ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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ステージ6-3

 

カウガール風のナビ達。

スタッフマンが忙しなく行き交う。

無論、監視のため軍部のナビ達も居る。

 

しかし戦闘を主としたジョーばかり。

演算主軸のカリキュラマンは片手で数えられる程度。

あるいは、オペレーター付きのナビぐらいか。

 

数を揃える。

それも、文武両道で。

そう言う観点で見れば、パインのスタッフマンが非常に優秀であった。

 

欠点は言語能力すらも性能に割かれていることだけ。

民間の協力者。

そういうことで動き回るソレ等は既に、切断されていたショートカットの復元から秘密通路の捜索まで、実に様々な事柄を完遂させていた。

それは、目下最大だった問題すらも例外ではない。

 

「――――――パイン」

「お、どうしましたかにゃ、シグマさん?」

 

同じく、協力を。

そう言った形で、エックスと共にデータの整理を進めていたパインが顔を上げた。

釣られるようにエックスと、同じく当然のように混ざっているレーザーマンも。

 

真剣な表情を浮かべ、周囲へと視線を走らせたシグマだったが、苦笑を溢す。

既に、隠すような事柄ではない。

少なくとも、エックスとパインに対しては。

問題があるとすれば、本当にニホン所属か怪しいレーザーマンだけである。

故に、一瞬の逡巡で何処まで口にするかを定め、重々しく口を開いた。

 

「……見付かった」

「あ、そう」

「スタッフマンの元に降参して出たらしい」

「……スタッフマンに、ですか? 呼び掛けてたのは他の方々ですよね? そこだけちょっと意外にゃ……声がないから」

「どうやら最も人間らしい姿だったから、らしいな」

 

「なるほど」と。

一つ。

パインが頷き、笑みを浮かべた。

 

「では、行きましょうか」

「…………パイン」

「はい?」

「連れては行けん」

「…………? 何故?」

「お前を会わせるべきでないと判断がされた」

 

沈黙する。

笑みを浮かべたまま。

瞼を下ろし、数秒。

やがて、口を開いた。

 

「……とは言っても、アメロッパも欲しいんじゃにゃいですか? 情報――仮にも天才と呼ばれた人の」

「ソレは事実だ」

「なら心配はありませんにゃ。ご存知でしょう? アチラは、精神だけにゃんですから」

「だが、人間だ」

「私権の享有は、出生に始まる――人間の権利は、肉体を基準にするものであって精神には依りません。違いますか?」

「肉体はまだ生きている」

「物を言えれば主張出来るでしょうね。肉体で、物を言えれば」

 

笑みは変わらない。

ただ、手が促す。

連れて行くようにと。

 

「……パイン」

「まだ言い訳が欲しいんですか? 電脳空間に存在する精神は、果たしてワタシ達ネットナビやプログラムくんの発言と何が違うでしょうか」

「…………」

「おっと、生憎? ワタシは会社と同様認められてはいますから一応例外にゃ。でも、本当にあの方がご自身の意志で口にされているのか? にゃあんて……ご自身の肉体から直接お言葉を発して頂かないと分からない! 違いますかにゃあ?」

 

にこにこ。

と。

笑いながら、そう言う。

 

困ったような顔でオペレーターの方へとだろう。

振り返り。

しかしやがて、向き直ると同時に姿が浮かぶ。

サム・モーション。

念のためにか、顔が分からないようモザイクを施されているが。

 

『パイン』

「はい。それじゃあ」

『もう奴は自身の体に戻った。電脳世界に戻るつもりはないそうだ』

 

にこにこ。

と。

パインは笑っていた。

何も変わらず。

笑っていた。

 

「――――そうですか」

 

笑っていた。

ずっとずっと笑っていた。

変わらぬ笑顔で笑っていた。

 

「そうですか――――――――――カット」

 

ぱん。

と。

軽やかな音が鳴る。

 

同時にパインの顔が崩れる。

苦笑。

貼り付けていた笑みから、そのように。

 

「いやぁ、パイにゃんってそんな危険存在に見えましたかにゃあ?」

『…………』

「そこはウソでも見えないって言って欲しかったにゃあ! 言って欲しかったにゃあ!」

「……言えませんな」

「強情! ま、良いですけど。とりあえず、あの人が何か言い淀んだら、さっきまでのワタシの映像見せれば口が軽くなるんじゃにゃいです?」

『ならば大した演技だった――とでも言っておこうか? 女優をやれそうだ』

 

険しい表情のまま。

揶揄するように、サムがつつく。

反応を伺うように。

一瞬、虚を突かれたように表情を変えたパインだったが、やがて破顔した。

 

「――にゃっはっは! 流石に、ヒカリ博士が居られる所でそ~んにゃ危険に見えそうなこと、心底から言いませんにゃ~」

 

ビンタの要領で。

サムの代わりにだろう、困り顔のシグマの腰をペチペチと叩く。

つい先刻まで。

会話の中、一切変わりなかった笑みから賑やかに切り変わる表情で毒気を抜かれたように。

知らず、張り詰めていた場の空気が緩んでいた。

 

あるいは。

だからこそ、その今が好機。

シグマはそう捉えたのだろう。

姿勢を整えるように立ち、

 

「――――パインは」

「にゃにゃ?」

 

見下ろしながら。

しかし言い淀み。

それでもシグマは口を開いた。

 

「……いや、此処は軍属としてでなく、一ネットナビとしてお尋ねしたいのですが……母上」

「おやぁ、随分と大きな子供が出来たモンだにゃあ」

「あそこで突っ立っているシルヴァも似たようなモノでしょう? それで、ダムーシュニクがなぜ戻って来ると確信しておられたので?」

「目的が不老不死と聞いたからですにゃあ」

 

その場のエックスを含めた、パインを除く一同は不審を表情に表した。

見れば二人。

モニターを出した光祐一朗、そしてサム・モーションも引き続き話を聞こうとしてか耳を傾けながら口を開いた。

 

『すまないがパイン、詳しい理由を教えて貰いたい』

「んー…………そうですねぇ。恐らくこれは電脳世界と現実世界で根本的に感覚が違う問題にゃんだと思いますけど」

『感覚、と言うのは?』

「パイにゃん達にとってウイルスなんて、邪魔な存在程度ですにゃ。コレ、多分ですが現実世界で言えば」

 

そうして、曖昧な笑みを浮かべた。

ウイルス。

電脳世界にあってはネットナビを襲い、場合によってはデリートまでするような存在であるので、

 

「犬とか熊とかが襲って来てる感覚が近いんじゃにゃいですかねぇ?」

『く、熊……?』

「ええ、はい。ワタシ達ネットナビはバスターとかボムとか、ソードだとか予め武装を整えれてるので問題ないですけど……」

 

果たしてこれが現実世界で表せば何になるかと言えば、そのレベルだろうと口にした。

武装を整えれば戦える。

しかし、普通はそのような装備をしているハズがない。

一般人が、砲や剣を持って歩いているハズがないのだから。

 

精々が、拳銃程度だろう。

だが普段から持ち歩いているかと言われれば、どうか。

無茶である。

 

要するに。

電脳世界に置き換えて言えば、プログラムくんが現実世界で普通に居る人間。

ネットナビは多少の違いはあれど、警察や軍人。

そしてウイルスは、犬や熊等と言った、何の備えもなければ勝ちようがない猛獣に当たる。

であれば、

 

「あの方、多分、ボンバーマン達か……本命として考えるに、ストラージスケレータ……アメロッパ語で良いですか? スケルガードに自分を守らせる気で、自分が武装するとかなんにも考えてなかったんじゃにゃいですかね?」

『…………』

「パイにゃんを呼び出したのも、安全な所でヌクヌクしながら黒幕ムーブを楽しめそうだから、とか?」

 

統括すれば、

 

『つまり……死にたくないにも拘らず、武装もせずにそこら中に野犬が居てしかも襲い掛かって来るような場所に身を晒した、と?』

「はい。なので正直ただの馬鹿なんじゃにゃいかと思いました」

『……不老不死を願った人間が、電脳世界の…………いつ、殺されるかも分からない環境に耐えられる筈がない、と?』

「死にたくないような人間が、いつでも殺しに来るウイルスの居る電脳世界に耐えられるハズないにゃ」

 

死にたくない人間が来る場所ではない。

それが電脳世界。

そのような結論であった。

 

「あ。にゃんでぶっちゃけ、何か悪感情があったにゃら放置安定だったんでそこんトコよろしく!」

 

思い出したように。

そのようなことを口にするがソレに対しては周囲から無視され、しょんぼりと肩を落とした。

だが、数秒もすれば気を取り直したように姿勢を正す。

仮に来るとするなら、

 

「――――ま、ともかく! それこそ……余程の信念か、事故で戻れなくなった、とかでもないと人間が電脳世界に定住するなんて無理な話でしょうにゃぁ」

 

死んでも遣り遂げるといった信念。

あるいは、どうしようもない事故。

そうでもなければ、無理だろう。

そう、パインが締めた。

 

そういうモノか。

とでも称する表情を浮かべるネットナビの面々を他所に。

ふ、と。

何かに思い到ったかのようにエックスが口を開いた。

 

「ですが……『パルストランスミッション』はそうは言っても人間の精神データです――つまりそのバックアップを用意して、デリートされた場合に対応するようにしてあれば問題ないのでは?」

「そこが人間の厄介な所にゃんですけど、自己同一性というものを大事にする方が多いのにゃ」

「同一性?」

 

首を傾げる姿に。

ふむ、と。

顎を擦るようにしながら、口を半分ほど悩まし気に開いた。

 

「あー……いえ、ソッチよりも自己連続性? 昔の自分と今の自分とが、本当に同じ存在であるか……別であると思うことは即ち今と昔の断絶、要するに実質的な死――と思う方も少なくにゃいそうで」

「……随分と詳しいのだな。まるで人間博士だ」

「にゃっはっは」

 

半ば、揶揄するようなレーザーマンの言を無視。

そのままパインは続ける。

一瞬、愕然とした表情を浮かべていた祐一朗に気付かなかったかのように。

 

「まー人間さんって、自分と何もかも同じ存在……ワタシ達で言う所のコピーがお嫌みたいですから――クローンとかも?」

「そういうものか」

「そーんなもんにゃ~。あ、あと容量的な問題もあるんじゃにゃいですか? 人間の精神データを完全に保存してバックアップを取っておくだなんて、よっぽどの容量でもないと無理じゃにゃいかぁって想像するにゃ。どうなんでしょうねぇ?」

 

高らかに笑うパインを、ジョー達やスタッフマン達が一瞥し、通り過ぎていく。

呑気に見ている暇などないのだ。

実際、忙しい。

見るからに。

特に関わっていないハズのスタッフマン達がデータを分かり易いよう整理し、纏められたソレ等をジョー達が検分している状況。

 

時折、何処からともなく現れるウイルスの所為ではあるのだ。

安定していない環境故。

単独での戦闘力に期待できないカリキュラマン達では、いざとなれば足手纏い。

だからこそ、止むを得ず善意の協力者としてスタッフマン達が動き回っているのだが、

 

「パイン」

「あ、カーネルさんですか、今度は」

「……少し、気になることがあってな」

「気になるコト?」

「アレだが」

 

ゆっくりと。

マントを翻しながら現れたカーネルが、展開した剣先で一角を示した。

一角。

 

ボンバーマン達。

その変種とでも言うべきか。

其処の近くに屯し、何やらメモを取っているスタッフマン達を示した。

そう。

堂々とデータを取っているスタッフマン達を。

 

僅かな間を置いて。

その場の全員の視線がパインに戻る。

じっとりとした。

湿気すらも感じ取れそうな視線に、ただただ誤魔化すような、軽い苦笑を浮かべた。

 

「いやですねぇ~、パイにゃんは別に……ただ、アレ、次回作の敵キャラに使えそうなデザインだと思っただけですにゃ」

「……あのゲームのか?」

「ゲーム?」

「そーですそーです。ボンバーウォーズ! 本元のボンバーマンにも許可を貰って隠しキャラにしたりしてますけど……その次回作を早く! にゃ~んて文句が出てるらしいんですよ。酷くにゃいです?」

「……生憎、オレはゲームを嗜んでいないので分からん」

「いや……そこでコッチを見られても困るが? オレも忙しいのは分かってるだろう、カーネル?」

 

ゲームと聞いて僅かばかり関心を向けているエックスを、咳払い一つで振り払い。

視線に力を込め直したカーネルがその切っ先を向け直した。

あるいは剣のような鋭さすらも感じられる瞳。

ソレを向けられ、パインは困ったように、花でも開いたかのように手を広げて更なる苦笑を溢す。

 

「おっとぉ……何やらワタシを訝しんでいるようですけど失礼じゃにゃいですかぁ? パイにゃんはぁ、公序良俗・人畜無害にして超々々々有益な野生の天才ですよぉ?」

「お前が天才であることを疑ったことは今の所、ない。だが生憎、人畜無害と丸ごと飲み下せるほど信じても居ない」

「にゃんと!」

「………………」

「………………」

「………………」

「…………《エスケープ》」

 

諸手を上げ、驚いたような仕草をしていた時間は暫く。

しかし、やがては観念したのだろう。

屈託のない笑顔を浮かべ、逃げ去った。

特段の反論すらもせず。

堂々と。

 

唖然としているエックス。

だが、それを置いて、溜め息と共にカーネルが剣を納める。

消えた場所に暫く視線を残していたエックスだが、半ば口を開けたまま、視線を送った。

受けた側も、困ったように肩を竦めるだけ。

 

「まあ、なんだ……先程までの会話を聞けば誤解もあるとは思うが…………悪い輩では……うん、ない。そもそも会いに行こうと思えば会いに行けるしな」

「うむ…………うむ。それに悪用しようと思えば出来るだろうモノを、幾らでも抱えておるだろうしな……あの程度、今更よ」

「アレとかか?」

「……まあ、アレとかな」

 

悪用出来るようなモノは抱えているだろう。

確証こそないが、確信はある。

そのような態度で頷く二体の視線。

レーザーマンが指差した先。

 

釣られて視線を向けたエックスが見たのは。

アメロッパ製の半自立型戦闘用ネットナビ、ジョー。

ソレを臆面もなく抱え上げて、困った様子で身を捩って抜け出そうとしているのに全く動じずに頬擦りしているシルヴァと呼ばれたネットナビの姿だった。

「なるほど」と言葉を溢しながら頷く。

 

シルヴァ。

銀。

そして武装が弾丸ともなれば、アレがパインにとってどのような存在であるか等、容易く知れる。

 

銀の弾丸。

本来、存在しない万事解決の特効薬。

その名を冠しているネットナビ。

アメロッパの誇るカーネルが警戒していたのだから、特効薬が何なのかは分かり切っている。

 

否。

《オメガデストロイ》等と言う物騒な名を冠した技。

ソレが文字通り、大抵のネットナビを葬り去れる恐るべき鉄の嵐だということを。

 

ボンバーマン・ゴーレムを。

スケルガードを。

ハチの巣にしている光景を。

この場に揃った四体は、既に見て知っている。

 

さて、果たして。

つい先日にあった世界中のネットワークが密やかに混迷に陥っていた事件。

セキュリティガバガバ騒動。

ソレをパインは、ただただ見送ったのか。

 

そうかも知れない。

しかし。

あの『銀』や『力』の名を関するようなネットナビを、本当に一から作り上げたのか。

何かしらのデータを利用して作り上げたのではないかという余地が残っている。

あくまでも、余地だが。

 

「…………?」

「「「「っ」」」」

 

やがて視線に気付いたのだろう。

顔を向けて来たシルヴァから四体は何事もなかったように視線を逸らす。

そのまま、何事もなかったかのような調子で口を開いた。

 

「ひ、一先ずニホンとしてはお伝えしていた資料の確認をお願いしたいです――あまり、他所にお見せするようなモノではないですから」

「……シグマ」

「うむ。見付かり次第、此方で纏めてお渡ししよう――正直、ソレ等もスタッフマン達に伝える形になりそうですが……それで如何でしょうか?」

『アメロッパとしては余り大きな声では言えませんが……まあ、此処はお互いに……』

『見て見ぬフリ、ですか?』

『其処までは言わんが……それに近いでしょう』

 

完全になかったことにはしない。

しかし、なかった事柄としては扱う。

そのぐらいの塩梅だろうか。

 

『幸い――パインは弱みを残して行ってくれました』

「弱み?」

 

誰が発したか、疑念の言葉。

ソレにサムはモザイクの中、頷いた。

 

『会社を経営しているナビが、仮にも人間を軽視するような発言。世に出れば批判は免れないでしょう』

『…………であればアレは…………本当に、わざと?』

『さて……何処までが本心かは分かり兼ねますが。少なくとも皆、お互いに弱みを握った形にはなりました。この辺りが妥協点でしょうな』

 

弱み。

ニホンは、『パルストランスミッションシステム』の流出。

アメロッパは、最終的に犯人の確保を他に頼らざるを得ず。

パインは、人の権利を軽視したような発言を映像に残した。

 

もっとも、パインは比較的だが立ち位置が強い。

権利軽視の発言を漏らすのであれば『パルストランスミッションシステム』のことが漏れていなければならないし、そもそもアメロッパに捜査協力している中での発言なのだ。

曝そうとすれば、ニホンもアメロッパもお互いを撃ってしまう。

それでも。

それぞれがそれぞれ、大小はあれど脛に傷を残した。

 

誰かが暴露したとしても。

同様に暴露出来る。

そのような傷を。

あるいは、何処かが暴走した際にはソレを止め得る自爆でもある爆発を。

 

ちなみにレーザーマンにはそもそも信じられるだけの信用がない。

だから仮に世間に暴露しても。

「何言ってんだお前」のフェイクニュース扱いで終わるだろう。

 

ともあれ、実際問題。

アメロッパはドクター・ダムーシュニクの逮捕に成功した。

祐一朗は言葉にこそしていないが。

恐らく、その彼が使用した『パルストランスミッションシステム』の確保もまた。

既に出来上がってしまっているモノにまで文句を言えないことは理解している。

 

しかしアメロッパとしても『パルストランスミッションシステム』。

その厄介さを知ってしまった訳でもあった。

精神を電脳世界に送り込む。

ソレを目論んだ当人が、電脳世界に有り触れたウイルスと言う名をした恐怖に屈したのだ。

 

権力者のよくある望み。

不老不死。

あるいは叶えることも出来ようが。

ソレは即ち、無菌室のように整備された空間を永遠に出ることも叶わぬことでもある。

どれほどが果たして、そのような末路を望むだろうか。

 

真っ当な研究でもなければ使い辛いことこの上ないだろう。

あるいは。

より深みに堕ちるような研究でもなければ。

 

だがソレを、アメロッパが手に入れたことを知っている祐一朗が許すか。

分かり切った答えだ。

知られていなければ、あるいは可能性も有ったかも知れない。

 

『それでは』

 

ニホンとしては。

原本とでも言うべきデータの回収の目処は立った。

その先は些か不透明だが、アメロッパが追うだろうことも。

 

『ええ、また何かあれば』

 

アメロッパとしては。

『パルストランスミッションシステム』のデータと実物を手に入れられる。

利用出来るかどうかは別だが。

 

「……今回は、ありがとうございました」

 

そして。

犯人であるダムーシュニクの確保も成った。

万事解決ではある。

少なくとも、表向きは。

 

「ああ。此方も君と……ドクター・ユウイチロウと働けたことは非常に光栄だった」

 

この場に居る全員、差異はあれども感じ取っていた。

ドクター・ダムーシュニク。

彼が起こした犯罪は、蓋をされるように密やかに葬られることになるだろうこと。

 

だがこれはあくまでも、火花の一つに過ぎない。

あまりにも早過ぎた。

「天才だった」と称されるような人物だからこそ出来た事柄であろう、と。

 

只人であれば、まだやれるような代物ではない。

仮にも、ボンバーマンのデータを充分に活用出来るレベルに整えただけはあった。

相手が悪かった。

 

そう称さざるを得ないだろう。

個人の技量に端を発した事態ではあった。

だがその認識こそあれども。

この一事は、これから先の未来に灯り続けるだろう、

 

「では」

「また」

 

火の一つでしかないことを。

理解してしまっていた。

 







『…………シグマ』
「ハッ」
『やはり、必要だな――世界を守るための機構が』
「……同意します」


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