それは、静かに行われていた。
揺らめく光弾。
飛び跳ねるように避ける一つの人型。
何処か西洋を感じさせる黄金の鎧甲冑。
青を基調とした体に、部分部分にそれらを身に着けた人型が、
「ダー!」
隙と見てか一息に突っ込む。
装飾一つない棍の端に穂先を拵えられた、鎧と同じ色彩の黄金の槍を携えて。
降り注ぐ、星々のように煌く光弾の間を縫うように。
時には槍で防ぎ、受けたそのエネルギーを衝撃波と変容させ返しながら。
その先へと。
「………………」
向かう先。
その先にもまた一体の人型。
暗色の身体に白くも緩やかなズボン状の衣を纏う人型。
それがゆっくりと。
予め予見していたかのようにその片手を前へとやった。
直後。
轟音。
衝撃波が周囲へと散らされ、
「ガハッ……!」
「……………」
吹き飛ばされ、仰向けに倒れる黄金の人型。
それを暗色の人型が見下ろした。
既に幾度、いや幾十度とも繰り返された激突。
破壊を振り撒きながら行われていたその戦いは、終局に近付きつつあった。
起き上がろうとし、膝を突く姿を尻目に、暗色の人型は余裕を見せ付けるようにゆっくりと周囲を見渡す。
静かながらも激しく、度重なった激突。
その被害は二体同士に収まり切れず、周囲に存在していたウイルスのみならず広大なエリアにも幾多の破壊痕を残してなお余り有った。
にも関わらず、余裕。
ではない。
証拠に、その姿にもまた幾多の、対応し切れずに生じた槍や衝撃波による裂傷があった。
だが、単純な話。
近接戦闘を主力とする黄金の人型。
近接戦闘もまた出来る暗色の人型。
根本的には距離を取って寄せ付けない戦い方をする暗色の人型と、その槍で以って戦う黄金の人型とで、それぞれの持つスタイルが文字通り明暗を分けたに過ぎない。
何かが違えば、というのは慰めの言葉。
そんな物よりも。
それでもなお、と。
握り締める槍に縋り付くようになおも立ち上がろうとする姿を視界端に捉えた暗色の人型は、一つため息を吐いた。
「――もう、良いではないですか」
「……なんだと?」
「力を渡しなさい。そうすれば殺しはしません」
「断る。何度目だ、その話は」
「何度でもさせて頂きます――彼とは違い、貴方ならその力がなくとも過ごして行けるでしょう」
そう口にしながら、暗色の人型は己が背後に手を伸ばす。
背後に浮かびながら淡く光る、一つの羽衣へと。
「――もう片方の彼は、私達の誰かがすれば良いと。私に譲渡だけして行きました」
「…………アイツらしい、と言えるかも知れないな」
「はい。何をするかは自分で決めると……全く。身勝手な話です」
撫でても何の反応を示さないそれを撫でながら、何処か呆れを含んだ言葉を漏らし。
直後。
情の一つも感じさせない鋭い視線を黄金の人型へと向けた。
息を整えたのか。
なおも諦めずに立ち上がり、槍を構えているその姿へと。
同時に小さく息を飲んだ。
その身体の端がゆっくりと粒子へと変わり果てて行く。
既に、崩壊を始めていた。
理由は、明らかだった。
握り締めるその黄金の槍が、輝いていく。
持ち手の命を吸い上げているかの如く。
事実、持ち主のエネルギーすらも己の鋭さへと変え、目の前の敵を倒さんと輝きを増していく。
「悪いがな、中途半端には終われるかよ!」
「分かりました。ならば――その命、貰い受けます」
最早これまで。
これ以上の言葉は不要とその瞼が下り、開かれる。
勝利。
敗北。
そう言うモノではない。
諦め切れないだとかそんなモノではなく、ただ、納得の為。
文字通り身に残った僅かなエネルギーを振り絞るように削り、崩壊しながら突っ込んで来る黄金に向け、その片手を翳した。
直後。
黄と緑。
輝く閃光がエリアごと破壊を振り撒き――
「オレ達等が終わる場所で、また遭おう」
暗黒の星のように煌く粒子となったその体が。
最期の煌めきを放ちながら自壊するその槍が。
ゆっくりと。
その身体の一部と背後へと集い、形を成していく。
やがて、黄金の兜や手甲に。
背後には、既にあった羽衣と同じ形へと、成り変わっていた。
「――ええ。終われば、また」
新しく出来上がった羽衣を慈しむように撫で、視線を宙へとやった。
何処とも知れない場所。
しかし、確かに捉えていた。
逃げ行った者を。
未だに諦めず逃げ足掻いている、者を。
「残すは貴方だけ。逃がしはしません」
そう言い残し。
荒れ果てたエリアを去って行く。
振り返ることもなく。
去って行った。
短いですが、時系列がハッキリとしない部分としているので此処に閑談とさせて頂きました。
今後もボンバーマン・パインの視点ではない部分に関して。
あるいは時系列がハッキリとしないか、それなりの長さがある等の条件次第では閑談として投稿させて頂くかと思います。