ちらと感想を伺った所、前話に出たフォースの元ネタが分からない方が多そうでしたので軽く解説をば。
・フォース
ボンバーマンジェッターズに登場する敵ボンバー達が合体したラスボス的な存在、ダークフォースボンバーが元ネタ。
アニメ版での攻撃方法は、指先から黒いエネルギー弾を発射する。
攻撃方法の見た目は、DBのフリーザ様のデスボールが近いか。
なお、ゲーム版では《ダークサンダー》等のダーク系な名前の攻撃をしてくるが、エグゼ世界でダーク系は色々マズいので名前をひっそりナーフされている。
あんまり関係ないが、戦闘スタイルは飛べるので空爆。
上記は一通り終われば前話の後書きに移しておきます。
説明が長くなりましたが、今話もお楽しみ頂ければ幸いです。
一体のナビが、其処に居た。
肘を着いた立位前屈。
等と呼ばれるポーズ。
床に両肘を置いて。
組んだ手で顎を支えながら、高々と尻を掲げたような姿。
ソレを取って。
登って来たナビ達を見詰めていた。
舐めている。
そう、取れるだろう。
しかし知っている。
その場にいる殆んどのナビは知っていた。
そのナビ。
パインと呼ばれるネットナビが、舐めれるような存在ではないことを。
それはさておき、
「…………パイン」
「カーネル、やっほーにゃ~ん」
「何をしているんだ?」
「見ての通りにゃ」
「……言い直そう。なぜ、尻でスマッシャーを挟んでいる?」
舐めた格好をしていた。
少なくとも、そうとしか見えなかった。
実際、八体のナビの内の殆んどは頭に疑問符を浮かべていたことだろう。
数少ない一部は「中々かわいいポーズをしているな」ぐらいの反応だった。
ともかく。
登って来てみれば、《マジカルポテトスマッシャー》の柄を尻に挟み、尻尾で巻き支えつつも高々と掲げているパイン。
そのインパクトは、些か強かった。
油断ならぬナビと知っているカーネルやシグマはともかく。
少なくとも、エックスは困惑に気が抜けているよう。
レーザーマンもまた、困惑はしているようで幾らか体を光らせていたが。
「おや、ご存知にゃいのですか?」
「……何をだ?」
「古来よりニホンでは下腹部――丹田と呼ばれる場所が特にエネルギーの溜まる場所と言われ、故に其処に近い部位――つまりはお尻で武器を振るうと凄まじい力を発揮すると言われているにゃ。つまりコレは合理に満ちたスタイルにゃのです」
大真面目な顔で、語る。
そのパインの姿に、思わずか、頷いた。
「――――東洋の神秘だな」
「なるほど、知らぬ」
「いやいやいや……」
「そんな訳があるか」
そう言うモノかと頷いているカーネルとシグマ。
対し、エックスとレーザーマンは冷静に突っ込んだ。
流石に風評被害が過ぎる。
何処でそのような歴史を知ったのかは知らないが。
半ばの呆れも混じったその言葉に、目を細めながらゆっくりと体を起こした。
「ま、冗談にゃんですけどね。にゃはは」
「…………」
大真面目に頷いた立場がない。
軽く笑っている姿に、じっとりとした目を向けるも特に気にする様子もなく。
尻に挟んだままの《マジカルポテトスマッシャー》を器用にその尻尾で支えていたが、左手に取り、肩を叩いた。
拍子に胸を揺らしながら。
「まずは……ワタシが此処に居る理由、かにゃあ?」
「さっさと言え」
「招待状が届いたので。スタッフマン経由で、ワタシに」
「……なんだと?」
苛立ち交じりだったカーネルの声に、僅かな疑念が混じった。
にゃーにゃーと鳴きながら胸元に手を突っ込み、ずるりとデータを抜き取って。
二本指で挟んで示す。
ある種の先陣を切る形で進み出たカーネルがそのデータを受け取り、眺めた。
メッセージ。
本当にそのまま届けられたのだろう。
一目でそうと察せられる、メモ。
微かに眉を顰めながらも文面へと目を移し、いよいよ露骨に顔を顰めた。
記された内容は単純に、
「――『待つ。単独で来い』、か」
場所。
そして、その言葉。
ソレ等のみが簡潔に記された文章。
「そうそう! 全くまさか、ボンバーマンがワタシに招待状を出して来たってことにゃので驚いちゃいましたにゃ~」
「…………ボンバーマン?」
その言葉に、カーネルが僅かに目を見開いた。
有るか無き。
カーネルを見知っている者でもなければ気付けはしなかっただろう。
その程度の変化を。
後ろではシグマとレーザーマン、そしてエックスもまた、その顔をパインへと向けていた。
「ほら、ボンバーマン達って少し前から行方不明っじゃにゃいですか! なのにスタッフマン経由とは言ってもウラの場所で待つ、にゃぁんて言われて、無視するのもどうかと思いましてね?」
「…………それで? ボンバーマンは?」
「居ましたよ」
「!」
「ガワだけよく似たのが」
「――だろうな」
にやにやと。
笑うパインに、揶揄われたのだと察し、眉間に皺を寄せるカーネル。
それを見て更に笑みを深めながら。
パインは口を開いた。
「いやぁ~、昔のボンバーマンの姿そのまま! ってにゃナビがワタシ、ボンバーマンでございって顔で話し掛けて来てびっくらポン! って感じにゃ」
「それで?」
「ノリが悪くにゃあい?」
「それで?」
二度。
重ねてそう言われれば肩を竦めるしかなく、
「ま、人を紹介したいとか言い出してぇ、連れて来てた子達は邪魔だから帰せって言うもんなので帰すフリだけしてぇ、案内するとかで無防備に背中を向けてきたんで? 思わずボコしちゃったんでデータだけぶっこ抜いてぇ、大凡の場所が分かったんでご挨拶伺い中って感じが今にゃ」
素振り。
推定胴体部分へと熱心にスマッシャーを繰り出す姿を呆れ眼で見詰め。
一度、気を取り直すように首を振った。
「報告……されても対応は出来なかったか」
「お忙しかったんでしょ? ワタシの耳にも其方の喧噪はよぉく聞こえてましたよ?」
「嫌味か?」
「いえ。単に自己解決したいとお思いでしょうから手出ししなかっただけです。ま、にゃので気遣いの出来る良い子なパイにゃんはパイにゃんで、自己解決に動いてたって訳にゃん!」
溜め息と共に口を開き。
しかし。
少し間を置いて、カーネルは閉ざした。
確かに、知らせられてもアメロッパでは対応する手が足りなかっただろう。
ボンバーマン擬き達の襲撃。
その影響は計り知れなかった。
アメロッパの各都市は今もなお密やかにではあるが、ジョーシリーズ等で防衛網を構築し、警戒状態にある。
その上で、パインだ。
仮に問い合わされても自身で対応してくれと済ませた公算の方が余程高い。
少なくとも。
優先順位からして正直、自己解決出来るだろうと後回しにされていた程度の代物でしかなかっただろう。
指定された場所と、してきた存在を除けば、だが。
後ろから覗き込んで渋い顔をするシグマに、笑顔を浮かべる姿。
所在なさげに顎を擦り。
やがて申し訳なさそうに顔を逸らした。
言葉もないとはこのことか。
微かな同情を乗せた視線をシグマへと送るカーネルだったが、すぐに収めた。
まだ、聞きたいことはあるのだ。
具体的には、
「――次に、その四体……いや、セピアを除いた三体は?」
「自己紹介してにゃかったですか? シルヴァ。フォース。スティール、です」
「シルヴァだ」
「フン……」
「改めまして。スティールと申します」
敬礼。
無視。
一礼。
各々の対応をするソレ等を一瞥し、頷いた。
「全員、戦闘用か」
「そうにゃ。ま、フォースは夜に教会の警備を担当してる子で、スティールは試作の子ににゃりますけど」
「試作?」
「スタッフマン達だと流れ弾で修復の手間が掛かる時があるのにゃ。即断即行、かつ余計に周りを壊さない警備の子――の試作モデルって訳にゃ」
「なるほど」
カーネルが納得した様子なのを、今度はパインが一つ頷いた。
そのまま二体の間を抜け、奥の二体。
その姿を物珍しそうに笑い、口を開いた。
「はじめまして、お二方。パイにゃんはパイン! アメロッパで色々としてるネットナビにゃ」
「は、はじめまして。オレはエックスと言います」
「――レーザーマンだ」
「ふぅん……中々見ない、ロックな見た目をしてる方も居ますけど、お二方ともわざわざニホンからどうして」
「待て」
「此方に……何かにゃあ?」
唐突に。
シグマが口を挟んだ。
その反応に胡乱な何かを感じたような表情で振り返ったが、どちらも向けて来ている鋭い視線に、微かに怯んだように首を竦めるだけ。
口には出さず、先を促す。
「どうしてどちらも二ホンから来たと思ったのだ?」
「……お尻にモノ挟むスタイルが普通じゃないってすぐ返して来たでしょ? ニホン暮らしでもなくちゃすぐ反論して来にゃいでしょうから、そう思っただけにゃ。違うんですか?」
「ほら、ニホンて割と非常識な所ありますし」と続けた言葉に。
「なるほど」と。
納得したような頷きと共に。
三体の視線がレーザーマンへと向けられた。
沈黙は、暫く。
やがて諦めたかのように。
体のラインに光を走らせ、
「――――何処のナビか等、言った覚えはない」
嘲るように。
溢し、嗤った。
反応は各々。
シグマとカーネルは視線を交錯させるに留まり。
エックスは視線を恐らくオペレーターへだろう向け。
パイン達はただ首を捻るだけ。
その沈黙も十秒ほど。
やがて耐え兼ねた様子のパインが咳払いを一つ。
今度こそ、とでも言うように再度、口を開いた。
「えー……レーザーマンは黙っちゃいましたから、エックス」
「……ええ、はい」
「あなたは何を盗まれてアメロッパに?」
「なっ! なん」
『エックス』
さらりと、パインの口にした言葉。
一瞬の動揺。
嗜めるオペレーターの言葉に口を噤んだ時には当然、遅い。
意地の悪そうな笑みを浮かべるその姿を見れば、答え合わせに使われたこと等、容易に知れる。
固まるエックス。
やがて数秒ほどが過ぎた時、中空に画面が現れた。
ソレは、
「ほぉー、光博士ですか!」
『……はじめまして。ご存知なようで光栄です』
映っている表情は、苦虫を嚙み潰したようなモノ。
あまり、姿を見せるつもりはなかった。
そのような意図が透けて見える。
「ま、ご安心を! こんな場所でのコトなんて、広めるようなコトじゃないにゃ――お互いに、ね?」
『――――ご配慮、感謝します』
その意図を察したのだろう。
パインが先んじて口に出す。
笑顔のその姿に、光祐一朗の表情は苦いまま。
当然である。
二ホンから、わざわざ自身を動かすようなナニカが盗み出された。
あるいは盗まれたとは思っていなくとも、何某かがあった。
それとも。
盗まれたモノすら、知っているのではないか。
疑心が生じない訳もない。
しかも実の所、祐一朗自身も知らぬ方向から援軍まで送られていたらしいコト。
そのように思われた上、逆に釘を刺された形になっているのだ。
広めるようなコトじゃない。
お互いに。
逆説。
パインがもし、このような場所を出歩いていると噂にでもなれば。
モチロン、カーネルやシグマはご存知のことだった。
アメロッパの上の方では割と暗黙の了解である。
抱えている、と思われている事情と相まって。
しかし、祐一朗は流石にそのような事情を知りはしない。
そしてパイン側としては、連れて来ている四体のナビの方をあまり広めて欲しくないだけの話。
奇妙な緊張の中、それ以上の言葉はなく。
ただ、沈黙を以ってその話を打ち切られた。
他と違い、協力を求めなかった。
警戒のあまり。
ソレが致命的であることに気付けずに。
「――――――にゃにゃ? まぁ、良いでしょう。一通りの擦り合わせが終わったってコトで、行きますかにゃ?」
「――カーネル、今後のコトだが……」
「シグマ」
後衛。
前を悠々と歩むパイン達。
その後を続く形で。
自然と最後方に立っていたシグマが、横のカーネルに話し掛け、しかし、遮られた。
その眼前に手をやり、前方には聞こえ辛いように。
そのような小細工も、パインでなくとも、エックスやその他が気にすれば全くの無駄。
分かり切った事実である。
だからこそ、嗜めるように言いながら手の甲をシグマの眼前にやった。
対し、鼻白んだように。
僅かに屈める風になっていた体を起こし、両腕を大業そうに広げて見せる。
「……このメンバーで失敗があると思うのか?」
「作戦に絶対はない」
「やれやれ……」
斬り捨てるように言い切るカーネルに、仕方なさそうに溜め息を吐く。
最中。
行われていた遣り取りを、誰も気付きはしなかった。
カーネルにのみ見えるように。
己の口元を隠した掌に表した、文字。
「パイン達をどうするか」と。
返答として、シグマの眼前にやられた手の甲。
「要監視。性能確認」と。
そのような遣り取りが、僅かな間にされていたこと等。
オペレーターのサム。
無言で頷き、同意していた彼以外。
アメロッパに属する彼等以外。
誰に知られることもなく。
最前を行くパイン達は、隠すことなく眺められていた。