ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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本日二話目となります。





031:終わりの始まり

 

結論から言おう。

パインは、小金持ちになった。

アメロッパのスクエア一つ。

しかもたった一台でも中々な稼ぎ。

 

そこに、アメロッパ内の他のスクエアにも設置依頼が来てホイホイと設置していった。

正直、元手は殆んどないものの利益的にはそこまで出ないハズだった。

価格設定は、現実世界の十分の一程度だし。

 

しかし。

ワタシが設定した、趣味故の安値。

それが逆に、手軽に楽しめるナビの娯楽として広まり、同時に食の価値を飛躍的に高めてしまった。

おまけに値段を吊り上げないようにとカーネル越しにだが、キャスケット様から直々に釘を刺される始末。

 

まあ、正直に言おう。

小金持ちになったのは、ワタシにとって重要な事ではない。

いや、二番目ぐらいには重要だが。

一番重要なのは。

パインと言うナビが、完全に独立した個として扱われるようになったこと。

 

ワイリー様のお墨付きと言える技術。

それの国外流出を恐れたらしいアメロッパの一部より、名誉アメロッパ国ナビとして扱う旨が伝達されたのだ。

とはいっても明確なオペレーターが居ない自立型ナビと言う訳で、何かあってもアメロッパの法律的には知らぬ存じぬで切り抜けられる微妙な所ではあろう。

 

文字通り、名前だけの『名誉』。

だが、収入と信用。

この二つを、パインと言う個として得られたのは大きな収穫だった。

 

ボンバーマンとして様々なナビと関わる機会はあるが、それは何処までも軍に所属している存在に対してのモノ。

恐れや何処か警戒を孕んだモノであった。

しかしパインは違う。

 

あえて分類するなら民間のナビに入る。

そのお陰でか、軍のボンバーマンとして有名過ぎるバリューからは得られない情報を得ることが出来ている。

スクエアの自販機を通じて、民間と思しきナビとの繋がりが出来たのは、そう言った点で喜ばしいことだった。

 

まあ、自販機。

これで稼いだ金はアメロッパのためになるようにある程度は使わないと何を言われるか分かった物じゃあないのだが。

閑話休題。

 

「やハり、現実ノ影響か……?」

 

パインが様々な場所に自販機を設置した間。

それだけの時間が経過した訳で。

結果、現在の現実世界では騒動が起こり始めていた。

いや既に起こった後だ。

 

検問。

アメロッパと、件の怪しい地域との間に設けられていた検問が破られた。

下手人は分かっていないが、不満を持った難民と言うことになっている。

それらが雪崩れ込んで来た中、アメロッパ国民が。

等と。

これ以上、続ければただただ陰鬱な情報を流すだけになる。

 

現実世界で巻き込まれているヤツ等には申し訳ないが、ワタシとして重要な事は一点。

軍が派遣された。

そしてキャスケット様も、だ。

 

不吉。

何処か、既定の路線を進もうとしているような空気。

だがワタシも手を打っていない訳ではない。

 

「ダが、《ハイパーボム》で十分」

「申し訳ない……っ!」

「構わン。早く進めてケ」

「ハッ! 次のポイントに回れ!」

「アー イソガシ! イソガシ!」

 

駆けずり回るナビやプログラムくん達。

現実世界の影響でだろう。

電脳世界でも様々な悪影響が出ている。

ルートが不安定化したり、ウイルスが大発生したりとだ。

その対処を、最前線に立って行っているのがワタシ。

 

生憎カーネルの方は、電脳世界に居るワタシじゃ見る機会のほぼない機器を操れる能力を使い、現実世界の情報収集や鎮圧の一助と大忙し。

なので代役として働き回っている。

出来得る限り、キャスケット様とカーネルとが離れないようにするため。

 

まあ、ワタシに出来るのは主要なルートの守護だけだ。

枝葉の道までは此方としても手が回り切っていない。

ボムを利用しての一挙殲滅が得意なのであって、色々な場所に小さく起きている問題への対処は苦手な訳。

ワタシも機動力がない訳じゃあないが、もっとあるカーネルが羨ましい所だ。

 

「公共機関の連絡口はドうだ?」

「現状、問題ありません!」

「ソうか……」

「ストーンマンが心配でしょうか?」

「……マ、ヤツなら巧くやるダろ」

 

機動力のない、ストーンマン。

ヤツは現在、病院の中枢に鎮座している。

ワイリー様が進めておられた、アメロッパの持つ医療データの正式な方法での確保。

それが少し前に済んでいたこともあり、大手を振ってデータを取り扱えるようになったのだ。

 

もっとも、本命はウイルスを利用して病院を機能不全に陥らせんとする策謀への対処。

殲滅力、耐久力の両面を鑑みればカーネルやワタシよりも優れているだろうストーンマンが要所の防衛に当たる。

おまけに医療データだけなら恐らく世界でも上位百本の指の中に数えられるだけ読み込んでいるだろうから、アドバイザーとしても使えなくはない。

 

まあ、現実世界の医者達がナビに質問する等とプライドが許せばの話。

ワイリー様はワタシ達を尊重して下さっているが、それは現状では稀有な例。

多少の愛着を持っているオペレーターは居るにしてもペットに対するモノに近く、それを含んでさえも大半はナビなど勝手に動く機械ぐらいの認識である。

今のところは。

 

「現実に対応しているのは私達だ」とかで揉められても困る。

少なくとも、キャスケット様が戻られるまでは。

だからその辺り、聞かれたら答える程度に留めるようアドバイスはしておいた。

ストーンマンが自発的に動くとは思えないから、そこで揉める心配ないだろう。

多分。

 

「そうでしょう――しかし、羨ましいモノです」

「? なニがだ?」

「嗜好品を愉しめるようにと、パインにゃんが直々にあの自販機を設置したそうじゃないですか? 病院の電脳に!」

「あ、それオレも聞いたぜ! 並ばないで買えるって話だし、羨ましい限りじゃん」

「噂では限定商品もあるとか」

「チョコだったっけ? なんだっけ……苦い、って味があるらしいなぁ」

「そうらしイ」

 

まあ大丈夫だろう。

パインとして、ストーンマンのすぐ傍らに自販機を設置した。

表向きは、ストーンマンからの要望に応えて。

裏向きは、自販機から離れたがらなかったストーンマンを動かすため。

 

いやはや。

食。

と言うものを大いに気に入ったようで、チラつかせると割と素直に動いてくれて助かる。

現金になった、と言うべきか。

直接聞いた訳じゃあないが。

 

ワイリー様の話では。

自販機のボタンが押し辛いからと言う理由でワタシのような小型のボディが欲しいと要望を口にしたらしい。

よりにもよって、ワイリー様に対してするお願いの理由がそれで良いのか。

いやそもそも当代最高峰の科学者であらせられるワイリー様に対してするお願いとして不適格ではないか。

 

様々な言葉がメモリ内を過ぎったが、そこは口を挟むことでもない。

その要因の一つが、トングで取り出した時にアイスを落としてしまったかららしいし。

それに問題と言えるのも精々、ワイリー様からワタシの造り上げた数多のボディの中から一つを融通して欲しいとの依頼があった程度。

一も二もなくお受けしたい所だったが。

この騒動が片付くまではやらないそうなので考え中ではある。

 

「いかがされましたか?」

「……ン? なんダ?」

「いえ、何やら考え事をしておられると」

「アあ……コの騒動、いツ、片が付くかっテな」

「ハハハ! アメロッパ軍を以ってすればそう掛かりませんよ!」

「ダな」

 

そうだと良いが。

思わず止まってしまっていたのを誤魔化しつつ、頷いておく。

キャスケット様。

その対策。

 

カーネルとの行動。

それによって、電子の絡む事件事故はほぼ心配ないだろう。

ストーンマンの派遣。

これによって、命さえあれば助かる可能性も上げられるだろう。

 

だが。

しかし。

これが、ワタシに出来る最大限。

後悔のない選択。

本当にそうだろうか。

 

光正の。

光博士の言った言葉が過ぎる。

残して行った言葉が。

 

パインの情報網に引っ掛かる事柄はない。

ボンバーマンとしても同様手に入らない。

本当に起こるかも分からないことに心配しているだけなのかも知れない。

傍から見れば杞憂でしかないことに心配しているだけなのかも知れない。

 

「…………最善を尽クす、カ」

「当然! 我々はアメロッパに尽くしておりますとも!」

「ボンバーマン様に頼っている、情けないナビではありますがね」

「ハっ! ワイリー様のナビでアるこのワタシより優れたナビが居るとデも?」

「今は居ません、ね!」

 

《キャノン》が放たれる。

遠くのウイルスを掠めたそれを皮切りに、十数体のウイルスとの戦闘が始まる。

まだ、未熟。

 

動作が悪い。

照準が悪い。

予測が遅い。

回避が遅い。

しかしこれも、発展と共に更に良くなって行くだろう。

《ソード》を構えたナビ達と突っ込みながら、そんなことを思う。

願わくば、と。

 

 

 

 

 

杞憂と、願っていたかった。

 







流石に実質8月の間を毎日投稿は疲れましたので、9月からは今まで位の長さで週一投稿を目標とさせて頂きます。
これからは毎日投稿ではなくなりますが、今後もお楽しみ頂ければ幸いです。
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