ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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014:計画

 

レーザーマン育成計画。

それについては決まった。

あえてネットワークに繋がるセキュリティの低いエリアを製作。

そこにウイルスが来るように仕向け、レーザーマンのウイルスバスティングの特訓を行うようにすることとなった。

レーザーマンの存在についてバレないようにするのは、訓練の際だけネットワークから切り離せば行ける。

 

多分。

と言うことで実際に行われている。

らしい。

 

それが始まったのは彼此、数ヶ月ほど前になるか。

もう、閉じ込められて何ヶ月も経っている。

幸いやることがあったお陰で気にしていなかったが、人間だったら流石に気でも違えていたのではないかとも思うのだが。

いや、ワタシは人間でないから問題ないのだが。

 

とりあえず、レーザーマンについての細かいことはワイリー様が上手く偽装されていることだろう。

実際に見てないので知らない。

それよりも本来の本題の方。

ワタシの改造についてだ。

 

「本気カよ?」

『本気じゃ』

 

返答に思わず頭の後ろを掻く。

これについての目途は付いていた。

ボムの増強についてはワイリー様が元から用意して下さっている《ハイパーボム》のデータにエナジーをチャージすることで、二通りのボムを追加で出せるようにする方向で設計し直して改造を進めている。

この方が通常仕様の《ハイパーボム》と合わせて追加で二通り用意するより、つまりは三種類のボムデータを用意するよりも、手間は掛かるが容量を削減出来るからとのことだ。

 

要するに、チャージするエネルギーの分岐式。

出力する時間をそれぞれのパターンでシミュレートした結果はチャージ分の時間が一秒に満たない程度は掛かるが、投げ飛ばせるタイプではなく蹴り飛ばすタイプなのもあってウイルスに直接当てることでデリートするまでの最終的な差はコンマ数秒以下。

数秒の差が出るなら流石に嫌だったが、その程度なら技術技量で詰められる範囲内。

将来性も考えれば此方の方が非常に素晴らしいとすら思う。

低容量は神だと聞く。

 

「……にしテも急ダな、明日かラって」

『フンッ! 奴が急に……っと』

「ヤツ……?」

 

《ミニボム》はもっと楽だ。

と言うかこれに関しては既に終わっている。

《ヒートショット》を代表とする火属性チップのデータから火属性データを抽出し、既に用意されている《ミニボム》のデータに定着させるだけだったからだ。

これにより、何かしらのチップデータがなくとも強制的にボムに着火が出来るようになった。

 

『いや、別に気にする必要は……』

『フフフ……光正がようやくアメロッパに来ることになってな』

『リーガル!』

 

いや、嘘を吐いた。

まず火属性データの抽出からして、慣れている技術者でなければ早々出来ることではないようで、あっさりとやって見せたリーガルの技量はワイリー様付きの助手の方々から大変驚かれていた。

序でに言えば、別のボム用にと水属性他幾つかのデータも試しにお願いしてみたらしてくれたし割と一般的に出来ることだと思っていたんだが。

 

なるほど。

一般的なナビに属性持ちがほぼ居ないのは、弱点が生じると言うのもあるが根本的に属性の抽出が難しいからだったのか。

しかもその抽出した二種類の属性データは、ワタシ自身に使うのではなくパーツにだけ使う贅沢っぷり。

優秀な技術者もといリーガルの存在はつくづく有難い。

 

「あア、そウ言う…………」

『な、なんじゃその目は?! ワシはあくまで地方のネットワーク設備を』

 

奥の手。

それに関してはワタシの想定通りになる見込みだ。

と言うか質問した所、容量の削減以外は特にやれることもないと言われた。

「使う目的と使い方がハッキリしている場合、余計なことをする必要はない」と言うのがリーガルの意見。

威力に関しては《ブラックボム》を参考にしているため心配ない。

重要なのは起爆条件の削減や爆発範囲の変更等であるから、どちらかと言えば削減出来る方面なのも有り難い。

 

『――光正がアメロッパに来る。そのため地方の技術者もその技術を学ぶため最低限の人員を除いて此処、首都に集結することになった』

「なるホどな、そノ間にネットワーク設備を整えルって訳カ」

『フン、そう言う訳じゃ。必要のための致し方ない出張と言うことよ』

『機械は既に向こうに用意されている。トラブルがなければ数日で終わるから戻って来れるハズだがな』

 

さておき。

数ヵ月も引き籠って研究を進めていたお陰で改造計画は随分と進んだ。

残す所は僅か。

チャージしたエナジーを元に二通りのボムに強化するためのルート、そこにいわば弁かスイッチを低容量かつエナジーに淀みが起こらないようにする方法を考えて貰っている。

 

この辺りはやはり理論のみでは巧く行かないようで、リーガルの良い実践になっているとのことだ。

いや、正直ワタシにはエナジーの淀み云々の違いがちっとも分からなかった。

具体的なパーセンテージだとか容量の差異だとかの資料まで用意して貰ったのに申し訳ないのだが。

ともあれ、

 

『ワシとの旅行がそんなに嫌か!?』

『嫌とは言ってない――ただ光正から技術を学ぶ機会をふいにされるんだ。精々期待してるぜ、親父』

 

ワタシは何を見せられているんだろうか。

思わず微妙な顔をしてしまっていると思うのだが、それに気付く様子もない。

まあ顔が覆われてるような感じに隠れてるからな。

仲良く話をしながらも、何やらデスクから物を引っ張り出したりコードを追加で繋いだりと忙しない。

そんな様子をわざわざ見せているのは何故なのか。

疑問に思っている内にもコードの数本が、ワタシの居る電脳に繋げられた。

 

「………………」

 

お二人に視線をやっても、此方を見るでもなく変わらず何やら触ったり動かしたりしているだけ。

肩を竦め、一先ずは椅子に背を預ける。

作業が片付くまで期待出来そうにない。

仕方ない。

徐に、少し前から手を付けられるようになった趣味の研究に手を伸ばす。

 

これについては人間の脳と電気信号に関するデータをストーンマンから手に入れているお陰で割と捗っている。

実際ワイリー様から許可を得て行った最初の自由行動の理由の一部は、間違いなくこれらのデータを入手することも目的にはあった。

 

一番の目的は医療データ関連。

キャスケット様のために。

二番は身体データ関連。

ワタシのもう一つの身体のため。

つまり、三番の目的と言うことになるか。

 

『ボンバーマン、お前のプライベートエリアにスイッチはあるか? カメラのマークの付いてるヤツじゃ』

「ア? えーっト…………あア、コレだナ」

『押してみよ』

「オう」

 

探れば何時の間にかエリアの床に現れていた幾つものボタン。

押し間違えのないようになのかやたらとデカい。

扉マークや鍵マーク、あとは研究室全体が見えるようにされているモニター等々。

半透明な、恐らくは《バリア》に覆われた爆弾マーク付きまで様々なボタンの中、一番端のカメラマーク付きボタンを片足で踏み込むように押す。

そうするとそのボタンは文字通り消え去り、その先に繋がっていた回線も完全に断絶された様子。

困惑するワタシを他所に、その反応にニヤリと笑みを浮かべられた。

 

『よしよし――これでどうじゃ?』

「オ、元に戻っタぜ」

『ならば良い。モニターは……リーガル!』

『今からやる』

 

懐からカードらしき物を取り出したリーガルが、そのまま研究室の外へと出て行く。

扉が閉まる。

訝しんで暫く。

大モニターから軽快な音が鳴った。

見やればリーガルと書かれた文字が端に浮かび、そうして開いた扉から入って来た。

なるほど。

電子鍵。

つくづくワイリー様の技術は遥か未来を行っている。

 

『明日からワシ等が居なくなるからな、この研究室の管理をお前に一任する!』

「コのボタンとモニターはそのタめのって訳カ」

『この部屋の開閉は無論、電子機器の操作もある程度は出来る――とは言え此処の電子機器のセキュリティを突破出来る者に心当たりは一人しか居らん』

「ホうホう」

『そいつがこの部屋に入ってくるようなことがあればカメラボタンを押せ。接続も、その痕跡がなければ幾らヤツとて察知は出来まい』

 

警戒が過ぎる。

と思わないでもないが、その気持ちは分かる。

現状、ニホン自体の信用は低い。

光正を利用してワイリー様の研究データを入手しようと考えてもおかしくない、と思わせる程度には。

 

まあ、しないだろう。

もしそれをすればニホンの技術力はともかく、信用が本当の意味で底辺に落ちる上に大国アメロッパを敵に回すことになる。

仮にやったら、馬鹿の一言。

光正の責任にしたとしても、それはそれでニホンから優秀な科学者が軒並み居なくなるだろうからむしろやって見せて欲しい。

で、だ。

 

「コの爆弾マークは?」

 

他の説明も受けていた中で、あえて聞かなかった最後の一つ。

マークからして不吉過ぎる、コレ。

ワタシのナビマークと同じとか。

脆弱とは言え《バリア》に覆われている以上、事故で押さないよう配慮がなされているのも含めて。

何ですかね。

 

『この研究室内のデータ全てを消去する。万が一、何者かが研究データを奪おうとした場合はそのボタンを押すんじゃ』

「本気カ?」

『カメラを押していない場合でも、自動で撮影を開始する。接続が切れておるからそちらが消える心配もない』

「…………ストーンマンは?」

『分かっているじゃろう――接続を断ってある。ワシが繋げなければ存在自体ないも同然じゃ』

「本気みてえダな」

 

警戒が過ぎる。

まさかワタシごと消去してでもデータを与えたくないとは。

いや、それだけの価値があるのは分かる。

軍事機密も含まれている訳だから、もし奪われるようなことがあればアメロッパ軍よりワイリー様のお命が狙われるようなことも有り得る。

 

で、あるならば。

そこも覚悟に入れておくべきか。

出れない以上、やられないだろうけども奪おうとされる想定も必要か。

と言うかワタシが裏切る可能性を微塵も考えておられないのも凄い。

いや、裏切らないけれども。

 

『ククク……安心しろ、ボンバーマン。親父がお前を消すような真似はしない……研究室のデータの消去と同時に、お前に対してはエスケーププログラムが作動する』

『…………一応言っておく。ワシはお前ほどこの国を信用しておらん』

「……アメロッパをカ?」

 

意外。

そんな反応を思わずしてしまうと、鼻で軽く笑われた。

 

『この国でワシが信用しておるのは、あくまでキャスケットのみ。それ以外はニホンにお前を売り渡すことを考えておる者が大半じゃ! ……故に、ワシ等が居なくなったのを機にお前が行方不明になってもおかしくはない』

 

なるほど。

別に光正に限らず警戒している、と。

アメロッパ軍ならば多少強引な手段を取ろうとすることも有り得る。

それこそ、研究室内のメモリを丸ごと交換する、等と言う手を使うのも考えられなくはない。

 

しかも都合良く光正が来る以上、場合によってはそちらに責任を押し付けられもする訳だ。

随分とボタンだとか設置の手際が良かったのは、予め其方の警戒を進めていた所為か。

そうなるとカメラの意味も変わって来る。

光正が出て行った後にワタシが行方不明になれば怪しまれるが、映像データが残っていればそれは真実を証明する材料にも成るだろう。

 

『ボンバーマン』

「――おウ」

『改めて言う。この部屋の管理、任せたぞ?』

「了解!」

 

かくして。

ワイリー様とリーガルは出張に行った。

 

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