ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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035:調査

 

ウラインターネット。

その調査は比較的順調に進んでいた。

と言うのも、だ。

ワタシの性能面は勿論だがそもそもの話、思っていたよりも凶悪なウイルスが少なかった、と言うのが第一に挙げられる。

 

当初の想定。

それはクモみたいなヤツが至る所に糸をばら撒きながら序でのように動き回る機械から弾丸が次々と放たれてくる地獄。

具体的には、クーモスとサーキラーの入り混じった地獄のような盤面。

それらを想定してかなり警戒しながら進んでいたのだが、そんなことはなかった。

 

一つには、出来上がってからあまり年月が経っていないこと。

一つには、まだまだ表層近くだけで深く潜って行っていないこと。

この二つが挙げられるだろう。

 

「…………まア、強イは強いガ」

 

今しがたデリートしたメットール3rd、あるいは3と呼ばれる紫色のウイルスからデータを所得する。

手に入れた、《ダイナウェーブ》のチップデータ。

これ一つを取ってみても、攻撃力は百程度。

 

だが表で珍重されている《ソード》系はモチロンこれよりも低い。

強いて同程度の威力と上げれるのも、《ブレイクハンマー》や《ファイターソード》だが、射程と言う意味では比ぶべくもない。

《ブラックボム》もそれを越えてはいるが、点火する必要がある所為で速攻性で言えば劣る。

 

攻撃力、範囲に速攻性。

どれを取って見ても非常に優秀なチップと言っても何ら問題はない。

ないのだが。

 

つくづくカーネルの所為で基準が狂っている。

カーネルなら突っ込んで来ながら避ける姿が容易に想像付く。

不用意な攻撃であったなら、序でのように斬り捨てられるイメージも併せて。

胸元を撫でつつそんなことを考え、地図を少しずつ作り進めていく。

付いて来ているナビ達も一緒に、だ。

 

当初。

ウラインターネット潜入一回目と二回目。

パインとボンバーマン。

それぞれで覗いた時は、地獄絵図が押し寄せて来る可能性という余りにも過剰過ぎた警戒もあってそこまでウイルスバスティングすることは叶わなかった。

 

しかし実情を何となく把握出来た三回目。

次の四回目以降と回数を熟していけば大凡どの程度の強さのウイルスが徘徊しているかは把握出来る。

それによって加速したチップデータの入手。

そしてアメロッパ軍の一部のナビにそれらを要請に従って譲渡や販売することで戦力を増強。

浅いエリアであれば、チームを組んで探索を進められる程度にはなったのだった。

 

「はっはー! 《ダイナウェーブ》!」

「俺は《メガキャノン》だ! 喰らえ!」

「……燥ギ過ぎンなよ」

 

正直、練度はそこまで。

断っておくがアメロッパ軍内、のみならず国内で言っても十分に優秀なナビだ。

一部とはいえ、全部で二十枚しか作られていなかった《ファイターソード》を渡されたナビも混じっているのだ。

 

優秀でないハズがない。

だからこそこれはあくまで、ボンバーマンとしての視点なのだが。

動きが。

いや、そこまで巧くはないのだが。

 

実際問題、調査の前日にはカーネル対チームで模擬戦なんかもしたらしい。

当然カーネルの勝利に終わった訳だが。

それで意気消沈していたハズだが、実際に調査のために潜ればコレ。

 

ある種、子供のような燥ぎよう。

集団の利点。

更には次々と手に入る強力なチップデータのお陰で碌な苦労もなくウイルスのデリートを進められ、随分と盛り上がってしまっているようだった。

 

正直な話。

元々の性能と相まって、あまり芳しくない状況だろう。

ため息の一つでも吐きたい所だ。

 

だがそれに反して、お陰様で調査は順調。

チップデータの入手も問題なく進んでいるのだ。

幾つかの調査チームを結成出来るのもそう先のことではあるまい。

 

「ボンバーマン様! 周囲の確認が終わりました!」

「ヨーしヨし……あんマり奥に進むノも怖エ、入り過ぎナいよう此処かラ一旦戻っテ確認範囲を広げテ」

「いや! 今こそもっと奥まで足を進めるべきですよ!」

「そうですとも! 我等精鋭の力があればもっと深くまで調査が進められます!」

「……判断すルのはワタシじゃネえ」

 

わざわざ報告に来てくれた隊長ナビに慎重意見を出した刹那。

聞き耳を立てていたらしいメンバーの幾体かが口を挟んで来た。

口にしながら視線だけ、隊長に向ける。

判断するのはワタシじゃあない。

 

残念ながら。

隊長もとい現実世界に居るオペレーターの方がその辺りを決める手筈になっている。

ワタシはあくまでも協力者。

軍属じゃない分、その辺りは割り切らなければならない。

が、さて。

 

「――――――申し訳ありません、奥に進むと決定しました」

「よっしゃあ!」

「任せておけ!」

「…………そウか」

 

隊長ナビを見やれば、本当に申し訳なさそうにしている。

流石に現状を見れていると言うべきか。

となると、オペレーターの方が功に焦ったか。

あるいは勢いのある内に進めるだけ進んだ方が良いと判断したか。

 

まあ実際、勢いのある内に進んで損はないとも思う。

ワタシは別だが、他のナビ達はプラグアウトで緊急避難的に逃げることも出来る。

苦言の一つでも挟みたかったが、何も言わず一先ずは頷いておく。

 

ワタシとしては、後々になってワイリー様に報告する時が怖いのだが。

チームに同行している以上、和を乱す訳にもいくまい。

出発するそれらの後ろを付いて歩く。

 

ハズが、何時の間にか、さりげなく隊列の一番前へと移されていた。

コイツ等。

口では大言を吐いていながら、やっぱり内心では怖いらしい。

 

スウォードラ自身に《ハイパーボム》を着火させつつ首を振る。

手札を二つ使うのも、流石に視野に入れなければならない領域に入りつつある。

奥の手は別。

 

巻き込まれていたもののまだ体力の残っていたスウォータルの頭を踏み砕き、周囲を見やる。

《ハイパーボム》一発。

大体のウイルスならそうで、数の少ない上位種で二発。

今まではそうだった。

 

だが、流石に上位種が平然と出始めそうも行かなくなったからか、周りの動きから繊細さが抜けて来ている。

幾度かダメージも受けた様子。

ウイルスへの恐れが見え始めている。

 

狙いが定まっていない《メガキャノン》の砲火があらぬ方向へと消えて行く。

慌てて《ソード》で反撃をしているが、スウォードラの《フレイムソード》に身を焼かれて悲鳴を上げた。

二の太刀を前に投げ付けた《ミニボム》でデリート。

 

「ヤっぱ無理じゃネえか?」

「……確認を取らせて頂きます」

 

回復を進めている連中を尻目に耳打ちする。

心なしか困ったような表情を浮かべる隊長ナビ。

奥に進んだは良いものの、正直あまり進めてない内にコレだ。

やはり近場から万全にすべき。

 

そのような進言を行っているのを聞きながら、周囲への警戒は怠らない。

ウイルスの発生頻度もどうやら高い。

エリアだけ作って、整備もまともにされてないからだろう。

『逆らう気か』等と怒鳴り散らしているオペレーターの声を他所に、何ともなしに視線を奥にやる。

 

何か、居た。

他のナビには見えていないだろう。

彼方。

ワタシだからこそ、見えた。

ウイルスじゃあない。

だがアレは、

 

「オい隊長!」

「は、なんでしょうか?!」

「奥にナビの姿が見えタ! 悪いガ追う!」

「了解! お気をつけて!」

『待て、勝手な行ど』

 

何事か。

オペレーターの声が途切れたのに一瞬目をやると、口元に指を当てている隊長ナビが目に入る。

すぐさま「通信状況が悪い」等と周囲に言っているのを背後に駆ける。

 

非常にありがたい。

イチイチ確認を取ってたら、逃す可能性がある。

あれはワタシの獲物だ。

まだ逃す可能性も無きにしもあらず、だが。

 

駆ける。

通り掛けにウイルスをデリートし。

駆ける。

複雑な地形を最短距離で。

駆ける。

見えるそのナビに向け。

駆ける。

声の届く場所まで。

 

駆ける。

駆ける。

駆ける。

そして、

 

「………………なんだ、貴様は」

「ユっくりソイツかラ離レろ、おめえ」

「誰だ、貴様等……?」

 

背中を付いて倒れる一体の見知らぬナビ。

その前で佇む、フォルテがそこに居た。

 

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