任務完了。
無事成功。
疲れました。
あの後。
滞りなく本来の出入り口。
科学省の正面を堂々と駆け抜け、ワタシ達は脱出に成功した。
追っ手は幸いなかった。
だがこれは当然か。
科学省の奥の方で何かされている。
光正博士とワタシの会話でソレが露骨に匂わされては、だ。
高々四体のネットナビを追い掛けるためだけに、最高戦力とでも言うべきパンクと名人を外に差し向ける訳には行くまい。
ある種、囮なのに本隊を囮にするような仕草。
ワイリー様もあるいはお怒りになるかとも思ったのだが。
ワタシ達が稼いだ時間は既に予定に対して十分だった。
パンクを警護に奥側へと移動した時には、既に遅し。
大抵のデータはコピーを完了。
一部は奪取された状態。
その上で全員、脱出済み。
まさに科学省側の完全敗北とでも言うべき有様で、ケリが付いた。
「んデ、ワイリー様」
『なんじゃ』
「目的のモノは?」
『……残念ながら有った』
「そウか」
此度の大戦果。
一番は当然、本隊である。
何せ見事、ワイリー様の望みのモノを手に入れることが出来たのだ。
手に入れた、と言うよりも、本当に有ったことを確認出来た。
と言うのが正しいか。
即ち、古代文明。
古代アトランピア文明。
其処から手に入れたと言うデータ。
証拠だ。
光正がワタシに懺悔するように語った事柄が真実であったことを裏付ける。
裏付け得る証明。
恐らくは心か頭の片隅では疑いを拭い切れなかったのだろう。
その一片を取り払う代物を、見付けられた。
科学省襲撃。
大層な作戦だ。
だが、科学省の重要なデータを奪い尽くすだとか怨念を晴らすためだとかではなく、真実はただそのようなモノだ。
電脳獣模造実験の内容よりも。
プロト再現構築の詳細よりも。
ナビの精神影響の結末よりも。
キャッシュ試験の顛末よりも。
種々雑多数にして数多よりも。
ただ、ワイリー様の内にあった一片の懐疑を取り払う。
そのためだけにワタシ達を動かし、そして確認された。
それだけの代物だった。
「…………デ、そいつハ?」
『ふん! 光のヤツが死蔵させていたナビじゃ。ワシが有効活用してやろうと言うだけの話よ。文句あるか?』
「ないデす、ハイ」
ワタシがナビについて詳しいのを良いことに。
全く無遠慮に弄繰り回されているそのナビを指差せば。
そのような答えが返ってきた。
まあ、知っていた。
古代文明。
ピラミッドの文明を色濃く写した姿かたち。
腕を交差させたファラオを思わせる姿。
そのままファラオマンである。
今は完全にシャットダウン状態。
目を閉じている。
そんな、無差別に攻撃してしまうという異常部分を確かめるためなのだろう。
熱心に弄繰り回されている。
大半はコピー。
あくまでも確認のためにされていた事柄であったのだが。
数少ない、奪取されたデータの一つである。
その胸の内は想像するしかないが。
あるいは、ホコリが被ることを不憫に思われたのかも知れない。
いやはや、しかし。
光正が創り。
ワイリー様が調整。
まさしく共作とでも言うべきネットナビ。
興味が湧かないと言えばウソになるが。
今は其方に関心を向けるべきではない。
それよりも、ワイリー様だ。
ワタシの言葉に耳を傾けて下さってはいる。
居るが。
果たしてその心中、如何ほどか。
光正が口にしていた事柄。
ソレがおおよそ真実であると確定して。
『ココロ・プログラム』を有していないが故に感じ取れないワタシでは察することは出来ない。
まあ、一緒に囮役をしていた面子が早々に出て行った辺り、相当荒れ狂っておられるのは想像が付く。
このような事実を以って。
果たして、ワイリー様の完全勝利と言えるかどうか。
まあ、言えないだろう。
「……………………」
正直言えば。
早い所、逃げるのが吉だとは思う。
ワタシの安全を考えるのならば。
だが真実を知る身として、ワイリー様をお一人にするのは。
些か、忍ばれる。
そんなことで。
囮役に関するお褒めの言葉。
ソレを揃って受け取ってから。
ワタシはずっと、時折、言葉を掛けるだけで突っ立っている。
「…………」
『…………』
無言のまま。
さて。
どれだけの時間が過ぎたか。
見えないように頭の中で書類だとかの確認を片付けていれば。
不意に、ファラオマンを弄繰り回す手が止まった。
確認し掛けの書類を一先ずは放っておいて。
次なるワイリー様の挙動に注視する。
『…………』
ファラオマンの調整は一旦取り止められたのか片付けられ。
軽く息を吐いて。
やがてその目がワタシを射抜いた。
『で』
「はイ?」
『何か用か?』
「前に時間取れっテ言っタのワイリー様だロ」
『…………今かぁ? お前それ、今なのか?』
露骨に面倒臭そうな顔をされたが。
ワタシはあえて頷いた。
少し前。
久方振りに顔を合わせてすぐの折。
ワイリー様自身が時間を作れと仰ったのだ。
それを利用させて頂く。
困ったように顔を顰め、しばし。
頭を掻いたり。
顎を擦ったり。
何を話そうか思い悩んでいるご様子。
しかしやがて思い付かれたのだろう。
椅子からずり落ちていたその身を正すと、口を開かれた。
『………………しばらく前に渡したデータがあったじゃろ』
「……あア? ああ……忍者トかの?」
『そう、それ。どうじゃ?』
「まアまあ……何トか?」
『なんじゃその言い草は』
ぎょろりと睨まれるが。
ワタシとしては肩を竦めるしかない。
頂いたデータは幾つもある。
忍。
風。
水。
剣。
あとなんか嫌な、言い表すならねっちょりした感じのする、データだとか。
他にも幾らかご提供頂きはしたが。
まあ、使い道もといナビに組み込んで動かせそうだったのはその辺り。
後々で頂いたデータだとかも、まあ案の定、性格に癖が出始めていた。
具体的には。
殺戮衝動漏洩ってたり。
高い所で中二ってたり。
『ふむ…………』
と。
ワタシがそのように伝えれば。
何やら思う所でも有らせられたか。
微かに思考を巡らせるように瞑目された。
だが待ったのは数秒ほど。
『具体的にはどう言った風に見える?』
「そウだな……」
当然、ご報告の用意はあった。
頂き物のデータ。
ソレを利用したのだから当然である。
とは言え、そう大した報告が出来るモノでもない。
ワイリー様より頂いたデータを組み込んだネットナビ。
それ等は明らかに通常のナビよりも性能を向上した。
データの一部利用だけであっても同様であった。
しかし、明確な欠点とでも言うべき部分もまた、見られた。
データを媒体とした、精神汚染に近しい現象。
忍は、自己顕示欲の増大。
風は、自己優位性の顕現。
水は、行動意欲等の低迷。
剣は、武断基準値の低下。
等々。
まあ要するに。
性格自体は大きく変わったという訳ではないが、欲求の増加か低下あるいは理性の欠如。
ソレに近しい行動が明確に増えた。
具体的にはゼロだったのが日課になるレベルにまで、だ。
『…………少し、早まったか……?』
「何をダ?」
『……弟子のアヤツに、褒美としてデータの一部をくれてやった。ナビを欲しがっていたが……其処まで世話するのはどうかと思うてな』
なるほど。
あのデータ。
ワタシが頂いたデータの内の何れかまでは分からないが。
「……まア少なクとも、データを利用すル前提のナビでもナけりゃ組み込まない方が良イと思うワ」
逆説。
恐らくはソレ用のナビとして組み上げているだろう。
なので問題なし。
『それは…………うむ。お前に渡したのも些か軽率だったかも知れん……すまんな』
「いヤ? アレはアレでユニークで良いと思ウ」
『えぇ…………ま、まあ良いと言うのであれば構わんが……』
そのような考えを汲み取ってしまわれたのか、悩まし気な言葉を漏らされたが。
別に、ワタシの方は方で、本来から捻じ曲げて使い易いようにしていただけである。
むしろ単純。
本来の性格に成った。
そう思っている。
ともあれ。
気を取り直すように、ワイリー様が咳払いをされた。
次の言葉を待てば。
『さて、ボンバーマン』
と。
些か真剣みを帯びた目。
少々気を引き締める。
『ウラの王を決める戦いについてじゃ』
「うス」
『ワシもかつて映像で見たセレナードじゃが……負けるつもりではあるまいな?』
「えっ? まさカ。ワタシがわざワざ負ケるために戦ウとでモ?」
『ふん! ……言い方を変えよう。どの程度、勝てる見込みじゃ?』
「マあ……一割は切ってるダろうな」
部分的に本当。
実際の所は一分、つまり一パーセントも切っていると思われる。
純粋な全力を尽くす戦いともなれば。
だが、セレナードだ。
勝てる見込みはある。
何せ掲げているのが慈悲の心。
相手を敬い、慈しむ。
そのようなココロだ。
敬う。
これは困る。
だが、慈しむ。
これが良い。
敬うと言うのは要するに、相手をよく見ているということ。
だが、慈しむ。
これは明確に、目下に向ける代物。
目下の、庇護すべき弱者に対して向ける視線。
油断。
慢心。
蟻の一穴。
蜂の一刺し。
それで以って倒せれば良い。
勝てばいい。
ソレが全てだ。
『……明確に、勝算があると?』
「アるある」
手をひらひらさせながら答えれば。
当然とでも言うように鼻を鳴らされた。
でも正直、そう簡単な話でもない。
情けない話だが。
セレナードが油断している間にどれだけのダメージを積み重ね。
そして最終。
決定打でデリートし切れれば。
と言う相手次第が大きい作戦であるのだ。
「マ、正直? ワイリー様かラ頂いたデータがなけリゃ、チょっと厳しかっタと思ウが」
『ほう……?』
「お陰様で手段が完成シた。幾らか参加スるって話ダし、ソッチ経由で見テくれヨ。成果についチゃ」
『見てのお楽しみと言うことか……』
「……まァ、はい」
濁すように、言う。
瞬間。
向けられる目に疑念が灯ったのを感じた。
勝算がある。
一割だが。
そう、ワタシは言った。
であれば、足りなかった場合は。
そのような問い掛けの感じられる、目を。
誤魔化すのは。
無理だろう。
滅茶苦茶に突き回されるのは予想せずとも分かる。
此処ですべき対応は簡単。
予想されるパターンを話し、理解を得ることだろう。
「――――さテ、奥の手切っタ後のシナリオは全部で四つダな」
『言ってみろ』
口にすれば反応は早い。
促されるがまま。
一応、予め用意していた回答を口にする。
「一つ目。ソのままデリート。コレが一番楽だが可能性も一番低イ」
ワタシの奥の手で普通にデリートされるパターン。
コレが本当に楽。
何せ、その後にやることはそう大したことじゃあない。
少なくともセレナードを相手するよりかは。
しかもメリットも大きい。
具体的には、ワイリー様がウラインターネットの王となる。
ウラの王。
統治が大変ではあるが、ウラなのだ。
後ろ暗い所のある輩が集まるような世界。
その統治が出来る。
ルールの管理を出来る。
実利は計り知れない所だろう。
情報一つとっても、果たしてどれだけの価値が付く。
今はまだそれほどではないものであっても、将来的に、大きな価値を持ち得る。
ソレをワタシは、よく知っている。
もし仮に面倒臭くなられても別に、プラネットマンだとかの有能は居る。
それ程、管理に困ることはあるまい。
「二つ目。大ダメージでもう一発必要なパターン。コレが一番被害が出るが、可能性も低いと思ウ」
もう一発食らわせれば勝てる。
なら、もう一発を用意してやれば良い。
其処までは単純だ。
だが、其処に到るまで。
「具体的にゃア、WNOだトかの手がないと厳しイ……セレナードも死に物狂いになるダろうし、手を借りざルを得なイな」
『道理じゃな』
「マあ最悪、ワタシの子達も動員すりャあ行けるダろ」
もう一発で済む程度の存在であったとしたら、だが。
少なくとも、その程度の存在であれば拍子抜けである。
警戒や媚びを売って損したと言える程度。
そしてメリットは先程と同様。
被害は大きいだろうが、相応にメリットもあるのだから。
『…………で、三つ目は?』
「……三つ目と四つ目は同じダな」
『ほう……』
「大ダメージだが一発じャ足りないパターンと、全然足リないパターン」
これもまあ、楽に済む。
色々とアレだが、
「大ダメージで、命の危機に到っテないなら……セレナードの性格ダ。土下座すリゃあ許してくれル」
『…………お前な……』
「いヤ、本当本当。わざワざもう一発手痛い一撃喰らうリスクと、ワタシのを戯れで許スの、ドッチが楽かっテ言やあ許す方ダろ」
凄く冷たい眼、と言うか考えなしを見るような視線を向けられてはいる。
居るがコレ、勝算はモチロンある。
一つ。
ワタシがセレナードに対してそれなりの利益を既に提供していること。
その利益の提供がなくなる可能性を考慮すれば、断ずる可能性は低いと思われる。
そしてもう一つの理由。
これについてはワタシ以外、知るハズのないことだが。
ダークマン。
その存在が根拠にある。
セレナードに挑んだネットナビ。
しかし敗北し、再挑戦の権利を得るために門番をさせられる存在。
つまりは赦されているのだ。
王への襲撃を。
敗北者に対して苛烈な訳ではない。
むしろ寛容ですらある。
ならワタシも、笑って許してくれるだろう。
希望的な観測になるけれども。
と言うか許されないと困る。
一番有り得ると思っているのが、このパターンなので。
もうちょっと媚び、売っておこうか。
いや。
割と飲食関連は提供しているのだから、大丈夫だろう。
その様に頷いていれば。
しばらく沈黙されていたワイリー様が鼻を鳴らされた。
見やればその顔は険しい。
分からないでも流石にないが。
『…………もうちょっとこう……何とかならんのか? リスク管理がなっとらん』
「セレナードの人……ナビ柄? 分かっテるかラって感じダし」
『……今からでも不参加には出来んのか? ワシは別に、お前達を危険に晒してまで金が欲しいとは思っては居らんぞ?』
「流石にちょっトなァ……イヤ、パインは会社社長ダから軽々しく参加出来ネえし、ワタシまで参加しネえのはチょっと……」
『適当に済ませられんのか?』
「八百長もどウかと……思いまセん?」
『………………ン…………』
ウラの治安改善を早めたかったから。
そう言うのもあっての主催者である。
にも拘らず、実質的な主催者の双方が不参加とか。
ちょっと、ない。
等と言いはしたモノの。
腕を組んで、じっとワタシを見詰めて来るばかり。
思いの外、難色が強い。
失敗しても問題ない考えではあるのだが。
やはりワイリー様からすると思う所が出て来られたか。
であれば、仕方ない。
参加するつもりのワタシと、参加させたくないワイリー様とで堂々巡りとなる。
本来は出す予定のなかった内容。
ソレで釣らせて頂いて、有耶無耶に済ませる方向にで行こう。
お気付きになられたら滅茶苦茶文句を言われそうな気もするけれど。
「……約束もアりまスし…………」
『…………約束?』
「ほラ。ワイリー様のゴ友人との…………ア、伝えテ……ませんデしたっケ?」
そのように、言う。
まあ。
多分、無理なんだろうけど。
しかし反応は劇的であった。
一瞬だけ。
訝し気に目を細めたが、十秒ほど。
考え込むように瞼を閉じ、開かれれば、
『――――――とりあえず』
度々耳にする、平静を装ったような声。
顎を擦りながら背けていた顔を向ける。
見やれば、
「へイ」
『端折らず話せ。一から、全部』
予定通り。
鋭い光を燈した目を此方に向ける。
いや嘘、ちょっと予想以上。
予想外に、額に筋を浮かべる、ワイリー様が居られた。
「内容としては概ねこのようなものだ。心配を掛けたな」
「いえ……無事だったなら何よりだよ」
そう、一先ずは口にする。
父。
光正。
その口から説明された内容を吟味しながら。
科学省襲撃。
表向きは、訓練と言うことになっている。
ネットナビを用いた襲撃を受けた場合に備えた訓練。
と。
あくまでも、表向きには。
実態。
裏向きには、異なる。
原因は、ボンバーマンの流出データを利用した研究。
危険物として、オフィシャルの前身組織すら動いていたデータ。
ソレを利用した者が科学省に居た。
ボンバーマン達もまた真偽が不確かと思っていたのか、潜入。
その形を取っていたが科学省の警邏を潜り切れず発見。
光正による処分の確約。
何よりも、オフィシャル所属のパンク。
彼等による痛打によって撃退された。
そう言うことになっている。
ボンバーマンのデータの研究は違法ではない。
グレーゾーンですらない。
法律によって明確に禁止された事柄ではなかったのだから。
ソレを理由に研究していた本人は抗議したらしいが。
しかし、アンタッチャブルであることは、多少なりワイリー博士を知る者であれば自明。
即ち、知らぬハズのない事柄。
故にその研究者は合法の範囲内として、部署移動。
科学省の受付として、少なくとも勤務時間中はパソコンも触れないことになったらしい。
職員の目にも触れる、要するに、見せしめとして。
ソレが全貌。
科学省に戻ってくる僅か数日にも満たぬ間に決まった内容だった。
そう。
一見すれば、おかしくはない。
「………………父さん」
「何だろうか」
つい先程まで会議に出ていた、父。
科学省の上層部。
のみではない。
総理大臣。
そう言ったレベルの人間すら急遽、時間を無理矢理に作って参加した、会議。
その内容が、ボンバーマン達の侵入を許したこと。
その一点のみか。
かも知れない。
科学省は実際、技術の最先端を行っている。
その自負がある。
あるけれども。
しかし、違和感もある。
「本当にそれだけですか?」
疲れが見える。
急遽、科学省のセキュリティの更新も推し進められている。
その最前線に居るのだから。
噂もある。
ウラインターネットと呼ばれる領域。
其処で、王を決める戦いが開かれるという話。
当初は幾らか参加すると言った話も耳にしていたが、この始末。
万が一に備え、パンクは科学省の防衛のため留め置かれる話だ。
随分とごねたことは既に耳にしている。
ただ、父さんから何某かの技術提供を条件に、参加を見送ったと。
そりゃあ、まあ。
ワイリー博士のネットナビ、それも四体の撃退に成功したことになっているのだ。
セキュリティ状況が一先ずの完了を見るまで、離す訳には行かないと思う。
技術提供する約束までしたのだから、随分と手間取ったんだろう。
疲れも見える。
「……どうしたんだ?」
しかし、違和。
何かが違う。
何かが異なっている。
疲れたような顔。
其処に浮かんでいる、笑み。
呆れの混じったように見えるソレだが。
違う。
強いて言えばどこか、
「何を隠してるの?」
愉しそうな。
「祐一朗」
「何か、妙だ」
江口くんの目標は知っている。
パンク。
ソレを超えるネットナビを創り出すこと。
既にある種の完成形に見えるネットナビを更に超えんとするのは凄いと思う。
科学省と言う二ホンの技術中枢。
そのセキュリティが一部、破られた。
だから総理大臣まで顔を出して会議をした。
秘密裏に。
ボンバーマン達四体が科学省に潜入していた。
幸い、発見した。
甚大な被害は出たものの、撃退には成功した。
なぜ。
ボンバーマンのデータを研究していた職員が居た。
不確かだったから、調査に来ていた。
かつてあらゆる組織を粉砕したと聞く、四体のチームで。
なぜ。
違和感だ。
違和感がある。
四体のチームで動いていた。
これは、いい。
だけれども、なぜ。
なぜ、確証がないハズなのに、その四体で動いていたのか。
確証を得てから攻め込めば良かったはずだ。
四体で動いていなければあるいは、発見すら出来なかった可能性もある。
確証を得てから動けば、大義は立つ。
きっと憎いだろう、科学省。
破壊し尽くし、世間からの批判は免れ得なかったとしても。
アメロッパのオフィシャルすら半ば認めている危険物。
ソレを取り扱っていたのだから、あらゆる国家の上層部は納得出来ずとも得心は行く。
残された痕跡を一瞥しただけでも分かる。
加減されていた。
わざわざ一か所に留まって。
破壊を撒き散らさないように。
配慮されていた。
「………………何か、別の目的があったんじゃ」
「光祐一朗」
「ッ」
フルネーム。
父さんに呼ばれ、沈んでいた思考から浮かぶ。
初めて。
初めて、そう呼ばれた。
まるで何か、警告するように。
「此度の事件――そう、事件と言おうか。その原因は、馬鹿な研究者が馬鹿なことをした。その結果に過ぎない」
「…………」
「それ以上をお前がどう考えようと……いや、どう知ろうとしようとも、出てくることはない」
「それは……」
何か、ある。
あるが、言わない。
知れ得ることが出来ない。
そう、宣言されている。
「そう、か」
「そうだ祐一朗。一先ず、セキュリティの見直しが完了するまでは残ることになると思う。才葉も一時、お預けになる」
「それもちょっと残念だね」
「まあ、ウラのお祭りが終わるまでの辛抱だろう。半月も掛からないさ」
であれば、仕方ない
幸い、半月は科学省から離れずに済む。
そう考えよう。
自分なりに調べるのを辞めるつもりはない。
電脳世界をXに引き続き調べて貰うことになるだろう。
僕自身でも、確認はする。
興味なさそうだったのに興味を出して、だけど技術提供で参加を見送ったらしい江口くんだとかにも。
「ただ少しの間、忙しくなる」
「父さん」
「ん?」
「一応言っておくけど。僕は別に、諦めた訳じゃないよ」
まあ。
薄いだろうけど。
望みは。
多分、何かしらの口止めも込みだと考えるなら。
それでもそう、口にする。
「そうか。だったら、暴いてみるんだね」
すると頷いて。
父さんは。
どこか。
■しそうに、目を細めていた。