な体躯のナビが前へと出た。

射線に遮られないよう、後ろに控えているナビも僅かに立ち位置を変えている。

 

普段であれば。

無言のまま、戦闘へと移行していただろう。

更なる高み。

父親に、本物のボンバーマンに勝利するための糧とするために。

 

しかし今、有り体言って白けていた。

ボンバーマンを名乗るネットナビ。

それに関する情報等が、ウラインターネットに流されていた。

 

曰く、アメロッパの政府ネットワークにもダメージを与え得る程の代物だと。

事実か否か。

ソレを聞いて、足を運んで来てみれば。

ボムを投げこそすれど洗練されているとは言い難い。

 

実際の所、上中下の三段階で分ければバトル性能のみを見れば上に入りはするだろう。

しかし、ネームバリューに対してどうかと言えば。

微妙。

としか言いようがなかったのだ。

 

「………………」

『     』

「ハッ。我が名はレーザーマン――ボンバーマンを名乗る存在が居ると聞いて、此処までやって来ていた」

 

彼等、レーザーマン達にとっては、だが。

 

「来ていた? つまり……」

「既にデリート済みだ」

「クッ……遅かったか!」

 

何やら苦難の声を発している二体のナビ。

それが、彼等の興味をそそった。

 

「……お前達は何の目的で此処まで来たのだ?」

「……何、我々も同じようなものだ。ただ、ボンバーマンを名乗るネットナビの主を探して動いていると言った所だ」

「主? ……そうか、まだ居るのか……いや、当然か」

 

ふと。

レーザーマンが虚空を眺める。

それが姿を見せないオペレーターと連絡を取り合っていることだとは、其処に居る二体にもすぐ分かった。

沈黙は、僅か。

小さく頷き、その視線を降ろした。

 

「――――次の当てはあるのか?」

「それは……」

「ある。あるが、お前のような不審者に伝える理由はないと思うが?」

「シグマ」

「少し黙っていたまえ……それで? 着いてきたいのだろうが、その理由は?」

 

一歩。

エックスよりも前に出たシグマが片手で抑えるようにしながら目を細めた。

ボンバーマン・セクシーを倒した。

一見すれば味方の所業。

 

しかし、エックスの『ソウルリゲインプログラム』があるとなれば話は別。

倒したネットナビから、多少なりともデータを抽出できるのだ。

データを取られては困るナビを、予め始末していた。

そう言われても、納得は出来る。

些か無理筋ではあるが。

 

もっともシグマ自身、それはないだろうとは思っていた。

単純に、実力。

シグマ自身は現状、アメロッパで五本の指に入る強者であるとの自認している。

 

自負がある。

自信がある。

故に、比較的正確に他のナビの実力も把握は出来る。

大まかに言って、自身よりも上か、下か、あるいは同程度か。

 

そのセンサーとでも言うべき感覚が告げていた。

目の前のナビは、同程度には強いと言うことを。

自身より部分的には上、と言う気がしないでもないが。

ソレはアメロッパの誇りに反するので思い留まっている。

 

他の、ボンバーマンシリーズと比べるまでもない。

仮にアチラ側とでも言うべき陣営ならば、初めからコイツが出ていれば済んでいる。

そう言った認識を。

 

「……ソレ等は、ボンバーマンを名乗っているのだろう?」

「? ……ああ。そうだ」

「であれば、ソレが理由――ソレで十分だ」

「どういう意味だ?」

「あの程度の強さでボンバーマンを名乗るのであれば消えて貰う。それだけだ――それで不足ならば、失礼しよう」

 

困惑の表情を浮かべるエックス。

対して、質問をしていたシグマは苦笑とでも言うべき表情を浮かべた

そのまま、オペレーターへと繋ぐ。

話を聞いていた、オペレーターに。

 

「……如何しましょうか、閣下?」

『問題ないだろう。連れて行ってやれ』

「えっ? 良いんですか?」

『ああ、エックス――アメロッパには結構居るんだ、ボンバーマンのファンボーイがな。ゲームの隠しキャラとしても出ているそうだし。彼はその中でも少々……過激なようだが、戦力になるなら連れて行ってやれ』

「承知しました――と言うことだ、レーザーマン。勝手な行動は慎んで貰うが、それでも良いのなら着いて来い」

「………………」

 

返答は、ない。

黒と青白いライン故に表情の変化が分かり辛いが、些か不満そうに。

しかし、僅かな間を置いて頷いた。

 

僅かな間。

ソレに対して微かに目を細めたシグマだが、無言。

疑念を己の内に押し込む。

 

何者かが作り出した、ボンバーマンシリーズ。

ソレに勝てるネットナビなのだ。

アメロッパも、撃退自体は可能だった。

しかし、乗り込んで撃破となれば難易度は高い。

無意味に、敵対する可能性を作りたくはなかった。

 

「沈黙は肯定と受け取る」

 

ただ、念押しだけはして。

そのまま、片手を翳した。

反応し、シグマのオペレーターの姿を見せた。

表した。

 

「ほぅ?」と感嘆の息を溢すレーザーマンを尻目に、シグマは視線を合わせた。

どうするか。

無言の問い掛けに、顎を擦り、僅かな逡巡を見せた。

束の間の逡巡を。

 

『――――別動隊が他のボンバーマンと戦闘状態にある。其方に向かえ』

「了解」

「別動隊? シグマと同じぐらい強いナビが、他にも?」

「…………」

 

疑念を口にするエックス。

レーザーマンは沈黙。

その姿に、シグマは密やかに、そしてやはりアメロッパの内実を把握している存在であることを察しながら頷く。

一瞥し、何の言葉もないことを確認してから、その口を開いた。

 

「……ああそうだ。我がアメロッパの最高戦力。ソイツと別のボンバーマンとが、少し前に戦いを始めたらしい」

 

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