暫く経った、その後の話をしよう。
バレルは結局。
あるいは想定通りか。
ワイリー様の許に身を寄せると決めたらしい。
揉めている親戚達より、ある程度の気心が知れている相手の方が良いと判断したのだろう。
そうして、問題のリーガル。
此方も平穏に終わった。
と思われる。
あくまでもワタシが見知ってる限りは、だ。
現実世界では実際どうか知らない。
しかし少なくとも。
偶然にも。
ワイリー様宅の機材内をうろついていたワタシをモニター越しに見付けたリーガルにコトの仔細を根掘り葉掘り聞かれる限りのことを答えた結果、最後には不満そうに鼻を鳴らしたことは知っている。
その後も。
画面越しだが、初日の挨拶し合っている様子やその後の生活を見た限り悪くない関係性を築けてはいるのだろう。
あのリーガルが、バレルに何事か教えている様子も見受けられた。
逆に気まずそうなワイリー様は別としてだが。
「ザ~コザコザコ!」
連鎖爆撃。
生み出した《プルルンボム》の巻き起こした爆発がウイルスを一挙に葬る。
相変わらず、ボンバーマンとパイン。
その表裏を使って二重生活を進めている。
真にアメロッパに下手人が居るのであれば。
ボンバーマンの中身を晒すのは無意味。
いやむしろ、悪手。
キャスケット様しかご存知でなかった様子である以上、わざわざ知らしめる必要もなし。
現実世界の、日がある内はボンバーマン。
日のない内はパイン。
そう言った行動をしている内に、パインは夜型のナビと言う風説が出始めている様子だった。
まあ、仕方がないことではある。
あまり人目に、もといナビ目に付かないように気を使っている。
ということにアメロッパ側からはなっているハズだから丁度良いが。
流石に。
怪しむ者が出て来てもおかしくはなさそうな気もするから、その辺りの相談をワイリー様にする必要があるだろう。
このまま双方を使い分けるのは便利ではある。
あるが、デリートされるまでずっと単独で演じ切るのも正直、厳しそうな気配もあるし。
まあ要するに影武者的なナビをお願い出来れば、と言う次第。
具体的には、記録にあるウラランキングに居たコピーマンみたいな。
「あ、パイにゃんお疲れ」
「は~い、お疲れにゃん!」
アメロッパ軍の巡回ナビに手を振り挨拶。
割と夜に出回ってるため、完全に存在を覚えられている。
自販機を作り出した、と言うのも大いにあるようだ。
顔が売れているのは良いことだから別に良いけど。
鼻歌を歌いながら、日課の散策を続ける。
別に同じルートを歩き続けている訳じゃあない。
色々な場所を歩き回っている。
なお、件の騒動のエリア辺りは別だ。
未だに現実世界が騒がしいエリア。
いやむしろ騒がしさが俄かに増した地域。
あそこ、と言うよりもあの近辺に下手に近付いてパインが怪しまれると面倒臭い。
その辺りキチンと分別を付けて、ボンバーマンの時でしか近付かないようにはしている。
パインとして哀悼の意とか称して幾らか寄付をしておいたが。
それはそれ。
危うきには近寄らず、と言うヤツ。
身を隠すとそれはそれで怪しまれそうだから姿は積極的に出さないといけないし。
バランス感覚が実に難解ではある。
が、それはともかく。
探しているモノが見付からない。
そこだけが、個ナビ的問題だった。
「ん~…………」
『電脳獣の伝説』。
つまるところ、『グレイガ』と『ファルザー』。
この二体は結局、予定通りの結末を迎えたようだった。
未来の才葉シティこと才葉町。
その中心地区の電脳世界、セントラルエリア。
そこにて対峙し硬直状態に陥った二体を、ニホンは見事、アンダーグラウンドへと封印した。
断片的に聞いた情報を纏めただけだが、恐らく間違いない。
であるならば。
既にあってもおかしくはない。
と言うか。
光正かどうかは別として、封印に際して携わったそのエリアの一部を封印に利用したのではないかと考えている。
そうでもなければエリアの下に、超巨大プログラムとでも言うべき『グレイガ』と『ファルザー』。
この二体を同時に存在させていられる。
かつ現実世界のサーバーを一時分断して切除、あるいはその電源を落とす等の物理的な排除を画策も出来ないエリアと言うモノは想像が付かない。
既に大規模な被害が出ている状況だ。
修繕のため等と言って一時的に通行不可にするぐらいなら出来なくはないだろう。
と言うこともある。
あくまでも憶測だ。
だが、だからこそ、か。
既に用意は終わっているのではないか。
既に繋がっている状況にあるのではないか。
そう言った想定の下、ボンバーマンとしてもパインとしても、ずっと調査と言う名の散策を続けている訳なのだ。
「ん…………にゃん~?」
そして日々を歩き続けていた。
目端に映った。
自慢じゃあないが、ワタシはアメロッパ内の電脳世界の地図は大体把握している。
「おやおやおやぁ~?」
追加されたか追加される予定のエリアも含め、ワイリー様が軍に食い込んでいることもあって大凡全て。
その目が。
あるハズのないルートを捉えた。
周囲に警戒を向ける。
巡回は、少し前に擦れ違った。
だが、住宅地の小路みたいな場所までイチイチ覗きに行かないのと一緒で、流石に隅から隅まで全てを見てはいない。
あの様子では気付いていないだろう。
最大限の警戒を。
アーマーを身に着けてはいない。
ボンバーマンの姿でないことを若干恨めしく思いながらも、その足は止まらない。
ゆっくりと。
着実に。
未知のルートへと歩を進め、抜けた。
線を、抜けたと感じた。
見えざる、分布境界線を。
「っ…………なるほどにゃぁ」
瞬間。
全身を触れる雰囲気。
それが変質した。
先程まで居た場所。
そこを、閑静な住宅地とするならば、此処は違う。
ここは、自然の真っ只中。
まるで整備もされていない、道だけは辛うじて存在している大自然。
山岳。
高野。
湿原。
森林等々と表現は色々あるが、そう称するような場所だ。
「此処が、そうなんですにゃ?」
なるほど。
強力なウイルスが現れるハズだと、頭ではなく肌で理解出来る。
一見するだけなら謎のエリアとでも言うべきだろう。
だが、ワタシは知っている。
『ウラインターネット』と言うネットワークエリアを。
『ウラインターネット』。
その歴史は古い。
ワタシの記録にある『ロックマンエグゼ』と言う作品群では、その初期から存在している。
何故あるのか。
誰が作ったのか。
一切の未知。
そう語られていた当初。
だが、誕生の経緯についてはその三番目の作品にて明かされた。
あの『プロトの反乱』。
厳重な封印の施された『プロト』。
万が一、それが復活した際の保険として製造された『ギガフリーズ』と言うプログラムがある。
名前の通り、存在をフリーズ、凍結させる効果を有しているプログラムだがその効力が問題だった。
『プロト』。
初期型とは言えインターネットそのものである『プロト』。
それを凍結させるには如何ほどの効力が必要か。
インターネットを凍結させる程の効力が必要である。
この馬鹿の引き算みたいなのを真面目にやらかしてくれやがった結果、生み出されたのが禁断のプログラムと称される劇物。
『ギガフリーズ』。
万が一、『プロト』が復活してしまった場合の備えとして。
しかし万が一、不用意に発動してしまうと当然ながらインターネット全体に凄まじい影響を及ぼす。
これら二つの「万が一」のために用意されたのが、其処。
『ウラインターネット』と言うことになっている。
ワタシの想定の一つ。
『電脳獣』を封印するために一部を利用された場所と言うのもあるのかも知れないし、あるいはもっと別の何某があるかも分からない。
だが事実として。
既に存在している。
それが、ワタシにとって何よりも重要な事だと言えた。
「此処ガ警備のヤツから連絡がアったって場所カ?」
「はい。報告にあった通り、アメロッパとしては一切関与していない未知のエリアとなります」
「だろウな――空気感かラ違う」
「――はい」
パインとして警備をしていたナビに報告してすぐ。
予想通り、ボンバーマンへの連絡があった。
未知のエリアの発見とその調査。
駆り出されると想定していたから、発見の功績をそのナビに譲る形でパインの方は撤退させて貰った訳だ。
口止めしておいた甲斐もあり、さも自分が発見したと言うように報告を上げてくれていた。
偶然見付けたように口にしているのを頷いたのが少し前。
幾らかのナビが先遣隊と派遣されて暫く。
「強力なウイルスが存在している」
報告を受けたワタシが二番隊、総勢ワタシ一体として調査に向かうことになった。
ちなみに付いて来ている一体は、先遣隊だった中の一体。
現状把握している情報を受け渡す役割と、せめて入口まではお供したいと言うことで付いて来ているだけだ。
受け渡された、把握している限りのマップデータを眺めながら頷く。
パインとして十数体ばかりのウイルスを葬り歩いた範囲より狭かった。
まあ、これは仕方がない。
アメロッパエリアで見掛けたウイルスの上位個体やこの辺りでは見掛けないウイルス。
しかも複数体が平然と居る辺り、普通のナビじゃあまだまだ厳しい。
その結論を出さざるを得ない。
出来ればサポートとして幾らか付いて来て欲しかったのだが、贅沢な話か。
なお、カーネルは騒動のエリア方面に派遣されたまま。
失っても直接的には痛くないワタシを先に、と言うことだろう。
ちなみにカーネル。
ワイリー様からキャスケット様に贈られたナビと言うことで相続の関係からバレルがオペレーターと言うことになってはいる。
いるが、実質アメロッパ軍の自立型ナビとして行動している。
幸い、遺言状等は確りと記載の上で弁護士にも預けていたらしいからその辺りは万全だったらしいのが幸いだった。
閑話休題。
ウラインターネットもとい未知のエリア。
その調査。
「サて……張り切って、行くカ!」
「どうか、お気を付けて!」
「ハっ、吉報を待っテな!」
実はちょっと楽しみだったりする。
というのは秘密だ。
恥ずかしいから。
本日はもう一話、短い閑話を投稿予定。