ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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036:フォルテ

 

『フォルテ』。

その存在は古い。

『プロトの反乱』。

それよりも前から科学省に存在したらしいから、最古のナビの一角と言っても良いか。

ワタシもだが。

 

だがワタシと比べて、フォルテには特筆すべき能力がある。

コサック博士と言う名の人物が作り上げ、そして組み込んだ。

『ゲットアビリティプログラム』。

戦った相手の力を我が物とするプログラム。

 

より強く。

まさに、フォルテの名を冠するに相応しいその力もあって、恐らく二十年ほど先の未来にあって最強と呼ばれるに相応しい性能を有している。

というのがワタシの持つ知識だ。

しかし当然、そこに至るまでには数多の積み重ねが必要となる。

 

戦い勝てば勝つだけ相手の能力を手に入れられる。

言い換えれば。

強い相手と戦わなければ強い能力は手に入らない。

とも言える。

 

だから現状は高性能ではない、と切って捨てられることではない。

少なくとも『プロトの反乱』が発生した段階。

おおよそ一年ほど前の時点でも、ニホンの科学省で最高峰のナビであったと言う実績はある訳だからだ。

 

「モう一度ダけ言う――ユっくりソイツかラ離レろ」

 

此方を睨み見据えるフォルテ。

フォルテと言えば、と称すべきマントは身に纏っていない。

腕を組み、胸元のマークを隠すようにしているが。

気付いていないようにその足元で、息絶え絶えと言った様子の見知らぬナビを見やる。

ワタシが追っていたフォルテがそれを出来るとは思えない。

 

だが、だ。

わざわざそのナビをフォルテの糧にするつもりは毛頭ない。

されるぐらいならば諸共消す。

 

生み出した《ハイパーボム》を足先で弄びながら、視線を戻し、その動きを見張る。

見知らぬナビより、ワタシに対する関心が勝ったか。

離れこそはしていないが、視線が完全に此方を向いた。

 

「誰カ知らねエが……!」

 

その時。

全身を。

悪寒が過ぎた。

 

「………………!」

「チッ……もう来やがった!」

 

呟き。

耳に入ったそれに、思わずそのナビを見た。

全体的に青。

言うなれば、ロックマンに近い配色か。

 

見た感じに受ける印象は、屈強にしたロックマンとでも言おう。

だが分かり易い相違点としては、戦国武将の兜とかで見掛けそうなU字型の装飾みたいなのが頭に付いていること。

あとは一部が砕け、真っ赤な片目を露わにしている真っ黒なバイザー。

それ以外は、損傷が激しく把握し切れない。

 

辛うじてまだデリートされていないだけとしか。

言葉から察するにこの悪寒の主とバトルしていたのだろう。

焦った様子で動こうとしているのが見える。

だが、無理だ。

損傷が激し過ぎる。

 

ナビ自身もそれが分かっているのだろう。

僅かに足掻き、忌々し気に呻いた。

視線を奥にやったまま、フォルテに動きがないのだけが救いか。

しかし、これは、

 

「闇ガ……夜が、来ル……!」

 

景色は変わらない。

ハズなのだ。

しかし押し寄せて来る。

 

底が知れない。

迫り来る何者か。

その存在感を。

 

ただ見通せない闇のように。

避けようもない夜のように。

近付いて来ていることだけは、データ以外の感覚で知覚出来る。

だがそこまで。

 

ワイリー様にお作り頂いたこの体でも、なお。

迫って来ている何者かの底が、まるで知れない。

こんなことは今のボディに移ってからなかった。

カーネルや今、目の前にいるフォルテを見ても感じたことはなかった。

 

あるいは。

もしかすれば。

『グレイガ』以上ではないか。

 

嫌な感覚がメモリを過ぎる。

勝てるか。

負けるつもりはないが。

それでも、これは、

 

「ッ! お前、名は何と言う!?」

「――フォルテだ」

「良い名だ! オレを倒せ! そしてオレを受け入れろ!」

「なに……?」

「オレは間もなくデリートされる――だがヤツにされるぐらいなら……フォルテ、お前がオレを糧にしろ!」

「ッヤめろ、おめえ!」

 

叫び。

蹴り出そうとした刹那に光弾が放たれる。

避け、《ハイパーボム》は破壊され爆発し、咄嗟に離れたがしかし、これは。

 

既にナビへとフォルテの腕、バスターが向けられている。

間に合わない。

軽やかな、音。

思った時には既に、放たれた後。

 

「最強になれ! 誰にも負けない、最強に!」

「……元よりそのつもりだ」

「ハハ、ハハハハハハハハハハ!!! ……あばよ!!!」

 

撃ち抜かれ。

胸元を穿たれて。

なおも笑い声を上げ続けるそのナビ。

その姿が、叫ぶような言葉を最後に、粒子と消えていく。

しかし。

 

「これは……!」

「ヤ、闇ダぁ!?」

 

ただ消えて行くハズなのに同時に溢れ出した、闇。

霧よりも濃く、水よりも薄いと見えるソレが不定形に揺らめきながら徐々に形を成していく。

ほんの数瞬と言えるような僅かな間にも人のようなモノとなった不気味なそれが、何かを待っているかのようにただ其処に漂う。

 

驚きにか。

僅かに目を見開いたフォルテだが、すぐさま笑みを浮かべると躊躇なく闇へとその腕を突き刺す。

同時に薄れ。

いや、フォルテの中に闇が吸収されて行く。

 

「    ォォォォオオオオッ!」

 

まさかダークロイドだったか。

舌打ちの一つでもしたい気分になるのを抑え、しかし警戒は怠らない。

フォルテからの圧力が増していく。

あのナビ、いや人型は随分と損傷していた。

元がどれほどだったか知らないが、その力を吸収するフォルテを見れば嫌でも強大なナビだったとは知れる。

 

しかし同時に。

それだけの損傷を与えた何者かもまた迫ってきているのを、増してきている圧力から知ることが適った。

実際フォルテもまた、既にワタシよりもその主の方へと警戒を向けている。

肌を焼くような焦燥。

 

やがて。

それは。

彼方から姿を現す。

 

「――――――そうですか」

 

闇から削り出したような身体。

房のように頭から垂らされた、二本の白。

それと同じような物が後頭部から一本、角のように上に向けて伸びている。

上半身は頭を含めて金色の鎧で所々。

下半身は白いズボンで殆んど覆っていた。

 

しかし異彩を放っているのはその背後。

淡い桃色の光を放っている、二つの楕円。

羽衣のようなソレ。

見たことがない。

 

だが。

見違えるハズがない。

ワタシは知っている。

ワタシは、目の前の存在を知っている。

 

「彼は、死んだのですね」

 

後の、ウラインターネットの頂点。

ウラの王。

セレナードが、そこに居た。

 

「――」

「――」

「――」

 

対峙。

ではない。

強いて言うならば、様子見。

 

フォルテを間に挟んだ状態で、誰も動かない。

セレナードは、完全に様子見か。

フォルテは、状況の変化を待っていると見た。

 

残るワタシは、動き辛い。

それに尽きた。

ウラの王、セレナード。

破壊神、フォルテ。

どちらも後の呼び方だが、この二体に因縁があったとの話は聞かない。

 

しかし、なかったとも聞かない。

ワタシの知っている範囲内で知らないだけで、何かしらの因縁の場に飛び込んでしまっているのかも分からない。

なら、何かがあるのか。

フォルテはともかくセレナードはウラインターネットを纏める上で、必要な存在だ。

 

「ヤツは……何と言う名前だったんだ?」

「……名乗りませんでしたか。ならば、私から言うべき言葉はありません」

「おいオい、おめえはトもかくフォルテ、動くンじゃネえ!」

「!」

「……」

「何つうナビか知らネえがデリートしたんダ、一先ずアメロッパまで来テ貰う!」

 

《ハイパーボム》を生み出す。

驚いた顔をしている二体を他所に、とりあえず口上だけは口にしておく。

初めて此方の存在を認識したように。

フォルテが、セレナードと此方を見えるように動いた。

流石にそれに関してまでは口を出さないで置く。

 

そのまま三角形を描くように、再び状況が固まった。

勢いで口を挟んだが。

気まずい。

 

一先ずセレナードを一瞥。

軽く頭を下げ、フォルテに向き直る。

視界端にはキチンと入れたまま。

 

「しっカし……覚えガ……? そうダ、資料で見タ覚えがアる! ニホンから逃ゲたっツうナビか!?」

「……だとしたら…………どうする」

「変わラねえ、アメロッパまデ来て貰ウ!」

「やってみろ……この俺を!」

 

《ハイパーボム》を蹴り出す。

即座に撃ち抜かれ、中空で爆発した。

距離を詰めるか。

ワタシが僅かに悩んだ隙に距離を置こうと動き始めるフォルテ。

しかしその背後、止まった一瞬の後を光弾が横切った。

 

「――申し訳ありませんが、私も逃がす理由はありません」

「……チッ!」

 

バスターの銃口をセレナードへと向けた。

だが遅い。

既に生み出しておいた《ミニボム》群を一挙にばら撒く。

喰らうのを嫌ったか。

舌打ちと共に呼び出した《ソード》で薙ぎ払うように斬り裂かれ小規模な爆発は届かない。

 

《ソード》。

まさか《ダークソード》かと目を凝らすが違う。

火属性。

《フレイムソード》か《ヒートブレイド》辺りと見た。

軸をずらされると《ハイパーボム》じゃ巻き込める範囲からして厳しい。

 

「さア、フォルテ――」

 

ならば使うか。

手札の二つを。

いや、三つだ。

三つとも使う。

 

「――勝負ダ!」

 

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