ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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003:カーネル

 

願望。

性癖。

いや、ここは「浪漫」と言い換えるべきだろうか。

記録を基にワタシはそれを有するに到った。

 

大火力を以って大軍団を殲滅する。

旧型が最新型を苦戦しつつも倒す。

たった一つの極技が最高峰を崩す。

鎧が剝がれ落ち隠された姿を晒す。

 

浪漫は様々だ。

納得行くことだ。

特に隠されたモノには、夢がある。

そう言う意味で一番最後のモノは合致した。

元よりワタシが真の意味で『ボンバーマン』に成るには自己改造が必要不可欠。

故にこそ、ソレをこそ目指すことにしたのだ。

 

運の良いことにワタシの外観、特に上半身の殆んどがプロテクター型のデータに覆われている。

そして手に入れている数多の人体データ。

それらを利用することによって現実の人体と遜色ないレベル、いやそれ以上に完成された肉体もとい電脳体を創り出すことも出来よう。

 

何れ起こるかも知れないバトル。

追い詰められた果てにデリートするかに見えた瞬間、剥がれ落ちるプロテクター。

そしてもう一つの姿を現すワタシ。

 

「――完璧ダ」

「何が完璧なんだ?」

「勝利の道筋ダ。再開スるか、カーネル?」

 

小休憩中とは言え、余計な思考が過った。

返した言葉に無言で準備を進めている姿を見、仕方なく足元に《ハイパーボム》を生み出し、構える。

呼応するように《ソード》を構えるカーネル。

瞬間、強風のように押し寄せるプレッシャー。

これが現実世界で言う殺気と言うモノだろうか。

 

数瞬の間を置き、その姿が眼前へと迫る。

カーネルが《ソード》を構えていた姿から分かる通り、自ら攻め込むタイプ。

前線指揮官とでも言おうか。

対するワタシはボム、要するに爆発物を利用して相手の行動を狭めるタイプ。

攻撃的防御とでも言おうか。

近付かれればワタシが不利だが、近付けなければカーネルが不利。

 

「くワ……っ」

 

しかし根本的な性能差。

《ワイドソード》。

振るわれんとするその正体を看破し、避けるために後ろへと下がる。

併せて足元の《ハイパーボム》を点火し転がす。

追撃を諦め後ろに下がったカーネルを他所に爆発するボムを目くらましにして十個の《ミニボム》をばら撒く。

爆発の中を突き抜けて現れても目の前には《ミニボム》の数々。

どうするか。

 

「ダろうなっ!」

 

分かり切っていた。

ワタシにはカーネルの底が見えないが、カーネルはワタシの底が見えているのだろう。

一閃。

二閃、三閃。

光の如き迅速さで振るわれた《ソード》。

その切っ先に当てられた《ミニボム》が爆発するが、規模も小さくカーネルまでその爆発は届かない。

 

最初のバトルの頃は多少狼狽えてくれたが。

そう内心でぼやいても仕方ないので更にボムを用意する。

今度は《スモールボム》。

目の前に散らすように落としてやれば、流石に踏み込んでは来ない。

幅広い爆発。

疑似的な煙幕。

 

「チ」

 

だが煙の中、高々と掲げられた剣先が見えた。

《カウントボム》を煙幕の中に設置しつつ脇に跳ぶ。

銃声。

幾つかの弾丸が先程まで居た場所を正確に通り過ぎる。

 

《カーネルアーミー》。

そう名付けられているそれらは、ワイリー様がソード系を主力としているカーネルの補助として作ったプログラム。

プログラムを起動すれば即座にエリアの床の一部からか、あるいは置物が姿を変じ、現れた狙撃兵が攻撃を行うのだ。

幸いプログラムの暴発を防ぐためになのか、《ソード》を掲げる姿を取らなければならないため分かり易いと言う欠点こそあるが、

 

「まだまだ……!」

 

次いですぐに煙幕の上を削ぐようにミサイルが落ちて来る。

誘導ミサイル。

アーミー達は呼び出しさえすれば後は自由だから、即座に追撃に移れるのだから堪らない。

ミサイルは軌道が読み易い。

だが、どうしても上を警戒しなければならなくなる。

弾数は四発だが、カーネルにとってはそれで十分か。

 

生み出した《ハイパーボム》を蹴り上げミサイルに接触、爆発させることで四発纏めて処理。

するが、その時には煙幕を抜けて構える姿が視界の端。

最早出来ることは僅か。

なので指を二本立て、見せ付けるように一本を曲げる。

意味を察したカーネルが視線を走らせ、反転。

煙幕を切り裂き、その中に隠れていた、残りカウントが一つとなっていた《カウントボム》が真っ二つに裂かれた。

 

《ラットン》。

距離を空けるため大きく、わざと空中に跳ぶ形でジャンプ。

併せて今度も《ミニボム》を生成。

空中から降らせるようにばら撒いてやれば再度身を翻したカーネルがそれらに対処するため無尽にソードを振るい、

 

「なっ!?」

 

爆煙の中。

走っていた《ラットン》を足元に受けた。

足元に起きた爆発に体勢を崩したカーネルに残りの《ミニボム》が降り注ぎ、

 

 

 

 

 

「おシ、休憩」

 

《ラットン》や《ミニボム》程度、カーネルには大した損傷ではない。

修復の手間を考えれば受けないに越したことはないのは確かだが、ワイリー様謹製。

お互いに、と言いたい所だがカーネルは容赦ない。

デリートされるほどのモノを貰ったことは流石にないとは言え容赦なく斬ってくる。

お陰でワタシがまともに受けると修復に時間が掛かる。

 

これでもまだ「優しさ」を残してはいるらしいと言うのが眉唾ものだ。

ワタシに眉などないのだが。

一息ついている間に状況を整理したらしく、僅かに顔を顰め、足元を眺めながらも納得したように頷く。

 

「――《ラットン》か」

「そうダ」

「跳んだ上に《ミニボム》をばら撒き上へと注意を向けさせた。そうだな?」

「おウ、そうダ」

「――使った手を返されるとは……まだ未熟か」

「古さと他所でのバトル経験ぐらいシか勝ってネえんダ。まダ完全勝利さレちゃ困る」

「性能ではオレが上だ。完全勝利できなければ困る」

 

こう言われると肩を竦めるしかない。

十に一つか二つ。

模擬バトルをして、ワタシがカーネルに当てれるのはその程度でしかない。

当てれるのは、だ。

勝てるの、ではない。

 

対するワタシは大体五回もまともに受ければワイリー様に修復か『フルエネルギー』なんかを使わなければならないのだから手間が掛かる。

正直、相性が悪い。

 

ボムをイチイチ生み出す必要があるワタシと違って、カーネルの主装はソード系。

更には起爆までの多少のタイムラグのあるボムと違い、ただ振れば良い《ソード》は振るわれればそれで終いだ。

持続性と言う利点もあるにはあるが、それでもこれらのタイムラグが、カーネルと言う格上とバトルするには余りにも致命的過ぎる。

チップでソード系を使えなくもないが、それこそカーネルが振るうように巧く使えないのだから隙にしかならない。

 

だからこそ本職に専念する。

爆発する系統。

《カウントボム》だとか《ラットン》だとか。

多少変わり種を交えて、だ。

 

動きつつ考えつつ高速で迫って来るカーネルの振るう《ソード》を避けつつボムの軌道や起爆までの時間を数えつつ、等と言う地獄のようなマルチタスクを熟しながら相手をしなければならないのだから、バトル能力が否が応でも上がっている実感が出来ているのが幸い。

間違いなくそれ以上の早さでカーネルは成長している、と言う事実からは正直なところ目を逸らしたい。

 

しかも。

完全自立型のワタシと違い、カーネルの方はオペレーターが居ることで更なる真価を発揮出来ると言うのだから恐ろしい。

いや、そこはどうなんだろうか。

ナパームマンの例もあるから確たる所は言えないが、ワタシは指示された所で真っ正直に強くなれるとも思えない。

 

ともかく。

ワタシもカーネルもワイリー様によって作られているため、敵対することはないだろう事実のみが救いではある。

今の所は。

 

「――――もう良いだろう?」

「へイへイ」

 

電脳逃避は終了。

距離を開き、再び構えているカーネルを見据える。

一息で詰められる距離は公平とは言えないと思うのだが。

 

口にしても仕方がない。

そろそろマイン系も考慮に入れないとバトルにならなくなりそうだ。

軽く《ハイパーボム》を蹴り上げた時には既に距離を詰めているカーネルを見据えながら、そう思う。

 

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