ボンベルマン・イディアール デリート
ボンベルマン・ゾールタ デリート
ボンベルマン・ディヤーボル デリート
ボンベルマン・プラーズマ 交戦中
四つの影が電脳世界を駆ける。
前を行くは二体。
それぞれがソードを携えたネットナビ。
シグマ。
カーネル。
その後に続くは二体。
エックス。
レーザーマン。
エックス。
と言うよりも、光祐一朗から齎された情報。
ボンバーマン・ブレインの有していた移動経路の痕跡。
カーネルが劣勢を演じていた。
だからこそ、その内部で削除されず遺されていたデータ。
慢心が齎した結果。
ソレを以って、その足跡を辿る形で。
遂に、か。
あるいはいよいよ、か。
各々が各々の目的を持って、その終わりが近付いて来ていた。
ニホンより持ち去られたデータの悪用を防ぐため。
アメロッパ襲撃の主犯の身柄を捕えるため。
単にボンバーマンと言う名が気に入らぬため。
与えられた任務のため。
ウラインターネット。
その浅層。
然程、ウイルスの厄介さもない領域を。
斬り伏せ、あるいは狙い撃ち。
淀みなくその一団は駆け抜けていた。
「――――情報が正しければ、間もなくセキュリティのあるエリアに入る筈です」
『であれば、突破は光博士にお任せしたいが、よろしいかな?』
『構いません。その間、見張りをお願いすることにはなるとは思いますが』
「安心しておけ。私とカーネル……あとはそこの、レーザーマンが揃っておれば問題あるまい」
「――随分と買われたものだ」
その足が、緩む。
移動こそ止めないが、エックスの言葉。
ソレを皮切りに、オペレーターを含めた声が混じる。
気の抜けたような。
事実、そうであった。
この場に揃っている四体のナビ。
ソレ等は理解していた。
今、居る面々は現状の電脳世界。
その中でも、上から数えた方が遥かに早い領域に在る。
そう言った面々であると。
故にこそ、だろう。
エリアを抜け。
目標の地点へと近付く。
螺旋階段を登るような、渦を描いたエリア。
「《プラズマボム》!!! ボンバーシュートォオオ!!!」
瞬時。
叫び声。
ソレを耳にして戦闘態勢に入った面々だが、遠い。
奇襲にしてもなお。
彼方。
雷鳴の如く轟く爆音に釣られ、視線を上げた先。
幾つか見える広間のような場所。
昇り行く渦の最終地点。
最後の広場。
其処から垣間見えた、雷と炎の乱舞。
既に戦いが始まっている。
察すれば早い。
誰かが目配せをするようなこともなく。
急き立てられるように、一斉にその場から駆け出した。
敵か。
味方か。
第三勢力か。
味方であればまだ良い。
しかし、敵か、第三勢力であれば。
少なくとも、エックスと光祐一朗。
彼等の懸念は大きかった。
「博士……!」
『ああ、済まないが急いでくれ……!』
『パルストランスミッションシステム』。
おおよそ世間には広まっていない。
知る者は言わず、言う者は知らず。
そう言った代物なのだ。
悪用される懸念を持っていない程、能天気ではなかった。
シグマとサムもまた、懸念があった。
おおよそ知れ渡ってはいない。
そのように封鎖した。
しかし、アメロッパへと攻撃を仕掛けて来た相手。
その始末にアメロッパが関与出来なかったともなれば、嘲笑を免れ得ない。
面子の問題。
そう言われれば、サムは臆面もなく「そうだ」と答える。
大国故にこそ。
面子を守れなければ、それすら守れないとの烙印を押されるのだから。
「これは……!」
『サポート系のチップを用意する。進んでくれ』
『――シグマ。チップは何を用意した方が良い?』
「……リカバリー等のサポート系を」
『! ……分かった』
駆け抜け行く。
その中。
見る。
螺旋に続く道筋。
その所々に存在する、広間。
その惨状を。
一つ、二つと駆け抜けながら。
穴だらけに射抜かれた床。
爆弾と思しき破壊。
セキュリティゲートだったモノが、力技で叩き壊された痕跡。
鳴り響いている。
雷鳴が。
爆音が。
戦いがまだ続いていることを証明こそしている。
している、が。
そうして。
三つ目の広間に辿り着き。
残骸の中を駆け抜け行く、
「! 散れ!」
「っ!」
「――!」
「なっ?!」
固まって動いていた四体が四方に散った。
瞬間、上空より落とされた漆黒の塊が爆散。
破壊を撒き散らす。
ボム系列か。
口に出さず諸々当たりを付けながら、面々の視線が空へと昇る。
其処には、一体のナビが居た。
「――まだ、奴等よりか手応えがありそうだな」
『! なッ』
異様。
ネットナビを作り出した光祐一朗をして。
様々なネットナビを知り得たサムをして。
ソレは異様な姿だった。
頭部より生えた一本の角と、一対の白翼。
目の部分は水色のゴーグルのようであるが。
体躯。
体の側面や脚部の節々には、何処か爬虫類染みた碧の模様。
だけではなく、伸びた艶やかな尾や四肢の先にある爪が、人にはない獣性を匂わせる。
それが笑っていた。
嗤っていた。
見下ろし、上から面白そうに。
ゆっくりと、外周へと浮かび飛ぶ。
『ネットナビ――であることは間違いないね。でも、君は一体……』
「……」
誰も返答を、しない。
今までのナビとは違う。
格か。
領域か。
少なくとも、何かが。
しかし、それでは終わらなかった。
道の先。
通り抜けるハズだった向こう側。
其方より、静かな歩み、姿を現れていた影が一つ。
銀、であった。
白銀のような長髪とその前頭に刻まれた、黄金に輝く0。
相当の力を入れられたのだろう女性らしい豊満。
四体の中で最も巨体であるハズのシグマにも匹敵するかあるいは超えた体躯でありながら、静かに外套を棚引かせ。
酷く冷めた、金色の瞳で射抜いてくる。
人間によく似せてある。
にも拘わらず、相反する。
機械的。
血の通っていない兵器のような酷薄さか、あるいは、血生臭さが滲み出している。
「――――降伏せよ」
その証明のように、左右に浮き上がるは大型のガトリング砲が四門。
回転と共に、金切り声を上げて大笑している。
殺意の具現化とでも称すべきソレ等に対し、カーネルが一歩前へと進み出た。
構え。
互いに一線を越えれば戦闘が始まる。
外周の空から白いナビの嗤う声もまた響く。
「っ!」
『どうし! ッ……侍……までは行かないか』
「………………気付かれたでござるか」
中。
不意にエックスが来た道を振り返った。
予感に従って。
そこに、居た。
黄色い、古いニホンの着物。
否。
羽織か。
ソレに鉢巻を着けた、チョンマゲのある男のようなナビ。
腰元に佩いた二本の赤鞘の刀と思しきモノに手を掛けて。
目立つ。
そのハズなのに。
歩む姿に足音はなく、気配等も存在しない。
あたかも、東洋の神秘。
古くから伝わる、シノビ歩きの如く。
「チッ――間抜けが。何をしている、スティール」
「申し訳ない、フォース」
「……計算通りとはいかなかったが、やることは変わらない。次は気を付けろ」
「何に気を付ければいいのやら……」
困ったように左手で頭を掻く、スティールと呼ばれたナビ。
しかしそのもう片手は、決して腰元から離れない。
自身に向けられているエックスのバスターを油断なく見据えながら、ゆったりと佇んでいた。
四対三。
囲まれはしたが、数の利はある。
ある、が。
微かな渋面を誰かが作った。
『シグマ、上だ!』
「っ」
「む、バレたか」
唐突にサムがPET越しに叫ぶ。
瞬時に察したシグマがソードを展開し、呑気な感想を女性型ナビが溢した。
そんな状況でも、ソレは止まらない。
飛び降り、十字架を振り被りながら落ち、
「あら?」
「あぁ?」
交錯。
互いに半ばまで振り被っていた所で、止まった。
そのナビは丁度、シグマの目の前に飛び降りた形で。
「――シグマさんでしたか」
「なんだ、セピアか。ならばこの先に居るのは……」
「パインです」
「……知り合いか」
「アメロッパの方ですよ、シルヴァ」
振り下ろし掛けていた十字架を背負い直し、呑気に語り掛ける姿に。
シルヴァと呼ばれたナビは、展開していたガトリング砲を納め。
フォースと呼ばれていたナビは、再度の舌打ちを溢しながら空から舞い降り。
スティールもまた、腰元の刀から手を離した。
そして何事もなかったかのようにルートの先、道の上へと進み始める。
「……説明が欲しいんだがな?」
「私が話すより、パインと話す方がよろしいのでは?」
僅かに顔を顰めながら武器を収めるカーネルを尻目に。
同じように歩き始めたセピアに並ぶシグマ。
頬に手を当て、困ったように答える姿に肩を竦め、急な流れに付いていけていないエックスを一瞥した。
そう、エックスだけ。
カーネルとレーザーマンは、納得の有無はともかく既に歩き始めていた。
「え、あっ、待って下さい!」
『………………』
そうして。
半ば取り残されていたエックスも慌てたようにその後を追った。
何時しか止んでいた、戦いの音。
ソレを見上げてから。
『…………パイン、か』