ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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030:増設依頼

 

何やら妙なことになっている。

それに気付いたのは、二日経った時だったか。

自販機を設置して二日。

詳しく言うなら。

夜に設置し、そこから一日経った翌朝方。

 

「……珍シいな」

 

カーネルから届いていたメールを確認した時だった。

誤解のないように言うが、ボンバーマンであるワタシとカーネルの仲は公私共に非常に良い。

公では仕事の手伝い。

私では、まあ、大体は模擬戦ばかりか。

 

幸か不幸か最近は模擬戦でやりあう機会こそ減ったが、全くやっていない訳じゃあない。

ここ二ヶ月の間での、ボンバーマンとしての試運転。

奥の手は別だが、新作したボム二つの方は非常に好調な滑り出しを見せた。

まあ最初だけで対応もされるようになっちゃあいるし、お陰様で格闘戦ばっかり鍛え上げる羽目になっているが。

 

話が逸れた。

届いたメール。

カーネルからの公、即ち仕事の依頼。

 

こうしたメールでの依頼は実質、軍からワイリー様への依頼だから基本的に断ったりはしない。

概ねどこそこの手伝いやウイルスバスティング等々で、連絡がなければ勝手に見回りをしている程度。

そんな中、そのメールが些か妙に思えた。

ともかく内容を要約すれば、

 

『パインを見掛ければ、スクエアへの追加設置を検討して欲しいと伝えてくれ』

 

と言うことだ。

メールで理由を確認すれば、『設備が人気のため早期対応を頼みたい』と言う。

正直。

この時点ではそこまで急ぐようなことでもないと考えてはいた。

朝方に見付け、そう言うことならと警戒のパトロール。

主にウイルスバスティングをして回って、夜には戻って見付からなかった旨を報告。

 

翌日も同様に動いて、今度は見付けたから伝えたと報告。

「二日後の同じ頃に行く」ともだ。

精々、やけに元気にウイルスバスティングだとかに動き回っているナビを見掛けたことに若干の不信感を覚えたぐらいだろう。

だが別に、事ココに到ってもワタシはどうとも思ってはいなかった。

 

「人気があるのは有難いし、もっと様子を見てから出そうと思っていた予定を早めるかにゃ」

 

等と。

気楽に構えていたのだ。

改めて。

ワタシは侮っていた。

 

ネットナビ。

娯楽はほぼなく、しかしウイルスと言うある種の生命に危機を催す存在。

戦うことで紛らわせられる範囲にも限界がある。

 

『食』。

それが。

どれほどまでに影響の大きい物になるかを考えもしていなかったのだ。

気付いたのは報告を送った翌朝。

 

「どうせナら、様子見ルか」

 

感謝の言葉が綴られたメール。

それを一瞥し、ふとそんなことを考えた後。

パトロールがてらスクエアへとその足を運び、愕然とした。

 

埋まっていたのだ。

スクエアの一部。

入って、自販機を設置した方向が。

ナビの行列によって見事なまでに。

正直な話、プロトからの防衛戦ぐらいでしかここまでナビが集まっている所を見た覚えはなかった。

 

自販機の脇に設置していたゴミ箱には、バナナの皮が溢れて積み重なり。

少し離れた端には腹の辺りを苦しそうに抱えて呻いているナビの姿がチラホラ。

オペレーターと交渉して何とかバナナを買ってもらおうとしているナビの姿もあった。

 

流石に仕事のあると思しきナビが出入りこそしていたが、そんなナビすらもどこか恨めしそうにその行列を眺めている始末。

そして自販機の横ではプログラムくんが、明日には追加の設置予定があることまで喧伝している。

現実世界に居たなら、軽く眩暈と立ち眩みを覚えていただろう。

 

後は正直、そこまで覚えてはいない。

パトロールやらバスティングを普段通りにこなしたんだろうと思うぐらいで。

気付けば、夕方を過ぎていた。

要するに、パインとしての時間になる訳で。

流石に大行列を見た後にもなれば、することは決まっていた。

 

「……ストーンマン」

「……?」

 

奥。

返事も返さず、バナナを食べ続けているストーンマン。

脇のゴミ箱からも、自動消滅の速度を上回っているのか溢れ出している。

そう言えば、最近ストーンマンがバナナを食べていない所を見た記録がなかったとその時になって思い返したがまあ、

 

「チと悪イが、コレ持ってクぞ」

 

そう言って自販機を外す。

ここで使ってるのはストーンマンだけ。

それなら製作の手間も考えて、持ってくのは当然。

そのハズだったのだ。

 

「ッ…………!」

 

だが、遮られた。

あろうことか。

ストーンマンによって。

基本的に受け身で自分から特に動こうともしないストーンマンから、近付こうとした自販機の間にその大腕を差し込まれるという物理的な手段で。

視線を向ければ流石に分かる。

 

あろうことか。

このワタシに対して戦闘態勢すらも整えた完全拒否の構えを取っていることも。

レーザーマンからチクチクされても文句一つ直接言いもしなかったストーンマンが、まさか。

滅茶苦茶トングをカチカチ鳴らして威嚇して来ている。

 

いや威嚇かな、コレ。

とはいえ思わず後ずさり。

そのまま更に離れて漸く構えを解いた姿に、流石に本気だと察せざるを得なかった。

話が通じないと思われてたのか。

いや、言ってくれればしないのに。

 

等と愚にも付かない事柄がメモリ内を過ぎる中、まあ仕方なく自室に戻る。

それとほぼ同時に、ワイリー様が顔を出された。

待っていたのだろう。

半笑い気味の表情で。

 

『……ボンバーマン』

「ナんだ?」

『大した物を作ったな』

「自販機とバナナ、ドっちダ?」

『バナナじゃ。自販機はともかく……よもや、普通に見せて来おったアレがあれほどの完成度とは思っておらんかったわい』

「頑張っタ」

『頑張ったか……そうか、ハハハ、そうか。人気過ぎて薬物的なプログラムでも仕込まれているのではないかとアメロッパ軍から調査を依頼されて少し調べてのぉ……そう言ったモノは何もなし! 忠実にバナナを再現しただけ! 一から作るのでは、ワシでも半年は欲しいと言ったら随分と驚いておったぞ! ワハハハハハ!』

 

当初こそ、何処か笑いを含んだワイリー様だったが最後には機嫌も良さそうに大笑。

それこそ喉が丸々見えるほどに、だ。

何がそんなに気に入ったのやら。

おおよそ数十秒か。

よく息が持つと妙な関心をしていた所、急に顔を此方に戻した。

 

『……で。光のヤツから何を受け取った?』

「………………ト、言ウと?」

『フン! お前を侮る訳ではないが、あれ程の完成度。ストーンマンに預けているデータだけでは不可能! 誰かしらの手伝いがなければ無理じゃ……リーガルはせぬとなれば、自ずと誰かは決まって来るわい』

「……スみません」

『…………何を受け取った?』

「人間の五感に関するデータを一通リ…………」

 

そう答えると、微かに眉を顰められた。

思わず訝しむ。

しかし、一つ頷かれた。

 

『つまり……なんじゃ。それ以外はお前が作った、と?』

「マあ、そうダ」

『本当か? なら大体はお前が……そうか。そこは本当なのか…………で、じゃ』

「アあ?」

『光のヤツにはボンバーマンとして受け取っておろう?』

「そレがどうしタ?」

『ならどうするつもりじゃ? お前、パインとして出しておろうが?』

「…………………………………………ウん!」

 

何も考えてなかった。

いや確かに、パルストランスミッションシステムの実証実験結果とでもいうべき五感のデータは光正から受け取ったけれども。

 

元のデータはあくまでも素材の一部。

それを利用して仮作成していたデータと組み合わせや改造を重ねて結構色々と弄りつつワタシの感覚に沿わせて、と色々してあるから正直それらのデータはそれこそ痕跡程度にしか殆んどない。

現実世界的に表すならばその割合は多少大きいだろうが、味を調えるのに使った調味料のような感覚。

 

ハズ。

多分。

恐らく。

きっと。

だから全く以って気にしてすらいなかった。

 

していなかったのだが。

改めて考えれば、迂闊。

真っ正直に言って、馬鹿。

ワイリー様に匹敵する天才が、その辺りのことに勘付かないと欠片でも思っていたのか。

 

仮に、相手がワイリー様からだったとしたら。

気付かない等と思うか。

思うハズがないと言うのに。

 

生身でなくて良かったと心底から思う。

生身だったら、恐らく。

と言うかまず間違いなく。

全身から汗が一気に噴き出していたことだろう。

 

なのだが、幸いワタシはネットナビ。

表向きならば、冷静を装えている。

まあ、そんな虚勢がワイリー様に通じるハズもない。

ワタシを見ながら、ゆっくりと、見せ付けるように、これでもかと言うため息を長々と吐かれた。

 

『阿呆』

「ハい……ごめんなサい」

 

返す言葉もなかった。

おおよそその通りだと認識していた。

だから頭を下げるしかなく。

一分ほど経ったろうか。

もう一度、たっぷりとため息を吐かれたワイリー様の声が頭上から届いてくる。

 

『…………以前、キャスケットに流した組織の一つに医者と繋がりを持っていた組織がある。そこがネットワークに情報を溢したことにでもしておこう……病院のデータを売り捌いていたのは本当じゃしな』

「大丈夫なのカ?」

『その段階はもう過ぎておるわ! 必要なのは確証を与えぬこと。光のことじゃから、確証を得れば嬉々として突っ込んで…………確証?』

 

一瞬、顔を上げていたワタシを見、眉間に皺を寄せられた。

だが何事か窺うよりも前に次の言葉が入る。

 

『――とにかく! 十中八九で察せられたとしても一か二割は別の可能性があればモノがモノじゃから大きくは言うまい。それはそれで面白いとか言いそうじゃが――まさかあのシステムのデータを実験結果とは言え簡単に譲るとは思わんかったわ……』

「ワタシもソう思う」

『……十中八九の所までは察するじゃろう。だが、考えてみれば残りの一割の部分が分厚過ぎる……アヤツも流石にワシの趣味とは……思わんだろうと思いたい……どうせなら恐竜の方が良いじゃろうに…………なぁんでアメロッパでも光のヤツの事に頭を悩ませねばならんのじゃ………………』

「本当にすミません……」

『ああ、もう! それはもう良い! よくよく考えれば、ワシも碌に確認せずお前の作った物だから好きにしろ、なんて言ったのが悪かったわぃ』

 

目尻を抑えているワイリー様の姿を申し訳なく思う。

故にもう一度。

深々と頭を下げた。

 

 

 

そのまま気まずい時間が過ぎて少し。

気を取り直して。

そういうように、咳ばらいを軽く挟んだワイリー様が口を開かれた。

 

『そう言う訳じゃ』

「ドういう?」

『自販機の方はワシがさっと仕上げた物がある――セキュリティ面もじゃが、まあ今回は追加で二つもあれば良いじゃろう』

 

言葉と同時に軽い操作をされた気配。

同時に、すぐ傍に二台の自販機が出現した。

 

「……マ、あそこマで人気にナると思っテなかっタ。充分ダろ」

『うむ。しかしまあ……相手が普通のナビで良かったな?』

「なんデだ?」

『そうでもなければあの様子じゃ。自販機にくっ付くようなのも居ておかしくなかったじゃろう』

「そんナにか」

『そんなにじゃ。財布を握っておるオペレーターが二つの面で自制心の代わりにもなっておるから現実の方では然程の騒ぎにはなっておらん。喜ぶような代物なら今後のナビへの慰労や報酬に使えると思っておる程度じゃが、そうでなければ……』

 

肩を竦める姿。

余り想像したくないと言うワイリー様のお姿に流石に冷えてくる。

思った以上にやらかしていたのかも知れない。

コトが何処までも、電脳世界の出来事だったから助かった。

身震いするワタシを何処か愉快気に眺めておられたワイリー様だったが、ふと思い出したように口を開かれる。

 

『明日には行くんじゃろ? そう聞いておる。さっさとスクエアに運び込めるよう準備を進めておけ』

 

その言葉に頷く。

早速と言う具合に送り込んできて下さった自販機を調べる。

見た目はワタシの作った物と変わらず。

しかし、セキュリティ面が確かに向上している。

 

具体的には、認証されている存在以外が開けたり動かそうとすればプラグアウトも出来ないよう盛大にバグり散らかすことだろう。

中の、プログラムを設置する場所も特に変わりなし。

バナナデータと併せ、何か追加した方が良いかと首を捻った。

 

そこで、気付く。

人気の理由に。

複雑な料理の味よりも、単純で分かり易いバナナの味。

恐らく初めてだろう味のデータがそれだからこそ。

行列が出来るほどの人気が出ていたのではないか。

 

そうなれば複雑な、料理物を入れるのはまだ先。

同時に、スプーンやフォークなんかの器具も慣れてない訳だから手軽に食べられる物。

そう。

僅かに頭を捻り、思い付く。

 

ワタシは誰だ。

ボンバーマンだ。

そして、パインだ。

そうなれば好物にすべきだから、自ずと決まって来る。

しかしそうなるとある意味、三種類ほどをいきなり用意する必要もある。

 

「……マ、良いカ」

『手伝いは必要か?』

「必要ねェ」

『そうか……』

「ワタシの次に出ス物も、期待しテくれ」

『……ふん。ああ、そう言えばじゃが』

「ア?」

『ストーンマンのデータでは不足と言ったな。アレは嘘じゃ』

「ハぁ?」

『あんな量のデータ全部見れてるハズないじゃろ。鎌を掛けただけじゃ。ま、精々頑張るように! ――――遊びと言ったのは悪かったな』

 

してやられた。

その事実に呆然としつつ半ば反射的に激励の言葉に軽く頭を下げ、続いた言葉に上げようとするが。

それよりも前に通信が切れた。

とは言え、ワイリー様からは様子が見えているだろう。

とりあえず一回軽く下げ直して。

 

向き直る。

上手い具合にソレが落ちるように位置を調整しなければならない。

予め、紙コップの飲み物用のに似せておいて良かった。

ペットボトルとかのに似せてたらコレは無理だからな。

追加で軽く固定するが手で簡単に外せるプログラムをでっち上げ、問題なく取り外しが出来ることも確認。

 

固定した際に型崩れもしないよう強さも調整。

落ちる場所も、問題はなし。

試しに自分で購入までのプロセスをやってみて、良しとする。

細かい使い方はまたポップ広告で描き上げれば良いだろう。

 

こういう時。

数々のボディを創り上げた成果もあって、構図とかその辺りは問題ない。

意識すれば円や線も正確に引けるのは、電脳世界の特権だ。

序でにマネキンのような人型を簡単に準備出来るのも。

 

「ヨーし、よシ……」

 

一応ポーズを決めさせつつ独り言。

どう言う風に使うかや食べ方の指南も一応描いておかないと。

そうこう色々と用意を進めていた中、不意に音が鳴った。

目覚ましの音。

ボンバーアーマーを脱がずに過ごしていた訳だが。

 

時計を見やる。

別になくとも時間ぐらい分かるが、何となく設置してある時計。

その時間が既に仕事間際だと言うことを表していた。

 

正直、メールで依頼が来てない以上は動く必要もないはないが。

設定も済んでいる。

広告も一応は形になってはいる。

 

「………………行くカ」

 

そう言う訳で、外に出る。

途中、何時もの場所にストーンマンを見掛けたが即座に自販機をブロックし始めたのは苦笑しかない。

取らないから。

言った所で信じるかは微妙な所だからちょっと遠めに通り過ぎて出た。

 

普段通りのパトロールとバスティング。

繰り返す内に、流石に気付く。

度々出会う何時ものナビ達がどこか気も漫ろと言う具合なコトに。

 

実際、普段よりも動きが悪いのかダメージを受けている姿が見受けられる。

特に目新しいウイルスが発生している訳でもないハズなのに。

楽しみにしているのだろう。

 

そうこう何時も通り新エリア――流石にもう、新とも言い難いか――を回って目新しい情報がないのを確認。

帰り際、言った覚えは全くないのに何処で尾鰭が付いたのか、今日にもスクエアで新商品が販売されるらしいと話し掛けて来たナビにもワイリー様の手伝いがあると言って離脱。

 

内心、安心もする。

特に何の用意もしてなかったら面倒なことになりかねなかったろう。

スクエア内で囲まれる、とか。

切り抜けられないこともないだろうが、その所為で出入り禁止にされても面倒だ。

滅茶苦茶楽しみにされているのに不安を覚えつつ、部屋でパインの姿に戻った。

 

「あー……よーし! 完璧、にゃん!」

 

念のため幾つかボムガキ的セクシーポーズを決め、外套を羽織る。

自販機二台とポップ広告なんかの運搬準備も完了。

引っ張る要領で行けば良し。

 

さっさと準備を整えて、すっごく興味を惹かれてる風なストーンマンを無視して通過。

出る前に自販機に形ばかりの布も被せ、カモフラージュも起動。

《シノビダッシュ》のようにウイルスに見付からなくなる効果もない、ただ見え辛くなるだけの代物。

ワタシの姿が確認し辛くなるだけ。

しかも激しい動きに対応し切れない。

 

つまりバトルには耐え切れないが、追跡するのを困難にする程度の効果はある。

パインとして有名になって来たからボンバーマンと繋がらないようにするためのプログラム。

バスティングを凄くしてるからゼニーはあるし、超天才であるパイン様ならそのぐらい出来て当然。

 

等と考えつつ、歩く。

幾つかわざと、関係ないルートを歩き回り、スクエアに行ける通路の少し前でカモフラージュを解く。

外套はそのまま。

 

とはいえ。

自販機を引っ張ってるナビが居たら察しは付くのだろう。

肩を落として歩いているナビや、逆に走ってスクエアに向かっているナビ達に驚いた様子の目が向けられる。

 

立ち竦んでいるナビ。

更に早く走って行くナビ。

勝手に警護を始めるナビ。

様々なナビ達を他所に、前と変わらず警備していたナビが遠目に目に入った。

僅かに動いたのが見えたのに合わせ、外套を取り払う。

遠くでさっさと準備を始めるのを他所に、着いた。

 

「はーいにゃ、お久」

「アメロッパスクエアをごゆっくりお楽しみ下さい、パイにゃん」

「し振りって、はやっ!」

「問題ありませんので早く設置して下さい。中からまだかまだかと連絡がうるさいのです」

「あっ、はい。みなさんもパイにゃんの護衛、ありがとうございま~したにゃん!」

 

そんなにか。

警備を適当にするのは良くないと思うが。

流石に口には出さず、勝手にだが、警護してくれたナビ達に手を振る。

軽く手を振り返すと三々五々に解散、等とすることもなく極少数を除いた大半が我先にとスクエア内へと転送されて行く。

 

若干の苦笑いを警備のナビと浮かべ合いつつ、バナーを踏む。

転送された。

そこは、

 

「っ」

「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」

 

ナビの、山。

一角だけだったハズなのに、軽く見渡すだけで四方八方をナビが囲んでいる混み具合。

一瞬、外に戻ろうかと考えたがそれよりも早く、ナビ混みが無音で割れる。

その先は、カーネル。

 

またしても。

何処か疲れた表情をしているように見えるカーネルの傍で、自販機が順調にバナナを吐き出しているがともかく。

その近くには既にスペースが用意されているのが見て取れた。

 

「はーい。こんにちにゃー」

 

内心、引き攣りつつ。

笑顔で手を振りながらカーネルに近寄って行く。

無言の中でも幾らか手を振り返してくれるナビが居たことが心の救いか。

顔を合わせたカーネルが、何処か疲れた様子ながらも無言で場所を示した。

 

とりあえず愛想笑いだけして、設置準備。

と言ってもポップ広告以外は瞬間で終わるのだが。

自販機二台をパインパワーでドンドン、してポップ広告もポンポンポポポン。

 

「設置準備完了しましたにゃ~! 確認、お願いしまーす!」

「確認する――本当に、ありがとう」

 

横を通り過ぎる刹那。

小さく呟かれた言葉に思わず振り返ってしまった。

しかしその顔は窺えず。

 

前回と同じように確認作業を手早く済ませていく。

列の前列に居るナビ達からは、新しい商品が見えているのだろう。

徐々にざわめきが挙がって行く。

それを他所に、カーネルが頷いた。

 

「良いですか?」

「問題ない。設置してくれ」

「はーいにゃ」

 

自販機を、固定。

設定に問題ないことを確認しつつ、念のため購入。

一台目、問題なし。

二台目、問題なし。

 

多分。

買った内の一つをカーネルに押し付けると、軽いブーイングが挙がったがウインクで封殺。

 

「味……毒見してみて下さいにゃ!」

「ああ、ありがとう――それで、これは?」

「バナナアイスにゃ! 食べれない紙カップっぽいのと、食べられるコーンが二種類にゃ。これはどっちもコーンのですので食べれるにゃ」

「ふむ……これはともかく、紙カップは食べれないのだな?」

「まあ、今後の新作のための練習も兼ねてと言うことですので。付いて出て来るスプーンも食べれないにゃ」

「ふむ。中々興味深いが、まずは頂くとしよう――――…………冷たい。氷か。人間的に言うならば食感が違うとバナナの味も少し……染み渡るような、変わって感じられるのだな。水属性の扱いが得意なのか?」

「一応そうにゃ。とはいえこの天才ナビであるパイン! 何れは火属性その他もキッチリ研究し尽くして見せますけどね!」

 

さりげなく今後も新作を作って行くと宣伝。

しつつ。

丸いバナナアイスを一口、味わう。

冷たさと、バナナの甘み。

 

コーンは二種。

現実世界で恐らく最も一般的なサクサクの、レギュラーコーン。

そして今ワタシが食べているしっとり気味の、ワッフルコーン。

所謂バージョン違い商法。

 

ナビであれば手が汚い、と言った概念も雑菌その他も特にないから気にする必要はなし。

氷が徐々に水に、つまり溶ける感覚も食感が変わり感覚で楽しめると言う寸法。

傍から見ている分には、早速食べ始めている幾らかのナビは、普段ならダメージでしかなかったハズの冷たい感覚に戸惑いつつも楽しんでいる様子。

 

何れ。

温かいスープやコーヒー等々も発表していくとして。

溶けて指に付いたアイスを慌てた様子で舐めるようにしているカーネルを他所に、残っていたコーンまで一口。

 

「じゃ、バナナの方も集金だけさせて貰いますにゃ」

「ん! あ、ああ構わないが……」

「流石に持ってったりしないにゃ! もう少し落ち着いたら交換したいですけどね?」

 

アイスとワタシ、どちらに集中したものかと焦っている様子をちょっと笑い。

断りを入れて集金だけさせて貰う。

並んでいるナビ達も、普通のバナナを買おうとはしているがアイスも気になっている様子だから都合が良い。

 

隙を突くように集金。

と言っても、認証させれば即座に手元に入る訳だが。

ともかく。

 

「……………………あ、失礼しますにゃ~」

 

一瞬フリーズしてしまった。

設置していたのは実質、五日間。

一日が二十四時間。

二十四時間は、千四百四十分。

千四百四十分は、八万六千四百秒。

それが五日間で。

 

「………………あ、ところでなんですけど」

「ふぉ……なんふぁ?」

「ゆっくりどうぞ! ……税金とかってどうすれば良いですか?」

 

簡単。

天才ですし。

四十三万二千秒。

バナナを買うのに大体十秒としよう。

バナナは一個、十ゼニーなのでほぼイコールか。

で。

この、一瞬で増えた二十万ゼニー以上、イズ、何これ。

 

「……………………確認した。現状、ネットナビに納税の義務はない」

「あ、ふーん……ありがとうございまーす」

 

もう一度、アイスを増やした自販機を見る。

ほぼほぼ間断なく、アイスを買い進めているナビ達。

 

「………………」

 

思わぬ大穴を掘り当てたかも知れない。

 





本日は二話投稿を予定。
予定時刻は九時より。
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