ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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テュワワワワワワワ



024:変身

 

音声データを聞く。

個人的に、違和感はない。

外見は何度も確認した。

 

故にこれは、あくまでも最終確認でしかない。

間もなく、ワタシはもう一つの姿を手に入れる。

それがどうにも楽しみで仕方なかった。

 

『ボンバーマン』

「――コの通り、万全ダ」

『分かっておる。では、準備を始める』

 

音声データを聞いている傍らに聞こえて来る声。

それに対して答えると、キーボードを叩く音もした。

僅かな間をおいて目の前に現れる、ナビの素体。

これにワタシの作った外見データ等を合わせ、今のワタシからそちらに中身のデータを移し替えれば完了となる。

訳だが、

 

「…………ワイリー様」

『なんじゃ』

「本気か、コレ」

 

示す指が震える。

軽く見ただけでも分かる。

今のワタシの素体とは文字通り、核が違う。

根本的な設計から作り直されていると思しきコレは、間違いなく特級品だ。

 

いや。

あえて言うが、今のワタシ、ボンバーマンの素体も十分に凄い。

今後作られるだろう量産型ナビでは、向こう数十年掛かっても追い付けないと思えるだけの一級品ではある。

それを踏まえた上で、だ。

核から違う。

 

『なんじゃ、不満か?』

「不満とジゃなく、正気かヨ? カーネルとか次世代……イや、新世代ネットナビ用じゃネえのか、コれ?」

『……ああ。安心せい、カーネルほど手を掛けてはないわい』

「ナら…………大丈夫カ?」

 

カーネル以下なら大丈夫か。

しかし、カーネルが目の前のコレ以上の素体を使ってるなら、圧倒的なあの性能に納得も出来る。

一切の暗号化も何も施されていない状態だから遠慮なく、間もなくワタシのモノになるニューボディを見てしまう。

 

いっそ怖気がするほど、スペックが違う。

現実世界の子供と大人でもこうも露骨に差が出ないのでは。

まあともかく、そもそもワタシとしては処理能力も数段以上は上がりそうだから損はないし、そもそもワイリー様が下さる物を無下にするつもりは欠片もない。

 

というか、容量含め全体的に向上するお陰で色々とデータを詰め込めそうなのは有難い。

いやしかしこれ。

今のワタシでは到底届かないと思うようなレベルだ。

 

「……あア、インストールついデにコれも組み込んデくれ」

『ん? どれ……ああ、例のボムデータか。水属性の』

「一応確認してテくれ」

 

その一つとして、リーガルに抽出をお願した水属性のデータ。

勉強がてら、それを基にボムを作っていた。

新しい姿で使う用の物だ。

 

まあ、それに関しては別段、新しい姿でだけ使うだけのつもりはない。

何れはボンバーマンの姿でも使うつもりではある。

水属性のボムはそれなりに有用だ。

 

火属性のミニボムをわざわざ作ったのはワタシの普段使いするボムは火属性の攻撃で起爆出来るからだが、同時にこれは、相手からも起爆出来る欠点にも繋がっている。

そうしたウイルスや相手への対策として作っていたのが、水属性のボムデータだ。

サイズが大きく蹴り飛ばすタイプのボムだが、エリアの壁だとかは別としても、ウイルス等に当てても起爆出来る。

 

『――問題ない。では、準備を始めるぞ』

「頼ム」

 

流し見ただけだろうという程度の時間しか経ってないが。

ワイリー様なら分析まで終えられたのだろうな、といった信頼がある。

そう考えてる間に外見データがナビの素体へと吸い込まれるように合体したかに見えれば、併せて素体の外見がそのデータ通りに変わっていく。

とはいってもほぼ一瞬でコトは済んだ。

 

『次いでアーマーじゃが』

 

次の瞬間、今のワタシの姿が現れる。

まあ、目の部分は完全に黒になっているだけ。

人間で言う所の肌に当たるだろう部分も変わらず、黒タイツ染みたモノのまま。

何か変えるかと問われ、このままが良いと返したから見た目は全く変わってはいない。

 

『既にお前の音声データを入れてある。コレを身に着けている間はそちらが優先されるようになっておる』

 

そう口にされながらアーマーが操作され、新しい姿の方は完全にその中に納まった。

こうして見るとやはり、アーマーもとい今のワタシの姿は割と大きいのだと分かる。

恐らく、体格の良い大人を基準としているサイズ感なのだろう。

 

『あとは欠点じゃが、ナビデータから作り出した所為でエネルギーの代替機能やチップデータの一時保管やら機能の追加をし易いように容量が大きくなっておる』

「利点じゃネえか?」

『外で脱ぐことは出来ても、サイズの問題でそのまま運ぶのは難しいじゃろう』

「見た目替えんノも目的なんダ、着脱すル場所を限定スりゃ良い。問題ねエな――回復は?」

 

表向きの理由を口にし、ワイリー様を見やる。

返答は即座。

 

『アーマーではあるが、先程も言ったように元はナビデータ。現実世界で言う所の生物……生体アーマーみたいなものじゃ、今まで通り問題なく回復出来る』

「ナら尚更問題ねエよ」

 

生体アーマーとは。

名前だけだけれども夢が広がる。

返した答えに頷いているワイリー様を尻目に、若干の感動を覚えながら最終確認を進める。

 

と言っても、詳しく調べるまでもなくワタシの中のデータは入り切る。

精々外見に違和感がないかだが、これに関してはしつこい位に確かめた後だ。

残りはワイリー様が巧くやって下さるかどうか。

 

しかしそれについては考えるまでもない。

例えこの場に光正や光祐一朗、あるいはワイリー様をも上回る天才が居たとしても。

この身をワイリー様以外に任せる気は微塵もない。

 

『――――もう良いか?』

「アあ」

『さて。あとはこの中にお前の中身をインストールすれば完了じゃ』

「ア、言っとくガ、一応データはそのマま全部突っ込んデくれよ? バトルの感覚とカ、キャッシュデータが関係しテる可能性あルし」

『何度も言うな。分かっておるわい』

「そんジゃ、任せる――――――      

 

 

 

そうして。

ワタシは己を、暗闇に委ね

 

 

 

『起きろ』

「はい」

 

起きた。

体感一秒と経ってない。

 

だが、鋭さの増した感覚。

感じようと思えば、この世界の全てを知覚出来るのではないかと思えるような万能感。

それは流石に言い過ぎか。

それでも、機能が大幅に向上しているのは疑いようもない。

 

「あ――あ、い、う、え、お」

 

声を発しながら記録を探る。

問題ない。

勝手に何かを削られた形跡も、抜き取られた形跡もない。

本気で隠滅されれば分かり様はないだろうが、一ネットナビ程度にワイリー様がそこまで気にするとは思えない。

 

そもそも抜くならまず、光正関連の情報を抜かれてるだろうけど覚えてるならその心配はない。

仮に何か気にされたとしても、ワイリー様の所有物であるワタシに対し、証拠を消す必要もなし。

気にする必要もないだろう。

 

「――あ、あーあ、あ~」

 

口から出ている声は想定した通りの物。

訛り、とでも言うべきつっかえはない。

しかし流石に違和感は拭えない。

流暢なのもあるが、今までの声から完全に変わっているのだから。

慣れるまでは少し時間が要るか。

 

顔の前に手指を伸ばす。

元の、ボンバーマンの姿の時とは異なる色合い。

透き通るような色味。

 

『問題はないな?』

「完璧です! 天才的ですね!」

 

起伏のない体を軽く眺めつつ、ナビマークを確認。

予定通り、普段と変わらぬ爆発のようなマーク。

この姿の時用の偽装が必要となる。

まあ、そちらの準備も既に済ませてはあるのだが。

 

軽く撫で、視線を動かす。

画面越しにワタシを見ているワイリー様にウインク。

してから、元々のワタシだった姿に似たアーマーを見やる。

 

どうすればそのアーマー、そう、ボンバーアーマーと仮称しよう。

ボンバーアーマーを身に着けられるかが、感覚的に分かる。

流石はワイリー様。

 

手を伸ばし、触れ、念じる。

それだけで分解されるように。

あるいはモザイクが掛かるようにブレ、ワタシの身を包み込み、

 

「ア、あ、あーア――――ヨし。こっチも自動ダ、問題ネえ」

『外し方は』

「理解出来テる」

 

身に着ける時は、感覚的に分かり易いから手を伸ばしただけだ。

さながら。

そう、人間的に言えば、ハンガーに掛けてある服に手を伸ばすように。

 

脱ぐのも同じ要領で行ける。

ただ、わざわざ動かす必要はなく、念じるような感覚だけで良い。

インストールというよりも起動するというのが感覚的に近しいか。

 

「……この通り、ね?」

『ふむ――なら良かった』

「いえいえ~、超天才であらせられるワイリー様あってのことですよ?」

『うむ…………うむ?』

 

何やら首を傾げておられるワイリー様を一先ず置いておいて。

《ハイパーボム》を出す感覚は。

変わらず。

 

蹴りを入れ、飛ばした刹那に《ミニボム》を生み出す。

この感覚も変わらず。

だが早い。

投げようとしている《ミニボム》の軌道も、まるで線があるように鮮明に想定出来る。

追わせるように空中に放てば当然のように爆破。

 

この分なら。

そう思い、生み出した水属性のボム。

すぐさま蹴り飛ばす。

今度はバウンドした先を予測。

前に試した時は分からなかったが、向上した演算能力のお陰か。

 

蹴った感覚、そして着地点を見ればどう跳ねるかが瞬時に予測可能。

バウンドする先に置くような感覚でもう一つを蹴り込めば。

当然のように、跳ねたボムがぶつかりに行き、爆発。

相乗効果で増幅した爆発が、周囲に盛大な泡飛沫を撒き散らした。

 

「――ん~、まさに天才!」

『………………ボンバーマン?』

 

訝し気な声が聞こえて来る。

何やら視線を向けてきているワイリー様。

そうだ。

忘れていた。

 

「ワイリー様」

『……うむ』

「この姿の時はぁ、そう呼んで欲しくないです」

『う、うむ……? で、では何と呼べば良い?』

 

背中を向け、数歩。

くるりと回って片手は腰に。

もう片手の人差し指で天を指し示し、

 

「――――――超天才によって生み出された~、天才アイドル!」

 

ゆっくりと下ろし。

素早く目元でピース。

 

「その名は、パイン! パイにゃんって呼んで下さいにゃん?」

 

このあと翌々日まで滅茶苦茶バグチェックされた。

 





\レツゴーボバガールエインボー!/

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